世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 ナナキきゅんプロフィール
 
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 イメージCV 木野日菜さん←書き忘れてた

 夜神桜 さん 森亜 さん←(多分もっと前から評価つけて頂いたのに紹介するの忘れてました!!すいませんm(_ _)m)

 新たに評価ありがとうございますm(_ _)m




第36話∶技能 “[+動物会話]”! ぶらり旅その3

 

 こののどかな旅路も、遂に残り1日。昼は危険一つ無い緩やかな道程を進み、夜は食事の後ナナキと音楽隊のデュエットによる野外ステージ。騒がしくて賑やかな、ハジメとしても『悪くない』と思える旅。

 それももう、今日をもって終わろうとしていた。

 

 冒険者達や、すっかり商隊の人達とも打ち解け

 「今日でユエちゃんたちとの旅も最後かぁ〜」

 「さみしくなるぜ〜」

 「シアちゃーん!最後だ!俺と結婚してくれ!!」

 「なぁ!?ずりぃッじゃあ俺も!ユエちゃん!俺と一緒に──」

 「で?誰から先に死にたい?

 「「「さーせんっしたぁーー!!」」」

 

 このやり取りも既に見慣れたものとなっていた。

 

 「男ってホントにバカよねぇ〜」

 「ははッ耳が痛い話だ。」

 「ですが、「さみしくなる」というのは私達も同感ですね」

 「ナナキちゃんッやっぱりウチらと一緒に来ないっすか?もうナナキちゃんのいない演奏なんて考えらんないっすよ!」

 「ん〜んッナナキはね、あにぃとユエあねぇとシアと、ずぅっといっしょなんだよ。」

 「そんなぁ〜!」

 

 このやり取りも初めてではない。彼等はこの6日間、ナナキと共に演奏を繰り広げた戦闘と音楽どちらもござれの凄腕冒険者チーム『“ゼェンガー”』。

 上からハープ、弓使いの女性アルト

 ウクレレ、メイス使いの屈強な男性ノーレ

 クラリネット、魔術師の壮年な男性バリトン

 最後に太鼓、短剣使いの少女ラーンだ。

 

 彼等の中で特にナナキに惚れ込んだラーンは、事あるごとにナナキを仲間に引き入れようと口説いている。それはもう、ハジメに鋭い眼光と圧を受けても怯まないくらいだ。

 

 まぁ当然ながら、ナナキはラーンの申し入れを丁重にお断りしている。何でもイエスマンナナキでも、流石に今後の趨勢に関わる事ゆえ流されることは無い。

 その為ハジメもわざわざ口出しをせず睨みを利かせるに留まっている。

 

 だが、ユエとシアといった女性陣とラーンの仲間、バリトンとノーレは、ラーンの一連の行動に勧誘以外の別の意図(・・・・・・・・・)がある事を何となく察しており、生暖かい目を……

 “甘酸っぱい想い”を抱いたばかりの少女に向けていた。

 

 さて、そうやって冒険者達に加えて商隊の男達によるユエとシアへと不毛なプロポーズを黙らせ、“ゼェンガー”のラーンからのナナキへの猛アプローチにハジメが目を光らせていたときだった。

 

 突如、二羽の鳩のような鳥がナナキの元へと降りてくる。

 その鳩達は、今日も商隊の馬ピースに乗っているナナキの肩と膝の上に停まると、それぞれがまるでナナキに話しかけるように、ツンツンとナナキの顔と胸辺りをくちばしで啄む。

 それを受けまたも キャッキャ とし始めたナナキに、

 『『『くっまたメルヘンか!!』』』と身構える一同。

 しかし、今回は少し様子が違った。

 

 クルッポーッポー

 「うん、うん、そうなの?うん、うん……わかった(・・・・)!ありがとねぇ〜」

 

 何かしら受け答えをしたナナキは、何かを了承してすぐ鳩達とお別れした。すると直さまハジメへと振り返る。

 

 「ねぇ〜あにぃ〜」

 「ん~?どした〜ナナキぃ〜」

 「ハトさんたちがね、もりのおくからね、まものがくるんだってぇ〜そr──」

 「あ?」

 「何だって!?」

 

 ナナキから齎された情報は唐突すぎるものだった。反応が薄いハジメと違って、近くで聞いていた冒険者はひどく動揺していた。

 

 「ナナキ君。数は分かるか?」

 

 話を聞きつけたガリティマが、ナナキへ詳しく聞こうと冷静に問う。

 

 「う〜ん。たくさんっていってた」

 「具体的な数は分からないかい?」 

 「う〜ん?」

 

 ガリティマはナナキの技能“動物会話”の一端を知る者だ。幼子の戯言と切り捨てられるほど楽観視は出来ない。隊の護衛を預かる者としてできるだけ詳しい情報を手に入れようと必死だった。

 そんな必死なガリティマとは対照的に、ナナキは呑気に森の方へ顔を向け両手を口の前に持っていき可愛らしく叫ぶ。

 

 「お〜いッだれかぁ〜ッもりからきてた(・・・)まもののかずがわかるひとぉ〜ッいーませぇ〜んかぁ〜!」

 

 そんなちょっと道を聞くみたいなテンションで言うナナキ。

 その間延びした声に応えるように森からいくつかの影が飛び出す。

 

 「なっ!?狼!?」

 「しかもこんなに沢山!!」

 

 現れたのは10頭以上の狼の群れ。下手すれば魔物と同等に危険な野生動物の登場にそれぞれ武器に手を伸ばす冒険者達。

 しかし、戦闘が開始される前に狼達はまるで人懐っこい犬のようにナナキの足元、正確には馬のピースの足元へと集まる。

 狼達の意図を理解したのか、実際にピースに乗馬しているユエを無視して、ナナキを地面に降ろすために体勢を低くするピース。

 

 「ありがとねピース!」

 ブルルッ

 

 そう言って狼達の前へ、トテトテと歩み寄るナナキ。

 先頭に佇む、いかにも群れのボスといった顔に傷のある大きな狼と視線を合わせるためにナナキがしゃがむ。

 

 「おおかみさんおおかみさん。まもののくわし?いかず、わかりますか?」

 

 グルルッバフッ……ウゥゥバフバフッ!

 「ふむふむ、なるほど〜。ありがとござます!おおかみさん」

 ペロンッ

 「ひゃぁあん!くすぐったいぃ〜!!」

 

 『『『ガッハ!!?』』』

 

 不意打ちメルヘンに溝内辺りにダメージを食らう一同。だが、今はくたばっている場合ではない。吐血(幻覚)しながらガリティマはナナキへ狼からなんて聞いたのかを問う。

 

 「えっとね!ひゃくよんじゅう……さん!くらいだって」

 「ひゃ……っ!?」

 「「「143!!??」」」

 

 告げられた数に戦慄する冒険者達。前にも話したが、今回使っている街道は、森に隣接してはいるが其処まで危険な場所ではない。大陸一の商業都市へのルートなのだ。道中の安全は確保されている。なので、魔物に遭遇する話はよく聞くが、せいぜい二十体前後、多くても四十体くらいが限度のはずなのだ。

 

 「……シア、距離はわかるか?」

 「いえ、私の耳でも聞き取れません。それだけの数です。聞こえる範囲に入れば足音一つ聞こえないはずがないので、恐らくまだ距離はあるんだと思います。ですが……」

 「ん……時間の問題。」

 

 最初、ナナキの子供特有の戯言だと思って現実逃避していた冒険者や商隊の人達も、ナナキの身内であり、この依頼に参加する冒険者のなかでも屈指の実力者たるハジメ達が事態を真剣に受け止めていることで、ナナキの言い分が戯言の類いでないと嫌でも理解させられた。

 

 「143体だと……!くそっ、最近、襲われた話を聞かなかったのは勢力を溜め込んでいたからなのか? ったく、街道の異変くらい調査しとけよ!」

 

 ガリティマはそう悪態をつきながら苦い表情をする。商隊の護衛の冒険者は、ナナキ含めて全部で十六人。冒険者では無いユエとシアを入れても十八人だ。この人数で、商隊を無傷で守りきるのはかなり難しい。単純に物量で押し切られるからだ。

 

 ちなみに、温厚の代名詞である兎人族であるシアを自然と戦力に勘定しているのは、ブルックの町で「シアちゃんの奴隷になり隊」の一部過激派による行動にキレたシアが、その拳一つで湧き出る変態達を吹き飛ばしたという出来事が、畏怖と共に冒険者達に知れ渡っているからである。

 

 ガリティマが、いっそ隊の大部分を足止めにして商隊だけでも逃がそうかと考え始めた時、その考えを遮るようにナナキから不思議そうな声がかかる。

 

 「うぅ?どうしたの?みんないそがしいの?」

 「な……忙しいって……」

 

 ナナキの言葉は、この緊急事態時に全くそぐわない類のものだった。あまりの空気の読めなさに言葉う失う冒険者一同。これにはハジメ達もさすがに訝しんでいた。

 ナナキは確かに、空気が読めなかったり、周囲の状況に疎い時がある。だがそれはあくまで日常の中だけの話。戦闘時にそんなではこの危険な世界は生き抜けない。ハジメとユエは涙を偲んでそのへんの心構えと危機察知の訓練はオルクス大迷宮で厳しく教育を済ませていた。

 

 故に、二人は確信する。ナナキには分かっていて自分たちには知らされていない情報がまだあると。

 

 だが、ナナキと出会って間もないガリティマがそこまで察することなど無理な話。この危機的状況で能天気な事を言うナナキにさすがに怒りを覚えてしまう。

 

 「忙しいに決まっているだろ!!そもそも君が齎した情報だろうが!!何をそう無警戒に構えているんだ!!」

 「ッ!!」

 

 ガリティマは隊のリーダーとして真剣にナナキへと詰め寄る。あまりの剣幕に流石のナナキも驚きと恐怖にビクッと肩をすくめ、目を見開いてしまう。

 そう、ガリティマの行動は間違っていない。責任ある者として正しい行いだ。間違っていない、間違っていない……のだが……

  ……この場では悪手でしかなかった。

 

 「何やってんだぁ?テメェゴラッ」

 「え?ぎゃああああああっ!!」

 

 ここには、ハジメ(ブラコン)がいる。

 弟を過度に怯えさせる輩を絶対に許さないマンである。

 ハジメの義手の方の腕にアイアンクローをされ苦悶の叫びを上げるガリティマ。

 

 「ちょちょ〜い!あんた何やってんだ!?」

 

 流石にこれはガリティマ側に正当性があるため、周りの冒険者達は声を上げる。……声を上げるだけだ。実力行使など無理だし恐ろしくてできるわけがない。

 そんな混沌の現場の中、その混沌の原因たるハジメが口を開く。

 

 「落ち着け〜お前ら。うちの弟は確かにちょっと能天気で可愛いが、真剣な現場でそうなるほどKYじゃねぇ。まずは落ち着いて話を聞こ〜う。」

 「いぃやあんたが落ち着けぇ!!」

 「ガリティマさんを離したりなさいよ!」

 

 御尤も。ガリティマにアイアンクローをかましながらブーメラン発言を口走るハジメに、冒険者の方々からありがたいツッコミが入る。……ツッコミだけだ。誰も自らの身でハジメへ突っ込んでいく者はいなかった。

 

 閑話休題

 

 「ぅ……ぅぅ〜ッ」

 「よ〜し良い子だったぞぉ〜ナナキ。よく泣かずに我慢したな」

 

 ガリティマに急に怒鳴られたことでびっくりしたナナキは、今にも泣き出してしまいそうだったが、これくらいで泣きたくなかったのか、眉に力を入れて必死に泣かないように我慢していた。

 弟の文字通り涙ぐましい努力を褒めつつ、ハジメは本題にはいる。

 

 「ナナキ?まだ言わなきゃいけないことがあるんだろ?さっき何か言いかけてたもんな(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

 そう、思い出されるのは最初の報告。

 

 『まものがくるんだってぇ〜そr(・・)──』

 

 あの時、ナナキは何かを言いかけていた。その直後にハジメ含め、冒険者たちが話を遮ってしまったためその続きを聞くことができなかった……いや、そもそも忘れていた。

 ハジメはそれに思い至りナナキに優しく問いかける。

 

 そうしてナナキから伝えられた言葉は……

 

 「う、うん。え、えっとね……それ(・・)でね……どうぶつさんたちがね、まものをね、

 やっつけたからね(・・・・・・・・)もうだいじょうぶだよ(・・・・・・・・・・)

 っていってたて……いおうとしてて……うぅ……ぐすん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『『『……え……はぁ?』』』

 

 

 流石のハジメ達も耳を疑うものだった。

 

 「いや……いやいやいや!あり得ないだろう流石に!?」

 

 ガリティマの言う通り。これはあり得ない話だ。

 魔物とただの野生動物には、どうしても埋められない力の差がある。それは固有魔法……異能の力を使うという点だけではない。単純な膂力やスピードも、魔物の方が圧倒的に上回っている。人で言うなれば魔人族vs亜人族の様なものだ。いや、膂力の面で言うなれば亜人族の方が勝っているため、この例えよりも条件は厳しい。

 魔物にとってそこら辺の動物なんてただの餌に等しい。

 そもそも、動物とは自身の生存本能を優先して生きる者たちだ。そんな死ぬと分かっている戦いに臨むような愚かな行動は絶対に取らない。だが、ナナキの言が正しいのならつまり、食物連鎖のピラミッドで圧倒的に劣っている相手に、動物達は立ち向かっただけに飽き足らず勝利したというのだ。

 こんな話、信じられなくて当然であろう。ハジメ達も若干不信に思っているのだ。

 だが、どこまでも正直者な弟が嘘を言うわけもない。

 

 「ユエ、ちょっと見てきてくれないか?」

 「ん、任せて」

 

 即断即決。ハジメ達は事の真偽を確かめるために、自由に空を飛ぶことのできるユエに事の真偽を確かめて貰うことにした。

 

 その時、ユエが飛んだことで「と、飛んだぁ!?」と冒険者達が騒いだのはまた別の話。

 

 ナナキの仲介により、鳩の道案内ならぬ空案内の導くまま、ユエが向かった先で見たものは……

 

 

 「………凄いッ」

 

 それは、ハジメ達が進んでいた街道からずっと離れた森の奥地、不自然に切り倒された大木が作った不出来な防壁の内側で、土砂崩れに巻き込まれて死に絶える魔物の大群の残骸だった。

 

 ユエは、万が一残党が生き残っていないかの確認と、この場で何があったのか詳しく知る為に現場へと降り立つ。

 

 まず、きり倒された大木で作られた防壁。その周りでは大小種類様々な動物達が争うことなく、まるで大仕事を終えた後のように防壁に寄りかかり疲れを癒していた。

 

 防壁に使われている大木の断面はとても荒く抉られたような跡がある。まるで齧り取られたような跡だ。

 その証拠を裏付けるように、この場にはビーバーのような動物が数百体以上集まっている。いや、下手したら数千だろうか?それでもこれだけ巨大な防壁を築くだけの木材を集めるには、数千のビーバーでも数日の労力を有するだろう。一体何日前から準備していたのか?

 それだけではない、土砂崩れの規模を考えるに山一つ崩れたような被害規模だ。そんな衝撃、こんな即席の防壁だけで抑えられるわけがない。それを可能としたのがおそらく、この場でたむろしている熊やヘラジカ、野生の馬といった大型動物達だろう。これまた数千はくだらない数が集まっている。それだけの規模ならひょっとしたら土砂崩れを防ぎ切ることができるかもしれない。

 

 そもそもだ、こんな大規模な土砂崩れ、都合よく自然に発生したとは思えない。今度は土砂崩れのあった場所へと向うユエ。

 そこにあったのは……

 

 「こ……これは…ッ!」

 

 角が折れたり、頭が割れ血を流しているヤギとカモシカのような動物の大群だった。

 

 「まさか……頭突きで……!?」

 

 そう、彼等はこの山だった場所に長年住まう動物達だ。どの部分が山の崩れかねない弱い場所か常に把握し、その場所を刺激しないよう長年山の上を生活基盤としてきた動物だ。

 そこを敢えて、頭突きで揺らし山を崩したのだ。

 そして、周囲には鷹やはやぶさ、鷲と言った早く飛べる鳥たちが旋回している。それに、あの3羽には見覚えがある。

 

 「あれは、三日前の……」

 

 その3羽は三日前、ナナキと戯れていた3羽と同一個体だった。

 

 そこでユエは悟る。

 動物達の魔物の大群を撃退したその手段と手順を……。

 

 まず、鳥類の彼等3羽が魔物を発見。それを他の動物達へ情報伝達、魔物の進路を誘導するため、足の早い狼達が囮となり誘き寄せる。先程ナナキの前に現れた狼が、魔物の正確な数を把握していたのは、彼等が実際に近づいて確認していたが故だろう。

 その魔物の誘導の間にビーバーや大型動物達が急ピッチで防壁の作成、良きタイミングでヤギ、カモシカのチームが山を崩す。土砂崩れから逃げるように真っすぐに逃げ出した魔物達は、その先にあった防壁により道を阻まれ、防壁と土砂崩れに挟まれて圧死したのだろう。

 突然増えた魔物達の殆どは、この森の外から来た魔物だろう。地の利のあった動物達(かれら)によってまんまと罠にハメられたのだ……。

 

 

 

 ここまで言っておいてなんだが……

 

 おかしい……おかしすぎる。

 

 なぜ、種類の違う大量の数の動物達が、こうも円滑に、計画的なチームワークが取れた?

 この場に集まっていた動物達の数を見ればわかる。下手したらこの森全ての動物達が集まっている。そうでもしなければこうもだいそれた事を実行はできなかっただろう。

 そもそもなぜ、彼らは魔物に挑もうなど蛮勇を犯した?

 

 見た所、動物達に死亡者は居ない。それでも主にヤギ、カモシカの部隊は安くない被害を被っている。

 

 何故、ここまでの危険を冒した??

 

 この疑念は、ユエの持ち帰った情報を受けたハジメも同様だった。

 

 まぁ、分からないことをいつまでも考えていても仕方がない。

 幸い、聞けば答えてくれるのだから……。

 

 ハジメは、ナナキに森の奥地であったことを分かりやすく話す。それを聞いたナナキも流石に動揺したのか大きく見開いた瞳が揺れていた。

 

 「ナナキ。狼さんに聞いてみてくれないか?何故、危険を冒してまで俺たちを助けるような真似をしたのか?」

 

 恐る恐る頷いたナナキは、まだこの場にいた狼のボスに恐る恐る尋ねた。

 

 「どうして……いたいことしてまで……ナナキたちを……

  たすけてくれたの?」

 

 バフッゥゥバフッ!クゥ〜ン

 

 「………………。」

 

 何かしら喋った狼の鳴き声を聞いたナナキは、押し黙ってしまった。

 

 呆然と立ち尽くすナナキの様子に、心配になったユエがナナキのそばに寄る。

 

 「ナナキ?……どうしたの?」

 「……めって…

 「え?」

 

 小さく、弱々しく呟いたナナキ。聞き取れなかったユエは思わず聞き返す。

 

 「ナナキの……ためって……

 

 「「「ッ………………。」」」

 

 ナナキの呟きに、その場の全員が絶句する。

 

 狼は……いや、動物達は、何の打算もなく、何の利益もなく、ただ、ナナキの為に、命を張って戦ったと……

 

 そう……言ったのだ……。

 

 

 ナナキの技能……この世界に来た地球の人間全員が平等に手にする技能“言語理解”の派生、その名も[+動物会話]

 

 この“動物会話”に、動物を操る力はない。

 

 ただ……会話ができるだけ(・・・・・・・・)だ。

 

 この6日間、会話して、一緒に歌って、踊った。

 

 たったそれだけの間柄だ。

 

 たったそれだけなのに、動物達はナナキに特別な感情を抱いたのだ。

 

 “この子には幸せになってほしい。”

 

 “いつまでも笑っていてほしい。”

 

 “どうか……どうか……これからも健やかに……”

 

 そう、これこそが“動物会話”の真価。いや、ナナキが持つことによって発揮された真価だ。

 隷属による支配では無い。

 親切心から来る、善意による守護(・・・・・・・)である。

 動物達はいやいや従うのではなく、ただ心の底から守りたいと自らの意思で行動するのだ。

 

 

 

 

 さて、少し話は変わるが、“会話”とは、“対話”とは何だろう。

 それは、他者と他者を繋げる事ができる素晴らしい物だ。

 だが、いつしか()は、言葉を素直に受け取ることができなくなった。言葉の裏を読み、揚げ足を取り、そして中には、武器として振りかざす者もいる。

 だが、それは仕方のないことだ。

 人とは考える生き物だ。自分が考えるように、相手も考えている……そして、他人の考えを読み取ることなんでエスパーでもない限り不可能だ。

 つまり他者と他者は、どうしても……

 

  ……疑い合ってしまう。

 これは、人が知恵の実を得たことで齎されたどうしょうもない弊害だ。甘んじて受け入れ、向き合っていかなければならない。

 

 だが、言葉さえ通じれば、会話さえ成り立てば、相手に一定の親近感を抱くのもまた生き物だ。

それは動物も変わらない。動物の世界にもコミュニティは存在する。そして、動物たちのそれは人のそれよりもスムーズだろう。

 何せ、表裏が無いのだから。

 それは、ナナキも同様だ。彼には打算も無い。利益に執着する我欲もない。彼のそんな純粋な思いは、動物たちに一身に伝わった。

 

 “仲良くなりたい!友達になりたい!”

 

 何の打算もなく、真っすぐにそんな感情を向けられれば、誰であれ悪い気はしないだろう。寧ろ素直に嬉しい。それは動物たちも例外ではない。

 そして、ナナキは全ての動物の言葉を通わせる。そう、すべて(・・・)だ。動物達の間にも種族の違いにより完全な繋がりは存在しない。その為に食物連鎖などというものが存在している。言葉の通じない彼等は互いを外敵か餌としか判断できない。

 だが、今回の旅で彼等はナナキを介して繋がりを得た。草食動物と肉食動物の間に、確かな絆を生み出したのだ。

 

 故に、彼等は動けた。友達を助ける為に、外敵に立ち向かう為に力を合わせて戦う事が出来たのだ……。

 

 皮肉な話である。この少年と動物達は、たった6日で、世界が……人間が、トータスが……いや地球人類ですら未だ果たせない、他人種族の一致団結を実現させて見せたのだ。

 

 ただ、これが良かったことなのか……全部が全部正しかったのかは分からない。上辺だけ見ればみんな仲良くなってハッピーエンドと見えるだろう。だが、実際は色々と弊害もある。

 

 まず、この森の動物すべてが仲間になってしまったことで、肉食動物達は、森のなかでは食料を得られなくなってしまった。

 森の外へ出れば違うかもしれないが、森の外は人の領域だ。人に被害を及ぼすか、駆除されるか……。どちらにもいい結果にはならないのは必至だろう。そして、肉食動物の減少による草食動物の増加も大きな問題だ。天敵のいなくなった彼らは直に食糧問題に息詰まることだろう。それによる餓死、そしてこれまた人領域への侵入による二次被害。考えられるだけでも多くの被害が予想される。

 食物連鎖のサイクルとは、当然の自然の摂理として成り立っていたのだ。

 

 

 今この場でそこまで考え至ったものは少ないだろう。ただ、何かとんでもない事になったという、強迫観念が一体を支配していた。

 

 そんな空気の中、軽い足取りでナナキのそばに寄ってきたハジメは、ポンポンと弟の肩を叩く。

 

 「……あにぃ?」

 

 それに振り向いた、動物達を怪我させた事に罪悪感を感じ、不安がっているナナキに……

 

 「取り敢えず、動物達にはお礼を言っとかないとな?」

 

 そうやって楽観的に、不敵な笑みを見せるのだった。

 

 そうだ……ッ。何はともあれ、親切にされたのならば……

 

 「“ありがとう”」

 

 それは万国種族共通の認識だ。

 ナナキはうん!と気を持ち直し、まずは目の前にいる狼の首元に抱きついた。

 

 「おおかみさん!ナナキたちをたすけてくれて……ありがとね!」

 

 バフッ!

 

 ナナキのお礼に応えるように尻尾を振り回すボス狼。巨大犬と幼子の微笑ましい光景に、その場はまたほんわかとした空気をまとっていた。

 

 

  ◇

 

 

 その後、商隊にはシアを残して少し待ってもらい、ユエに連れられハジメとナナキは勇敢に戦った動物達へ感謝と労いをしに飛び立つ。

 できるだけの食料と、ヤギ、カモシカ達には傷の手当てをして、土砂崩れで荒れた土地はハジメの錬成で、動物達には過ごしやすい平野へと生まれ変わった。

 

 後にこの平野は人々を守るため勇敢に戦った動物達を祀った公園となるのだが……それはまだもっと未来の話。

 

 商隊に戻り、フューレン行きを再開させたハジメ達。だが、ピースに乗るナナキの顔は未だに晴れない。大怪我をした動物達を直接見てしまったのも要因だろう。先程の罪悪感がぶり返したのだ。

 そんなしょぼくれた様子のナナキに、シアと馬のピース、『ゼェンガー』のラーン、が気遣わしげに視線をよこす。だが、ナナキに最も近いハジメとユエはまったく違った。

 

 「後悔してんのか?ナナキ」

 「……ぅ?」

 

 そう諭すように声をかけるハジメ。

 後悔……?なにに対して……?見た目以上に幼い頭でナナキが答えを出す前に、ハジメがそれを突きつける。

 

 「アイツらと友達になったことだ。」

 「ッ!ちがうッそんなことない!」

 

 ナナキにしては珍しくハジメに対して声を荒げる。その、弟のほんのちょっとした変化にハジメは口角を上げる。

 

 「ならいつまでもくよくよすんな。お前がいつまでもそんなんじゃお前のために戦った動物達は余計なことをしたんじゃないかって思い詰めちまうかもしんねえぞ?」

 「うぅ……でも、でも」

 

 ナナキは必死に言葉を紡ごうとする。幼い頭で必死に考えた言葉を……

 

 「そのせいで……けが、させちゃうのは……かなしい。」

 

 そう言って普段の無表情を罪悪感に歪め、サドルの突起を強く握る。

 

 「なら……ナナキは、考えなきゃいけない。」

 

 そんなナナキの頭を後ろからポンポンと撫でながら、ユエが口を開く。

 

 「自分の持つ力……そして自分の行動が、周りにどう影響するのか……。後先を見据えて、考えるの……。」

 「うぅ……むつかしい……」

 

 「ん……。それはとっても難しい。私もハジメもまだ勉強中。だから……一緒に考えていこう。」

 

 「まぁ、そういうこった。つまり何が言いたいかって言うと……一人で悩まないで俺達に頼れってことだ。お前には頼りになる兄貴と姉ちゃんがついてんだかんな。」

 

 そうハジメとユエに諭されキョトンとするナナキ。そう、今回のことはナナキ一人で抱え込むには大きすぎる出来事だ。正直すぎるナナキは、自分が原因で起こった事を真面目に重く受け止めてしまう。ハジメの腕と目の件と同じだ。

 その悩みを完全には取り除くことはできないが、ハジメとユエは兄として姉として、この心優しき強がりな少年に、「一人じゃないよ」と寄り添うのだ。

 

 

 しかし、先程の自分のもたらす影響云々だが、『あんたら人のこと言えませんよね?』と周りの商隊と冒険者連中は心の中でツッコんでいた。

 

 二人にそうやって諭されたナナキは、まるで憑き物の取れたようにいつもの明るい無表情に戻ると、元気にハジメへと声をかける。

 

 「あにぃ!いっしょにピースにのろ!」

 「あぁ!?」

 

 当凸な物言いに驚いたハジメだが、そりゃナナキにしてみたら当然の要望だった。この素敵な体験を大好きな兄とも共有したい。先ほどのことも相まってその気持ちはさらに膨らんでいる。

 

 だが、前にも記述したようにハジメは乗馬の才能がない。ユエとナナキに無様な姿は見せたくないのだ。だが、そんな事知らない弟の要望に、恋人も前のめりに同意する。

 

 「ん、たまにはハジメも乗ってみるといい!」

 

 そう言ってユエの指示によって体勢を低くするピースに、ハジメが「マジでやるのか!?」と慄く。

 

 「い、いやだから俺は周りの警戒をしとくから……」

 

 尚も断ろうとするハジメに、最強の攻撃が繰り出される。

 

 「あ、あにぃ……ナナキといっしょ……いや?」ぐすん

 「あ〜もぉ〜!!それずるいなぁ〜!!」

 

 ナナキの涙目に秒で陥落したハジメは、意を決してユエと場所を交代する。

 

 「ハジメ。大丈夫、力まないで、シュタイフに乗る感覚と似てるから……」

 

 実はユエはハジメが乗馬を忌避していることを何となく察っしていた為、軽いアドバイスをハジメへ送る。既に乗馬に必死になっているハジメにそのことに気付ける余裕はなく普通に「おう」と返事してしまう。

 

 そのまま、ハジメの合図によりピースがのっそりとした動きで立ち上がる。

 「うおっ!」

 

 久しぶりの唐突に身体が持ち上がる感覚につい小さく呻いてしまうハジメ。以前なら、このままなす術なく馬の身体から投げ出されていたのだが、いつまで経ってもハジメが予想したような衝撃は訪れなかった。どころか、その歩みはユエよりも安定感がある。

 

 「あにぃすごい!じょうず!」

 「凄いですよハジメさん!」

 「ハジメ……かっこいい……まるで王子様みたい♡」

 

 そう、ハジメはこれまでの旅でシュタイフに乗っていたのもあるが、変貌と戦闘による鍛えられた体幹が、余裕で乗馬をこなせるほどハジメの体を成長させていたのだ。

 ナナキはテンションが上がり、ハジメに惚れている二人の少女は乗馬するハジメにメロメロだ。

 

 言い忘れていたがピースは黒い毛並みの馬だ。全身が黒い出で立ちのハジメが乗ることでまるで闇の公爵のような厨二チック全開の外見になっているのだが、それは知らぬが仏というやつだろう。

 それよりもハジメは、初めての乗馬成功にナナキほどではないがテンションが上がっていた。

 

 「おおッなんだよ思ったよりも楽勝じゃねぇか!」

 

 その発言が既に乗馬を恐ていた事の露呈なのだが誰もその事を指摘することはなかった。

 

 何せ、そうやってはしゃぐハジメの顔が、弟とそっくりに子供らしく輝いていたのだから…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数時間後、一行は特に何事もなく遂に中立商業都市フューレンに到着するのだった。

 

 

 

 





 久々のシリアス回でした。


 オリキャラ《今回みんな無駄に設定が細かい》

 音楽隊兼冒険者のチーム『“ゼェンガー”』

 アルト→ハープ担当の弓使い。冒険者ランクは“緑”
     二十代前半くらいの大人な女性。
     赤紫色のウェーブのかかった巻き毛を
     ポニーテールにしている。
     元は王国の貴族の令嬢だったが、
     政敵によって陥れられ爵位を剥奪。
     一度、その政敵の悪徳貴族の奴隷にされた       
     が、当時王国からの依頼でその悪徳貴族
     の不正摘発に駆り出されたまだ3人だった
     冒険者チーム“ゼェンガー”に救われる。
     実は“ゼェンガー”の中で一番の新参者。
     ここだけの話、ノーレに密かに恋心を
     抱いている。
     ハープは令嬢時代に嗜んでいた。
      《名前の由来は音域のアルト》

 ノーレ→ウクレレ担当のメイス使い。
     冒険者ランクは“白”
     二十代後半くらいの屈強な男性。
     短く刈り上げた金髪で、
     クリスタベルに迫る大柄。
     出身はこの先行くフューレンの
     スラムの一部で、そこの兄貴分的な
     立ち位置だった。
     後輩たちを食べさせる為に、
     とある闇組織の下働きを嫌々やらされ
     ていたが、そこで出会った“バリトン”
     と“ラーン”に後輩たち共々救われる。
     その後、その闇組織を無理やり抜け、
     後輩たちに食い扶持を見つけてくれた
     バリトンに恩義を感じ、用心棒として
     ゼェンガーにメンバー入り。
     その闇組織とはいつか決着をつけてや
     ると切望している。
     ウクレレはスラムにいた時に
     ゴミ溜めから拾ったモノを修理して
     そのまま使っている。
     過酷なスラム時代を共に過ごした相棒
     のような物。
      《名前の由来は音域のテノール》

 バリトン→クラリネット担当の魔術師。
      冒険者ランクは“黒”
      五十代半ばの壮年な男性。
      オールバックに纏めた
      白髪混じりの銀髪に眼鏡を
      かけたナイスミドル。
      若い頃は“銀ランク”の冒険者
      としてブイブイ言わせていたが
      とある依頼先で妻と運命的な
      出会いを果たし結婚。
      荒い性格は鳴りを潜め、冒険者
      時代の貯蓄を糧に片田舎で
      のんびりと過ごす。
      クラリネットはその頃妻から
      習う。
      不幸なことに子宝には恵まれず
      妻も流行り病により三十半ばで
      この世を去る。
      荒れたバリトンは再び冒険者の
      荒くれ稼業に身を窶し、中には
      仄暗い依頼も熟したと言う。
      (ランクはこの時に下がった)
      そんな時に、路地で捨てられて
      いた赤子を見つけ、懸命に生き
      ようと産声をあげる赤子の姿に
      感化され、もう一度真面目に生
      きようと奮起する。
      その後、その赤子に“ラーン”と
      名付け、実の娘のように育てる中。
      ほんのちょっとの人助けと世直し
      の冒険を繰り広げている。  
       《名前の由来は音域のバス》

 ラーン→太鼓担当の短剣使いの少女。
     冒険者ランクは“緑”
     ナナキとシアと同じ16歳。
     茶髪のショートボブに語尾が
     「〜っす」なのが特徴の少女。
     今回の旅でナナキとシア、特にナナキ
     と仲良くなる。
     ナナキのダンスにいたく惚れ込み、
     ハジメの圧に負けず
     必死に口説き落そうと奮闘する。
     (その中に僅かな恋慕(・・)の感情がある
     のは、彼女自身も気付いていない。)
     バリトンの事を本当の父親のように
     思っている。
     このパーティーを、音楽隊路線に導いた
     のは彼女であり、切っ掛けはバリトンの
     クラリネットを聞いたからである。
     音楽を非常に愛しており、太鼓だけでなく
     歌も上手い。
      《名前の由来は音域のソプラノ》
      
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