大体こんな感じ
「えぇ……決勝お前かよ……デッキ何使ってたっけ?」
「いくら身内でもCSの大事な決勝の対面にデッキ教えてたまるか馬鹿野郎」
少々一般人の方々、なんならライトなカードゲーマーの方々からも敬遠される少し男臭いむさ苦しいカードショップの対戦エリア、その一角で二人の青年が軽口を叩きながらお互いのデッキをシャッフルしていた。
本日はデュエル・マスターズ公式戦、簡単に言えばCSが開催される日である。スイスドロー形式の全五戦、決勝ラウンドは一度でも負ければ即終了、大会が進むごとに空気は鋭く張り詰め参加者の目はギラギラと危険な色に彩られるのが常である。が、よりによって決勝で当たった二人は知り合いであった、なんならほぼ同時期にデュエル・マスターズを始めた戦友とも呼べる間柄であった。
「お前今ランキングどうだっけ」
「県内二位、あとCS優勝一回分でお前のポイントに追いつくんだよな……だからほら、くたばって欲しいと言いますか」
「アホかお前、こっちもこっちでGPの1byeかかってるんだわ。さっさと俺のポイントの糧になれ」
「「HAHAHAHAHAHA」」
会話の仕方としては非常に和やかなものだ、正直フリー対戦してる時に彼らの纏う空気感とほぼ変わらない。
だが目が笑っていない、お互いにお互いの力量を知っているからこそ一切の油断なく相手の首を刈り取らんと相手の握るデッキを推測する、自らのデッキトップに祈る。
和やかな空気の中に巧妙に隠れる殺意を笑って流しながらデッキシャッフルを終えシールドセット、手札を素早く確認し初動のマナ埋めや召喚するクリーチャー、プランを恐ろしい速度で練り上げていく。
「はい、お互いの用意は終わりましたか?」
「あ、終わりましたー」
「はい。では決勝戦は制限時間なしの二先で行います、勝利者にはCSプロモのゲンムエンペラーとここで使える商品券一万円分進呈です、敗者側にも五千円分の商品券渡します。それじゃ決勝戦……開始!」
「「よろしくお願いします、…………最初はグーッ!!じゃーんけーんポンッ!!!」」
今、DMPの仁義なき戦いが始まる。
◇◇◇◇
(うわ、先行取られた……まぁ相手のマナ埋め見て考えるからマシな方では――――――――)
「はいそれじゃあ
「コンプかよクソがッ!!!」
思わず青年――――
青黒コンプレックス、およそ一年前爆誕した怪物、八枚自分の下にカードを送ることでアンタップするパワー二万越えのワールドブレイカー、文字通りの怪物であるコンプレックスを軸にありとあらゆる水文明闇文明のパワーカードをてんこ盛りに詰め込んだ馬鹿デッキである。デッキに採用されているカードのおよそ六割が四桁台である上に一部のカードは三千円、下手をすれば五千円にもなるが故にデッキ構築額は下手をすれば六万、いや八万にもなる金喰いデッキでもある。デッキ理解度、練度、純粋な実力が如実に現れる玄人向けのデッキでもあるが故に春樹の対面に座る彼は好んで使っていた。
であればスリーブなどから判断がついたのでは?という意見が出てくるかもしれないが普段フリー対戦する時はお互いプロキシを使っている、何せ大会に持ち込むガチ仕様のデッキはハイレートなのでフリー対戦で使うにはあまりにも怖いのだ……なんならスリーブもかなり頻繁に変える。
さてここで春樹が青黒コンプレックスにキレた理由はもう一つある。コンプにおける大犯罪、先行一ターン目にコンプレックスを立てることはかなりのアドバンテージに繋がるのだ。何より春樹が今回握っているデッキはコンプレックスに対して悍ましい程相性が悪かった、あるいは数日前まで泣きながら握りしめていた赤青マジックやバッグに仕舞い込んでいるリースドリームメイトであれば……と思わずにはいられないが諦めて今のデッキで全力で勝ち筋を手繰っていく。
「…………ターン貰います、ドロー。…………アリスの突撃インタビュー埋めます、終わりで」
「ターン開始時コンプの下に一枚埋めます……焼き鳥かよ、こりゃ今回は俺の勝ちか?」
「言ってろ」
焼き鳥、正式名称デイガファイアーバード。
数週間前に発売された特殊弾、「超感謝祭ファンタジーBEST」により超強化されたファイアーバードという種族を軸としたデッキである。軽量クリーチャーを大量に展開しバルピアレスクと呼ばれるつい数週間前までストレージに押し込まれていたようなカード(現在二千円程で取引されている絶賛高騰中のカード)でエクストラターンを取りながら轢き潰すという青黒コンプレックスに負けず劣らずこちらも大概バグり散らかした出力を誇る。
特筆すべきはその圧倒的展開力、メクレイドによる多面展開、ハンプティルピアと呼ばれる3コストでピーピングハンデスを行う怪物や相手の大型クリーチャーの早期着地を咎めるハッタールピアなどなどで動きを阻害しつつ龍后鳳翔クイーン・ルピアやアリス・ルピアなどで容赦無く周囲を引き潰していく様は「本当に鳥か?あのドラゴンの腰巾着ムーブしてた?嘘をつけ」とまで囁かれる怪物と化した。
が、圧倒的にコンプレックスに対しての相性が悪い。コンプレックスに採用されている「ブルー・インパルス/真実を見極めよ、ジョニー!」や「飛翔龍5000VT」、「ボン・キゴマイム」等のメタクリーチャーにめっぽう弱い為デッキ相性は不利とされている。
だがデッキ相性とはあくまで数字上のもの、実力とデッキトップに愛された者であればどんな紙束でも勝てるのがデュエル・マスターズである。故にこそ諦めることなく春樹は勝利への細い紐を手繰り寄せていく。全ては
(何が彼女だ、何がデートだ…………ッ!彼女持ちのDMPなんざ俺の戦友にはいない、絶対にぶちのめして
思いっきり私怨である。
◇◇◇◇
(焼き鳥……春樹のやつ妙に相性いいからな。マジックの後釜に据えるには少々対応力に欠けていると思うんだが……まぁそこは本人の実力で補うってことか)
春樹の対面に座る青年、件の彼女持ちDMP
軽口こそ叩くものの相手の実力は本物だと自分が一番理解している、故にこそ今できる最高にして最強のプランを構築し身動きすらさせずに轢き潰す――――幸いにして先行を取れている上に手札にはボン・キゴマイムがある、のらりくらりと盤面を捌いて踏み潰す。
そう思考しながら冷静に「奇天烈シャッフ」をマナチャージ、「同期の妖精」を召喚し春樹にターンを返した。
「…………ドロー。ルピガナ埋めて2コスト、マジシャン・ルピア。バルピアレスク切ってワンドロー、鳥だからもう一回ドローしてターン終了」
「ターン貰います、開始時コンプ下に一枚……アーテル埋まりやがった……ターンドロー貰います、……ヴァミリア・バレル埋めてエンドで」
「およ?単色なかったの?」
「生憎な……!」
「ラッキ。ドロー、アリス・ルピア埋めて3コストハッター・ルピア。マジシャンタップしてハイパー化、アタックする時ファイアバードメクレイド5使います」
「どうぞ」
ワクワクとした様子でデッキトップを捲るのは昔から変わらないな、とらしくないことを考えながら浩一はこれからの動きに思考を巡らせていく。
(トリガー運なんてものに頼る奴はエアプだ、コンプなら確かに期待値高いけど焼き鳥相手だと有効トリガーは絞られてくる、コブラは……まぁ場合によってはレベルだしな。何より相手は…………)
「んじゃバルピアレスク、処理終了で……デッキ側一点!」
「通ります……トリガー無しで」
(明らかに引き運に主人公補正がついてる
ラッキー!とか言っている対面に座っている青年と伊達に長いこと共に紙をしばき倒し、同じ小学中学高校大学へと進学した戦友であり親友をやっている訳ではない浩一は春樹の強運に関してはよく知っている、酷い時なんか「今日運いい気がする。一パック買って剥いてみるわ……あ、なんかアーテルの金トレ当たった」である、下唇が噛み切れるかと思ったとは浩一の談である。
そんな彼であれば当然持っている筈である、そう……
「バルピアレスクコンプとバトル時アリス・ルピア出します、上から三枚……クイーン・ルピア、バルピアレスク、モルナルク……墓地のバルピアレスク回収します」
「…………どうぞ」
このハイパーウルトラ強運野郎が。絶叫しそうになるのをグッと堪え目の前で行われるエクストラターンの為の破壊処理を眺める。
「…………えーと、マジシャン・ルピアとバルピアレスク二枚、アリス、クイーンルピアが破壊される代わりにマジシャンが破壊されることでエクストラターン貰います、後モルナルクの効果で手札からバルピアレスクで」
「四体破壊されたので四枚コンプの下に送ります」
「…………これ普通に殴った方が良いな、バルピアレスクシールド一点、手札からアシステスト・インコッピ」
(…………これは半分詰みだな、インパルスが捲れてもインコッピで咎められる)
半ば諦めながらトリガーチェック、するとそこには……
「…………トリガー、ジョニー。バウンス対象はモルナルク、クイーン、インコッピ」
「ウルトラセイバー、モルナルク残すよ」
「………………投了、流石にそこまでいくと無理だ」
「よっし、今日は俺の日だな!」
「笑えないジョークはよせ……!」
一戦目勝者、赤井春樹
これ書く為に実際に対戦やったらなんかすごいミラクル起きて腹抱えて笑った