吸血鬼三兄弟の末弟はかわいい妹の誕生日が分からないことに気が付き…

Pixivにも投稿しています。

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初投稿です。Pixivにも投稿しており、そちらでも初作品でした。


君と俺の特別な日

俺には可愛い妹分がいる。

亡くなった子供の地縛霊の集合体、アマルガムのあっちゃんだ。

 

俺が潜んでいた廃病院で出会って仲良くなって以来、お兄ちゃんと呼んでくれる。

ただ一緒にお化け屋敷を始めた相方ってだけじゃない、心から守らねばと思える大切な存在。

 

さて俺には二人の兄もいる。

野球拳バカとマイクロビキニバカだ。

ポンチとしか言いようがない言動をやらかしている兄貴たちだが、俺の事も新しくできた妹の事も大切にしてくれる。

兄貴たちは時折様子を見に廃病院まで来てくれるし、カラオケ行ったり温泉行ったりもしてるから仲は良いほうだと思う。

廃病院に来るときは大抵手土産を持参してくれるので一緒に食べたり、冬場だとたまに集合をかけて鍋パもする。

あっちゃんが加わってから、なんとなく頻度が上がった気がする。さすが我が妹、兄貴たちの心も掴んでくれている。

 

人間たちのイベントであるバレンタインもホワイトデーも楽しめるのもあっちゃんのおかげだ。

さすがに男兄弟だけだとやろうとはしなかった気がする…。

吸血鬼は料理が上手いやつが多い。

系統は違うが、兄二人とも美味しいものを手作りしてプレゼントしてくれる。

俺もあっちゃんと共にお菓子作りに励む。出来上がったものをあっちゃんから貰えるのも勿論嬉しいが、何を作るのか一緒に悩み作成する手間も時間も大切で愛おしい。

 

そして何より特別な日といえば誕生日だろう。

やはり我が家に集まっての、家族揃ってのお祝いだ。

毎年のこととはいえ、プレゼントは悩むところだ。

好みはそれぞれ違うし。

ミカ兄(ビキニバカで次兄)は高級志向で割とこだわりがあるし、ケン兄(野球拳バカ、長兄)は根無し草でよくVRCにも行くからあまり荷物にならないものか消え物が良さげだし。

二人とも一応何を贈っても喜んではくれるが、まぁそれはそれだ。

あっちゃんは俺と一緒に贈ることにして二人して選んだり、自分で絵を書いてプレゼントしてくれたりと、あっちゃんなりに考えてくれている。

 

ミカ兄と俺の時はケン兄が、ケン兄の時はミカ兄がケーキを作ってきてくれる。

別に有名店とかで買ってくるとかでもいいのだが、やはり心を込めて作りたいらしい。

ちょっといい金額の血のボトルとかお酒とかは持参してくれるため、あとはデパ地下でオードブル料理を調達して部屋の飾り付けをすれば準備は完了だ。

 

兄弟のなかで1番遅い誕生日はケン兄だ。

VRCに収監されず無事に誕生日パーティーは終えることが出来た。

俺もたくさん呑んだし(酔わないけど)、たくさん食べて満腹だ。動くのも億劫になりボーッと周りを見渡す。

ミカ兄は酔いが回ったのか床に横たわって寝ている。

夏だからビキニ姿は涼しげに見えてしまうが、このバカは一年中この格好で雪山にも行ってしまうアホだ。女子高生たちにプリケツと言われるほどのケツをこちら側に向けている。あとで蹴飛ばしてやろうか…

ケン兄は酔ってはいるようだが一応起きてはいるようだ。先程あっちゃんからもらったハンカチを嬉しそうに見ている。

俺と一緒にデパートへ行った際見つけたモノだ。

しかしジャンケン柄のハンカチなんて需要あるものなのだろうか?

物珍しさのあまり足を止めて手に取った俺にあっちゃんが「こ れ、ケン にいちゃ、あげ る」と言い、プレゼントに決まったのだ。

あっちゃんはとっくに夢の中だ。

プレゼントも喜んでもらえたし、美味しいケーキも料理も食べていたし、ずっとニコニコしてて可愛かった。

寝ている可愛い妹の頭をそっと撫でる。手入れをしているおかげで髪がサラサラだ。くすぐったいのかふふっと微笑む姿に癒やされる気分だ。

 

そんな彼女を見てて、ふと考えた

あっちゃんは?そういえば誕生日のお祝いをしていないじゃないか。

魂の集合体なのだから、勿論ひとりひとりの誕生日は違うだろう。

以前あっちゃんに聞いてみたが、はっきりとは分からないようだった。

俺たち兄弟の誕生日を一緒に祝ってくれる、可愛い妹の誕生日を祝わないなんて!!

そんなのあんまりだ!

よし、決めた。

あっちゃんの誕生日も祝おう。分からないならばこちらで決めてしまってもいいじゃないか。

「ねぇ、ケン兄。ちょっと聞いてほしいんだけど…って寝てるし…」

ハンカチを握ったままテーブルに突っ伏すピンク色ジャンケン柄…。コップは倒れ残っていた酒が少量溢れている。あぁもう、後で拭かなきゃ。

 

もぅいい、兄貴たちに頼らないで自分で決めちゃおう。

俺と一緒というのも考えたが、それじゃ『ついでに』という事になりかねない。

それだと駄目だ、ちゃんと『あっちゃんの誕生日』にしたい。

適当に決めるのも違うだろう、大切な妹の特別な日なのだからしっかり考えよう。

なにせとても可愛くて癒やされる、大切な大切な妹の為の日なのだから…

 

☆ ☆ ☆

ふと目を覚ます。

身体を起こしつつ伸びをする。

懐かしい夢を見た。妹のために頑張る事を決めたあの日の夢を。

妹はまだ寝てるようなので起こさないように忍び足で入口まで移動する。

空を見上げてみる、星も出ていていい夜だ。

「よお!透、いい夜だな!」

下駄をカランコロン鳴らしながらやってきたジャンケン柄。手には頼んでおいたオードブルセットと、おそらく飲み物が入ってるであろう袋がある。

あらかじめ伝えてあった為、辻野球拳なるものは控えてくれたようでVRCにも世話にならずに済んだようだ。

そのすぐ後ろからカツカツとブーツの音を立てつつやってくるビキニ姿。手にはケーキ箱とおそらくプレゼントだろう袋。

「いらっしゃい、ケン兄ミカ兄!」

 

数ヶ月前、あの日のあとしばらく考えて思い付いた事を兄貴たちに伝えた。なんでその日に決めたのかその理由も。

二人とも納得し、一緒に祝おうと約束してくれた。

俺たち兄弟の可愛い妹の為の日を。

起こさないように静かにシンプルな飾り付けを済ます頃、ペタペタと足音が近づいてきた。

 

クラッカーを急いで構える。

姿が見えた瞬間、3人揃って鳴らす。

「あっちゃん、誕生日おめでとう!!」

いくつもある目を見開いて瞬かせ驚く妹の、俺たちとは違う真っ白い手を握っていつもの席につかせる。

 

誕生日というのは何も生命が生まれた事を指すだけのものじゃない。新しい家族が増える日でもあるのだ。

それならば、もう既に決まっている。

 

あの日、この廃病院で俺たちは出会った。最初はビビってしまったけれど、話しかけてみればなんてことはない。何人もの魂は入っているものの、誰かに遊んでもらいたいだけの、寂しがりやの唯の女の子だった。

「お兄ちゃん」と呼んでくれた瞬間、あの子は俺の妹に、家族になったのだ。

そしてその日のうちにもっと沢山の人と遊べるように一緒にお化け屋敷をすることに決めたのだ。

だから今日はあっちゃんの誕生日であり、お化け屋敷を始めた日。

君と俺の特別な日。これからもよろしくね。

 


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