悪役令嬢が婚約破棄される現場。そこに居合わせている俺。
会場の空気は死んでいる。正直やめてくれ。

なお、この話にアンドレという人物はいない。

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悪役令嬢アンドレ! 〜アンドレじゃなくて&俺〜

「ユスティーナ、お前との婚約は破棄する!」

「そんな……!?殿下、なぜですの!?」

 

俺の目の前で行われる、よくあるネット発の恋愛小説コミカライズのよくある1ページ目の様なやり取り。

はっはっは、実際にやられると空気が死ぬね。勘弁してほしい。

ユスティーナ・フォン・マイハウゼン。どこかの世界では悪役令嬢と呼ばれる種類の女がいる。目付きがキツイ吊り目で、紫がイメージカラーの胸がデカい女。コイツが俗に言う断罪エンドを迎えるところから始まるのが、『クライシス・ファンタジア』というストーリーのスタートだった。アニメ化もされてたけど、俺はコミカライズ派。

この女を貴族学園の卒業式で盛大に振ってるのが殿下。まあ言ってしまえばこの国の王位継承権第一の王子様だ。金髪のイメージカラーが青で、面が良い。性格はクール気取りのカスだが、そこは……うん……。

一生懸命フォローの言葉を探すが見つからない。いや、あれだよ?作中だとヒロインにメインで口説いてくる男だからね?ヒロインには良い恰好してたから、ヒロイン視点だと良い人だったんだよ?例えるならあれ。女には優しいけどデート先の店で店員に横柄な態度を取る。そういうタイプ。

これが将来的には俺の上司になるわけだから、勘弁願いたい。とはいえ王の選定なんてエクスカリバーでもないなら順当に生まれた順か、暗闘か、革命くらいしかない。別にやらかしたいワケでもないし、王子も知らない仲ではない。流石に知己を殺すのも寝覚めが悪い。

というわけで、俺としてはこのまま事態を静観するのが良い。

 

「真実の愛に目覚めたからだ」

 

ユスティーナの「なぜ」に王子が答えるが、その答えはなぁ……。

俺思うんだよ。一回真実の愛に目覚める奴は、二回三回って目覚めるって。ロマンチックな言い方でオブラートに包んで雰囲気で誤魔化してるだけで、「僕浮気したんだ!浮気相手の方が好きになっちゃったから、君とはバイバイ!」って言ってるんだよなぁ……。

この男が良いって言ってるヒロインちゃん……ああ、作中ヒロインのミスカーリャだが、例に違わずこの貴族学校で平民出身のカワイ子ちゃんだ。イメージカラーはピンク。胸は超デカい。髪もピンクだから、会う度にちょっと目に優しくない。だから俺はいつも王子を盾に会話を避けている。王子がいなければ顔じゃなくて胸を見ながら会話している。いや、嫌いじゃないんだ。悪い子じゃないし。ただ目に優しくないから視界に入れたくないだけで。

 

……いや、待て。王子。なぜだ。

なぜミスカーリャじゃなくて俺の肩に手を回している……!?

 

「そ、そんな……!?お考え直しになさって!?」

「おい、おい!?俺当事者に勝手にされたぞ!?どういうことだ!?」

「残念だが……私の気持ちは変わらない」

「俺の気持ちは!?」

 

おい、おい!?ミスカーリャ!!お前今すぐこっちに来……目を逸らすなゴラァッ!!

アイツ完全に「やっべ、目が合った。他人のフリしないと」って感じで目を逸らしたぞ!?

 

「それならば……貴方に決闘を申し込むわ!」

 

投げられた白い長手袋。シルクで織られたそれは、キラキラと輝き手触りも良いのだろう。

いや、実際手触りは良い。だって俺、今持ってるし。

つまるところ、決闘の申し込みとして手袋を投げられたのは、俺というわけだ。

 

……俺が!?なんで!?

 

「バカバカバカバカ!?俺の様子見ろ!?明らかに状況に付いてけてねえだろ!?」

「殿下の心から貴方を引きはがせなくても、決闘という制度を利用して強引に突破しますわ!!」

「よし!今すぐやろう!!グワー!目にも止まらぬ早業!!負けたー!!」

「私の権限で今の決闘は無効とする!!」

「「なんてこったい!!」」

 

クソ!君主制国家だとカスの権限が強すぎる!!

出来レースしようとしたら潰しやがった!!

 

「おい、カス(王子)!」

「今もの凄く不敬な事を言われた気がする」

「どういうことだ!?説明しろ!?」

「どういうこともなにも……そういう事だとも。君は私を最も傍で支えてくれた」

「まあ、役割だからな」

「共に学び、時には狩りに出かけ、時には背中を預けて魔物と戦い、時には命を懸けて私を守ってくれた……」

「そりゃ部下だからな」

「その日々である日、君の鍛えられた肉体を見て胸がときめいた時、私は知ったんだ。……これが真実の愛だと」

 

せめて命を懸けて守った時であってくれ。それは愛じゃなくて肉欲だよ。

肩に回された王子の手を払い除ける。

残念ながら、この世界はBL作品じゃないんだ。異性愛者(おっぱい星人)の俺が都合良く王子との同性愛に目覚める事はない。

 

「ユスティーナ、手を組むぞ」

「ええ、そうしましょう」

 

投げ付けられた長手袋をユスティーナの白い腕にはめ直してやり、そのままの流れで固く手を握る。

そう、これは我々の同盟。王子にユスティーナを押し付け、俺は適当に胸のデカいかわい子ちゃんと恋愛するための同盟。

 

……ああ、忘れていたけど俺の名前は……いや、それは置いておこう。俺は転生者。死んで気づいたらこの『クライシス・ファンタジア』の世界に家族の三男坊として生まれ落ちて18年になる男だ。

 

そしてこれは、俺とユスティーナが王子という障害を乗り越えて結婚するまでの話。

…………え!?そうなの!?


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