上履きを下駄箱に戻した俺は、翌日も空井さんの私物を見つけた。体操着だった。自販機の下に入れようとした百円玉が転がって行ってしまって、惨めな思いをしながら覗き込んだら偶然体操服のジャージが隠されているのを見つけたのだ。ここ暫くは柏木に掛り切りだったため影を潜めていたが、正しく俺の良く分からない能力の面目躍如という訳だ。
他人の隠したい秘密が何もしてないのに足元まで転がってきて、知らなくとも構わないのに自ずと知り得てしまう。それは才能というよりも我ながら超能力みたいなもので、柏木が落とした風俗店のポイントカードを拾った時もそうだった。
こうやって他人の弱みや裏事情を集めて、抱えるだけ抱えて、特に何もしないのがこれまでの俺だ。下手な正義感で動いたら俺にまで責が及ぶような気がして、付け回すような真似はしても最終的には行動に移すことはしなかった。柏木についても空井さんがいなければ何もせず俺は今みたいな平穏な一日を送っていたはずだ。
だから今、初めて明確に自分の意志で、空井さんの隠された物を元の場所へ戻すというタスクを行う自分の行動に対して、意外なほど驚いてしまっている。
空井さんとは色々あったが結局はクラスメイトだ。恋人でも友人でもなければクラスの隣人ですらない。ただ話す機会が多かっただけのクラスメイト。何なら既に一週間は挨拶以上の会話を交わしていない。その程度の関係値なのに、俺の身体は戸惑うだとか動揺だとか、知り合いが虐められている状況を見れば当然湧くだろう感情を通り越して、空井さんの私物を元ある場所に戻していた。
今日もそうして空井さんの机の中に体操服を突っ込むと(空井さんの机は物で一杯のためこの表現が適当なのだ)、下手人について俺は考えた。
初めに、下手人は間違いなくクラスメイトだ。
5月中旬、来週には高校初の定期試験を控える校内で、クラス外の人間がそんな幼いちょっかいを出すとは考えにくいのが一点。空井さんの欠点を良く知ってるのはクラスメイトであるのが一点。
状況証拠でしかないが、判断材料としてはもう十分だろう。
クラス内に空井さんへ陰湿な行為に及んでいる人間が存在する。
その事実にたどり着いた俺は翌日から空井さんの周囲を観察した。
まず怪しむべきは空井さんが良く輪に入ろうとする二人組の女子生徒。
だがそうなるとどいつもこいつも怪しく見える。
空井さんは伊達に煙がられていない。本人は気づいていないけど、クラスメイトの半数以上は空井さんに苦手意識を持っている。これも観察している中で分かった事実だ。高校入学してクラスで人間関係が形成され始めて既に一か月半、空井さんはやっぱりどう見ても避けられている。雑に会話を切り上げられたり無視されたりと、きっと本人は何も感じていないのだろうが、俺の知らない空井さんは俺の思っていたよりも生きずらそうに見えた。
この状況を鑑みると空井さんが陰湿な虐めのターゲットにされるのは時間の問題だったのだろう。
きっとここで犯人を特定して、何らかの方法で晒し上げたとしてもクラスメイトは恐らくそこまで関心を抱かない。そいつも悪いけど空井さんも良くないから相殺だよねと、大事にせず虐めがあった事実を無視して空井さんを排除した学生生活を享受する。そしてまた同じことが起きる。
……そう考えると、不思議と腹立たしい。
別に俺は何も関係ないのに、惚れているだとか友人だとか、そんな感情も無いのに、ただただ腹立たしい。
自覚して理解した。
情が移ったんだ。俺は。飼い始めは懐かずこちらを睨んでくる犬だって、何日か一緒にいれば情が沸く。俺が空井さんに抱くこの感情もそれに近い。つまり空井さんは動物だ。動物は空気が読めないしぴったりだ。
しかし、どうしたもんか。
今のところ空井さんに変わりはない。毎日隠される私物を俺が偶然発見しては机に押し込んでいるから自分が虐めにあっていることすら気づいていないのだろう。大々的にするのは良くないが、良い方策を思いつかないのも確か。方法論を思いつくには俺には人間関係の経験値が圧倒的に足りていない。
「兄ちゃん入るよー漫画かゲーム貸してー」
勉強机で数学の参考書を開きっぱなしにして云々と悩んでいれば陽香が部屋に入ってきた。俺を見て珍妙なものでも目にしたかの如く目を丸くする。
「兄ちゃんどうしたの? なんだか悩んでそうな顔してるけど」
「いや別に何でもない。寝不足なだけだ」
「それならいいけど、さ」
陽香は言いながら近づいてきて、そのまま両手を伸ばすと俺の背に回して、なぜか俺を抱きしめた。金色の長い髪からふわりとした太陽を浴びた花の匂いが漂ってきて、我が妹ながら良いリンスやら香水やら使ってるんだろうとどうでもいい事を考えて、冷静になった。
「本当に違うからな。俺が何か苦しんでるとか嫌な目にあってるとかそういうのじゃないから」
「違ったかあ」
ぱっと陽香は手を離すと俺から離れた。慈愛じみた表情が引っ込んだ。
「いやな、何で抱き締めたんだよ。待てよ、お前もしかして他の男にそんなことしてないよな?」
「いやいやするわけないじゃん! 私そんな軽い女じゃないよ」
「重いの?」
「重いけど?」
冗談のつもりで訊ねてみれば座った目で見られた。そんな陽香が重い印象なんてないんだけどな。
「でも兄ちゃんのことは心配だよ。大丈夫? 友達とかクラスに出来た?」
「出来ると思うか?」
「やっぱダメかー。私が同じクラスにならなかったのが運の尽きかもね」
「中学だって同じクラスになったことないだろうが。別に友達いなくとも人間普通に生きていけるっつーの、大丈夫だ」
「強がっちゃって、もー可愛いな」
肩をぐらんぐらんと揺らされる。一応陽香は妹のはず……なのだが、俺が4月生まれなのに対して3月生まれの陽香は同学年ということもあって、どうもこんな感じで世間一般的な兄妹らしさというのはない。因みに兄妹だから恣意的に別々にされているのか、小中通して陽香と同じクラスになったことは一度もなかった。小3に上がるときに俺と同じクラスになりたくてワクワクしてた春香がクラス分けを見て、俺に縋りながら泣いたのは今でも覚えている。その時初めて子供心ながらに陽香が愛らしいと思った。決してシスコンとかではない。純粋に兄妹愛なので間違えないように。
「それで本当にどしたん? 私が話を聞いてあげるよ」
「別に良いって。大したことじゃないし、それに妹に助けられて嬉しい兄貴はいないの」
「まーた変な意地張ってるし。兄ちゃんそういうの辞めな? 一周回って恥ずかしいよ?」
「うるせえ。どう言われようが兄貴の意地ってもんはあんの。妹には格好良いとこ見せたいって意地が何歳になってもあるんだよ」
「うわ、開き直った」
良いだろ開き直っても。幾ら年齢差が11か月しかなかろうが、陽香にはあんまり情けない姿を見せたくない兄心である。
「全く、せっかく兄ちゃんの悩み聞いてあげようとしたのになー。偶には私に相談事してもいいのに……」
「しないしない」
「言い方ムカつく」
陽香に両頬をグニグニと引っ張られながら、ふと陽香の言葉に俺は閃いた。
妹には相談しないが、こういうことならば頼りになりそうな伝手が俺にはあるじゃないかと。
─── ─── ───
翌日昼休み、屋上にて。
「今度は私に何の用かなー。相談事って言われても難しいことは勘弁かなー」
桜沢先輩はいつもの薄い笑みを溢しつつも目では面倒くさそうにこちらを胡乱に見ていた。
それに対して俺は「連日呼び出してしまってすみません」と中身の伴っていない形ばかりの謝罪を口にして、桜沢先輩に目を向けた。
空井さんの件で、俺は桜沢先輩に屋上使用の許可と共に相談事があることを伝えて呼び出していた。生徒会長である桜沢先輩ならばきっと俺なんかよりもよっぽど人間関係の酸いも甘いも知り尽くしているに違いないという考えもあったが、それ以上に友達のいない俺が頼れる人物などこの人くらいしかいないというのが実情である。非常にぼっちには辛辣な現実である。ちょっと辛い。
「うーん。別に生徒会はお悩み相談部的な活動はしてないんだけどなぁ」
「生徒会長なんですから生徒の悩みには寄り添うべきだと俺は思います」
「我が校の理念は生徒の規律と自主性の両立、つまり悩みも基本的に自主的に解決すべきじゃないかな~と生徒会長は思うわけです」
それでいいのか生徒会長。どう考えても詭弁で面倒事を葬り去ろうとしているようにしか見えないぞ。
しかしあれだ、ここで文句を言っても仕方ない。
桜沢先輩も嘘の用件をでっち上げて逃げることも出来ただろうに、ここまで来ているということは相談事に乗るつもりはあるということだろう。
「じゃあ自主性に則って相談させていただくんですけどいいですかね」
「いいけど、こっちもタダって訳にはいかないかな」
「生徒会長が相談料取るってマジですか?」
「いやいや、お金はやらないよ! そういうことをやったらまた校長先生から怒られちゃうわ」
既に一度怒られた後らしい。しかも何やったら校長から怒られるんだ。気になるけど藪蛇感もあるのでスルーしておこう。
何を要求されるのか身構えた俺に、桜沢先輩は何でもない風に軽く微笑みかけた。
「簡単な条件だから大丈夫だよ~」
「はい。聞きます」
「昨日の屋上の話、無かったことにしない? ほら、私はこれでも普段忙しいし、呼ばれたら行かなきゃならないから結構大変なんだよ~出来れば辞めたいなぁって。受け入れてもらえる?」
そう言って桜沢先輩は苦笑しながら困り眉を作った。
それもそうだろうと俺も思う。
呼ばれるたびに毎回職員室から屋上の鍵を拝借して、俺が屋上が出るまではそこから動けないなんて普通に面倒この上ない話だ。
屋上に出入り出来なくなるのは残念だが、ただ俺も元々合鍵とかを借りれると思って頷いたわけで。
毎度桜沢先輩を呼び出して屋上の鍵を開けてもらって、という何とも後輩としては気後れするプロセスを踏んで屋上を開放してもらうのは俺としても活用方法が分からない。どうせ使わない権利なら無いのと同じだ。頷いたって別に構わないだろう。
「いいですよ」
「ありがとう~助かるよ」
桜沢先輩はぱあっと明るい笑顔を灯した。不思議と良いことをした気分になった。こういう人誑しな部分を見ると本当に生徒会長なんだなと思う。まあ裏工作して生徒会長になったらしいけど。
「その代わり俺の話は真面目に聞いてくださいね」
「うんうん聞くよ~それで何? 恋愛相談? もしかしてこの前一緒にいた女の子に惚れちゃった?」
「首都圏がゾンビパニックになって生きてる人間が俺と空井さんだけになってもそれだけは有り得ないです」
「流石に空井さんが可哀想じゃないかな」
そうかな? もしかして女子のプライド的な意味で?
いやいやそれこそ空井さんとは無縁そうなものだ。空井さんに『私を意識してくれないなんてムカつく!』とか往来のラノベヒロインっぽい台詞を期待するのは誤りだろう。寧ろ『あ、そうなの。でも私も上貫くんのこと意識してないし、私たち似た者同士だね!』とか皮肉抜きで言いそう。……何で俺はこんな空井さんに精通し始めてるんだろうか。
空井さんに対する解像度が上がりつつある今日この頃の自分に少々嫌気を感じつつ、俺は桜沢先輩に向けてコホンと咳払いする。
「空井さんは女の子扱いしなくても大丈夫です。そんな些事はどうでもいいので本題良いですか?」
「さらっと流せるほど些事でもないと思うな上貫くん?」
笑みを保ったままじろっとこちらに視線を送る。
桜沢先輩がそう言うのならそうかもしれないが、空井さんの生態学については俺の方が一日の長がある。不服ながら俺の方が理解度は高いはずだ。
桜沢先輩の言葉に頷きつつも無視して、俺は最初の言葉を考えると口を開いた。
「その件の空井さんの話なんですが、どうも虐めを受けているみたいなんです」
「それは放っておけないね~。で、具体的にはどんなことをされているのかな?」
「今のところはまだ物を隠されているだけです。上履きとか体操服とか。クラスで見ている感じだと何か面と向かって揉めたり罵倒されたりという場面は無いんですが、多分時間の問題じゃないかと思います」
「まだって言うけどそれはもう立派な虐めだと私は思うな~上貫くんからは違って見えるの?」
「いやまあそうなんですが、失せ物は全部俺が見つけて空井さんの机に入れているので、まだ空井さんは自分が虐められていることにも気づいていないんですよね」
「そうなんだ……そうなの?」
不思議そうな瞳で桜沢先輩は首を傾げた。
失せ物を全て俺が発見しているというのが引っかかったのだろう。そりゃそうだ。
ただ今回の件とは無関係なので、仔細を説明せず俺は一回だけ頷いてその疑問を流す。
「ええ。俺としてはこれ以上空井さんが悪意に晒されるのは良くない状況だと思ってます。でもそれをどうにかする方法が分からないので、桜沢先輩ならどうにか出来ないかなと。こう、生徒会長の権威とか振り翳して」
「振り翳さないよ! 生徒会長と言ってもそこまで強大な権力ないんだからね!?」
「言葉の綾ですよ。別に権力を当てにしたわけじゃないですし」
「ならいいけど………虐めね~難しいことを相談されちゃったな」
桜沢先輩は悩まし気に頭を捻っては、うーんと唸っている。
一拍空いて、俺に視線を向けた。
「上貫くんはどうしたいの? 犯人を見つけて虐め行為を辞めさせたいの?」
「いえ、正直な話空井さんはああいう性格ですので、ここで一回虐めを止めてもまた違う形で起こるかもしれません。なので、犯人を突き止めるよりも空井さんが虐めのターゲットにならないような方法があるといいと俺は考えてるんですけど……」
「それは難しいと思うな。因みにクラスでの空井さんはどんな感じなのかな?」
「簡単に言えばクラスメイトに話しかけても大体スルーされています。多分なんですけど、空井さんは行動力があるので四月は色んなグループに話しかけていて、でも空気が読めない発言が多いからそれが原因で避けられてるんじゃないかと。今は大人しめの女子生徒二人と良くいますが、それも拒めないから仕方なく相手されているという感じで、本質的に空井さんはクラスで浮いてますね」
桜沢先輩は納得気に頷いて、言葉を咀嚼するように頭を揺らした。
「なるほど~、じゃあ確かに一回虐めを止めても再発する土壌はあるってことか。でも少し分かったことがあるんだけど一ついいかな」
「はい?」
「結局は空井さんって話し相手が欲しいんじゃない?」
「話し相手?」
「だってそうじゃないかな~自発的にそんな話しかけるなんて私ならしないし。上貫君に話しかけたのもそれが一つじゃないの?」
「いや俺が空井さんと関わりを持ったのは柏木先生の一件があったからで、別にそういう目的あるかと言うと違う気が」
「本当にそうかな? だってその話が本当ならクラスメイトと言えど知らない男子に話しかけたってことだよね? 私なら態々しないかな~。私が思うに、空井さんは友達が欲しいんだよ。きっと自分を受け入れてくれる本当の友達が」
「……でも俺とはもう一週間話してないですよ?」
「それはどう上貫くんと接していいか分からないだけかもよ~?」
桜沢先輩の言葉に、背中が急に冷たくなった。春風は太陽の熱で暖かく吹き抜け、日差しは初夏と言っていいほどの熱量を以て俺の頭髪を焼かんばかりに焦点を絞っているというのに、俺の体内温度は一瞬で絶対零度に晒されたような気持ちだった。
空井さんが俺と友達になりたがっている?
それは考えもしなかったし、脳裏から弾いていた考えでもあった。
だって空井さんだ。
ノンデリカシーで空気が読めなくて、でも時折忘れた頃に真っ当なことを言う空井さんだ。
ジャイアニズム的に私が友達と思えば貴方は友達と言わんばかりにずんずんと他人に無遠慮に歩み寄るその姿は、俺には完全に自己完結した感性を持った人間に思えたし、実際その傾向はあると思っている。
でも思い返せば、そんな空井さんだって人間だ。
自分では気づいていなくとも、他人の意図を無意識で感じ取っていても可笑しくはない。
「これで大体掴めたかな。この考えが当たっていれば、上貫くんが出来ることは一つだと思うよ」
「一つ、ですか」
「うん。空井さんの居場所を作ってあげるんだよ~」
それで万事解決! と言いたげに桜沢先輩は人差し指をぴしりと立てる。
しかしそんな居場所と言われても。
「それは無理ですよ。クラスで俺だって友達いないのに居場所なんて作れるわけないじゃないですか」
「え、別にクラスじゃなくても良いよね?」
「クラスじゃなくても?」
インコみたいな俺の相槌に、桜沢先輩は満面の笑みを作った。
「それこそ部活作ればいいんだよー」
「部活……」
なるほど、部活を作るね……いやいやそんな大掛かりな話をしに来たわけじゃないんだけど。
それに部活動を作ったらこの空井さんに対する仕打ちが止まるのだろうか?
そんな疑問が表情に出てしまったのだろう、桜沢先輩は滔々と語る。
「要するに、クラスメイトに空井さんが話かける時間がないくらい空井さんの心を部活動に幽閉しちゃえば、きっとそういう虐めも無くなると思うんだ。その部活に更に怖い先輩とかいれば最高だよね~」
「いやいやいやいや、無茶言わないでくださいって!」
怖い先輩ってなんだよ!?
俺だってそんな人と関わりたくないんだが!?
「まあまあ、部活の設立は私も力貸すからさ。なんなら幽霊部員にもなってあげちゃうよ」
「そういう問題ではなく!」
「じゃあどんな問題があるの? それともこの問題、上貫くんは解決して終わりであとは知らないって言うつもりだった?」
「それは……」
「無責任だよ。そう考えるなら今すぐ手を引いた方がいいと私は思うな」
淡々とした感情の籠らぬ声が空気を泳いだ。
……桜沢先輩の言う通りだ。
俺は中途半端な気持ちで空井さんの事情に立ち入ろうとしていた。
「解決しても終わりじゃないわ。もし上貫くんが言うような解決をしたら空井さんは更にクラスで居場所がなくなる。どうかな。これが私が思いつく中では最善だと思うんだけどな」
そう言って桜沢先輩は真剣な眼差しで俺を見遣る。
これはつまり、空井さんのために部活を作るかどうかという話だ。
必然的に空井さんと友達になろうという話でもある。
俺はずっと空井さんに対して良くない感想を抱いていた。
俺自身が異性に対する耐性が無いから、それを誤魔化すために空井さんをペットみたいだとか、恋愛感情は絶対に無いとか、強い言葉を使って否定を続けていた。その半分は事実ではあるが、本音を言えばもう半分は誇張だ。
自分を誤魔化すのはもうやめだ。
俺は空井さんと友達になりたい。
ノンデリカシーだろうが空気が読めなかろうが、俺は空井さんと一緒にいて正直楽しかった。
素直にそう考えると気恥ずかしくなったが、すぐに納得感に変わった。
これが俺の空井さんに対する本当の感情だとすれば、部活動くらい設立してやろうじゃないか。
「分かりました。俺、部活作ります」
「本当にいいんだね?」
確認するような強い眼差しが俺へと注がれる。でも自覚してしまえば俺の意思は確固たるものだった。
「はい。なので桜沢先輩も手伝ってください」
「うん、いいよ。面白そうだからね~」
桜沢先輩は俺の言葉に会得がいったのか、またほんわかした雰囲気を醸し出すといつものように朗らかに笑った。