透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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二ヶ月も待たせてすみませんしたァァァァァ!!


第百二十三訓 釣りに必要なのは根気とやる気と重さ

潮の匂いが一段と濃くなり、真夏の太陽が砂浜を白く焼き付ける。

照りつける陽光の下、視線と視線がぶつかり合い、火花のような舌戦が幕を開けた。

「で、シロモップたちが海水浴に来たのは百歩譲って分かるけどよ。なんで不良警察のテメェらまでいんだよ。職務放棄までしてバカンスですかァ? バカァンですか?」

だらしなく腕を組み、鼻で笑い飛ばす。その声音には、いつもの軽薄な響きに混じって、隠しきれない苛立ちが棘のように混じっていた。

「そのセリフ、そのままバレーと一緒に打ち返してやるよ」

低く唸るような声。土方のこめかみに浮き出た青筋が、ぴくりと跳ねる。

「そのセリフ、そのままバレーと一緒にさらに打ち返してやるよ」

「そのセリフを――!」

売り言葉に買い言葉。寄せては返す波の音よりも騒がしい応酬に、周囲の空気は煮え返るように張り詰めていく。

「ちょっとちょっと二人とも、流石にしつこいですよ」

慌てて割って入った山崎の制止も、乾いた砂に吸い込まれるように虚しく響くだけだ。

「俺たちはなぁ! ガキのお守りっていう大事な『仕事』のために来てんだよォ! テメェらみたくお遊びしに来たわけじゃねぇんだよ!」

言い張る言葉はやけに大仰で、どこか必死さが透けて見える。だが、その虚勢は背後から投げられた冷ややかな一言によって、あっけなく瓦解した。

「いや、お守りっつーか、いやらしいことしてただけだろ。舐め回すように女見てただけだろ」

突き刺さる残酷な真実。銀時の顔がわずかに引きつり、泳いだ視線が宙を彷徨う。

「ど、どうせ……お前らの仕事っつってもアレだろ? ストーカー育成プログラムとか、そんな感じの、ロクでもねぇやつなんだろ?」

「んなわけねぇだろ! 俺たちこそお前らと違って、立派な仕事しに来てんだよ! 分かったらさっさと失せろ!」

語気を荒らげる土方の背後に、静かな、だが逃げ場のない視線が集まった。

「……立派な仕事、か。では、その内容がいかようなものなのか、この場で説明してもらおうか?」

セイアの静謐な声が、真昼の熱気を切り裂くように重くのしかかる。

「いや、それは――」

言葉に詰まった、わずかな一瞬。その隙を、鋭い観察眼が逃すはずもなかった。

「うへぇ~、言えないような恥ずかしい仕事でもしてるのかなぁ?」

ホシノがのんびりと首をかしげる。その唇から漏れたのは、あまりにも無邪気で、あまりにも不穏な推測だった。

「例えば、女の子を後ろからピーしてピーしちゃって、ピーピーピーして、最後はピーだけしてポイ捨てするとか、そんな感じの」

「小鳥遊ホシノ、あなたはいつからそんな言葉を使うようになったの?」

ヒナの声が、底冷えするような低さで響いた。凍り付くような沈黙が、真夏の砂浜を支配する。

「テメェらに関係ねぇだけの話だ」

土方が吐き捨てるように言った、その瞬間だった。

「銀さん……銀さん、アレ」

新八の震える指先が、波打ち際を指し示す。

そこには、一触即発の緊張感など別世界の出来事であるかのように、並んで釣り糸を垂らす二人の姿があった。

「おお! これ凄いアル! 大物ネ!」

「ん、まだ分からない。何が釣れたか、確認してから」

水面が激しく波打ち、釣り糸が弓なりにしなる。神楽がふんぬと鼻息を荒くして、一気に竿を跳ね上げた。

「んー、昆布が多すぎてよく分からないネ。よいしょっと!」

ずるり、と引き上げられた「それ」は、黒々とした海藻を全身に纏っていた。

だが、絡みつく昆布の隙間から覗いたのは、見覚えのありすぎる顔。

威厳も、尊厳も、すべてを潮風と磯の香りに溶かした、あの高貴なる御尊顔。

――将軍様であった。

「「しょ、しょ、将軍かよォォォ!!」」

 

 

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二人分の絶叫が、青い空へと虚しく吸い込まれていった。

——忘れられるはずがなかった。

潮風に晒され、絡みつく昆布に無残に縛り上げられてなお、その姿にはあまりにも見覚えがありすぎたのだ。

(忘れもしない、あの凛とした、気高きお顔立ち!)

新八の脳裏には、常に背筋を伸ばし、誰よりも高い場所から泰然と世界を見下ろしていたはずの、あの御方の勇姿が浮かんでいた。

(常に優雅だった、あの佇まい!)

それが今はどうだ。無数の海藻にまみれ、釣り針一本にその尊厳を預け、砂浜へと引きずり上げられている。威厳も、誇りも、徳川の歴史さえも、どこか遠い水平線の彼方へ消え去っていた。

(……粗末なチ〇コ!)

そこだけは、不吉なほど鮮明に記憶と合致してしまった。

「な、なんでェェェ!!」

新八の精神は、網膜が捉えた残酷な現実を断固として拒絶し、魂の底から悲鳴を上げた。

(大物だァァァァァ!! とんでもねぇ大物釣り上げやがったよ! これ以上にない、国家レベルの大物釣り上げたよアイツらァァァァァ!!)

あらゆる意味で「釣ってはいけない禁忌」を釣り上げたという確信が、銀時の背筋を氷のような冷や汗で濡らしていく。

一方、そんな大人たちの戦慄など露知らず、当の「現場」では少女たちが無邪気に獲物を検分していた。

「神楽、どう?」

波打ち際で、釣り糸の先で無残に揺れる「それ」を、シロコがじっと覗き込む。神楽もまた、腰を落として獲物の正体を探った。

「うーん、なんか昆布がいっぱいでよく分からないアルが……。っていうか、なんか磯臭いというか、古い雑巾で牛乳拭いたような、とんでもねぇ臭いが――」

その瞬間。

「ゲボボボボ!!」

容赦はなかった。

かつて江戸の頂点に君臨したはずの、昆布だらけの将軍。その頭上へ、神楽の胃袋の中身が盛大に、かつ無慈悲にぶちまけられた。

(吐いたァァァァァ!! とんでもない大物相手に、挨拶代わりの直撃弾ぶっかけたァァァァァ!!)

新八の魂は、今まさに白濁した意識の中で天を仰いでいた。

「ん、神楽。流石にそれは、釣り上げた生き物に対して失礼……」

かろうじて理性を保ち、道徳的な指導を試みようとするシロコの声。

「ウヘェ~、流石シロコちゃん。おじさんたちの教育が行き届いてる証拠だねぇ」

どこか誇らしげに、場違いな感心を浮かべるホシノだったが、その隣で氷のような視線を向ける者がいた。

「よく見て、小鳥遊ホシノ」

「うん?」

「彼女――吐いてるわよ」

ヒナが指差した先。次の瞬間、堤防が決壊するように理性が崩壊した。

「オボボボボボボ!!」

「ウヘェ~、あの子はもうおじさんの子じゃないよぉ……。」

目に涙を浮かべて現実逃避を始めるホシノに、アヤネの冷徹なツッコミが飛ぶ。

「いや、元からホシノ先輩の子でもないですから。っていうか早く助けてあげてください!」

「神楽、悪かった。流石にこれは、生理的にきつい……」

「分かればいいアル。これは不可抗力ネ」

地獄のような惨状を背に、なぜか芽生える奇妙な連帯感。

「何も良くねぇわ! 何、とんでもねぇところで素直になってんの!? 将軍が可哀想だと思わねーの! あの人一応国のトップだよ、一応!!」

銀時の必死の抗議も、もはや狂乱の渦に飲み込まれ、誰の耳にも届かない。

「全く。君たちのところは、随分と教育がなっていないようだね」

セイアが目を閉じ、静かに、しかし確実に急所を刺す一言を放つ。その泰然自若とした態度に、ホシノが噛み付いた。

「ん~? そういうトリニティーはどうなのさ。ちゃんと、そういうゲロを吐かないとか、淑女的な教育はされてるわけ?」

「もちろんだとも。我らティーパーティーの名に懸けて――」

その自信満々の言葉を遮るように、背後から緊張感のない声が響いた。

「ねぇ、セイアちゃん。ナギちゃん吐いたけど」

振り返った先。そこには、上品な刺繍のハンカチを握りしめたまま、マーライオンのごとき勢いで「何か」を放出するナギサの姿があった。

「ザーーーッ」

滝のような、あまりにも優雅さに欠けるその音。

「アハハ……。どうやら私は、悪い夢を見ていたようだ。少しばかり、眠りにつくとしよう」

現実の重みに耐えかね、セイアは自ら砂浜に穴を掘り、吸い込まれるように埋もれていく。

「あの、セイアちゃん。嫌なことがあったらすぐ予知夢(眠り)に逃げようとする癖、やめよっか?」

夏の海はどこまでも青く、眩しく。

そしてこの日もまた――誰一人として、無事では済まなかった。

怒号は、寄せては返す潮騒を力任せにねじ伏せるようにして、真夏の浜辺に炸裂した。

「おい! 将軍相手になんつーもんぶっかけてんだテメェら!! 〇便器ならぬゲロ便器みたくなってんじゃねぇか!! これ、俺たち戻ったら即切腹だぞ!!」

砂と海藻、そして少女たちの胃袋から供出された「異物」にまみれた将軍を前に、土方の顔は怒りと絶望で無惨に引き攣っている。忠義の心と、目の前の凄惨な現実。その狭間で、彼の理性という名の防波堤は今にも決壊しそうだった。

「んなこと言ってるテメェらこそ!!」

対する銀時は、震える親指で将軍(であったはずの塊)を指しながら吠え返した。

「何将軍をこんなとこ連れてバカンスしてんだよ! やっぱお前らバカだろ! 脳みそマヨネーズで詰まってんだろ!!」

その声には、怒りよりもむしろ「とんでもない面倒に巻き込まれた」という、深い諦念に近い呆れが滲んでいた。

「テメェらが将軍を連れてきたここはなぁ! ユメモドキにシロモップ、それにゴリラ……キヴォトス最強を謳うゴリラキャラがひしめき合う、魔の海域なんだよ!」

大仰に両手を広げ、舞台役者のような芝居がかった口調で続ける。

「ここはもう、グランドゴリラインそのものなんだよ!!」

「グランドゴリラインってなんだよ! それただの海賊王目指すやつだろうが!!」

即座に飛んできたツッコミを無視して、銀時はさらに言葉を重ねた。一拍置き、驚くほどに真剣な、いわゆる「死んだ魚の目」を極限まで見開いた真顔になる。

「このことが意味することは――サメだらけの海に全裸のマツケンを沈ませるようなもんなんだよ」

――次の瞬間。

どかっ! ドカっ! ドカッ!

言い切るよりも早く、ミカとホシノの容赦ない蹴撃が銀時の頭に炸裂した。

肉を打つ鈍い音が砂浜に響き渡る。一瞬にして地面に転がされ、物理法則を無視した速度で砂に埋められた銀時は、気づけば首だけを地上に突き出した悲惨な姿に成り果てていた。

 

 

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「いや、現在進行形で沈んでるぞ。大海以前に砂浜の海に沈められてるぞ、アンタ」

バカイザーと呼ばれた男の冷静すぎる指摘が、無情にも残酷な現実を突きつける。

そんな混沌の只中で、ようやく事態の「真の異変」に気づいた声があった。

「みなさん、内輪揉めしてる場合じゃ……って、どうしました?」

ハスミが困惑した視線を向けた、その先。

「いや、アレ……将軍様のこと、捨てようとしてません?」

アコが震える指で差した瞬間、浜辺の空気が絶対零度まで凍りついた。

「ん、海にお帰り」

淡々と、あまりにも自然に。慈悲深い放流でもするかのような手つきで。

「もう二度と戻ってくんなヨ」

神楽の投げやりな言葉を合図にしたかのように――

ザパァ~ン!!

派手な飛沫と共に、江戸の至宝たる将軍の姿が、紺碧の海へと吸い込まれるように消えた。

残された浜辺。

誰も、何も言わない。

「「「「「………………」」」」」

ただ、乾いた潮風だけが吹き抜け、遠くで波が、何事もなかったかのように寄せては返していた。

砂浜に漂っていた不穏な沈黙を、力技で引き裂いたのは――。

やけに場違いで、やけに空回りした熱量を孕んだ、あの男の声だった。

「つーわけで、始まりましたァ〜……!」

砂に首まで埋まったまま、司会者気取りで叫ぶ。潮風に白髪をなびかせ、その死んだ魚のような瞳だけが、今は異様な生存本能でギラつかせていた。

「第一回! 大物(将軍)釣り上げましょう大会ィィ!!」

――どこからともなく、幻聴のように脳内を駆け巡る「ドンドンパフパフ!」というチープなファンファーレ。誰も楽器など手にしていないはずなのに、この場を支配する狂気が、祝祭の音を強制的に再生させていた。

「ルールは簡単。この広大な海から、一番の大物である『将軍様』を釣り上げた奴が優勝! それ以外の奴は――」

一瞬、浜辺に期待とも恐怖ともつかない、張り詰めた沈黙が走る。次の瞬間、その唇から最悪の死託が放たれた。

「もれなく全員、腹切って詫びてもらいまぁす!!」

「いや犠牲者しか出ねぇじゃねぇか!!」

新八のツッコミは、寄せては返す波よりも速く、鋭く、そして何より切実だった。

「おまけに優勝者にすら何もなし!? 何のメリットもないじゃん、この大会! ただの連帯責任のなすりつけ合いでしょ!?」

眼鏡の奥の瞳には理性の火が灯り、流れる涙には、明日をも知れぬ将来への不安が滲んでいた。誰がどう考えても、勝って地獄、負けても地獄。救いなど微塵もない、暗黒のレクリエーションだった。

しかし、首だけになった男は、砂の中から不屈の勢いで咆哮する。

「文句言ってる暇があるなら、さっさと釣り上げに行けバカヤロー!!」

その顔には、一国を揺るがす不敬への責任感も、己の失態に対する後悔も存在しない。そこにあるのはただ一つ――「一人で死ぬのは御免だ」という、美しきまでに醜い巻き添え根性。

「てなわけで、将軍狩りじゃァァァァァ!!」

高らかに宣言されたその瞬間、浜辺にいた全員が、冷酷なまでの確信に至った。

――これは、健全な競技ではない。

――これは、ただの事故だ。

――それも、ブレーキの壊れたダンプカーが全速力で突っ込んでくるタイプの。

夏の海は、皮肉なほどに今日も穏やかだった。

だが、その紺碧の底では、とんでもない「獲物」の生存を巡る、人類史上最もバカげた争奪戦が、今まさに幕を開けようとしていた。

潮騒の合間を縫って、鼓膜を震わせるほどの怒号が飛んだ。

「新八ィィィィ! 甘ったれたこと抜かしてんじゃねぇぞ!!」

その声は、もはや単なる叱咤の域を超えていた。理不尽と混乱、そして剥き出しの責任転嫁。それらすべてを「熱気」という名のオブラートで包み隠した、坂田銀時流のあまりにも卑怯な檄である。

 

「これは天下分け目の戦いなんだからな!命賭けたんだからな!お命!!」

 

言葉の意味など、もはや本人も理解していないだろう。だが、その語気だけはやけに切迫した戦国時代の様相を呈していた。

「釣って釣って釣りまくるんじゃァァァァァ!!」

神楽が拳を天高く突き上げ、完全にトランス状態の祭りテンションへと突入する。その瞳に宿るのは、獲物を慈しむ釣り人の心ではなく、荒野を駆けるハンターのそれだ。もはやこれは風流な「釣り」ではない。血で血を洗う、凄惨な「狩り」の幕開けだった。

「ほんと……ただのバカンスが、まさか釣りイベントになるなんて。世の中、何があるか分かりませんね……」

乾いた笑いと共に、新八は砂を噛むような思いで現実を噛み締める。人生は予測不能というが、だからといって「海から将軍が釣れ、それをさらに海へ放流し、連帯責任で切腹の危機に瀕する」という未来まで想定できる人間が、この世に何人いるだろうか。

ふと、背筋を這い上がるような嫌な予感に襲われ、隣を仰ぎ見る。――そこに展開されていたのは、新八の貧弱な想像力を遥かに凌駕する異形な光景だった。

頑丈な紐で雁字搦めに縛られ、さながら巨大なルアーのように海上に吊るされている天雨アコ。そして、同じく大胆極まりない扱いを受けながらも、なぜか菩薩のような落ち着きを払っている羽川ハスミ。

その糸(紐)を無慈悲に操っているのは、ヒナとミカだった。

状況の異常さに、新八の喉がヒュッと鳴る。

「銀さん、逃げましょう。この海、怖すぎます。生態系とかそういう次元じゃなくなってます」

その訴えは、もはや魂の底からの叫びだった。サメや深海魚など、この砂浜にひしめく怪生物(女子生徒)たちに比べれば、愛玩動物も同然である。

「安心しろ、ありゃあ『妖怪ヨコチチ』だ。あーやって海面の平和を守ってんだよ」

銀時は埋まった首から真顔で、何一つ安心できないデタラメな解説を垂れ流した。

「でも、ただデカいやつもいるアル」

神楽が指差した先には、さらにスケール感の壊れた存在が悠然と佇んでいる。

「じゃあアイツは『妖怪デカ乳』だ。あーやってヨコチチの背後を守ってんだよ。」

適当にもほどがある分類学だったが、銀時の中では完璧な理屈が通っているらしい。

浜辺をしばらく進むと、新八の視界にまず飛び込んできたのは、静寂の中に狂気を孕んだティーパーティーの末路だった。

静かに、しかし確実にカップから紅茶を垂れ流しながら、釣り糸に絡めたシマエナガをルアーのごとくぶら下げているセイアの姿。白く丸い小鳥は、潮風に揺られながら、すべてを悟った賢者のような無表情を貫いている。立ち上るアールグレイの香りが海風に溶け、そこだけが切り取られたように場違いな優雅さを漂わせていた。

その隣では、土方が無言のまま、祈るような手つきで海面にマヨネーズを注ぎ続けている。

迷いはない。そこにあるのは、愛する調味料に万事の望みを託した職人の背中と、引き返せない男の悲壮な覚悟だけだった。

さらにその奥――。

山崎が、まるで機械的な作業のように「あんぱん」を大量投下していた。

投げては落ち、落ちては沈み、沈んでは波間に浮く。それはもはや給餌ではなく、海という名の巨大な神に捧げ物を繰り返す、果てしない宗教儀式のようであった。

新八の喉が、引き攣るようにひくりと鳴った。

「銀さん……やっぱ逃げましょう。この海、怖すぎます。人の心が残ってません」

それは悲鳴ですらなかった。崩壊寸前の理性が発した、最後の、そして唯一の警告だった。

「心配すんな。ありゃあ『妖怪午後のあんぱんマヨネーズ』だ。あーやって海面の油分を調整して守ってんだよ」

埋まったままの首が、何一つ心配していない、どこまでも無責任な顔で言い切った。分類の基準も生態系への影響も不明だが、語る本人の中では揺るぎない確信となっているらしい。

「でも、ニコチンもいたアル」

神楽が指差した先には、より一層説明を放棄したくなるような、紫煙を燻らせるナニカが揺れている。

「じゃあ、そいつは『妖怪ニコチ◯コ』だ。そいつには文字通り2個チ◯コがついてんだよ。縁起物だ、拝んどけ」

新八は何も言わなかった。

何かを言葉にした瞬間、自分の人間としての形が、決定的に壊れてしまう気がしたからだ。

そんな地獄絵図のただ中で、銀時は「よっこらせ」と気の抜けた声を出し、釣り道具一式を砂浜に置いた。その動作だけは、まるで日曜の朝に堤防へやってきた釣り人のように、やけに自然で、やけに堂に入っていた。

「じゃあ、始めるか!」

潮風が湿った砂をなぞり、ピンと張った釣り糸が不気味な軋みをあげる中――銀時は、さも「醤油を貸してくれ」とでも言うような軽さで言った。

「じゃあ新八、メガネ(本体)借りるぜぇ」

直後のことだった。ヒョイ、というあまりに迷いのない動作。まるで道端に落ちている小石を拾うかのような気安さで、銀時は新八を――否、新八の本体たる「眼鏡」をむんずと掴み上げた。そのまま手慣れた手つきで釣り糸の先へとくくりつけ、無慈悲に宙へとぶら下げる。

「って、待たんかいィィィィ!!」

必死の抵抗も虚しく、眼鏡は釣り針の先で哀れに揺れた。視界が反転し、水平線がぐらりと歪む。レンズの向こうで揺れる世界は、持ち主の動揺をそのまま映し出しているようだった。

「なんでエサ代わりに僕のメガネ使うんですか! 釣りエサなら他にも、ミミズなり疑似餌なり、いくらでもあるでしょ!!」

砂浜に立つ銀時は、苛立つ新八を制するように指を振り、大げさに肩をすくめてみせる。その瞳は、こういう時に限って妙に真剣で、無駄な説得力に満ちていた。

「チッチッチッ……分かってねぇなぁ、オメェは。いいか、将軍(大物)を釣り上げるってのはな、自分たちの中で一番大事なもんを賭けねぇと、向こうも本気で食いついてこねぇんだよ」

新八の背筋を、氷のような嫌な予感が駆け抜ける。

「新八のいねぇ万事屋は、メガネを掛けてねぇ新八と同じ。つまり――お前の本体こそが、今この場で用意できる最高級のエサなんだよ」

熱い風が吹き抜ける中、新八の心は折れる寸前だった。

「いや、言ってることの半分も意味分かんないんですけど!! 理屈が迷子になってるんですけど!!」

魂の叫びをぶつける新八に、銀時は顎をしゃくって周囲を指し示した。

「分かんねぇなら、周りを見てこいよ。正気を保ってるのはオメェだけだ」

「……え?」

視線を巡らせた瞬間、新八は己の置かれた状況の異常さを再認識した。ここはもはや、釣り場ですらなかった。

まず目に飛び込んできたのは、釣り糸の先に誇らしげに揺れる青いマフラーだ。

「ほら、そこにいるシロコ。あれ、おじさん(ホシノ)からもらったマフラーだろ?」

「(過去が)重すぎるわ!」

さらに視線を移せば、もはや釣りの概念が崩壊していた。ナギサはヒフミの写真(ブロマイド)を、ホシノにいたっては、大切な「遺影」そのものをエサとして針に括り付けている。

「(愛が)重すぎるわ!」

執着と因縁が渦巻く海岸線。だが、極めつけはさらにその奥にいた。

「で、あっちのセリカ。あれ、ノノミを直接ぶら下げてんだろ?」

「(胸が)重すぎるわ!!」

ついに、新八の叫びは理性の防波堤を突き破った。

「ちょっとォォォ!!あの人たちのエサいろんな意味で重すぎなんですけど!喰らいつく前に胃ぃもたれるわ!!」

眼鏡越しに見える光景は、友情、執着、愛情、そして物理法則のすべてを土足で踏みにじっていた。

しかし銀時は、そんな叫びなど意にも介さず、

 釣り竿を握りしめ、水平線を睨む。

 まるで本気で――

 この海から、すべてを釣り上げるつもりでいる男の顔だった。

銀時は大げさに肩をすくめ、湿った潮風に前髪を遊ばせながら、観念したように口を開いた。

「ったく、仕方ねぇな。わーったよ。じゃあ、入れ替え案なんかどうだ?」

その声音はどこまでも軽く、どこか他人事のように響く。だが、新八の胸の底には、漬物石を置かれたような嫌な予感がずしりと沈殿していった。

「ほら。お前と同じで『メガネが本体』のツッコミ担当――アヤネもさぁ……」

銀時が顎で沖の方を指し示す。その視線の先では、アビドス対策委員会の良心たる少女が、一切の迷いを捨て去った修羅の形相で釣り竿を構えていた。

「ちゃんと、**本体(メガネ)**をぶら下げてんだろ?」

その瞬間、新八の理性が真っ赤な警報を鳴らした。

「アヤネさんんんん!! いいんかぁ!? アンタ、それでいいんかァァァァァ!!」

それは同族の魂を代弁する絶叫だった。ツッコミとしての誇り、メガネとしての尊厳。それらすべてを「釣り上げ」という大義のために差し出した彼女の覚悟が尊すぎて、新八には眩しすぎて直視できなかった。しかし、銀時はそんな新八の葛藤を鼻で笑い飛ばす。

「ちなみにエリート(佐々木)の奴はな、ドーナツをエサにしてサイコパス(信女)釣ってたぜ?」

「いつも通りだろうが!!」

脊髄反射でツッコミを叩き込む。もはや驚く気力すら残っていない。銀時はふっと少しだけ真面目な顔になり、寄せては返す海を見つめながら言葉を続けた。

「まぁ、そんなわけでよ」

波が砕け、白い泡が虚しく砂に吸い込まれて消える。

「何かを釣るってのはな、何かしら自分の一部を犠牲にしねぇと、やっていけねぇもんなんだよ」

一瞬だけ、いつものふざけた口調の裏に、かつて多くのものを失ってきた男特有の妙な重みが滲んだ。だが――。

「アンタら全員、理性を犠牲にしただけのバカ共の集まりでしょうが!!」

新八の鋭い一撃が、無理やり作り出された感傷的な空気を跡形もなく粉砕する。

静寂が訪れた。新八は深く、肺の奥にある澱みをすべて吐き出すようにため息をついた。

「……まぁ、分かりましたよ」

どこか投げやりで、それでいて全てを諦めたような声音。しかし、その瞳には、荒波に向かう戦士のような静かな覚悟が宿っていた。

「じゃあ僕は――」

一拍置き、新八は静かに、そして決然と続けた。

「姉上の写真でもぶら下げて、待ってますよ」

その一言が放たれた瞬間、熱を孕んだ海風が一瞬だけ凍りついた気がした。銀時が、ゆっくりとスローモーションのように新八を振り返る。

――ああ、理解した。これはもう、単なる「釣り大会」などではない。

己の因縁と覚悟、そして二度と取り返しのつかない業を、紺碧の海へと投げ込む禁断の儀式なのだ。

波打ち際に立つ新八の背中は、例えメガネ越しであっても、悲壮なまでの覚悟に満ち満ちていた。

潮は凪ぎ、琥珀色に変わり始めた日差しが水面に鈍い光の粒を撒き散らしている。時間だけがじわじわと、真綿で首を絞めるような遅さで過ぎていった。

海面に影を落とす釣り糸は、刺し違えたまま凍りついたかのように微動だにしない。

――完全なる、沈黙。

「……釣れませんね」

乾いた声が、湿り気を帯びた海風にさらわれ、力なく消えていく。

「釣れねぇなぁ」

銀時はあくびを噛み殺しながら呟き、砂の上に胡坐をかいたまま、投げやりな手つきで竿を揺らした。期待も、諦めも、そして将軍を海に放流したという未曾有の罪悪感も、すべてが夏の熱気に茹でられ、ごちゃ混ぜになっていた。

「やっぱ新八じゃキモ要素が強すぎて、何も寄ってこないアル」

毒も悪気もない、だからこそナイフのように鋭く残酷な一言。

「一応言うけど、僕たちツッコミキャラがいないとこの作品やっていけないんだからね。そこんとこもっと大事にーー」

「……ん? どうしたんですか、銀さん?」

隣で不貞腐れていたはずの男の表情が一変していた。いつもの、濁りきった死んだ魚のような瞳が、見開かれたまま海の一点を見つめている。

「新八ぃ!!」

神楽の声が、緊張に甲高く弾けた。

「オイ……釣れてるゥゥゥ!! お前の釣り糸、スッゲェ反応してるぞ!!」

直後のことだった。海面の下で、何かが釣り糸を暴力的なまでの力でひったくった。

カーボン製の竿が、悲鳴のような音を立てて弓なりにしなる。

弛緩していた空気が、瞬時にして弦を極限まで引き絞ったかのように張り詰めた。

「ウォォォォ!! 本当だ!! 引きが強い!! これ、とんでもない引きですよ銀さん!!」

裏返った声が夕闇の迫る浜辺に木霊する。胸が高鳴り、絶望のどん底にあった希望が、一気に海面へと浮上し始めた。

「よぉし!! 待ってろ、今行くぞ神楽!!」

「分かったアル!!」

万事屋の二人が新八の背後に回り込み、三人の長く伸びた影が砂浜の上で一つに重なる。

「せーので引っ張るぞ!! せーの!!」

「「「ウォォォォォ!!!」」」

三人の全身の筋肉が軋み、指先が白くなるほど力を込めて竿を引く。

「「「うんとこしょ! どっこいしょ!! それでも――」」」

砂が深くえぐれ、足が滑り、奥歯が砕けんばかりに食いしばる。その先に待つ大物を信じて。

「「「ブリーフ――!!!」」」

だが。

「「「釣れませんんんん!!!」」」

虚しく響く絶叫。

釣り糸は依然として鋼鉄のような硬さで張ったままだが、海の下に潜む「獲物」は、その巨大な質量を感じさせるだけで一向に姿を現そうとはしない。

 

釣り糸は、もはや糸というより運命の鎖だった。

 軋み、震え、悲鳴を上げながら、海と陸の境界で必死に耐えている。

「ちょっとォォォ!!

 これ重すぎません!?将軍、どんだけ巨大化したんですか!!

 この短時間で!!」

 腕は限界、腰は悲鳴、魂は半分抜けかけている。

「さぁな!!

 男三日会わざれば刮目して見よ、って言うだろ!!

 なんか知らねぇけど、超ビッグな男になったんだよ!!」

「もともとスッゲェビッグな人ですからね!!

 これ以上どこ育つんですか!?成長期終わってますよ!!」

 汗とツッコミが同時に飛び散る。

「それにしても釣れないネ!!

 シロコちゃん!みんなヘルブリーフ!!」

「ヘルプミーな!!」

その絶叫が、地獄の蓋を開ける合図となった。

「ん……分かった……」

シロコが静かに竿を置き、その瞳に「捕食者」の光を宿して立ち上がる。

「何何〜? ウヘェ、すごいの釣れてるね〜。じゃあ私たちも行こうか〜」

ホシノののんびりした声に呼応するように、砂浜の空気が物理的な熱量を帯びてざわつき始めた。

「ねぇねぇセイアちゃん! 先生のところ、なんか釣れそうじゃない? 行ってみよ⭐︎」

「そうだね。せっかくだ、その恩恵にあずかるとしようか」

「……私も、手助けに行く」

ヒナの静かな決意。だが、最強クラスの少女たちが一箇所に集結したことが、事態をさらなる奈落へと加速させた。

「あーあ……あっちに人が集まり始めましたよ。どうしますか、副長」

「……決まってんだろ」

土方の視線は鋭く、マヨネーズを握りしめた拳は固い。

「アイツらに将軍は釣らさねぇ!! 真選組――突撃ィィィィ!!」

砂を激しく蹴り上げ、黒い制服の集団が雪崩れ込む。

「「「ウォォォォォ!!!」」」

波打ち際はもはやバカンスの面影を失い、血沸き肉躍る戦場と化した。

「ちょっとォォォ!!これどういう状況!!?すっごく人が集まってきてんですけど!!」

左右から、前から後ろから。一本の釣り糸を巡り、あらゆる組織と勢力が渾然一体となって巨大な綱引きを始めている。

「みんながみんな僕たちを引っ張ってるんですけど!!」

「『大きな株』ならぬ、『大きな獲物』状態アルヨ! 引っ張っても引っ張っても釣れないアルヨ!!」

「諦めんなァァァ!! 諦めたらそこで試合終了だって、安〇先生も言ってたァァァァァ!!」

出所不明の人生訓が夕焼け空を貫く。

「じゃあ……せーので行きますよ!! せーの!!」

「「「うんとこしょ! どっこいしょ!! ようやく――」」」

力と、想いと、煮詰まった狂気が一点に集約され、ついに均衡が破れた。

「「「ブリーフ――!!!」」」

その瞬間。

「「「釣れましたァァァァァ!!!」」」

砂浜に巨大な影が落ちる。歓喜の叫びが沸き起こり、全員が勝利を、あるいは事態の収拾を確信した。

だが、刹那。

彼らが期待を込めて見上げた空にあったのは、海藻にまみれた高貴な将軍の姿ではなかった。

「お妙さァァァァァん!!!!」

両腕を広げ、放流されたばかりの魚のような躍動感で愛を叫ぶゴリラ。

「海底の中で、ずっとスタンバッてました」

ウェットスーツも着ず、潜水艦のような冷静さで狂気を語る、ヅラ。

――そう。

釣り上げられたのは、国家の安寧を担う英雄などではなく、ただのストーカーと指名手配犯だった。

――沈黙。

 波音すら、空気を読むかのように一瞬止んだ。

 夕焼けに染まる水平線の向こうで、何かが決定的に間違っていることを、全員が理解した時間だった。

 そして、次の瞬間。

「「「オメェじゃねェェェ!!」」」

 三人の声は完全に重なり、叫びは衝撃波となって砂浜を震わせた。

 万事屋三人――銀時、新八、神楽。

 長年培われた阿吽の呼吸が、言葉すら不要だと証明する。

 踏み込み。

 跳躍。

 重力の存在を無視したかのような、完璧な同時飛び蹴り。

 その一撃は、

 近藤の全身全霊の愛の叫びも、

 桂の「ずっと海底でスタンバってました」という無駄に律儀な努力も、

 すべてまとめて物理的に否定した。

 ドゴォンッ!!

 二つの影は、悲鳴を上げる暇すら与えられず、

 夕陽を突き破り、

 星空を貫通し、

 最終的には宇宙の彼方へと流れ星のように消えていった。

 ――まるで、最初から存在しなかったかのように。

「……さ、戻った。戻った。」

 何事もなかったかのように、パンパンと手を払う銀時。

 その背中には、やり切った男だけが持つ妙な清々しさが漂っていた。

「ウヘェ〜なんか……冷めちゃったね〜」

 先ほどまでの熱狂が嘘のように、肩の力を抜く。

「ん。……引き続き、釣りを続ける。」

 感情の起伏が少ないその一言が、逆に異常事態だったことを雄弁に物語る。

「よし。

 俺たちも続きだ、続き。」

 夕焼けの下、再び釣り竿が構えられる。

「……やっぱ……」

 息を整えながら、新八はぽつりと呟いた。

「重すぎるのも、考えものですね……」

 物理的にも、精神的にも。

 そして、主に人として。

 海は何事もなかったように波打ち、

 夕陽はすべてを赤く染めながら、

 この日最大の“外道”が宇宙へ消えたことを、静かに祝福していた。

 




銀時「お前ら、今日が何の日か分かるか?」
新八「え? 何の日ですか?」
神楽「何アルか? 新八、そんなことも知らずに二ヶ月も休み取ってたアルか?」
新八「いや!? 休んでたのは僕じゃなくて作者でしょ!? 僕は何も聞かされてないんだけど!」
銀時「今日はな……クリスマスイブだ。」
新八「……それがどうしたんですか?」
銀時「それが何を意味するか、この小説をここまで読み進めてるような暇人どもには、もう骨の髄まで染みついて分かってるはずだ。」
神楽「リア充が爆発して、非リアが心に風穴あく日アルな。」
銀時「そう。街はイルミネーション、カップルは手繋いで、俺たちは年末の請求書と手を繋ぐ日だ。」
新八「夢も希望もねぇ説明やめてくださいよ!」
銀時「つまり今日は――」
新八「今日は――?」
銀時「銀サンタがテメェらに、嬉しいかどうかは一切保証しねぇが、新しい情報をプレゼントしに来たって日だァ!!」
神楽「プレゼントが情報って時点で嫌な予感しかしないアル。」
新八「しかも“嬉しいかどうか分からない”って自分で言っちゃってますよ!」
銀時「うるせぇ!タダで配られるもんに文句言うな!文句あるなら来年からトナカイにでもなれ!」
新八「で、その情報ってのは何なんですか?」
銀時「その情報は――!」
新八「その情報とは――!」
ドン!ドン!ドン!ドドン!!
(※無駄に太鼓鳴らしてるけど予算はゼロ)
銀時「嫁魂のリメイク版、再スタート決定!!」
新八「えぇぇぇ!? あの話、完全に打ち切りじゃなかったんですか!?」
新八「途中から更新もなくて、“作者も嫁に逃げられた説”まで出てましたよ!?」
神楽「それどころか、読者にもほぼ忘れ去られてるアル。」
神楽「だって、ただでさえ少ないこの小説の読者数の、さらに十分の一も読んでないアルよ。」
新八「やめて神楽ちゃん!!数字で殴るの一番効くから!!」
銀時「まぁな。正直言って――」
銀時「俺たちの恋愛話なんて、この小説を読んでる連中からしたら“恋愛?クソ喰らえ”だろ。」
神楽「急に読者に牙向けたアル。」
銀時「何せだな、童◯歴=年齢みたいな団体の筆頭である銀さんを失う話だからな。」
新八「自分で言ってて恥ずかしくならないんですか、それ!?」
銀時「恥なんてとっくに質屋に預けてきたわ。」
神楽「利子ついて返ってこないネ。」
銀時「でもな、これ全部――作者の作戦なんだよ。」
新八「え? 作戦?」
銀時「そうだ。」
銀時「この作者、近い将来マジで更新できなくなる。」
新八「急に現実突きつけてきますね!?」
銀時「その間、誰が銀魂コンテンツで心を温めるんだって話だ。」
銀時「銀八先生しかり、劇場版銀魂しかり、ゲームしかり――」
神楽「どれも“終わった”か、“まだ始まってすらない”アルな。」
銀時「そう。つまり今は――公式銀魂虚無期間だ。」
新八「言い方ァァァ!!」
銀時「そんな虚無を乗り越えるためにだ。」
銀時「どうせ一から新作書いても文句言われるなら、“どうせ文句言われそうな嫁魂”をリメイクしたやつをストックしていたやつを出した方が効率いいだろって話になったわけだ。」
新八「合理的だけど、判断基準が悲しすぎる……。」
神楽「でもリメイクってことは、完全に新しくなってるアルか?」
銀時「あー、なってるなってる。」
銀時「話もだいぶ変わってるし、前作読んでなくても“あ、これ迷走してんな”って分かる仕様だ。」
新八「分かっちゃダメなやつですよね?」
銀時「何なら今回の話に出てきたみたいなイラストとか、挿絵も追加されてる。」
銀時「文字だけだと誤魔化しきれなくなったから、絵で黙らせにきてる。」
神楽「力技アル。」
銀時「要するにだ。」
銀時「これは再スタートじゃねぇ。“時間稼ぎ”だ。」
新八「そんなこと堂々と言わないでくださいよ!!」
新八「……結局、全部作者の都合じゃないですか。」
銀時「そうだ。」
銀時「この世の物語の九割は作者の都合でできてる。」
神楽「残り一割は?」
銀時「模試結果と成績表だ。」
新八「夢がなさすぎる!!」
銀時「でもな、それでも書くってのは――」
銀時「虚無の中でも、コンテンツを提供するってことだ。」
神楽「くだらないのに、やめられないアルな。」
銀時「そういうこった。」
銀時「期待すんな。でも見限るな。」
銀時「どうせまた戻ってくる。銀魂も、作者も、お前らもな。」
新八「すっごく雑な信頼関係……。」
神楽「まぁいいネ。今日くらいは。」
銀時「だな。」
銀時「じゃあ今日はここまでだ。」
新八「え、ここで終わりですか?」
銀時「当たり前だろ。これ以上今の作者に何が出来るってんだよ。」
銀時「まぁ、そんなわけでテメェらメリークリスマス。そしてーー」

万事屋「良いお年を〜!」
ーーーーーー
銀時「次回? ……知らねぇよ。
期待してたら裏切るし、忘れてたら急に始まる。」
新八「最悪の予告だよ!!」
神楽「でも、また会うネ。」
銀時「――じゃあな。」
https://syosetu.org/novel/397049/1.html

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
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