気長に続きはお待ちください・・・
私、愛生まばゆは今、人生でまずくることはないだろう場所にいます。それも半強制的に連れてこられて。
防衛省って・・・防衛省って・・・。私には縁の無い場所と思ってましたよ。というかなんとか省とかつくところまず来ないでしょ。ただの中学生が。まあ、ただの中学生じゃないんですけど、それでもまあ、どっちにしろくることはないでしょうに・・・。というか防衛省の内部に入ったことがある一般人どれだけいるって話なわけでして・・・。
まあ、なんでこんなことになってしまったのか、考えるに私、知ってはいけない事を知ってしまったみたいなんですよね。そのことでお偉いさんが私に話があるとのことで・・・。
うわー・・・どうしようかなー・・・。多分あれですよね。暗殺・・・?それとも黄色いエイリアン?どっちにしても口封じは確実ですよね。しかも魔法少女のことまでも知っていると・・・。ヤバい、めっちゃヤバい。
どうやって逃げようかなー・・・。光学迷彩で逃げようにも入り口には人が立っていて塞がれている。おまけに窓もないからこっそり逃げ出すのは不可能。あの入り口に立ってる人にチョッキンしてうまーいこと逃げてみる?私の記憶を消させてたら、私の事思い出せなくて逃げやすいかも・・・。ダメだ。まずチョッキンするには私のことを強く思い出してもらわないといけない・・・。それに私の事知ってる人がどれだけいるのやら・・・。未来予知で逃げれる未来を見るとか?うーん・・・無駄な気がする。いっそのことあの人をぶっ飛ばしちゃうとか?そんなことしたら指名手配じゃないですか・・・。
え、もしかしなくても詰んでる?私。うわー・・・どうしよう・・・。
そんなことを考えているとカチャリと扉が開く音が聞こえてきました。入ってきたのは眼鏡をかけたそこそこ年齢の言ってそうなおじさんです。
「君か。例のマホウショウジョというのは」
その人はいぶかし気な目で私を睨みつけ、ドカッと私の向かいのソファに座りました。・・・多分、この人が最高責任者?大臣は確か別の人だった気がするけど・・・。
「自己紹介をしよう。防衛省局長、尾長剛毅というものだ」
「あのっ、愛生まばゆです!」
緊張のあまり声が裏返って自己紹介をしましたが、その尾長さんはスルーして話を続けるとばかりに何かの紙をこちらに提示してきました。
これは・・・手配書?しかもここに映ってるのって、昨日みたエイリアンじゃないですか!?やっぱりあのエイリアン絡みじゃないですか。でも一体どういうことなんだろう・・・?
「単刀直入に言う。コヤツをころしてほしい」
「・・・・・・・・・・・・、はい?」
謎に言い渡された殺害命令。このエイリアンをなんで私が・・・。知ってはいけない事を知ってしまったから?本当に変なことに巻き込まれたなあ・・・。
「そこに書いてある通り、依頼を達成できれば賞金百億円渡そう」
「ひ、百億円んん!?」
その巨額に私は思わず目がひん剥いてしまいました。百億円って・・・それだけお金があればどれだけ贅沢できようか・・・。
「どうだ。やる気になったか?」
「いや、そんなことより・・・なんで殺さなくちゃいけないんですか?このエイリアン?を」
「そうか。まあ、暗殺依頼をする以上は話さなくてはならんか」
尾長さんは深くため息をついた。
「ソヤツは月を破壊した犯人でな。来年の3月には地球をも破壊すると宣言している。我々はそれを阻止すべく色々と動いいているわけだが・・・ここまではわかるな?」
「・・・一応は、はい」
正直、突拍子が無さ過ぎて全く理解できません!
っていうか、え、今凄い事いいませんでしたか?地球が3月には終わるかもしれない?え、急に終末宣言された?一大事じゃないですか!?なんでこの人はこんなに冷静なんですか!?混乱でいっぱいですけど、ここは「はい」と言わないと話が進みそうにないので黙って頷くほかありません。
「それでな、ソヤツは何を思ったのか地球を破壊するが、ある中学校の一クラスの教師ならやってもいいと言ってきてな」
「・・・・・・何で?」
「知るかそんなもん」
まあ、ですよねーという回答しか来ませんでした。
「普通ならそんな一般人を危険に晒す提案など受け入れる訳もないのだが・・・我々はあえて提案を受け入れる事にした。受け入れれば奴を中学校の教室に一定時間縛る事が出来るので殺すチャンスが与えられるという考えでな。・・・力が圧倒的すぎたわけではないからな」
「はい、そうですね」
「ついでにではあるが、奴が希望したクラスの生徒を即席の暗殺者に仕立て上げる事にした。どんなものよりも近くにいて長く接する生徒であれば一年掛ければ殺せるチャンスに巡れるだろうからな」
「・・・はぁ」
話す内容現実離れしすぎていて頭が追いつきません。というか中学生を暗殺者に仕立てるって・・・どんだけ余裕ないんですか日本政府。
「でだ。ここからは君が関わって来る話になるんだが」
そう話を振られて私は思わず唾をのみました。
「そのクラスちょっと事情が違ってな。なんでも生徒がマホウショウジョというやつなんだ。しかも複数人」
・・・。へ?
「最初は一人だけだったそうだが、4月から少しづつマホウショウジョになる者が増えていったらしく、少なくとも今は10人以上はいるそうだ」
「・・・なんでそんなに増えて言ったんですか」
「わからん。そのクラスの「監督」をやっている俺の部下の話によればなる要因は「不明」だそうだ」
その話を聞いて私の頭に疑問が浮かびました。魔法少女のことを知っているのになる要因が分からない・・・?
魔法少女になるにはキュゥべえと契約する必要がある。その契約は願いを叶えてもらうかわりに魔女と戦う使命を課されること。でもそれを知らない・・・?なんで?
「なにかしらの理由があってなる者がいるのだろうが、不明と報告されている以上こちらもそう受け取らざるを得ない。しかし奴を殺さなくてはならない我々からすれば新たな戦力を得られる良い機会と言えよう」
・・・その新たな戦力、皆さんへの脅威になるかもしれないんですよー。まあ、地球が亡くなることに比べれば大したことではないんでしょうけど。
私はそんなことを思い、ぐっと言葉を飲み込みました。これ言ったらその魔法少女の人たちがどんな目にあうのか・・・。
「しかし、その新たな戦力をもってしても奴を殺しあぐねて手こずっているわけだ。月を破壊しただけあってなかなかの強敵ではあるんだ。それで本題だ。
君に怪物が担任を務めるクラスに転入してもらいたい」
「・・・へ?ええええ!!!なんで私が!?」
「君らマホウショウジョは魔女とかう怪物退治をよくやっているそうじゃないか。ならば人間相手よりかは容易いだろ?まあ、なかなかに歴が長いものもいるそうだがそれでも手こずっているそうではあるがな。それにだ」
尾長さんは私をしっかりを見つめ。
「お前、例の
「そんな、急に言われても・・・私にも学校がありますし・・・」
「そこは問題ない。君は今学校にいってないだろう?先の見滝原の災害から避難する形で椚ヶ丘にやってきており、今現在通学の形跡もない。しかも君は中学3年生相当の年齢。こちらの都合に大変に丁度よいんだ」
随分とそちらの事情を話していますが、どうやら私は偶然中学3年生だったばっかりにこんな面倒ごとに巻き込まれているんだそうで。ていうかいつの間にそんなに調べられたの?早くないですか?というかこれ、断れないやつ?
「あの、もしお断りをしたら」
「記憶消去を処置を行わせてもらう」
「・・・どうやって?」
「詳しくは話せないが超技術の装置で行わせてもらう」
うわー、科学の進歩ってすげー・・・私のメイン魔法の存在価値ないじゃないですか。下手したら上位互換・・・じゃなくて!選択肢がない!!これ、やるしかないの!?
「・・・で、やってくれるかね?」
ど、どうしよう・・・。正直、やりたくない。なんで私が・・・。大金を貰ったところで使い道はない。だって、使い切る前に魔女になってしまうのなら意味はない。でも、目の前の人は私が頷くのを待っているみたいだ。どうしよう・・・、と私が答えに迷っているとコンコンコンとノック音が聞こえてきて、男の人の声が聞こえてきました。
「烏間、ただいま到着しました」
「おう、入りなさい」
「失礼します」
入ってきたのは黒髪の屈強そうな男性。年頃の子だったらキャーキャー言いそうなイケメンって感じの人。まあ、私の趣味ではないんですけど。
「防衛省の烏間というものだ。今はある学校に表向きは教師として、生徒達には教官として務めさせている」
その人は堅い口調で自己紹介をして軽く頭を下げました。
「話は上司から聞かされているだろうが、こちらからもお願いしたい。君に月破壊生物の暗殺任務を担ってほしい」
再びの現実離れをした依頼。やっぱり断れないかぁ・・・。こうなったら自分で記憶を消去するしかないのかなぁ・・・。
「・・・いきなりで困惑する気持ちもわかる。君は魔法少女とはいえ一般人だからな」
烏間さんは深く息を吐くと上司の尾長さんの方に姿勢を正して体を向けました。
「尾長局長。少し彼女と2人で話をさせてください。鶴田君、君も席を外してくれ。彼女も急に連れてこられて緊張しているでしょう。同じ年頃の子供と接している私であれば彼女も肩の力が抜けるはずです」
烏間さんの提案に尾長さんは何か言いたげな顔をしましたが、黙って席を外しました。部屋には烏間さんと私の2人きりです。気を使ってくれたんでしょうけど・・・私には大差ないんだけどなあ・・・。
「急に連れてきてしまいすまなかった。リラックスは出来ないだろうが、俺の前では多少姿勢を崩してもとやかくいう気はない」
「あ・・・、はい」
まあ、崩せるわけもないので黙っていると、烏間さんは話を始めました。
「まず、俺は”魔法少女”というものをあまり信用していない」
私はその言葉にハッとするものを感じました。この人は、何かを察している・・・?
「誤解してほしくないのは、何も君や生徒達をそう思っているわけでないということだ。魔法少女という・・・システムというべきだろうか、そのものに何かくさいものを感じるんだ」
この人は・・・全てを知っているわけではない。だけど、わかっているんだ。キュゥべえがただ、少女たちの願いを叶えているわけでないと。
でも、上司の話ではなり方すらわかってないって話でしたけど・・・。
「その様子だと君は何かを知っているのか?」
そう聞かれて私はとっさに「いえ・・・」と言葉を濁してしまいました。魔法少女が魔女になるだなんて・・・簡単に言っちゃっていいものなんだろうか。
「今、ここにマイクはない。だからこそ話すが俺はどのようにして魔法少女になるか知っている。
奇跡を謳い、対象者の願いを叶えさえることで魔法に力を付与させる。奴はその奇跡と魔法の代償として魔女という怪物を退治させる。それを俺は妙だと思っている」
「・・・何をですか?」
「話によれば魔女退治にしても必ずしも行わなければならない、というわけでないらしい。催促はされるそうではあるが、あくまで任意であって強制でない。これがどういう意味かわかるか?」
正に先生というように烏間さんは私に聞いてきました。これは・・・私に探りを入れている?えっと・・・どう答えよう。
「キュゥべえの利点が読めないってことですか?」
烏間さんは静かに頷いた。そりゃあ大人からすればキュゥべえの取引なんで怪しさしかない。まさにその通りなんですよねぇ。私はなぎさちゃんが魔女になるまで気が付けなかったのですけど。
「なぜキュゥべえが彼らに契約を持ち掛けるのか、なぜ条理を曲げてまで願いを叶えさせるのか、奴の目的はなんなのか。生徒に聞いてみても誰も首を傾げるばかりだった。奴は俺達大人には見えてないからどうしても奴への対策は後手にまわってしまう。君はどうやら何かを知っているようだが・・・率直に聞きたい。君はキュゥべえをどう思っている」
これはどう答えるべきなのだろうか。正直、まだこの人に真実を述べる勇気はない。だけど、キュゥべえがろくでもない奴だとは間接的にでも伝えられるはずだ。
「・・・嫌い、です」
「そうか。それでいい」
烏間さんはそれ以上何も聞いては来なかった。ちょっと拍子抜けてしまった私は少し聞いてみたいことを投げかける事にした。
「あの・・・」
「どうした?」
「その・・・生徒たちの中で契約した子ってどれだけいるんですか?」
あー、と烏間さんは眉間に皺を寄せて答えた。
「素質持ち?という意味では全員だな。契約したのはそのうち14人ほどだ」
お、多すぎぃ!!!
「なんでそんなに多くなったんですか!?」
「まあ、色々あってだな・・・」
「止めなかったんですか?危険な物ってわかっているんでしょう?何が何でも止めて下さいよ!国家権力を使ってでも!」
「国家が絡んでるからこそ止められないんだ」
「それは・・・どういうことなんですか?」
「奴との契約はどんな願いも一つ叶えられるという。これが腹に一物持った大人が知ったらどうなるか想像できるか?」
「え、えっと・・・」
私は考えた。もし、どんな願いも叶えられる少女の存在が悪い大人の人に知られたら・・・。
・・・・・・。
いくら考えても最悪の結末しか思いつかない。それこそ魔女になってしまった方が楽なくらいには。
「とてもじゃないですけど・・・ろくなことにはならないかと」
「魔法少女の大人にとっての価値は願いが叶えられることと副産物としての魔法の力。魔女は大人には対処できない、つまりは契約によるデメリットは直接契約した子供のみに課され、関わった大人はおいしいとこどりしてしまえるわけだ」
背筋が凍る感じがした。大人の汚さはキュゥべえ並み・・・いや、それ以上かもしれない。
「我々も正直、魔法少女の力を利用させてもらっている面もある。今は手段を選んでいる場合でないのでな。
しかし、今の地球規模での危機が解消され、彼らに暗殺任務が解かれた時、魔法少女の契約の話が知られた場合どうなるか?魔法少女と
今は我々の保護と奴の監視があるからどうにかなっているが、それらが解消された時、そして未契約だった場合、有無を言わさず契約させられるかもしれないんだ。自分が望んでない願いをな」
「そうなれば残されたのは魔女のと闘いの使命のみ。望んでもない兵など悲惨なものだ。せめて、自分で望んでなったとなればどんな願いであろうとも多少はマシになるはずだ。
だからこそ契約するしないは生徒たちに委ねている。一番いいのは契約の資格が亡くなればいいのだがな」
私は何も言えなかった。政府からのバケモノ退治と魔法少女が交わったばかりに事態は複雑に絡んでしまい、ただ、契約をしないというだけでは解決しなくなっている。自分で叶えて魔女になるか、国のお偉いさんにおいしいとこどりされて殺されるか・・・彼らの運命はあんまりだと言いたくなるぐらいには悲惨すぎる。何が最適解なのか私には考えもつかない。
「この状況を解決するのであればそれこそキュゥべえとの契約が一番だろう。しかしそれは数人を犠牲することも意味する。君はそれが正しいと思うか?」
私は静かに首を振ろうとして思い留まった。平穏な暮らしとは誰かの犠牲によって成り立っている。分かっていたようでなにもわかってなかった。それこそ私が生き延びるための魔女退治だって魔法少女かもしくは巻き込まれた一般人の養分から成り立っているものだ。そう考えてしまうと犠牲することを少なくとも私は否定できない。
「そこでだ。俺から君にお願いしたいことがある」
「はい、なんでしょうか・・・?」
「彼らを助けてやってくれ」
「どうしても俺たち大人だと限界がある。クラスの中で一番歴の長い子も技術面でカバーしてもらっているが、彼女一人でも手は足りていない。なので君にフォローをお願いしたい。
それと、君はどうやらキュゥべえが何を企んでいるのか知っているんだな?だから契約を止めてくれといっているのだろ?」
私はコクコクと小さく頷いた。
「そんな君だから生徒になにかあった時、サポートをお願いしたい。俺達大人より届く言葉がきっとある。いきなりで困惑するかもしれない。が、この通りだ。引き受けてくれないか」
烏間さんは深々と頭を下げていた。私は・・・答えに迷っていた。急に地球を破壊する怪物を殺してくれって頼まれたかと思ったら他の魔法少女の救いになってくれって・・・。そんなの知らないっていえればどんなによかったか。転校前の学校でロクにクラスメイトと交流することもなかった私が、そんなの出来る訳がない。
だけど、どうしても頭になぎさちゃんの顔がちらついて離れない。何もかもを諦めて虚無の中、ソウルジェムを孵化させたあの顔が・・・。
「・・・なら、見せてくれますか?貴女のクラスの子たちの写真を」
烏間さんはそれならばとタブレットで写真を見せてくれました。30人近い仲が良さそうな男女の写真。そこには見知った顔が何人か写ってました。そこには、あの子がいました。
昨日、様子がおかしかった、背の高い女の子。あの時のソウルジェムはあまり汚れてなかったけれど魔女になっていた可能性は十分にある。私が駆けつけていなかったらどうなっていたのだろうか・・・。
もし、彼女らが魔女になってしまったら、もし、誰かに酷い事をされてしまったのなら・・・。
なぎさちゃんの全てを諦め絶望した顔が頭から離れない。
・・・こんなの、断れるわけがない。
「分かりました・・・引き受けます」
「・・・そうか。ありがとう」
烏間さんはホッとはしたけれどあまり嬉しそうな顔はしなかった。
「このまま暗殺に進展がなければ9月には転入してもらう。もちろん学費はこちら持ちだ」
「それはいいですけど、咲笑さん、じゃなくて私の保護者どう説得するんですか?いろいろと知られるとヤバいことが絡んでいるんですよね?」
「そこは俺の部下が交渉している。もちろん暗殺のことは伏てだが。ただ、君からも意志は伝えといてほしい」
「・・・まあ、やってみます」
私はこういう星の元に産まれたのかもしれない。私には彼女たちを見捨てる事が出来なかった。ちいさな女の子を救えなかった私に救える命があるのだろうか?私はただ不安で頭がいっぱいになっていた。