ある日、全て無くしてから転生者であると自覚した。

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ある転生系クラフト魔法少女の末路

 日本国 北方領土 某所

 

 「お久しぶりね。」

 

 誰もいない北国の涼しい夜闇の中、涼やかな声が響いた。

 ウィッチナンバー1 ラーズグリーズ

 自他共に認める最強のウィッチがパートナーも連れず、最早無主の地となった北方領土に立っていた。

 

 「ついにと言うべきかしら。ナンバー13のファミリア達が日本近海の掃討を開始したわ。」

 

 一切光射す事のない暗闇の中、黒装束の魔女は一方的に言葉を投げかける。

 

 「随分長かったけど、貴方の言っていた推測が当たっていた。」

 

 返事はない。

 ただ暗闇と静寂が広がるばかり。

 そんな当たり前の事には一切頓着せず、ラーズグリーズは言葉を投げ続ける。

 

 「『個々人によって権能が異なるのなら、何時か必ずこの状況をひっくり返せる権能の持ち主が現れる。私はそれまで何が何でも時間を稼ぐ。』」

 

 彼女の口から、彼女ではない者の言葉が紡がれる。

 

 「もう、この言葉を覚えてるのも私達だけになったわね。」

 

 オールドウィッチと言われる者達がいた。

 現在のウィッチ達のナンバー制度を考案した他、ウィッチのマジックや権能等の法則を発見した最初のウィッチ達。

 だが、今現在において活動が確認されているのはウィッチナンバー1 ラーズグリーズただ一人。

 他は皆死んだかM.I.A.(戦闘中行方不明)か、或いは人の形を捨て去った(・・・・・・・・・) かだ。

 

 「と言っても、貴方はもう話す事は出来ないのだけど。」

 

 不意に、彼女の足元にコツンと小石が落ちて来た。

 直後、何もいない筈の夜闇の中、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…と地鳴りの様な大きな音と振動が響き始めた。

 

 「パートナーは飾りじゃない。文字通りウィッチにとっての半身。死んでしまうとマジックの制御が不能になり、安全装置が無くなる。」

 

 後に敢えて安全措置を外して実力以上のマジックを使用するウィッチも現れるのだが、それはさておき。

 無論、これは地鳴りではない。

 ラーズグリーズは独り言をしていた訳ではない。そこまで暇でもないし。

 彼女が話し掛けていたのは建造物どころか山と見紛う程の圧倒的巨大質量だったのだ。

 今まで微動だにしなかったが故に傍目からは気付けなかっただけで、それはずっとその場に佇んでいたのだ。

 

 「インクブスに捕まった場合は例外として。自爆するならまだマシ。果ては人としての機能を損ね、徐々に人外へと成り果てる。」

 

 それがパートナーを無くしたウィッチの末路よ、とたった一人残された最古参の魔法少女は吐き捨てた。

 

 

 BWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!

 

 

 質量を持った暗闇が、否、ウィッチの成れの果てたる怪物が起動する。

 ただ身を起こし、その内部に抱えたエナの炉心が本格的に起動しただけで空間全体がビリビリと振動する程の大威容。

 それが夜闇の中でゆっくりと立ち上がった。。

 

 「まるで歩く空母ね。」

 

 ラーズグリーズの言葉通り、その怪物は空母と昆虫のキメラの様な異形だった。

 全高600m 全長2400mという兵器としては空前絶後の超巨体。

 六脚の足に塔の様な胴体。そこから広がる葉の様な六枚の飛行甲板。

 そして山が如き巨躯の全身へと配置された無数の重火器。

 その内訳たるや多連装ミサイルランチャー×24、近接防御用機関砲×33、中近距離速射砲×16。

 これだけでも一国の軍勢やインクブスの大群を一方的に殲滅可能な火力を誇るのだが、コレの最大の長所はそこではない。

 それらを差し置いて、最も目を引くのが巨大な三連装砲×2である。

 現在の人類の技術力だけでなく、物理的にも有り得ない程の巨大な砲。

 その威力たるや、比喩抜きでただの一発で大都市が壊滅する程のものであると、既に大陸から侵攻してくるあらゆる勢力(・・・・・・)を相手に証明済みである。

 これが一人のウィッチの成れの果てであるとは、もうこの世界ではラーズグリーズとそのパートナーしか知らない事だった。

 

 「希望は生まれた。貴方の役目が終わる日も、きっと来るわ。」

 

 稼働音と共に二門の三連装砲が稼働し、海の向こうの遥か彼方を指向する。

 同時、炉心から膨大なエナが砲塔へと供給開始。

 事前に生成された砲弾の後部、薬室にエナが充填されていき、炸裂の時を待つ。

 その数秒後、標的への照準を観測機器が完了、準備が整う。

 そして、薬室に充填されたエナが炸裂する。

 同時、発射された砲弾は砲身に付加されたマジックにより必中と加速が付与されながら、一発当たり戦術核に比肩する威力をお届けすべく空へと旅立った。

 それ以上の事を、ラーズグリーズは知覚しなかった。

 どうせ大陸沿岸で出港予定の軍艦か難民を満載した輸送船、インクブスの軍勢を港ごと消し飛ばしているだけだから。

 多少違った所でこの国の敵が消し飛ぶ未来に変わりはない。

 

 「北は任せるわ。他は私がもたせるから。」

 

 そう言って、最強のウィッチは夜闇へと姿を消した。

 

 

 ……………

 

 

 「あ、こりゃ無理だわ。」

 

 この世界が捕食者系魔法少女の世界だと知ったのは、手遅れになってからだった。

 初期対応に失敗した日本はインクブスの傀儡となった大陸からの難民爆弾により沖縄が陥落、更に首都が壊滅という大チョンボをかました。

 無論、インクブスに対応可能なパートナーと契約した魔法少女達も少数ながら各々戦いに参加したものの、未だ戦時体制に移行できない日本ではその戦力を活かす事も出来ず。

 多くの少女達が奮闘空しく戦場の露と消えて、時にはそれ以上に悲惨な末路を辿る事となった。

 私自身も家族を失い、戦友の殆どを失い、そしてパートナーも失った。

 精神的支柱であり、エナの操作やマジックの補佐をしてくれるパートナーを失ったウィッチは悲惨だ。

 辛いリハビリを経ないと、まともにエナの操作やマジックの発動が出来なくなる。

 斯く言う私は本来戦闘が苦手なので、銃火器を作って自衛隊へと供給する事を企んでいたのだが、前述の理由により失敗した。

 なので、せめて知り合いの魔法少女らに手榴弾やナイフ等のサブアームを配り、自分でも小銃や重砲を作って運用していたのだが…インクブス、そして傀儡軍閥の圧倒的物量の前には何もかもが不足していた。

 撤退に撤退を重ね、全てを失ってしまった時に、私は自分の前世を漸く思い出した。

 

 「遅過ぎだろ我ながら…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」

 

 天を仰ぐ。

 心と同じでどんより曇り空。

 主人公たる蟲達のお母様が立ち上がるのはまだ先で。

 自分という異分子の挿入により彼女の奮闘が間に合うかすら定かではない。

 であれば。であれば。

 

 「ま、二度目があったんだ。三度目を気持ちよく迎えるためにも善行を積みますかね。」

 

 自分の権能は鍛造。

 大体の金属製の物を作り上げ、更に鍛え上げるマジックにより多くの武器を作り上げ、それを用いてインクブスやそれに与する連中に鉛玉や砲弾をプレゼントしてきた。

 本来ならば後方支援に徹するべきだとは理解している。

 しかし、今この国には安全地帯なんて無い。

 無いならば、どんな手段を使っても作るべきだ。

 何時か立ち上がる英雄のために、何時か訪れる反撃の時のために、今この国を何としてももたせる必要がある。

 

 「材料の廃材よし!エナタンクよし!作業場よし!」

 

 自分の権能は無から生み出す事もできるが、既存の物質をエナによって変質させた方が効率がいい。

 だから金属系の廃材たっぷりのスクラップ置き場で事に及ぶ事にした。

 ここの管理業者には迷惑をかける事になるが…すまんがちょっと余裕無いんで勘弁してほしい。

 エナタンクだが、これはまんまだ。

 自分が作ったエナを大量に貯蓄する事の出来るタンクだ。

 見た目完全にドラム缶だが、自分の権能によって変質したエナの絶縁体で出来てるので、蓋を開けない限り内部に蓄えたエナを逃がす事は無い。

 作業場はこれから行う一大マジックの成功率を上げるべく、周辺のエナの濃度を高めるべく給油口を開けたドラム缶もといエナタンクを辺り一帯に設置してある。

 ここまで準備するのに、実に一月近くかかってしまった。

 リハビリがてら必死にエナを生成してはタンクに貯め続けた努力の結果、実に20個近いドラム缶もといエナタンクが出来上がった。

 いやー保管場所に苦労したわw

 

 「さって!フォージングマスター様最後のマジックをご照覧あれ!この国を守る一世一代の大マジックだ!」

 

 やぼったいツナギ、庇の付いた作業帽、首からかけた遮光ゴーグル。

 そして、右手に持った身長に匹敵する程のサイズの無骨極まりない鋼そのままのハンマー。

 おおよそウィッチとしては余りに無骨で普通の工場作業員にしか見えない彼女は、後のオールドウィッチと言われる者達の最後の二人、その片割れだった。

 

 「そぉれェ!」

 

 エナを限界まで注ぎ込まれたハンマーが作業場、否、儀式場の中心へと勢いよく打ち込まれる。

 直後、彼女を中心に爆発的なエナの奔流が湧き上がり、現実を、物理法則を侵食し、術者の望む通りの結果を作り上げていく。

 

 「…んじゃねラーズグリーズ。アンタは後から来なよ。」

 

 その場にあったありとあらゆる金属が変質、増殖、結合、変形しながらフォージングマスターを中心に一つの塊となっていく。

 まるで粘土からプロの造形士がフィギュアを作り上げていく工程をより大規模に、より精密にした様に金属が流動的に蠢く。

 その光景はまるで蛹の中身が液状から成虫へと変態するプロセスを早回ししている様にも見えて。

 それを遠くからじっと見つめていたラーズグリーズの目には、まるでフォージングマスターが羽化せんとしている様にも見えて。

 しかし、真実は残酷だった。

 鍛造名人の銘を持った少女は、端から羽化なんて考えていなかった。

 自分すらも材料にこの国を防衛する兵器を作り上げる。

 それが彼女の目的だった。

 やがてエナの奔流が収まった時、その場には少女の姿も山程のスクラップも、多量のドラム缶も無かった。

 全高60m 全長240m

 当初の予定からすればまだまだ未完ながらも、明らかに物理法則に喧嘩を売ってるサイズの巨大機械がそこにあった。

 

 GYUOOOOOOOOOOO…

 

 内部の炉心が稼働し、その全身へとエナを供給する。

 すると動作確認のためか、まるで花開くかのように4枚の飛行甲板が展開され、その威容を見せつける。

 その中心、飛行甲板が繋がる中心の塔の様な構造体の側面には、この鋼の怪獣の銘が刻まれていた。

 

 Sprit of MotherWill

 

 後にシルバーロータス登場までラーズグリーズと共に日本の絶対防衛圏を構築する最大戦力の片割れが産声を上げた瞬間だった。

 

 

 


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