DAYBREAK ARCHIVE〜暁に虹はかかるのか〜   作:クロウド、

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原作開始でございます。


ありえないはずの再会

 ―――数週間前、連邦生徒会。

 

「俺に会わせたい人、ですか?」

「はい」

 

 俺は仕事終わりに呼び止められ、彼女の仕事部屋である連邦生徒会長室に通されていた。

 

 ―――連邦生徒会長、あらゆる学園が存在する中でそれを統括する組織、『連邦生徒会』の会長。キヴォトスで彼女を知る者は口を揃えて彼女をこう評価するだろう。

 

 ―――『超人』と。

 

「一体誰なんです、その会わせたい人というのは」

「それは……まだ詳しくは言えませんが、今後のキヴォトスの命運を握る人物、といえばいいでしょうか?」

「なぜ、そんな人を俺みたいな人間に? 俺はアビドスの人間です。そんな辺境の人間をなぜわざわざ?」

 

 俺の嫌味を交えた質問に連邦生徒会長はなお変わらず涼しい表情をしている。流石は、連邦生徒会の長というだけはあると感心する。

 

「それは、彼女が貴方と同じ外から来た人間だからです」

「外から、別の世界からってことですか?」

「えぇ、そうです」

 

 それはつまりキヴォトスの外の人間を呼び寄せる方法があるということだが、おそらくはそんな簡単なものではないということだろう。でなければ、こんな防音設備が完備された生徒会長室で二人で密談などするわけがない。

 

 だが、だとしても理由が弱い。

 

「それだけの理由で?」

「もちろん、理由は他にもあります。ですが、彼女と会えば貴方にもわかるはずです。私が貴方を呼んだ理由が」

 

 結局、その後なんとか彼女の腹を暴こうとしたが、頑として彼女はそれ以上を語ることはなかった。

 

 ―――連邦生徒会長が失踪したという話がキヴォトス中に広まったのはそれから数日後のことだった。

 

――――――――――――――――――

 

 ―――現在、連邦生徒会前。

 

「お疲れ、ゴルドダッシュ。戻ってくれ」

『ダーッシュ!』

 

 アビドス砂漠からバイクのケミー『ゴルドダッシュ』で連邦生徒会に来た俺は入口近くでゴルドダッシュをケミーカードに戻して、連邦生徒会に向かって歩き始める。

 

「―――代行! やっと見つけた! 待ってたわよ!」

 

 入口を通って、ロビーに向かうと聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声は……まぁ、そろそろ各学校の組織が説明を求める頃合いだと思ってたから、別段驚くことでもないか。

 

 俺は俺で用件があるので代行という役職が聞こえた方に足を勧める。そこには、ミレニアムサイエンススクール、トリニティ総合学園、ゲヘナ学園。キヴォトス最大のマンモス校と名高い組織の人間が二人の人物を取り囲んでいた。

 

 ―――セミナーの早瀬会計に、風紀委員の火宮さんに、正実の羽川さんと自警団の鈴森さんか。サンクトゥムタワーの最高管理者である連邦生徒会長の失踪は想像より各校に影響を与えているらしい。

 

 俺は彼女たちの中心にいるだろう人物、七神リン首席代行官に近づこうと歩み寄り、その隣にいる人物を見て目を見開いた。

 

「―――九堂……?」

 

 黒く長い綺麗な髪をまとめ、白いスーツを纏った女性。そこにいたのはあの日失ったはずの同級生、『九堂りんね』をそのまま成長させたような女性だった。

 

「おや、もう一人の待ち人も来たようですね」

「えっ、あっ! 宝太郎さんッ!?」

 

 七神代行が俺を見ると他の四人と九堂に似た女性も俺の方を向く。俺は七神代行の俺を待ってたような言葉に彼女を見る。

 

「七神代行、俺と連邦生徒会長が会う約束は把握されてるようですがそちらの方は?」

 

 他学区の人間なのでいつも仕事で使う、外交用の敬語で七神代行に問いかける。

 

「こちらの四名には既に伝えましたが、この方は―――「ちょっと待って、リンちゃん」―――誰がリンちゃんですか。どうしましたか、『先生』?」

 

 ―――先生?

 

「あの、貴方さっき私の名前を呼んだみたいだけど。私達何処かであったことあるの?」

「おや? 宝太郎さんと九堂先生はお知り合いで?」

 

 俺は嘗て、とある事故で黄金のライダーが守る世界で自分の同級生にそっくりなそのライダーの従者に出会ったことがあるがそれとも、少し違うかもしれないな。

 

 俺はちらりと彼女の()()()()()()()()()()()を見る。俺が知っている彼女ならその指に錬金術師の証であるはずの指輪もない。だが、

 

『ユニユニ……!』

『ホパーホー!』

 

 さっきからケースの中の二体のケミーが彼女に異様に反応している。

 

 ―――だが少なくとも、俺が知る九堂りんねではない。だって、俺が知る彼女は、もう……。

 

「……昔の知り合いに似ていただけです」

「えっ、でも名前も呼んでたし」

「偶然です。それで代行、生徒会長が会わせたいと言っていたのはこの方ですか?」

 

 俺は九堂……先生からの追求を無理矢理遮り、首席代行官に向き直る。

 

「はい。そのことなのですが、宝太郎さんにも説明します。改めて、この方は九堂りんね先生。現在起きているキヴォトスの混乱を収めるためのフィクサーとして連邦生徒会長がキヴォトスの外から呼んだ大人です。

 先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の顧問としてこちらに来ることになっていました。連邦捜査部『シャーレ』。単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させる事すら可能で、更に各学園の自治区での制約なしの戦闘行動も許可されています。」

「何故、その話に俺を? 他の学区と多少関わりがあるとはいえ、俺はアビドスの人間ですよ?」

「うちを始め、いろんな生徒会長と関係のあるのは多少とは言わないと思うけど……。」

「確かに宝太郎さんには私達も大変、お世話になってますが」

 

 早瀬さんが若干呆れ、火宮さんは何処か疲れたように呟く。まぁ、ゲヘナには問題児が多いからな。

 

「私もなぜこれだけの権限を持つ組織を作ったのかはわかりませんが……宝太郎さんにはシャーレの部長として先生を支えてもらいたいんです」

「―――急ですね」

「私もこの話を知ったのははつい先日ですので。ですが、宝太郎さんにもアビドスでの立場がありますので、そこはおいおい。まずは先生をシャーレの部室に案内することです」

 

 いきなりの話に俺は疑問符を浮かべるが、七神代行は淡々と話を進めていく。いや、寧ろ疑問に答える余力も残っていないのだろう。生徒会長がいなくなります一番疲労しているのはおそらく彼女だ。

 

 俺も彼女後いなくなったことで暴走し始めた生徒の後始末などで最近様々な学園から依頼が来ていたことを思い出す。

 

「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今は何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。先生をそこにお連れしなければなりません」

 

 そこまで話して、七神代行は端末を操作して何処かと通信を取る。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど」 

『シャーレの部室? ……ああ、外郭地区の?……そこ今、大騒ぎだよ?』

「大騒ぎ?」

 

 ―――雲行きが怪しくなってきたな。

 

『矯正局を脱出した停学中の生徒が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場だよ』

「……うん?」

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしているみたいだよ」

「何て、タイミングの悪い……」

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに大事なものがあるみたいな動きだけれど? まぁでももう滅茶苦茶な場所なんだから気にしなくても……あ、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』

 

 向こうから一方的に連絡が途絶え、完全に沈黙する七神代行。

 

 ―――それにしてもタイミングが良すぎる気がするが。誰かが糸を引いてる? まさか、防衛室長? いや、下手なことをすれば破滅することくらいは理解してるはず。

 

 考え込んでいると九堂先生が俺に小声で話しかけてくる。

 

「……な、なんか大変なことになったみたいだね」

「……そうですね。管理者がいなくなって溜まっていた鬱憤が爆発したんでしょう」

「えっとぉ〜、宝太郎くんでいいんだっけ?」 

「……はい、アビドス高等学校三年、一ノ瀬宝太郎です」

「もしかして、宝太郎くんも外から来た人?」

「……はい、二年前に」

「そっかぁ〜、よかった! 私以外にも外から来た人がいてくれて!」

 

 そう言って屈託のない笑顔を浮かべる九堂先生。初対面な俺に接するフレンドリーな態度に俺の知ってる九堂とは性格が随分違うように感じた。

 

 ―――だが、その笑顔にかつての同級生の九堂の姿を重ねてしまう。

 

「―――七神代行、その暴徒。俺が対処にあたります」

 

 九堂先生とこれ以上話してしまわないよう七神代行に自ら名乗りでた。

 

「ありがとうございます、宝太郎さん。まさか、彼が名乗りを上げたのに、彼にいつもお世話になっている皆さんが手伝わないなんて、そんな恥知らずなことを言う方はいらっしゃいませんよね?」

「なっ!? 失礼ね! わかったわよ、宝太郎さんにはこの間発電所が止まって困ったところをケミーの電気を分けてもらって助けられたばっかりだしね!」

「私達も生徒が破壊した建物を直してもらったりしていますので、勿論協力します」

「どの道、そうしなければ話が前に進みそうにまりませんし」

「手伝うしかなさそうですね」

 

 流石首席代行官、簡単な煽りでその場にいた四人も巻き込んだか。

 

 皆が出発する準備をし始める。だが、その前に。

 

「九堂先生はここに残ってください」

「えっ?」

「この先は戦場です。先生は俺のように特異な力を持ってるわけでもないでしょう? なら、先生はここで待っているべきだ」

「だ、だったら、尚更先生として生徒が危ない場所に行くのを放っておけないよ!」

「それで死んだら元も子もないでしょう」

 

 戦場という単語で驚かないあたり、既に連邦生徒会長か七神代行からキヴォトスがどういう世界かはある程度聞いて知識を持っているのだろうが実際に見ているわけではない。

 

 ―――この人の顔を見るたびにあの日死んだ九堂の顔がよぎる。

 

「宝太郎さん。貴方の言うこともわかりますが、シャーレにあるものは先生でなければ起動させることができません。対処したあとに向かうという手もありますが、その間に混乱はさらに広がります」

「ッ……!」

 

 七神代行の言葉に奥歯を噛みしめる。そうなると、先生の同行は避けられないか。 

 

 ―――俺は渋々、先生の動向に納得した。




宝太郎の主な仕事
アビドス……砂漠から錬金術で金やら硝子やら希少性のある鉱物やらを集めて、ブラックマーケットで売っている。
時間がある時はクロアナで砂漠の砂を少しでも減らそうとしている。
ゲヘナ……主に温泉開発部や美食研究会が破壊した道路や建造物をタイムロードと錬金術で修復、特に給食部の部室の修復は3桁に届くほど。
トリニティ……ゲヘナほどではないが不良の被害によって傷ついた建物の修復、及び、トリニティは歴史が古いので老朽化したたてものがおおいのでそのへんの修復も依頼される。
ミレニアム……レクシオン、ライデンチの力を借りて電力提供。及び、錬金術でジャンクパーツなどを加工してとある部活に提供している。さらに、C&Cの被害で倒壊した建物も直してくれているのでセミナーには目茶苦茶感謝されてる。
他にワープテラの力を借りての宅配業などもやっている。
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