生還を望む竜殺しの冒険譚   作:瑠衣

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第二十二話

まずは自分で選んでみてください。私も考えますが、最終的に決めるのはジークですから。

 

そう言って一度店内を別々に物色し始めることにしたが、レフィーヤが初めにここに案内したのがよくわかるぐらいには素人目でもエルフに喜ばれるとわかる品々が揃っていた。翡翠の宝石が散りばめられたブレスレットに、鮮やかな青(コバルトブルー)の櫛。何かの文字が縁に彫られている卓上鏡。

 

どれもこれも、リヴェリアが使用する光景を想像すると、やはりどれも様になっている。

 

あのダークエルフの店主も意地が悪い。こうして彼女に似合うと見識の浅いジークですらわかる一級品を揃えているのだから。素っ気ない態度をしていたが、やはり商人。仕入れる商品に対しての目利きは相当のものだ。

 

薄暗い店内を照らす魔石灯すらも商品の一部のようで、値札を見てみるとやはりそれなりに良いものなのか、割と今の手持ちでは心もとないと感じさせる程度には桁が違う。店の内装すら商品にしているところを見ると商魂逞しいというか、何というか………。

 

「(それにあのダークエルフの商人……少なくとも俺よりもレベルが高い。まず間違いなくLv.4…それ以下はあり得ない。いったい何処のファミリアの団員なんだ………?)」

 

脚運び、視線の方向、呼吸の仕方。どれもアナキティやアリシアといった第二級冒険者のソレだ。レベルが上がり知覚能力も相応に上昇したことに加えて元々のジークが持っていた動体、静止視力の良さも掛け合わさり、それを理解できるだけの能力を得ていた。

 

そんなジークの目に、一つの奇妙なものが見えた。

 

 

形状は小剣のようなものだが、()()()()。もしこの剣の柄に刀身が存在していれば十字架を模したものにも見えるだろう。柄も短くどちらかと言えばティオネが使っている投剣に近いのだろう。妙に気になり手に取ってみるとその外見とは裏腹に想像以上の重量が感じられる。

 

心臓の鼓動が大きく脈動する。自身の中で何かが吸い取られる。

 

軽い眩暈、立ちくらみに膝を崩す。

 

この感覚をジークは知っている。魔法を使った時特有の魔力が消費されていく感覚。魔法を使ってもいないのに魔力が減るというのはここまで不快な感覚なのかと実感していると、刀身のなかったはずの剣に80c程度の刃が出現していた。

 

「魔力を通すことで、刃が生まれる仕組みなのか………いわゆる魔道具(マジックアイテム)というものか………いやいや、どんな構造だよ。」

 

思わず口調が崩れるほどに摩訶不思議な構造に頭を抱えそうになってしまう自分の行動を止める。

 

魔道具(マジックアイテム)

 

【神秘】のアビリティを持っている上級冒険者が創り出すことができ神々の奇跡を下界の子どもたちが起こすための魔法のような道具。その希少性は鍛冶神(ヘファイストス)のファミリアが鍛える第二等級から第一等級の武具、医療系大派閥(ディアンケヒト)の高級回復薬にも勝るにも劣らない。

 

それが、ジークの知っている魔道具の概要だ。

 

だが、これはそんな生温いものではない。「魔法」ですらない、純粋な「魔力」のみで刃が出来上がるなんて常識から逸脱し過ぎている。基本的な構造理念すらまるで理解できない。辛うじて柄の部分から真っすぐ芯があるようで投げやすいだろうことは感じ取れる。

 

「………それをあのお転婆に渡すのか?」

 

「っ!?!?!?」

 

突然、後ろに回り込まれていたダークエルフの店主の声に、声を上げなかったのは日頃のダンジョン探索で少しばかり度胸がついていたからなのかもしれない。店主はジークの手に収まっている投剣を少し見つめると、投剣を取り上げて自身が持っていたもの代わりに握らせた。

 

握らされたものは、何処か彼女を連想させる翡翠色の宝石がぶら下げられたネックレス。

 

店主が先ほどジークが投剣にやってしまったように宝石に向けて魔力を流すと、淡い光と共に魔力が吸収されていった。そしてそのまま宝石にジークの額に近付けると、先ほど消費された魔力が若干ながら戻ってくる。

 

「……………魔力を自身か他者に受け渡すことができるアミュレットだ。魔力の貯蔵としても相当の容量がある。贈り物というのならこういう物を渡してやれ………」

 

「す、すまない………感謝する………ちなみにいくらで…?」

 

このくらい、と出された金額は想定よりも割と安いと感じる値段だったため即決で購入を決めた。有用とも思えたが、何よりもリヴェリアがこれを付けているところを見てみたいというのが本音だった。

 

それと、少し気になったという事もあり先ほどの魔道具(マジックアイテム)………「黒鍵」と呼ばれるものも置いてあるものを幾つか押し付けられた。彼曰く「使えるのならそれでいい。使えないのなら返しに来い」とのこと。在庫の一部を押し付けられた結果になってしまったが、贈り物としてこれだけ良いものを買わせてもらったのだ。これくらいの義理は果たしても良いだろう。

 

とりあえず、レフィーヤに伝えていた「リヴェリアへの贈り物」はこれで何とかなった。

 

ジークはそのまま、店内でどれがいいかと悩んでいるレフィーヤに声を掛けて店から連れ出し(その際に店主には一度頭を下げた。店主には「また来い」と言われ気に入られた様子でレフィーヤには驚かれた。)メインストリートに向かって歩き始めた。

 

 

「それにしてもよかったですね。良いものが見つかって。まさかあの骨董屋にそんなに良いものがあるなんて、思いませんでしたよ………いつの間にか仲が良くなってましたし?」

 

レフィーヤは少し難しそうな顔をしながら文句を垂れていた。品を見た彼女も「これならリヴェリア様にも失礼はないでしょう」と納得する逸品だと聞いた話によると彼女があの店主と普通に会話できるようになるのにそれなりに時間をかけていたらしい。リヴェリアに付き添われて度々顔を出し、一言二言挨拶を繰り返すことで、ようやく会話が出来るようになったとか。

 

それを、ジークがたった一度の入店で挨拶どころか会話まで済ませてしまい、あまつさえ少し気に入られているという事実に、少々どころではないぐらいに不満を溢れさせていた。

 

「あの店主も、俺も、どちらかと言えば根は暗い。だからこそ共感しあって、仲が良く見えただけだろう。そんなに気にすることでもない。」

 

「ジークのそれは「根が暗い」とはまた少し違うと思うのですが………はぁ、もういいです。この事は私も気にしないことにします。それで?商業区を出て戻ってきましたが、これからどうしますか?」

 

「それなんだが………もう少しだけ付き合ってもらっても良いだろうか?」

 

そうしてジークは()()予約していた店であるレストラン「ミュルクウィズ」に入り、席に着く。連れられてきたレフィーヤも困惑しながらも対面に用意されていた席に座る。えっ?ナニコレ?と今自身が置かれている現状に全くついていけてない。

 

この「ミュルクウィズ」は先程の「黒森人の貯蔵庫」のようにエルフ御用達の店、というわけではなく一般向けに出店されている「ちょっとだけ値段が高い料理店」だ。予約制であり、一日に捌くお客の人数を絞ることで、高い質の料理を提供している。

 

食材に関しても農業系ファミリアの最大手である「デメテル・ファミリア」から下ろしており、勿論頑張れば金を出せるが、特別な日でないと入ることはない程度の店。無論冒険者となって一ヶ月も経っていないジークもそれなりに頑張ってダンジョンに潜ることになった。

 

「えっと、ジーク…?これは一体………?」

 

困惑し続けていたレフィーヤはついに口を開いてジークに問いを投げかけた。

 

そんな彼女に対して、ウェイトレスが運んできた水を一口含んだ後、ジークは一度空気を切り替えるように咳払いをし、目の前に座っているレフィーヤを真剣な視線を向けた。雰囲気に吞まれそうになるレフィーヤにも緊張が走る。

 

二人の席の周りにいたお客は、妙な雰囲気を醸し出している二人に遠慮したのか、それとも修羅場の気配を感じ取ったのかそそくさとその場を離れていく。

 

「……………」

 

「(ち、沈黙が長い………せめて何か言ってくれませんか!?)」

 

お互いの視線が睦み合うように、交錯する。

 

「………その、レフィーヤ。」

 

「は、はいっ!」

 

「……………これを。」

 

意を決したようにジークは口を開き、彼女と待ち合わせる前に購入して隠していた小箱を取り出しそのままレフィーヤ側の卓上に置く。薄い桃色の丁寧な梱包、誰がどう見ても大切な贈り物なのだという事が一目でわかる。

 

差し出されたレフィーヤはこれを自分に…?と視線をジークと小箱に行ったり来たりさせつつも、手に取り「開けていいですか?」と一言告げて箱の中身を確認する。そこにあったのはリヴェリアに贈る予定のアミュレット………ではなく橙色の宝石が飾られた質素なネックレス。

 

お世辞にもリヴェリアに対して贈ろうとしたもののより上等の物とは言えないが、それでも十分には良いものだということは理解できる。

 

「ジーク、これって………。」

 

「………世話になったのは、リヴェリアだけじゃない。レフィーヤ。君にもなんだ。」

 

そう、ここまで強くなれたのはリヴェリアによる指導は勿論のことあったが、アイズによる近接戦の訓練。そしてレフィーヤが協力してくれた「魔法」の秘密の特訓があったからこそ、自分の武器を十全に扱い、あの黒小竜を打倒することが出来たのだ。リヴァリアだけに礼の品を渡すのは不平等というものだ。

 

レフィーヤに渡したネックレスは、事前にラウルやアナキティ、アリシアといった二軍メンバーに話を聞いたその日に、街の市場に乗り込み買い付けに行ったものだ。リヴェリアのものと違って何の効果もない普通のアクセサリーだが、一目見てレフィーヤに似合うのではないか?と思い衝動的に買ってしまった物でもある。

 

「い、いや、私はそこまでの事をしたつもりは………いえ、そういっても貴方は納得しないのでしょうね。ありがとうございますジーク。」

 

空けたネックレスを色々な角度から見渡しているレフィーヤをみて、ジークも心の中で満足することが出来た。どうやらある程度気に入ってくれたようだと。そんな彼の心情以上に目の前の妖精は舞い上がっている事を知る由もなかった。

 

 

そしてその数日後、ファミリア内外問わずいつも通りに話しているジークと妙に機嫌の良いエルフの師弟がダンジョンに向かう様子が散見され、団員にはやっといつも通り?となった三人に少しホッとしつつ、ファミリア外の冒険者には「ついに九魔姫(ナインヘル)まで落としたか…」「そ、そんな………リヴェリア様まで………」と荒くれ者が冷やかし、多くのエルフが脳をやられてしまっていた。

 

なお、アイズには先んじて何か欲しいものはないか?と聞いたときには「また、訓練して?」と可愛らしくお願いされた為、それでいいのか………と少しだけ拍子抜けしてしまった。

 

 

 


 

 

 

「リヴェリアとは仲直り出来たみたいやな、ジークたん!」

 

「あぁ。元々仲が悪くなったというわけではなく、些細な入れ違いがあっただけに過ぎないだけだったからな。話せば分かり合える。」

 

後日、ロキと共にジーク自身が希望する場所に向けて案内を頼んでいた。何やらロキも「その場所」に用があったらしく丁度いいとの事だった。

 

「ほんで?そのドロップアイテムと折れた短剣で、武器を作って貰おうっちゅー事か?」

 

「せっかくこうして良いものを手に入れることが出来たんだ。こうしてお守り代わりにしていては勿体ないだろう?」

 

病室にいるときから考えていた事でもある「黒小竜の毒牙」による武器の作成。それが可能である居場所が今向かっている【三槌の鍛冶場】という鍛冶系ファミリア「ゴブニュ・ファミリア」の本拠地(ホーム)だ。

 

鍛冶系のファミリアであれば、ロキ・ファミリアもそれなりに世話になっており、最大手でもある【ヘファイストス・ファミリア】では?と疑問に思わなくもなかったが、それを聞いたらロキは「しゃーないねん………あの子の命令は逆らえないねん…。」と苦虫を嚙み潰したような顔をしながら語っていた。

 

そうして工業区を歩いていると、三本の金槌と火箸のエンブレムが飾られた鍛冶場が見えてきた。どうやらあそこが目的の場所らしい。ちょうど玄関と思われる場所から細身だが引き締まった身体をした、一瞬ドワーフを思わせる老神が出てきているところだった。

 

「………来たな、ロキ。」

 

「おうっ!ゴブニュ!来たで~、あの子は何処や?」

 

「鍛冶場に籠もっている。まぁいつもの事だ………そいつが道化の純白(ロイヴォイド)か。」

 

自分に名付けられた二つ名を言われ、一瞬ビクッと反応をしてしまい慌てて頭を下げる。この前、他のファミリアの面々に名乗った時とは話が違う。二つ名を付けた神々本神たちにこうして改めて呼ばれると、まだ自分の中でしっくり来ていないのを理解させられてしまう。

 

「………取りあえず、入れ。茶ぐらいしか出せんが歓迎はしよう。」

 

神ゴブニュがそう言ってホームの扉を開けて歓迎される。中は鉄火場特有の熱気による息苦しさに包まれており、ドワーフを始めとした鍛冶師たちが金槌を熱々に熱した鉄に向けて振るっている。そんな鍛冶場に余りにも不釣り合いなものが見えた。

 

極東風の扉………「襖」と呼ばれる引き戸の奥から、ひときわ大きな金属音が聞こえてくる。その音にロキは先程理由を聞いたときと同じような表情を浮かべ、神ゴブニュは呆れつつも気にせずにそのまま戸を開ける。

 

 

 

 

 

そこに、彼は居た。

 

 

 

 

 

噂では聞いていた。自身と同時期にランクアップしたとされている規格外(Lv.6)

 

 

──────────カン、カン、カン。

 

 

まるで彼の身体から聞こえてきそうなほど、その男は目の前の武器に心血を注いでいた。

()()は直剣のように真っすぐ芯のある剣ではなかった。刃身が少し反っている片刃の剣。「折れず」、「曲がらず」、「よく切れる」それを体現した。ある種の芸術作品にも見える刃は、最後の仕上げと言わんばかりに一度、大きく金槌で形を歪められる。

 

一仕事終えたのか、男は一度傍に置いておいた手拭いで額を拭いてからこちらに気づいたのか、横目に一瞥すると、そのまま身体ごとこちらに向けてきた。

 

「あぁ?なんだもうそんな時間だったのか。主神様も人が悪ぃな。声かけてくりゃよかったのに」

 

「声はかけたぞ。いつも通り、夢中になりすぎて聞こえてなかったようだが。」

 

「あん?そうだったか?(おれ)の耳がおかしくなったわけじゃねえと思うんだけど………」

 

そして、目と目が合う。

心の底から自分の知らない自分を物色される感覚に全身が鷲掴みされたように硬直し、背筋が凍ったように鳥肌が立つ。

 

だがそれ以上に、自分でもわからないが妙な高揚感も感じさせている。

 

手前(テメエ)がジークか………ああ、もういい理解(わか)った。」

 

「?いったい何を───────。」

 

 

疑問を口にしようとした瞬間。彼は真横に置いてあった巨大な二つの包みをジークに向けて放り投げていた。受け止めようにも、()()()()の重さに押しつぶされてしまう。

 

「呼び出したのは他でもねえ、手前さんのランクアップ方法を聞いてな。武器を使い潰すたぁ豪胆な奴、どんなもんだって思って主神様に頼んだんだが─────────。」

 

 

 

ただただ不機嫌そうに、Lv.6《鍛師(かなち)》「センジ(千子)・村正」はこういった。

 

 

 

「期待外れだ。出直してこい。」




一問一答質問コーナー

Q.美少女な聖女様だからな!これで金髪だったら危なかった。まぁピンク髪の男の娘が出ても危ないが………

A.ジーク君にとってのヒロインと言えばやっぱりあの二人ですよねぇ………片方の性別が変?はて、何のことやら………。彼女たちも好きなのでいずれ出したいですね。

誤字報告してくださった「MinouTaRou」様、ありがとうございます。

引き続き感想や質問(答えられる範囲で)、誤字報告をくれると作者のモチベが上がりますのでよろしくお願いします。もちろん批判も大歓迎でございます。


さて、ついに出してしまいました。型月からの本格参戦第一号!みんな大好き村正さんです!!!あれ………おかしいな………最初はあのうさん臭い神父を出そうと思ってたのに………どういうことだ………?

勿論解釈違いはあると思いますので、是非ともご意見などいただけると参考にさせていただきます。

話の流れは速い方がいい?それとも遅い方がいい?

  • 早い方がいい
  • 遅い方がいい
  • てめぇが勝手に決めろ
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