本編とは何ら関係のない、作者の自己満足の作品です。
ただ、うちの不真面目神父と『異世界かるてっと』だったり『このファン』だったりで、カズマ達と関わった他作品のキャラクター達の絡みを描きたかっただけのものです。

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おしえて! 神父先生

 

■  ■

「んっ……え?」

 

 目を覚ますと、少年は見知らぬ町に居た。

 少年としては、こういうシュチュエーションには凄まじく覚えがある。それはもう脳裏どころか魂に刻まれているレベルで覚えがある。

 というか、まず序盤で何度も何度もこのシュチュエーションを()()()()()のだ。死ぬくらい、何度も。

 だが、一つ。それまで経験してきたシュチュエーションと違う点を上げるとするならば―――其処は、少年が知る町の景色ではなかったという事だ。

 

「な、は? なっ、ど、何処だよ、此処!?」

 

 少年は辺りを見渡す。

 見知らぬ建物。見知らぬ人々。見知らぬ道。

 見るもの全てが、自分の知るものとは全く異なっている。正確には、彼が知るものと比べれば年代的にも技術的にも大した差はないのだが。

 単に、彼が知っている町並みとは違うというだけである。

 少年にとって、これは初めてのシュチュエーションだった。

 少年はこれまで何度も()()()()()()()()()()というシュチュエーションを経験してきたが、これは違う。

 見知らぬ場所に戻されるなど、これまで一度も無かった事だ。イレギュラーな事態だ。

 

「おいおい、巫山戯んなよ…! 何ですか、俺は自分が気付かぬ内に殺されでもしたってのか!? こっちはただでさえ辛い事が重なってるってのに、さらに不幸が積み重なるのかよッ!?」

 

 憤懣(ふんまん)遣る方無いとは、まさしくこういう事を言うのだろう。

 ここまでイレギュラーな()()()は初めてだ。というか、もはやこれは戻るというよりは転移である。

 少年は張り裂けんばかりの怒りを抱きながらも、どうすると頭を悩ませた。

 そんな時―――

 

「あれ? お前、もしかして()()()か?」

「は?」

 

 実に聞き覚えがある声で、後ろから名を呼ばれた。

 少し固まって、すぐに振り返る。

 其処に居たのは―――このアクセルの街の冒険者、サトウカズマであった。

 少年の―――ナツキ・スバルの視点で言うならば、複数の世界の登場人物達が一堂に会するという世界において出会った、話の会う友人「佐藤和真」である。

 

「か―――カズマ!?」

「はい、カズマです。久しぶりだな」

「お、おう。久しぶり…じゃなくて! なんでお前が此処に……もしかしてお前も転移してきたのか!?」

「はい? 転移って何を言って……あ、なるほど。そういう事か。スバルさん、逆だよ逆」

「ぎゃ、逆?」

「アンタが俺が居る世界に来ちゃったって事だよ。此処、あの時話した俺が暮らしてる世界の町」

「は――――――はぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」

 

 こうして、『死に戻り(呪い)』を持たされて異世界に駆け出された少年ナツキ・スバルと、駄女神(仲間)を選んで異世界に転生した少年サトウカズマは、意外な再会を果たしたのであった。

 

 

 

 

 二人が意外な再会をしてから、一時間程が経過した頃。

 カズマはスバルを連れて、とある教会へと向かっていた。

 

「なぁ、今って何処に向かってんの?」

「アクセルで一番優秀な神父さんの教会。多分あの人なら何か知ってるだろ」

 

 そう。

 アクシズ教アクセル支部の神父を務める、酒と煙草は当たり前で相談内容によっては金も取る、あの不真面目神父が居る教会である。

 このアクセルにおいては、困った事があれば取り敢えず神父の教会に行くのが常識なのだ。

 ちなみに、うちは何でも屋じゃねぇんだぞとは神父本人の談である。

 

「え……それ確か、カズマが言ってた銃とか撃つ人じゃ無かったっけ?」

「そうだよ。神父だけど喫煙も飲酒も当たり前で、相談の内容によって金も取る不真面目神父」

「ねぇ本当に行って大丈夫かそれ!? もうそれ聞くだけで俺めっちゃ不安なんですけどぉ!?」

 

 つい足を止めて不安になるスバル。

 だが、カズマとしてもその気持ちは大いに理解出来る。カズマとて、最初から神父

 

「分かる、俺もアクアに連れられた時そうだった。でもマジで助言は優秀だし、くっそ有能だから頼るに越した事はないぞ。俺もって言うか、アクセルに居る人達皆揃って神父さんのお世話になってるし」

「すげー……それだけ聞くとラインハルトみてぇだわ」

 

 ルグニカ王国最強の騎士。騎士の中の騎士とも称される世界最強の男―――『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレア。

 スバルが知る中で最も強く、最も頼りになる男だ。

 

「いや、流石にその人まではないぞ。神父さんのお爺さんは多分そうだけど」

「お爺さんが多分そうって何? え、何なの? お宅の神父様のお爺様は死んでも復活出来る人なの?」

「復活するかは分からんけど、銃一丁で神様を半殺しにしたり魔法とか使わず生身で亜音速叩き出したりする人だぞ」

「わぁすっげぇ。めっちゃラインハルトみたい」

 

 片や震える程の才能に恵まれ、望むだけで「加護」と呼ばれるスバルの世界において非常に希少なものを幾らでも得る事が出来る男。

 片やラインハルトが持つ『龍剣レイド』の様な特殊な武器ではなく普通の銃一丁で邪神を半殺しにし、伝承や神話の性能を100%で使用出来る魔法を扱う事でその気になれば神話の主神すらも瞬殺が可能な未だ全貌が明かされていない男。

 どちらも、世界という枠組みにおいて桁外れた存在であるのは事実である。

 

「でもオタクでめっちゃラノベとかアニメとか話せる」

「何そのギャップ!? 格好良さと親近感の落差激し過ぎんだろそのお爺さん!」

「一回しか会った事ないんだけどさ、正直めっちゃ楽しかった」

「良いなぁ……俺もそのお爺さんと話してみたいわ」

「もう隠居してるらしいから、難しいかもなぁ。……と、そうこうしてる内に着いたな」

 

 大きい訳でもなければ小さい訳でもない、至って普通の教会。

 その扉を開き、カズマとスバルは教会へと足を踏み入れた。

 

「どうもー、神父さん。お邪魔します」

「カズマ、今度はどんな厄ネタを持ってきた?」

「いきなり厄ネタ宣言!? 俺の事なんだと思ってんの!?」

「トラブルメーカーだろ。お前が来てから俺の平和な飲酒喫煙平穏ライフは崩れたんだよ」

「それ平穏って言うんスか……?」

「あ? 誰だ、お前―――」

 

 煙草を灰皿の底で押し潰し、コップに入れた酒を呷りながら、アクセルの不真面目神父はスバルへと目を移し―――その目を大きく見開き、即座に動き出した。

 

「へ?」

「ちょ、神父さぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――」

 

 カズマの服の襟を掴み、一瞬で教会の外へと投げ捨て扉を閉める。

 スバルから大きく距離を取り、愛銃のガバメントを構えて銃口を向ける。

 神父にしては珍しく―――初対面の相手に対して、真剣な表情を浮かべた。

 

「――――――」

「すまんな。こんな事しといてあれだが……安心しろ、お前を殺すつもりは毛頭ない。ただ一応の警戒はしておくってだけだ。お前のソレ(呪い)は―――流石の俺でも手に余る」

 

 死に戻り。

 スバルが暮らす世界において、最も恐れられた伝説の存在―――嫉妬の魔女サテラが与えたものだとされている、スバルが持つ唯一にして最大の能力。

 文字通り、死ねばある一定の時間を遡って其処に戻る事が出来る力。

 運命を変える事が出来る―――所謂ターニングポイントと呼ばれる場所をセーブポイントとし、其処まで巻き戻る能力だ。

 死というトリガーを以て発動するそれを用いて―――ナツキ・スバルという人間は、幾度も運命を変えてきた。

 

 神父は観察眼は鋭く、それはもはやある種の異能の類だ。

 人の姿をしている神ですら、見抜く事が出来る。クリス―――もとい、女神エリスが良い例である。

 それ故に、神父は視た。スバルの心臓―――魂に刻まれた、その呪いを。

 

「……発動しない、か」

 

 銃口を向けて数分が経過した後、神父は静かにガバメントを降ろし、再び椅子へと座った。

 呪いは神父を殺さなかったらしい。異世界という事もあって、影響が未だ完全ではないのかもしれない。

 神父は視線で促す様に、スバルへと目を配らせる。向かい側の椅子に座れ、と。

 戸惑いながらも、それに従う様にスバルは席に着いた。

 

「悪いな、脅かす様な真似をしちまった」

「あ、いえ……いや、結構マジで驚きましたけど。何ならビビりましたけど」

「まさかお前が来る(クロスオーバー)とは……思いもしなかったからな」

「あー……えっと、もしかして、俺のコレ(死に戻り)知ってたりします?」

「……あぁ。言葉だけだが、ジジイに聞かされた」

「…そっすか。何で知ってんのかは、まぁさておいて。カズマにも聞かされたけど、凄いんすね。神父さんのお爺さん」

「まぁな」

 

 そうして、少しの沈黙が流れて。

 煙草に火を付けながら、神父は口を開く。

 

「はっきり言えば、俺がお前に出来る事は話しを聞いてやるぐらいだ。その道への助言は出来ない。……してはいけない」

 

 それは、神父が関わるべき事ではない。

 はっきり言ってしまえば、スバルは別の世界の人間だ。別の世界の主人公だ。

 そんな彼の行動に、口を出す事は禁忌そのものだ。そもそも彼の苦しみを、神父が理解する事など出来ない。

 彼の苦しみは―――彼と同じ様に、数え切れない程の死を積み重ね、あらゆる結果を辿ってきた者にしか分からないのだから。

 しかし、それでも―――せめて、話を聞くぐらいの事は出来る。

 

「そっすか……。でも、話を聞いたりはしてくれるんすね」

「あぁ。お前のソレは、常人には理解出来るものじゃないが、知ってはいる。時間は限られてるんだろうが……それまでは、存分に聞いてやる。一人じゃないってのは、安心出来るもんだ。後はまぁ…これでも神父だ、それ以外の悩みも言っていけ。例えば惚れた女へのサプライズとかな」

「うわ、それめっちゃ助かるかも」

 

 嬉しそうに、スバルは笑う。

 たった一時ではあるが……それでも。

 自分がやってきた事、積み重ねたそれを聞いてくれる人が居るというのは―――せめてもの休憩にはなるだろう。


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