防振りにウェザエモンをぶち込むって事 作:こくとうまんじゅう
「よし、みんなガスマスクのセットはいい? フィルターは1回しか持たないから、あの灰が来たらすぐに装着して!」
イズの声が、千紫万紅の樹海窟に響く。
前回の「窒息」による全滅を受け、イズが作り上げたのは『環境耐性・濾過機能付き特製ガスマスク』だった。
「うん、準備万端! 今回は盾に頼らないでいくよ!」
メイプルはメインの大盾を外し、いつでもスキル形態へと移行できる構えをとる。
【楓の木】のメンバーが白い裂け目へと飛び込むと、目の前には再び、あの冷徹な白磁の武者が佇んでいた。
『ウェザエモンが”常在挑戦陣”を発動しました』
お馴染みとなった強制レベル20化の宣告。だが、今の【楓の木】に動揺はなかった。
「最初は首元ぉ!!」
「ナイスサリー!私が変わろう!”超加速”」
開始直後に首元めがけた超高速居合『断風』をサリーが読み切って回避し、すかさずカスミが斬り込んでヘイトをコントロールする。
何度かサリー、カスミ、クロムで交代してメンバー全員に余裕が出てきたころ
「『雷鐘』」
天からの青雷からメイプルは足の遅いマイ、ユイ、イズ、クロムをシロップに乗せて念力による空中移動でギリギリながらも避けることに成功する。地上のメンバーは自身のスキル、魔法で速度を上げ避けている。
雷鐘が止まりシロップを地上に戻そうとしているメイプルの一瞬の隙位をウェザエモンは見逃さずメイプルのもとに移動する
「『時雨』」
メイプルめがけた放たれた切り上げがメイプルを急襲するが、メイプルはイズに用意してもらったサブの大盾をわざと破壊させ、すぐさまスキルを起動した。
「【機械神】展開!!」
大盾を失った30秒間を、全身から生やした黒鋼の砲身でのガードで完全にカバー。前衛のサリー、カスミ、クロムが追いつき再び戦況を維持させる。三人が見事な連携を見せ、かつてない安定感で時間が削られていく。
そして7分が経過したころ、ウェザエモンが刀を地面に突き刺し、溢れ出たマグマが4体の火龍となって襲いかかる。
メイプルはすぐ『身捧ぐ慈愛』を発動し、そこにメンバーを入れることでそれをやり過ごした直後――空間を埋め尽くす濃密な火山灰の嵐、『灰吹雪』が襲いかかる。サリーはこれを待ってたと言わん限りに全員に指示を出す
「今だ、みんなマスクを!」
サリーの鋭い指示で、全員が一斉にイズ特製のガスマスクを装着する。
視界を覆い尽くす灰の奔流がメンバーを飲み込む。前回なら一瞬でHPを全損させていた「窒息」の状態異常。だが、ガスマスクのフィルターが激しく火花を散らしながら、その毒灰を完全にシャットアウトしていた。
「……ぷはっ、すごい! ダメージが入らないよ!」
「やったわね、イズさんの作戦勝ちよ!」
灰の嵐が止むと同時に、メンバーのマスクがパキンと音を立てて砕け散る。使い切りの役目を終えたのだ。だが、煙の向こうから全員がドヤ顔で平然と現れたのを見て、遠隔で見守っていた運営ウサギたちは「あの窒息コンボを無効化するだと!?」と大パニックに陥っていた。
その後特に戦況は変化することなく、激しい斬り合いの末、ついに戦闘開始から10分が経過する。
その瞬間、ウェザエモンがピタリと動きを止め、刀を鞘に収めて天を仰いだ。メンバーは突然行動を変えたウェザエモンを警戒しながら観察する
「
「『麒麟』!!」
ゴオオォォォッ!!!
黒い空が引き裂かれ、上空からまばゆい光を放つメカニカルな超巨大馬型ロボット――戦術騎馬「麒麟」がフィールドへとド派手に着地した。
「わあぁっ! ロボットの馬!? かっこいい!」
「でっか!?!?……喜んでる場合じゃないよメイプル、あれ絶対にヤバい!」
麒麟はまるでダンプカーのような巨体を活かし、メンバーが固まっているところに突撃してくる。
「逃げろ!あんな巨体にぶつかられたらもうぺちゃんこだぞ!?」
「本当に足が遅いって不便だよ〜!」
クロムが全体に指示を飛ばし、マイが自身の速度の低さを嘆く。
まるでモーゼの海割りのように麒麟の突撃ラインから離れ直後、体全体にまるでかなりの速度のあるトラックが真隣を走り抜けたあとのような、それだけで恐怖を感じるような強風が一同に襲いかかる。
そんな驚きをウェザエモンが待ってくれるわけがなく……
「『断風』」
「カスミ!?」
背後から体を袈裟懸けにきられたカスミは何かいう暇すら与えられずhpが全損してポリゴンになってしまう。カスミがいなくなった穴を埋めるようにサリーがウェザエモンに近づき【クインタプルスラッシュ】でヘイトを取る。
一方麒麟は走りながらその体からいくつものミサイルを発射しこちらに範囲攻撃を仕掛けてくるがそれはメイプルが【身捧ぐ慈愛】によって防ぎ切る。
「クロムさん、お願い!」
「おうっ!【精霊の光】!!」
サリーの呼びかけに、ここまで『雷鐘』の麻痺をパッシブの【麻痺無効】でシャットアウトし続けていたクロムが応じる。全身に神聖な光のオーラを纏い、10秒間の完全無敵状態を展開。盾を構えてウェザエモンの前に立ち塞がった。
しかし、戦術騎馬「麒麟」を呼び出したウェザエモンの真の脅威は、ここからだった。
ウェザエモンが刀を大きく引き、再び口笛のような電子音を響かせる。
すると、突撃を終えた麒麟が凄まじい制動をかけて反転。その巨体の再び加速して、ウェザエモンの元へと戻る。ウェザエモンは無敵状態のクロムを無視し、流れるような動作で麒麟の背へと文字通り乗馬した。
「嘘、乗馬しちゃった……!?」
「ただでさえ大きいのに、お城みたいになってるよぉ!」
マイとユイが絶叫する。
人馬一体となったウェザエモンに死角はない。麒麟の爆発的な推力とミサイルやレーザーなどの範囲攻撃を得たウェザエモン、高い殺傷力を持てるようになった麒麟、これまでの徒歩の状態とは次元が違っていた。
「しまっ――メイプル!」
サリーの直感が最大級の警鐘を鳴らす。
「【身捧ぐ慈愛】!シロップ、【念力】! みんなを上空へ!」
メイプルの迅速な指示で、サイコキネシスの光がマイ、ユイ、イズ、カナデ、メイプル、長距離を走れないメンバーを包み込み、空中へと急速に退避させる。地上に残るのは、残り数秒の無敵状態クロムと、避けタンクのサリーのみ。
だが、騎馬形態となったウェザエモンは、足で麒麟に指示を出しミサイルを撃たせながら助走をつける
「――『断風』」
ウェザエモンを乗せた麒麟が地面を爆砕し、一瞬で上空へと跳躍する。ダンプカーのような巨体が、あり得ない速度でシロップの高度まで一っ飛びに到達したのだ。
「速す――」
回避の天才であるサリーすら反応できない速度で居合がメイプル達とのすれ違いざまに放たれる。麒麟の突撃速度がその居合は、空中に逃げたはずの後衛職、そしてサリーも避けられずそのフィードバックによってメイプルがのhpがものすごい速さで削れていき、【不屈の守護者】による復活分のhpすら全損しポリゴン片に変わってしまう。
「メイプルっ!!」
メイプルがいなくなったことによりシロップもデスポーンしたメイプルの元へと戻ったため上に乗っていた四人がパラシュートを持たないスカイダイビングをすることになる。
「きゃぁぁぁ!?!?!?!?」
「【巨人の腕】ってこりゃ無理だ落ちるほうが早いや」
「カナデ諦めちゃった!?なんとかしてよー!!」
「おねーちゃーんー!!」
高所からの落下ダメージによって4人は大ダメージを受けたことによってhpがミリになったのを空中にいながらも麒麟が出し続けているミサイルの爆発に巻き込まれて全損する。
地上へと着地したウェザエモンと麒麟が、今度は無敵時間の切れたクロムへと牙を剥く。
「クロム!そっちにヘイト向かってるよ!」
「了解」!俺は【不屈の守護者】と【デッド・オア・アライブ】もある、耐えて一撃入れるぞ!」
赤い大盾使いが覚悟を決め、残されたスキルと盾の全てを構えて身構える。
容赦なく振り下ろされる、騎馬の勢いを乗せた絶大なる一撃――。
バキィィィン!!!
激しい火花と破砕音が響き、クロムのHPは「1」の状態でギリギリ踏みとどまる。どんな攻撃でも確実に一回は耐える最強の生存スキル【不屈の守護者】の効果だ。
しかし、騎馬形態のウェザエモンの最も恐ろしいことの一つは、常に麒麟が周囲にミサイルやレーザーをばらまいているところなのだ。
「あ……」
HP1で耐えたその直後のコンマ数秒。刀が通り抜けた直後に襲いかかる、麒麟の放つレーザーによって、クロムの体をポリゴンに変える。【デッドオアアライブ】が発動したもののそんなもの関係ないと言わんばかりに無慈悲にポリゴンへと変えていく。
「また私が残っちゃったな……さあ、ここからどれだけ耐えられるか。行けるところまでやってやろうじゃん」
サリーは再び二本の短刀を眼前に構えを取った
ウェザエモン討伐後に他のユニークモンスター編もやる?
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“深淵”のクターニッド
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“夜襲”のリュカオーン(分け身だけ)
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“天覇”のジークブルム
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“冥響”のオルケストラ
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この小説は短編小説なんだよ!(要らない)