ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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お陰様で☆9評価が200を突破しました。
大台に乗った気分で素直に嬉しいです。ありがとうございます。
次は300を目指す……と言いたいですが、もう1歩進んで☆10を増やしていきたいですね。
どうするべきかは知らんけど。

まぁのんびり更新していきますので、今後もお楽しみ頂けたら幸いです。


第60話 3年目のクリスマス

 ホグズミードに行った翌日から休暇となり、数日経てばクリスマスとなった。

 しかしこの数日で、残念ながらハリーはまたしても沈んでしまった。

 シリウスについての詳細を知った事で、色々重く考えてしまっているようだ。

 知った当日だけはなんだかボケっとしてたけど。

 

 浮き沈みの激しさはともかく、今回はここ最近で一番の沈み様だ。

 ハリーが衝動的に動くんじゃないか、シリウスを追ったりするんじゃないか。

 そう思ったロンとハーマイオニーが心配と不安を伝えた結果、軽く口論になるくらいには沈んで荒れている。 

 

 だけど今日のプレゼント――ファイアボルトに乗れば悩み事も吹っ飛ぶ。と思いたい。

 

 ただしちょっとした問題が1つある。

 当然贈り主は不明のプレゼントになる訳で、しっかり警戒してるハーマイオニーがシリウスの罠だと考えて猛反対するだろう事。

 お母さんだって事情は知ってるから、彼女が伝えようともすぐに箒は戻って来る。

 だけど今の荒れたハリー相手じゃ、それだけで喧嘩になってしまう。ロンだってハリー側に立つ筈だ。

 

 せっかくクルックシャンクスの件を回避して仲良く出来てるのに、そんなの私の胃が大変な事になる。

 どうすれば良いかと悩みはしたけど、今回はすぐに答えが出た。

 実際に何の問題も無く飛べる事を証明すれば良い。

 その為には良い感じの話の流れを作らなきゃだけど……そこは多分どうにでもなるだろう。

 

 

「相変わらずのプレゼントね……」

 

「見慣れてきた自分がなんかヤダ」

 

 そして困るのはこのプレゼントの山もだ。

 今年もまた長時間掛けて整理と手紙の返事を書かなきゃならないとなると憂鬱でさえある。

 何故喜ぶべきクリスマスプレゼントで憂鬱にならなきゃいけないんだ……

 

「仕方ないから後で手伝ってあげるわ。とりあえず朝食にしましょ」

 

「うん、ありがと」

 

 幸いにも、今年も残る事にしたハーマイオニーが自ら手伝いを申し出てくれた。

 とても助かる。本当に。

 

 それはそれとしてまずは軽くでも良いから朝食を、と部屋を出て階段を降りる。

 そして談話室に入ると、丁度ハリーとロンが寮を出る所だった。

 

「あ、おーい……行っちゃった」

 

 その背中に声を掛けるも一足遅い。

 しまった、出遅れた。いや、別に困る訳では無いけども。

 だってハーマイオニーが何を言おうと、既に無事に飛んでいたなら手間が省けるだけだし。

 あ、そうか。彼女をなんとか引き留めておくだけでも解決するのか。

 

「なんか今箒が見えた気がするんだけど……新しく買ったのかしら」

 

「プレゼントかもね。追い掛けてみよ」

 

 あぁ残念。しっかり箒を見られていたようだ。

 大して箒に興味の無い彼女だって、ハリーが新しく手に入れたのなら当然気に掛けるし声も掛ける。

 

 よし、とりあえず予定通りにいくか。

 合流した時に飛んでいたならそれで良し。むしろそうしててくれ。

 

 

 

 

 

「アリス、ハーマイオニー。見てよこれ、ファイアボルトだ!」

 

「すっごいだろ? とんでもない箒が贈られてきたもんだ。今から早速飛んでみようって、外に行くんだよ」

 

 一体何をのんびりしていたのか、私達が追い付いてもハリーはまだ飛んでいなかった。

 私達を見るや、揃って喜びを必死に伝えて来る。微笑ましいけど、はよ飛べ。

 

「そんなに凄い箒なの?」

 

「今年出たばっかの、世界最高峰の競技用箒だよ。ズバ抜けて最速」

 

 気分のブチ上がった2人を見て、ハーマイオニーは純粋に不思議に思ったようだ。

 あまり興味が無い人からすればそんなもんかもしれないけど、目の前にあるのは最新最高級の箒。

 車で言うならスーパーカーだ。

 

 ひとまずそんな説明をしてあげたけど、語る私もウズウズを隠しきれない。

 見たい触れたい乗りたい。はよ飛べ。むしろ飛ばさせろ。

 

「そんなのを贈ってくれるなんて、一体誰が……」

 

「「さぁ?」」

 

 そんなとんでもない物を贈るなんて何者なのか。

 彼女の疑問も当然だけど、相変わらず呑気な彼らは首を傾げるだけだ。

 

「カードもなんにも無かったんだ。大金なんてもんじゃないから、流石にお礼を言いたいんだけどね……」

 

「匿名で贈る物じゃないわ。ハッキリ言っておかしいわよ」

 

「高過ぎるからあえて匿名なのかもしれないじゃないか。例えばダンブルドアとかマクゴナガルが贈ってたら、流石に贔屓だって騒がれちゃうぜ」

 

「それは……まぁ」

 

 一応の説明をハリーがしてくれたものの、その異常さにハーマイオニーは警戒心を高めた。案の定である。

 しかしロンの微妙に納得しちゃいそうな論で一旦は口を噤んだ。

 

「でもなんにせよ怪しいし、乗るのは止めておいた方が良いと思うわ」

 

 それでもその警戒は崩れない。

 申し訳無さそうにハリーを見ながら引き留めた。

 

「はぁ? 乗らないで何をするんだよ、床でも掃くのか?」

 

「ハリーはブラックに狙われてるのよ? 呪いを掛けた箒を贈ったのかもしれない」

 

「冗談だろ。コイツがいくらすると思ってるんだ? スリザリンの箒を束にしたって敵わないぜ」

 

 それに対し怒ったのはハリー本人ではなくロン。

 そしてロンが怒るとハーマイオニーも釣られて怒る。お馴染みだ。

 

 私の胃を痛めない為にも、ここらで口を挟むとしようか。

 

「とにかく! これはマクゴナガル先生に伝えるべきよ!」

 

 おっと、口を挟む暇も無さそうだ。

 これはもう無理矢理に行くか。

 

「ハリー、貸して」

 

「あ、ちょっ……」

 

「実際に飛べば分かるよ」

 

 という訳で、私は口論を聞き流してハリーに近づいて箒を奪い取った。

 取り返される前に走って外へ出て跨り、空を見上げる。あー……考えて無かったけど寒そう。

 

「止めなさいアリス! もし本当に呪われてたら、あなたが殺されちゃうわ!」

 

「私なら大丈夫。落ちたって魔法で対処出来るから」

 

「駄目よ! 落とされる以外の呪いだったら――」

 

 言い争っていたのを放り出して、ハーマイオニーがこっちに駆け寄って来た。

 その心配は有難いけど残念ながら無意味だ。

 さっさと飛んで見せれば彼女の不安も晴れる。だから申し訳ないけど警告は無視させてもらおう。

 

 彼女が言葉を言い切る前に私は地面を蹴り、空へ飛び立った。

 気が急いていたのもあるけど物凄い離陸だ。とてつもない。

 

 

 そうして空を高速で飛び回る。

 うひぇっ……これは中々凄いなぁ。呪われてなくたって振り落とされそうだ。

 

 加速はもう凄いとしか言えない。

 確か10秒で240キロに到達……だったか? こんなのは全く経験が無い。

 でもあくまで加速は、だ。

 

 だって私、変身したら不死鳥だもん。

 アレも相当な速度なのだ。加速では劣っても最高速度では同等……いやそれ以上かな。

 まぁその速度もセストラルには負けるんだけども。魔法生物ってヤバイ。

 

「ふぉぉぉおおお! ひゃっほーーう! 寒ぃぃいい!」

 

 なんであれ、とにかく楽しい箒だ。思わず叫んでしまう。

 急上昇、急旋回。そして急降下。宙返りとかしちゃったりして。

 速さに慣れてしまえば操作もしやすい。流石、世界最高峰と謳われるだけある。

 

 しかしなにより寒い。雪が降ってないだけマシではあるけど、そこまで厚着はしていないから堪らない。

 これはもう降りた方が良いかな。冷え切った手じゃ落ちる。

 

 

「……ふー。ただいま」

 

 そう判断すると同時に地面を目指し、緩やかに着地。

 思ったより細かな制御も効く。本当に凄い箒だ。

 

 体は一気に冷えてしまったけど、ホクホク顔で箒を降りると3人が駆け寄って来た。

 

「思いっきり楽しんでるじゃないか! なんか普通に乗り熟してるし!」

 

 ハリーは憤慨していて、箒を差し出すと勢いよく引っ掴んだ。

 せっかくの初飛行を奪われた形だ、贈られた側としては文句も言いたくなるだろう。すまんの。

 

「アリス、大丈夫!? なんともない!? なんて馬鹿な真似をしてるのよ……もう」

 

「大丈夫大丈夫、全然問題無いよ。ま、物凄い箒って事だけはハッキリしたね」

 

 片やハーマイオニーは何故か私の体中をペタペタと確認してくる。

 心配させてしまったのは申し訳ないけど、擽ったいので止めてほしい。

 

「すんごい箒だな、本当にぶっ飛んでるぜ……ともかく、これでもう警戒なんてしなくて良いよな?」

 

「まぁ……そうね」

 

 そしてロンは素直に感激していた。箒だけじゃなくて私も褒めてくれ。

 

 ついでにハーマイオニーに向き直ってニヤリと笑う。

 彼女としても反論は無かったのか、渋々納得して引き下がった。

 

「ハリー、行ってこいよ。色々吹っ飛ばしてこい」

 

「うん。目の前であんなの見せられたらもう我慢なんて出来ないよ」

 

 その反応を見て、ロンはこれまた良い笑顔でハリーの背を叩いた。

 本当に友達想いだ。これでハリーの気が一時的にでも晴れると信じて疑っていない。

 まぁそれは私も確信してるんだけども。

 

 背を押されたハリーはワクワクを隠しきれずニヤケ顔で箒に跨る。

 そしてゴクリと息を呑み、間を置いて飛び上がった。

 

「うわっ!? あああああぁぁぁぁぁ…………」

 

 飛び上がるというか、もうこれは発射と言って良いのではなかろうか。

 ハリーの悲鳴が空に消えていく。

 

「良いなぁ……楽しそうだ」

 

「……楽しそうな悲鳴だったかしら?」

 

 羨ましそうに空を見上げるロンに、ハーマイオニーが微妙な顔で突っ込んだ。

 うん、あれはマジの悲鳴だったね。

 

 あの速度で飛び出したらそりゃ叫ぶ。私は変身して飛んでいた経験があるから大丈夫だったけどさ。

 でもまぁ、彼ならすぐに私以上に操ってみせるだろうから特に心配は無い。

 

 

「ねぇ、アリス」

 

「ん?」

 

 空をご機嫌に掛けるハリーを3人で眺めていると、ハーマイオニーにちょいちょいと袖を引かれた。

 小声で呼び移動を促されたので、大人しく一緒に歩いて行く。

 と言ってもロンから少し離れただけだけど。

 

「もしかして誰が贈ったか知って――あぁ、知ってるのね」

 

「何も言ってないけど!?」

 

 そうしていきなり核心に触れてきたかと思えば、何故か勝手に納得した。

 私まだ何も言ってないっていうか、自分の言葉さえ言い切ってないじゃないか。

 何を見て判断してるんだ。え、まさか私って顔だけで分かっちゃう程?

 いやいや、流石にそこまでじゃない筈…… 

 

「だからなんの警戒もしないで乗って見せたのね。でもそれは言えない、と」

 

「何も言ってないってば!?」

 

 しかも更に追加してくる始末。

 マジでどうなってんの? 君ちょっと鋭過ぎない?

 

「ふんっ……また裏で色々やってるんでしょう? なんにも相談してくれないで」

 

「いや……あの……」

 

 どうやら私が裏で何かをコソコソやってる事はお見通しだったようだ。

 相談も無く隠されている事にぷんすかしている。

 

 このままってのはちょっとマズイ気がするなぁ……

 彼女も彼女なりに、私を想ってくれてる訳だし。

 ここまで言われて隠し続けたらハーマイオニーがグレてしまいかねない。

 ハーマイオニー・グレるンジャー……いや何でもない。

 

「なーんかおかしいのよね。ずっと違和感があるのよ。何かを見逃してる様な……」

 

 私が何も答えないからか、彼女はブツブツとなにやら呟いている。

 違和感とやらはよく分からないけど、これじゃ真実に辿り着く可能性さえあるかもしれない。

 うーん……どうしたもんか。

 

 当然ながら、あらゆる中心になるハリー含めこの3人には、全てを明かすなんて出来ない。

 それはもう手が付けられない程に改変されてしまうと思うし。

 

 とりあえず今回の事件だけでも上手い具合に説明を……いや難しいな。

 やっぱり解決するまで言えないか。

 

「あーもう。ハーマイオニーはホームズにでもなるつもりなの?」

 

「誰かさんがあんまり秘密ばっかり隠してたら、そうなるかもね」

 

 ひとまず悩むのは一旦打ち切り、軽口を返す事にしてみた。

 我らがイギリスの誇る名探偵に並ばれたら、もう私にはどうしようもないな。

 彼女の頭脳だとなれそうで怖い。

 

「……ごめん。そのうちね」

 

「気長に待つわ」

 

 ともかく。言わないのではなく言えないのだと伝えるだけでも、彼女なら察してくれるだろう。

 というかしてくれた。本当に流石だ。

 とことん甘えてしまっているけれど仕方ない。許せハーマイオニー、また今度だ。

 

 

 

 

 

 

 結局ハリーとロンは休憩を挟みつつ、寒空を飛び回っていたようだ。

 私達がプレゼントを片付け、昼食の為に大広間へ行く道中。空から楽し気な叫び声が聞こえてきた。

 まぁ、楽しそうで何より。風邪ひくなよ。

 しかし本当に気分の浮き沈みが激しい事で。沈みっぱなしよりずっとマシだから喜ばしいけどさ。

 

「あれがファイアボルト……ふふふ」

 

 そして大広間の中へ入ると、窓から空を眺めるお母さんが居た。

 隠しきれないくらいにこっちもご機嫌だ。これからのクィディッチの試合にさぞ期待している事だろう。

 

「とりあえず食事にしない?」

 

「コホン……そうですね。丁度ポッターも降りてきましたし」

 

 私が声を掛けると、お母さんは少し恥ずかしそうにしながら窓を離れた。

 どうやらハリーとロンも昼食に向かってきているようだ。

 

 いつもの4寮のテーブルは片付けられていて、中央に小さなテーブルが代わりに置いてある。

 いや、寮のテーブルが大き過ぎるから小さく見えるだけで、10人以上が座れるサイズだけども。

 

 そうしてハリー達と一緒にお爺様とスネイプが入って来た。

 続いてスプラウト先生、フリットウィック先生。そしてフィルチ。

 

 あとはどの寮か分からないけど緊張している1年生っぽい子が2人。合計12人だ。

 

「メリー・クリスマス! これしか居ないのだからこのテーブルで良いじゃろう。さぁお座り」

 

 どうやらこれで全員らしく、揃うとお爺様が声を張った。

 なるほど。シリウスの逃亡中、しかも城にまで入ったという事で殆どの生徒が帰省したらしい。

 

 ちなみにここには来ていないけど、そのシリウスとルーピン先生は必要の部屋でコッソリのんびりしている。

 きっと先にお爺様が食事を届けて楽しくやっている事だろう。

 ペティグリューは……せっかくのクリスマスでも怯えてロンのベッドにでも潜り込んでいるかもしれない。そろそろまた危機感を与えてあげよう。

 

 まぁ今はそれは置いておくか。

 

「クラッカーじゃ。ほれっ」

 

「…………」

 

 お爺様が謎にはしゃいで大きなクラッカーを取り出し、何故かスネイプに押し付けた。

 渋々受け取ったスネイプは嫌そうに紐を引いた。

 すると大砲みたいな爆音がして、ハゲタカの剥製を乗せた大きな三角帽子が彼の頭に現れた。

 

「「……くっ」」

 

「んふっ」

 

 それを見てハリーとロンは必死に笑いを堪え、私は声が漏れた。

 だってこれ、ボガートが変身した時の……ズル過ぎるだろ。

 隣のハーマイオニーも顔を隠して微かに震えている。

 

 当のスネイプは物凄い顔になって帽子を脱ぎ、お爺様に押しやった。

 

「さぁ、どんどん食べましょうぞ」

 

 お爺様は呑気にその帽子を受け取って被り、いつの間にか現れた食事に手を伸ばした。

 分かっててやってるのかなアレ。全く、お茶目と言うには質が悪い。

 下手したら私達が八つ当たりで減点されちゃうじゃないか。

 

 

 そんな始まりで食事が進んでいくと、扉が開いてトレローニー先生が現れた。あ、居たんだ。

 煌めく特大トンボみたいなのがスーッと近づいて来ると、お爺様がちょっぴり驚いた様に立ち上がった。

 

「シビル。これは珍しい」

 

「あたくしも驚きましたわ。水晶玉を見ていたら、皆様とご一緒する姿が見えましたの。運命があたくしを促しているのを拒む事は出来ませんわ」

 

 どうやら普段からトレローニー先生は1人で食事をしているらしい。確かに歓迎会とかでも見た事無かったしな。

 残念ながら彼女に関しては私の記憶もかなり薄れている。だって影薄いんだもん……

 

 ハリーだけじゃなく私の予言もしているという所を考えると、原作から最も変化の大きい人と言えなくもない。

 だから気にするべき人ではあるんだけど、本当に影が薄いから困ったもんである。キャラは強烈なんだけどな……

 

「それはそれは。椅子を用意せねばのう」

 

「あっ……校長先生、あたくし座れません。これでは13人になってしまいます……こんな不吉な数字はありませんわ。13人が食事を共にする時、最初に席を立った者は死ぬのですわ!」

 

 お爺様が杖を振って椅子を出すと、先生はハッとして急によく分からない事を言い出した。

 いや、これは確か……えっと……既にお爺様が立ち上がっていたから、それで死を予言されていた……みたいな説があったな。

 こじつけやんけ、と思ったのをなんとなく覚えてる。

 

 私は信じない。お爺様の死の予言なんて信じる訳が無い。

 そもそもトランス状態の予言じゃないしね。

 

「構わずお座りなさい。七面鳥が冷え切ってしまいますよ?」

 

 いつもの不吉な予言、とお母さんはちょっぴり怒りながら促した。

 まぁ怒りたくもなる。そんな事言うならなんで来たんだって話だしさ。

 

 結局トレローニー先生は渋々座り、普通に食事を始めた。

 ゆっくり2時間も経った頃には、その意味不明な予言っぽい事さえ忘れていた様に見える。

 

 しかし食事が終わって、私を筆頭にハリーとロンとハーマイオニーも間を置かずに立ち上がると、彼女はまた急に騒ぎ出した。

 

「あなた達! 誰が最初に席を離れましたの?」

 

「「さぁ?」」

 

「誰でも良いんじゃない?」

 

 気にしてた癖に見てなかったんかい。

 勿論、そんな事は彼女以外は気にもしていないけど。

 ハリーとロンは首を傾げ、私は適当に返し、ハーマイオニーは若干の嫌悪感を見せつつ黙っている。

 

「そうですとも。誰が最初でも大して変わりは無いでしょう。扉の外に斧を持った極悪人が居て、最初に出て来た者を殺すと言うのなら別ですが」

 

 そしてお母さんは辛辣だった。

 その冗談に笑いながら、私達は普通に大広間を出て寮を目指した。

 残念ながら斧を持った極悪人は居ない。

 

「全く。なんなのかしら!」

 

 そして歩いていく中でハーマイオニーがプリプリと怒り出した。

 占い嫌いな彼女からすれば、せっかくの団欒の空気を壊す様な予言は腹立たしくて堪らないらしい。

 

「予言はある、なんてアリスは言ってたけど……とてもじゃないけど信じられないわ」

 

「いや私もアレは信じてないよ。そもそもあの人の本当の予言って、明らかに見て分かるくらいに変な状態になるらしいからさ」

 

「ふーん。いつ見ても明らかに変だけどな……まぁ、じゃあ気にしなくて良いか」

 

「どうせまた僕が死ぬとかなんとか言うだけさ」

 

 あの人の普段の言動は真面目に捉えちゃ駄目なやつだ。

 本当の予言を目の当たりにしたお爺様でさえ信じちゃいないだろう。それこそトランス状態を見ているから。

 ある意味、ロンの言う通りいつも変ではあるけども。もっと変にならなければ考える必要も無い。

 

 その本当の予言……ペティグリューの逃走がいつ予言されるか。

 出来るなら、それを確認してから動きたいもんだ。 

 頼むよ先生。ちゃんと予言してね。




トレローニーの予言の説について。
原作では1年生2人に加えスリザリンの5年生が1人の12人ですが……実はロンがスキャバーズ(ペティグリュー)を連れていたので既に13人の状態で食事中。
そこでダンブルドアが立ち上がったので、彼の死を予言していた……という説。

他にも似た描写がある。

不死鳥の騎士団で13人が食事をしていて、最初に立ち上がったのはシリウス。
そしてご存じの通り彼は死亡した。

7人のポッター作戦の後、ムーディの死を悼む13人の中で最初に立ち上がるのがルーピン。
やはり彼も死亡した。

総じてこじつけと言われればそれまで、という印象。

自分でも一応確認はしているけれど、明確にスキャバーズを連れているという描写が見当たらない(衰弱してるから常に連れているという事?)
ルーピン以外にフレッドやニンファドーラも死亡しており、誰が最初に死亡したかは分からない。

なのであくまで正確ではない説としての紹介とします。
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