「初めまして、シェーン・キャクストンさん。デュランダルの設計者とお会いできて光栄です。私は」
挨拶と自己紹介を行おうとして差し止められ、代わりにモニターにいる男性が口を開いた。
「いや、結構、父であるヴェルヘルムとは知らない仲ではなかった。君の方から連絡をもらえるとはありがたい限りだ。エーリヒ・ハルトマン君」
モニターを見た時、俺は驚きを隠しきれなかった。
はっきりと覚えている訳ではない、ただ、おそらくで覚えていた彼と一致していた。
何より、特化されたとは言え、変換資質が無いものでもあそこまで効率よく変換できるデバイスなんて聞いたことがない。
此処にいて、そんな最新鋭のデバイスの情報一つ、いや、開発の噂さえ流れてこないのはおかしいのだ。
下士官には伝わらない?
そんな馬鹿な話しがある訳がない、開発者も人だ、そして開発者は一人で出来るものではない。
なら、そこから少なかれ情報が漏れるはずなのだが…それがない、つまり、情報を密閉することが可能で、資材の消失が起きても問題視されない場所に彼は依頼した事になる。
それが出来る連中の心当たりがあったが本当に当たるとも思っていなかった。
それに、本当に彼と父との間に繋がりがあったのだろうか?
「エーリヒ君?」
不信感をもたれる訳にはいかない、彼が本物であれ偽物であれ、ディランダルを作れるだけの技量があるのだ協力を請う以外に道はない。
「キャクストンさん、お願いがあります」
「何かね?」
「私にデバイスを作っていただきたい…代金は父と母の保険金、足りなければ私が働いて都合を付けます。だからどうか、お願いします」
頭を下げ、懇願する。
割りの悪い話しだ。
下手をすれば向こうも見張られかねない、痛くもない腹を探られる、いや、彼の場合は痛すぎる腹を見せる隙になる。
資金とて俺と管理局提督の立場では用意できるものが違う。
彼と手打つ手無く、拱いた訳ではなく、必死に金を貯め、コネというコネを用意してきたのだろうからその差は歴然といえる。
「理由を聞いても言いかい?」
静かに彼は問いかけてきた。
「ちからが、力が欲しい…今回の事件に私は間に合わなかった、けど、何れまた力が必要になる日が来るはずだ」
手にしているのは武装隊員用のデバイスを手にながら口を開く。
武器の性能が戦局を左右する訳ではない、数や能力、指揮なども合わさるが重要なファクターであることに違いはない。
「だから、力を貯めたい、牙があるなら研ぎ澄ませたい。私のような若造が貴方に頼む無礼は承知の上です。断ってくれて構いません」
別人でもあることを考えて、当たり障りのない言葉を、ただ、嘘ではない本心を告げる。
「ククク…たとえ、一人でもやるつもりかね?」
面白い、と言わんばかりに静かな笑い声が私の言葉を遮った。
頷いた少年を見て思わず笑い声が漏れていた。
退屈極まりない日々、『作られてから』と言うもの私には暇がない。
いや、これが存在意義とされている以上、私に拒否権はないのは解っている。
しかし、だ。
私とて、これを良しとしている訳じゃない
何とかする為に手を作っていた。
が、堅実とは言い難い、ギャンブル要素もある。
こちらが組める手には限りがあり、拡張する為の策を考えていたものの手詰まりの感は否めていない。
其処にこの申し出が飛んできた。
これを僥倖と言わずしてなんとする。
レジアスとは別のパイプを作れるメリットは大きい、更に言えば代価として協力を申し込むことも出来るだろう。
「もちろんだ、ただし、頼みたいことがあるが良いかな?」
「当然です、事には相応の対価を払います」
事なげもなく彼はそう答えた。
数多くの研究をしてきてなお、私の探求心は衰えることはないそんな最中、突然変異を起こした格好の研究素材が訪れた。
闇の書が名前を変えて存在しているのは当に知っている。が、この少年も知っているのではないだろうか?
そう、思わせるほど彼は力への執念が強く、目に同類を思わせる暗い光が宿されている。
「頼み事はおいおいとしてどのようなデバイスをご所望なんだい?」
完全オーダーとなるだろう、彼の体は実に興味深い。
彼に合わせる為にも入念に彼を調べ直す必要がある。
いくら萎縮したからと二つめのリンカーコアが生まれる彼の症例は異常なのだ。
「鎧、フルスキン型を」
「バリアジャケットや騎士甲冑があるじゃないか?」
彼の要望はおかしなものと区別せて当然のおだった。
思わず聞き返した私は当然だろう、私が作るからには相応の作品でなくてはならない。
「いえ、全身を覆う鎧が欲しい…言い方はおかしいかもしれませんが質量兵器を組み合わせたような形が良いんです」
「何故、と聞いても良いかな?」
彼はすぐに説明を始めた。
「まず、私には空戦能力がない、これは安定した出力放出が出来ない、次に安定して出せるのは短時間と言うより一瞬。なら求めるものは魔力供給さえ行えればすぐに撃ち出せるようにしたものが好ましくなる」
なるほど、彼は彼なりに考えている。と言うことか、まぁ、確かに彼のアイディアも面白そうだ。
「質量兵器になりますがサブマシンガン、バズーカ、ミサイル、ああいった類の方が想像はしやすい、そもそも、射出後は誘導が全く効かない、出来て事前に動きを組み込む程度だ。なら、いっそ武器を完全に一体化した方が良いと思い自分なり設計してみたのですが」
「見せて貰っても良いかな?なるべく希望に添うようにデバイスは作りたい」
言っては何だが娘達のデバイスを作っているし、普通の技術者よりは優れている自信はあるのだが彼の要求するデバイスの完成形というのが今一想像しづらい。
「稚作ですが」
開発と言うには酷いものではあるがアイディアはありがたい。
どんなものであれ、インスピレーションが刺激されればそれだけでも十分だ。が、モニターに映し出されたものを見て思わず吹き出してしまった。
「ククク、フハハハハハ!良いねぇ、実に良い!久しぶりに意欲が沸いてきた」
強襲、重火力、支援、狙撃用と銘打たれた武装や各種用途に対応できるよう考えられた設計図に昂揚を覚え、食い入るようにモニターをのぞき込んでいた。
どれほど考察を重ねたかは知らないが、企画としては十分通用するほど煮詰められた設計案は今までにない斬新なモノだ、何よりコンセプトが非常に面白い。
「このクーガーやランドバルクと言うのは何の意味なのかね?系列ごとに段階を踏んで強化した機体を作り出したのは解る。しかし、全く別系統がなぜこんなにも思い浮かんだのか…確かに、これは平凡な仕事ではないね」
魔法を質量兵器と見立てて作られたものとして理解できる。
マシンガンをバードポイントやジョインツパーツを用いて武装を固定しており、カードリッジシステムにも対応するように工夫や拡張性を持たせてある。
未だ開発途中とされているAMFを前提とした一撃や必殺を絶対とするコンセプトに強引に盛り込んだ戦闘機能は同居させるにあまりに難しいお題とも言える。
だが、故に燃え上がる。
これほど面白そうな題材、受けなくては私の名が廃る、いや、持ってこなければ私が怒っただろう。
「聖王の話からです。我が家の事はすでにご存じかと…頼んでおいてなんですが、つくれますか?」
「ああ、もちろんだ。いきなり全てを作る訳にもいかないし、足が付きかねない。これ自体には私も興味があるいくらか出資させて貰おう。作りが徐々に複雑化しているのは解るし最後の武装や機器、パーツに至ってはまだ開発途上のものが多い、出来次第君にデバイスを送る形にするがとりあえずは一度、私の家に招待しよう」
彼の問に笑いながら答えると招待する『家』を何処にするか、考えながら私は行う開発に胸を躍らせていた。
そうか、彼はあの『ハルトマン家』の最後の生き残りだったか、なら、この力もわからなくもない、ああ、今日は良き日だ。
なにせ、聖王が途絶えるその日まで仕え、僅かなれど王の血さえ後世に伝え続けた聖王の騎士、その系譜が知識の一端を話すというのだからこれで胸が躍らなければ研究者ではないだろう。
これが、彼と組んだ切欠で、よもや、こうも深い繋がりになるとはおもわなんだ。
が、悪くはない、私はこのとき久しぶりにそう思ったのは今も覚えている。