リリカルブレイク   作:玄狐

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 初めての方は、お初目にかかります玄孤です。
 なろうでおなじみの方はお久しぶりでございます黒孤&突撃兵長でございます。
 にじファンの方で投稿させていただいていた作品をこちらの方で再度投稿させていただきます。


 ※警告※
 ガチでアンチです。
 僅かでも嫌悪感を抱かれる方はご遠慮ください。
 特に八神はやて・ヴォルケンリッター・グレアム提督・リンディ並びにハラオウン一派にお気に入りがいる場合は早急に回れ右をお願いします。


 それでも見ていただけるのでしたら、楽しんでいただけることを祈ります。


嘆きの傍観者 ~慢心の対価~

 君は、好きだった作品が嫌いになった事はあるだろうか?

 私は、嫌いになった。

 そう、狂気に走るほど、その世界を憎悪し、原因を呪った。

 神は、こうなる事を望んで私にこの役割を与えたのだとするなら、私はそののど頸を切り裂いてやろう。

 何せ、その世界に送られ、再び、あの地獄を体験させてくれたのだから…。

 

 まぁ、みんな察しの通り僕は、転生者だ。

 少々、人と違う人生を送ってこそいたがゲームが大好きな一般人に何が起きたと言われれば、原因は簡単。

 事故に遭い、僕は家族を失った。

 そのまま死んでしまえば、テンプレートなんだけど、やっかいな事に僕が存在している、と言うより、ここにいる限り僕にとってのリアルはここにある。

 リアルがあると言う事は、話が終わるわけもなく、続く。

 僕にとってのリアルは死んだ親、妹の葬儀、集ってくる親戚、そして裁判―――

 プレスにかけられたように潰れてしまった親と痛みを訴えながら冷たくなる妹、豊かではないにせよ保険金などの臨時収入を目当てに集まる親戚、無論全てではないが。

 そして、裁判。

 事故の原因をあろう事か此方の責と罵り始めた。

 無論、裁判は勝ったし問題はなかった筈だったが、最後の最後でミスを踏んだ。

 金がどうしてもほしかった親戚が事故を起こした馬鹿を唆し、見事僕の殺害に成功したというわけだ。

 実際、ドラマじゃある意味、使い古された展開だったがまさか自分に降りかかるとは誰が予想できただろう?

 どうやって、親戚があの馬鹿を調べて唆したのかは知らないがな―――

 

 そうして、俺は死んだ。

 ついでに、目が覚めたら識らない天井を眺めていた。

 いや、別に赤ん坊になっていたわけではない。

 が、体は小さいし違和感がこれ以上にないほど訴えかけている。

 だから、かもしれない。

 吐いた。

 おもっきり、ついでに言えば熱にうなされ、折角、得た二度目の生を無駄にしかけた。

 まぁ、事の後であり、落ち着いたからこそこんな感じで話せるが、当時はそんな余裕はない。

 と、言っても4歳になる頃にはほとんど手のかからない子供になっていたが…どちらにせよ、妹が生まれた時点で俺に掛かり切りなんて事になる余裕はなくなったわけだがな。

 結論的に言ってしまえば、おそらくこれはリリカルなのはの世界であり、俺はその数多い世界の一つに生まれた。

 ありがたい事にリンカーコアなどと言う死亡フラグになりかねない危険な物を装備して…。

 マニアックな友人ならまだしも、ライトユーザーだった俺はこの世界が正しく史実通り進んでいるかも分からず、頭を悩ませざるを得ない。

 何れにせよ、力がある以上は伸ばす必要がある。

 主に生き残りをかけるという意味で。

 幸いな事に親たちはフリーの魔導師、しかも共にAクラス、俺はこの年で既にBクラス、妹に至っては生後間も無いにも関わらず親と同じAと言う規格外、まさにご都合主義万歳。

 残念な事を言うならレアスキルがない事だが、無い物ねだりしたところで変わるわけでもないし危険フラグになりかねない代物など此方からごめんである。

 魔法の勉強は苦にならなかったし、魔力も感覚的に扱える事が理解できると分かると同時にするすると体になじんだ。

 楽しかったのは、おそらくここまで。

 事の起こりは、其処から更に数年たった時に起きた。

 日課となっていた父親による指導が行われ成長を喜ばれたその時、感覚が異常を知らせたのだ。

 ちょっと考えれば分かるだろう。

 どうやら、一番面倒な時代に俺は生まれていたらしい。

 いっそ、新暦になりたてか『彼女ら』がおとなしく隠居する時代に生まれたかった。

 何故かって?

 そりゃ、言わないでも分かるでしょうによ。

 分かりやすく言うとこういう事だ。

 

 

 

「エーリヒ、母さん達を守れ」

 素早くバリアジャケットをまとった父親が俺に言うなり目の前の敵に向かっていく。

「ダメだ!父さん、ダメだ、僕らのかなう相手じゃない!」

 後を追うか母親の元へ行くか、選択を迫られる。

 奴らに余裕はない。

 姿を見せたのは『烈火の将』のみ、単独で動いているのか全員で動いているのか?

 前者であるならなんとかなる。

 父さんには悪いが、死にはしないはず。

 問題は後者だ。

 他のヴォルケンリッターが母親を襲撃していた場合、後衛に属する母親が対抗できるわけもなく奪われるだろう。

 悪いがそれは問題にならない。

 最大の問題は妹のリンカーコアが奪われる事にある。

 だから、俺は、ただ、急いだ。

 そして、そこに、あったのは、倒れている、妹と、その妹を、守り、必死に懇願する母親―――

 その懇願を無視し、リンカーコアを黙々と蒐集する見たこともない騎士甲冑を身にまとった―――

 赤い髪の悪魔―――

「ヴィィィィタァァァァァァァ!!!貴様ぁぁぁぁあぁっ!」

 限界を超えて加速を行う為に溜めを作ろうとした、俺もまた、動けなくなっていた。

「がっ!?ちく…しょう、ちくしょぉぉぉぉぉ!!!」

 エーリヒの胸から生えた手は無慈悲にリンカーコアを捉え、光が奪われると同時に力が抜け、そのまま地面に衝突すると共に俺の意識はブラックアウトした。

 

 

 

 このような悲しみを二度と生まないためにも。管理局に協力してほしい―――

 俺を保護した管理局員が、クライド・ハラオウンが身を犠牲にし時空航行艦エスティア号と共にヴォルケンリターを退けたことを知らせると、骨折した腕を固定したまま何も言わずに横たわる家族を見ていた俺に言った言葉だった。

 治療室で目が覚めると一人、エーリヒは霊安室を訪れ、家族の顔を見ていた時、俺の横に立ってそう、切り出したのはある種当然なのかも知れない。

 局員はそれだけ言うと霊安室からそそくさと出て行き、残されたのは俺とその家族3人のみ。

 化粧を施され眠ったようにベッドに寝かされる3人の遺体は、まだ、そのうち起きあがるのではないかと思わせるほど綺麗に修復されていた。

 エーリヒが僅かな水音に気がつき音源を見ると自分の手から血がしたり落ちている事を初めて知る。

 どうやら、気がつかないうちに強く手を握りしめすぎたらしい。

 先ほど、両親のデバイスから音声と魔法の使用ログなどの情報が引き上げられ、エーリヒもまた、その一部状況を見届けるために現場に立ち会ったのだが。

 知るべきではなかったかもしれない―――

 聴いたとき、彼は彼の理性が最後まで続いていた事に驚いた。

 デバイスに残された情報には、父には声らしい声が残されておらず、一刀両断され地に伏せる音が響き―――

 母の妹を見逃して貰うよう頼む悲痛な声が聞こえ―――

 妹の劈くような絶叫が壁を震わした―――

 父親はシグナムを止めるため一騎打ちをするものの切り伏せられ絶命前に蒐集され、終われば用済みとばかりに討ち捨てられた。

 母親の強固な障壁と妹の魔力にものを言わせた抵抗はヴォルケンリッターには受けが宜しくなかったらしく、管理局や余計な増援がくる前に終わらせる。と言う判断の下、父を襲っていたシグナムと俺のリンカーコアの蒐集を行っていたシャマル以外の二人は力ずくで母親の障壁を破壊し、抵抗を出来ない状態にした上でこれを行った。

「…俺、また、ひとりぼっちだよ」

 ぽたり、と涙が妹の顔にかかった。

 前世の分も合わせれば、年は既に30を過ぎつつある。

 前世でなれた孤独も、もう、達観したと思っていた精神も、『つもり』だったようだった。

「なんで、気が付かなかったんだ…」

 物言わぬ家族にゆっくりと語りかける。

 そう、シグナムを見たときに気が付くべきだった。

 あれは『はやての』騎士ではなく、別の騎士の可能性を考えられる。

 にも関わらず、俺は考えなかった。

 原作なら、彼女たちならそんなことはしないだろうとどこかで安心していたのかもしれない。

「……ごめん」

 妹の頬をそっと撫でると俺の血がべたりと付いた。

 慢心のツケがこれだ。

 もっとも、どんなに警戒したところで覆すことは出来なかっただろう。

 それでも謝らずにはいられない。

 ただ、押さえ切れない思いがここにある。

「こんなこと起こしてあいつらは笑っていたのか?」

 あゝ、この身は焦がされている。

「奪うだけ奪って、罪を贖う?ふ、フフフフフフ…くはははははは」

 ふざけるなよ―――

 それだけ呟くと静かに霊安室を後にした。


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