ハリーの成長回。
守護霊に関しての独自解釈が入ります。
まぁ物語には関係無いのであまり気にせず……
待ち侘びたホグズミードに行ける日。
僕はまた隻眼の魔女の像を通ろうと廊下を歩いていた。
念の為にもう透明マントを着ているし、地図で像周辺の人を確認しながらだ。
まずいな、スネイプが像のすぐ近くに居る。ついでにネビルも。
これは鉢合わせて可哀想な事になるな。
時間を置くか、遠回りして行った方が良いかも……
「おっと!?」
「うわっ!?」
なんて、そんな事に気を取られてる場合じゃなかった。
目的地だけじゃなく、自分の周りも確認しながら歩くべきだった。
廊下の角を曲がるタイミングでルーピン先生とぶつかってしまった。
マントがはだけて僕だと丸分かりだ。やらかした……これを着てる時点で怪し過ぎる。
しかも地図も落としちゃった。マズイ、起動中だから古ぼけた羊皮紙だとも言えない。
「す……すみません、先生」
どうするべきだ。どう誤魔化せば……
「驚いた……それはジェームズの透明マントじゃないか。しかもこの地図は……」
僕が動くより先に、先生は地図を拾い上げながらそう言った。
そういえば先生は父さんを知ってるんだった。
マントまで知ってるって事は、父さんもこうして使ってたんだろうか。
いや、待て。どうして地図まで知ってそうな事を……
「うーん……これは困ったな。予想外……いや予定外だ」
そして先生は本当に困った様に呟いた。
予定外? どういう事だろう。
なんにせよ上手く誤魔化せるかどうか……駄目だ、全然頭が回らない。
「残念ながら、こうなってしまったら見過ごす訳にはいかないな」
「先生……その……」
「言い訳や誤魔化しは通用しないよ。私はマントも地図も知っているし、君が今目指していた場所も知っている。この先にある隻眼の魔女の像……その抜け道だね?」
全て看破されている。もうどうしようもない。
僕は諦めてただ黙っているしか出来なかった。
「もっと言えば、君が城を抜け出してホグズミードに行った事には察しがついていた。きっと今日も行くだろうから、帰ってきたらお説教しようと思ってたんだけどね……」
どうやらとっくにバレていて、温情まで掛けてもらっていたようだ。
確かに、今ここで鉢合わせてしまった以上は先生として見送るなんて出来る筈が無い。
どっちにしても既に駄目だったんだな。
「当然、この地図は没収だよ。『いたずら完了』」
先生は当たり前の様に地図を閉じた。
本当に知ってるんだ……マントは父さんのだから良いとして、地図は一体どういう……
「さて、じゃあお説教だ。と言っても……許可されていないホグズミードに行ったからとか、規則を破ったからとか、そういう話じゃない」
黙り込んだままの僕を、先生は真剣な表情で覗き込みながら言った。
じゃあどういうお説教なんだ。てっきりそこを怒られると思ってたのに……
「何故この地図を提出しなかった? 何故今この状況で、無断でこっそり外へ行こうと思った?」
続いた先生の声は、いつもと違って少し冷たく感じた。
これ以上無く真剣な話なんだと言わんばかりに。
「魔法省を始め、誰も彼も君をシリウス・ブラックから護ろうとしてきたんだよ。君の友人だって心配していた筈だ。自分は好きな様にするから、勝手に心配していれば良い。そんな風に考えていたのかい?」
違う、と言えなかった。
僕を心配して護ろうとする大人達を鬱陶しく思っていたのは事実だ。
ハーマイオニー始め皆の心配も分かっていて、やりたい事をやった。
口うるさく言わないのは皆が気を遣ってくれてるだけだって、薄々感じていたのに。僕はただ我儘なだけで……
「状況と立場くらいは深刻に受け止めても良いんじゃないかな。君の御両親は、君を生かす為に命を懸けたというのに……それに報いるのに、これじゃあまりにお粗末じゃないか」
言われてみれば、僕は全然深刻に考えて無かった。
本当はそうするべきと分かっていた筈なのに。
きっと大丈夫。これくらいなら大丈夫。そうやって緩く考えてばかりだった。
両親の事を言われたらもう、反論なんてする気にさえなれない。
命を懸けて護られた。今も尚、その愛で護られてる。それを聞いた一昨年、僕は嬉しく思った筈だった。なのに……
「お説教は終わりだ――もし気持ちを切り替えられたなら、今日もいつもの時間に来なさい。守護霊の課外授業をしてあげよう」
「……はい」
先生は優しく肩を叩いてすれ違い去って行った。
ずっと何も言えずにいた僕は、最後の最後にたった一言だけ、か細い返事を返すしか出来なかった。
今までに無い程、物凄く惨めな気持ちだった。思い知らされた。
僕は護られるばかりの子供じゃない。もう大人なんだ。
そんな事を思っていたのに、実際は誰よりも我儘な子供だった。
馬鹿なんてもんじゃない。泣きたい程に惨めだった。
*
その後は何をするでもなく、ぼんやりと過ごした。
そしていつもの課外授業よりいくらか早い時間になって、僕は先生の元へ向かった。
あんまり気持ちは切り替えられた気がしないけど、何もしないでいるよりもよっぽど良いと思ったから。
「あれ? 随分早く来たね」
「アリス? どうして……」
すると何故かアリスが既に居た。人によるとは言え、まだホグズミードから戻るには少し早い時間だろうに。
大きなペロペロキャンディを舐めてるから、遊びには行ってきたみたいだけど。なんか余計に幼く見えるな……
「気持ちは切り替えられた?」
「なんでそれを……」
腰掛けていたテーブルからピョンと降りつつ、アリスはそう微笑んだ。
幼く見えるっていうのに、不思議と大人っぽく感じる。彼女の一番不思議な所だ。
ていうかなんで知ってるんだろう……先生から聞いてるのかな。
「まぁ白状しちゃうと、先生にチクったのは私だからね。バレて誤魔化せなかったからだけど……」
と思ったらテヘッと意外な告白。いや、意外ではないか。
アリスが何かを誤魔化せるなんて大して期待しちゃいないし。
言ってる通り、バレた後に確認されて誤魔化せなかったんだな。
だからって彼女を責める気持ちなんて欠片も無い。悪いのは僕なのだから。
「でも謝らないよ。お説教は必要な事だっただろうから……そうでしょ?」
「うん。割と本気で泣きたくなるくらい効いたよ」
あえて軽く振舞ってるんだろう。相変わらず微笑んでそう言った。
アリスも先生と同じ様な事を考えてたのかもしれないな。
いや、きっとそうだ。なんならハーマイオニーだってそうかもしれない。
一昨年、規則破りについて彼女にお説教された事を思い出す。
分かったつもりで何も分かっちゃいない。僕は変わらない。
本当に、いい加減成長して変わらなきゃ。
「なら私も真剣に話した甲斐があったという事だね。良かったよ」
そこで先生が奥から現れた。
もう終わった話だと言わんばかりに優し気だ。
「先生……その、すみませんでした。あ、いや……ありがとうございました」
「素直でよろしい」
思わず謝ってしまい、すぐに訂正した。
温情を掛けて、そして僕を思って厳しく言ってくれたんだ。返すべきはお礼だろう。
先生はさっきと同じ様に笑って僕の肩を優しく叩いてくれた。
「んじゃ早速。ハリー、とりあえず『フォーカス』無しでやってみて。前回で盾にする感覚は掴めたよね?」
「あー……うん」
ひとまずお説教の話は終わり、とアリスが手を叩いて話を切り替えた。
今回はあの集中力を高めてくれる呪文は無しらしい。アレがあると凄く良い感じだったけど……まぁいつかは無しでやらなきゃならない。
でも果たして今の僕に前回と同じ事が出来るだろうか。
真面目なお説教を受けた後にアリス達のパンツを思い描くとか無理だ。ていうか嫌だ。
そもそもあの光景を幸福として力にするのは絶対間違ってる。
盾として使える様になった感覚は覚えてるし、他の事でどうにかならないだろうか。
いやなってくれ、頼む。
そう思ってパンツは一旦忘れて呪文を唱えた……けど。
盾なんて程遠い。全然力になってない。駄目か……やっぱりパンツなのか……
「駄目じゃん。やる気あるの?」
「ごめん……」
普通に怒られた。アリスってなんだかんだ厳しい。
でも優しくもあるし……もしかして事情を話したらパンツを見せてくれたりして。
しょうがないなぁ、なんて言いながら赤い顔でスカートをたくし上げて……
あぁ駄目だ、また頭がおかしくなってる。切り替えろ馬鹿!
「ふんっ!」
とりあえず冷静になる為に、僕はテーブルに頭を叩き付けた。痛い。
「え、何してんの……? 頭おかしくなっちゃった?」
その通り、頭がおかしくなっちゃってたんだ。
当たり前だけどアリスも先生も驚いてる、というか引いてる。
ふぅ……痛いけどなんとか落ち着けたか。
「あのさ。アリスはどういう事を考えて守護霊を作り出してるの? あくまで参考だし、言えないなら良いけど」
「急に真面目になるし。なんなの……」
そしてふと思った。いや話をすり替えたかったってのもあるけど。
そもそもアリスは何を思ってあんな凄い守護霊を出してるんだろう。
「まぁ、そうだね。私は……あっ」
聞かれたアリスはとりあえず答えようとして、何故かすぐにハッとした。
この表情は何かやらかした時のだ。
「ごめんハリー、コツというかすっごい大きなヒントを忘れてた」
案の定、やらかしてくれていた。
教えて貰ってる立場だし、申し訳無さそうな彼女を悪く言いたくは無いけど……そんな反応する程に重要な事を忘れないでほしい。
「一昨年見たみぞの鏡。あれは何を映す鏡だった?」
「え? そりゃ、最も望む事を……あ、そっか」
ゴホンと咳払いを挟み、アリスは気を取り直して真面目な顔で言った。
みぞの鏡……あれは見た者が最も望む何かを映し出す。
答えてすぐに理解した。そういう事か。
「大抵の人は、あの鏡に映った物こそ最も幸福なんだと思うんだ。もしくは、それに気付ける何か」
考えてみればその通り。最も望むという事はつまり幸福に近い事だろう。
僕は記憶に無い家族、両親の姿を望んだ。それこそ、鏡の虜になるくらいに幸せだった。
「私はね、お爺様もお母さんもスネイプも……勿論ハリーもロンもハーマイオニーも、一緒に笑って成長していく姿が映ったんだ。そんな皆と今こうして、愛し愛されて生きている事……そんな未来を想像する事。それが私の思い描く幸福だよ」
あの時鏡を見ていた彼女と同じ。ずっと年上に見える不思議な微笑みを浮かべながら、アリスはそう語った。
なるほど。言われれば確かに、それ以上無い程に幸せな事なのかもしれない。
そうか……言葉にすると陳腐に感じそうだけど、きっと守護霊は愛なんだ。
自分だけで完結する想いじゃない。その想いの中には誰かが居る。
こないだ上手く出来たのもそうだ。アリス達のパンツへの愛で……いや落ち着け馬鹿。
とにかく。人によってはそうじゃない場合もあるだろうけど……でも、僕は愛だと感じた。
そしてこれは間違ってないんじゃないかと思える。
だって、何かがカチリとハマった様な感覚がある。
「こんな大事な事を伝えるの忘れてたなんて……やっぱり私って教えるの向いてないのかなぁ……」
なんだかしょんぼりしているアリスを置いて、僕は考えた。
あの鏡に映ったのは両親……確かにそれは幸福だ。
だけど思い出せ。あの時、僕は最後に何て思った?
両親を映す鏡を背にして、何を考えた?
「……ありがとう、アリス。色々分かったよ。それに、色々思い出した」
答えはすぐに出た。
僕は……僕の幸福は、彼女と同じだ。
最高の親友達と過ごす、なんてことない日々。何よりも貴重で大事な今を、ただ楽しく笑って過ごす。
何故だか毎年危険な事が起きるけど、だからこそ。それが幸せなんだ。
いや、それだけじゃきっと足りない。
両親だ。本当はもう居ない両親も含め、皆と過ごす。そんな想像。
あぁ……これだ。愛し愛される家族と親友達。これ以上は無いと断言出来る。
「見ててよ。僕は今日、変わるんだ。護られるだけの我儘な子供から、ちょっとだけ大人に」
気付けば勝手に杖を構えていた。
出来る。今なら上手くいく。そんな確信があった。
そしてこれを機に変わろう。
僕はそんな親友達の想いをも裏切ってしまった。命を懸けて護ってくれた両親をも蔑ろにしてしまった。
だから変わるんだ。少しだけで良い……今より少し、成長してみせるんだ。
「エクスペクト・パトローナム!」
そんな決意を込めて叫ぶと、杖から眩い白銀の光が溢れた。
それは塊となって姿を形作った。雄々しい角を携えた、鹿の様な姿を。
「ジェームズ……!?」
「うそぉ……急に出来ちゃった」
先生が勢い良く身を乗り出し、父さんを呼んだ。
アリスもポカンと口を開けて、咥えていたキャンディを落とした。
自分でもびっくりではあるけど……達成感や満足感以上に、なんとも言えない感情が湧いてくる。
白銀の牡鹿は僕らの周りを軽快に跳び回り、そして霧の様に消えていった。
「驚きだ。有体の守護霊を作り出した事もそうだけど、あの守護霊はジェームズと同じだった」
だから先生はあんな反応を……
先生と父さんはかなり親しかった、とこないだ言っていた。
多分、僕達の様に親友だったんだろうな。じゃなきゃこんな風になんて……
「リリーの愛が君を護っている様に、ジェームズも同じなんじゃないか……そう思いたくなってしまうよ」
先生はしんみりとしながら僕を見つめた。
僕を通して両親を見ているのかもしれない。
でもそうか……父さんと同じ……それはなんだか、凄く嬉しいな。
やっぱり守護霊は愛なんだと、そう信じたくなる。
ていうか、あれ? 先生は僕が母さんの愛で護られてるって知ってるんだな。
ダンブルドアから聞いたのかな。まぁいいか、そもそも母さんの事だって知ってるみたいだし。
「これ私が最初からちゃんと伝えられてたらすぐ習得出来てたんじゃ……いやいやそんな……え、私の所為かなこれ……」
そしてアリスは何故かしゃがみ込んでしょんぼりしていた。
拾い上げたキャンディの棒を持ってプラプラさせながら、小声でブツブツと何やら呟いている。
確かに最大のヒントだったけど、これは今日の先生のお説教もあってだ。むしろあれが無ければ……
本当に、彼女だけじゃなく先生にも世話になりまくってる。
忙しいだろうに時間を作って教えてくれて、真剣に怒ってくれて。
改めてしっかりお礼を言うべきだろう。
「ところで、これで習得して終わりだと思ってそうだけど。そんな事無いからね?」
「え?」
僕がそう思って先生へ向き直すと同時、立ち上がったアリスが口を挟んだ。
習得出来たんだからこれで終わりなんじゃ……ていうか気を取り直すの早いな。
「有体の守護霊が出せる様になったからって、それを吸魂鬼の前で扱えるかどうかはまた別だよ」
「その通りだ。とりあえず早いけど今日はこのまま気持ちよく終わるとして、次はボガート相手に完璧に使える様になろうか」
言われてみればそうだった。
何を満足して終わろうとしてるんだ僕は。
今までの練習だって吸魂鬼を想定してボガートを使ってたのに。
これはもう少し掛かりそうかな……
一旦の区切りには丁度良いからか、先生はそう言って用意してあった箪笥を魔法で部屋の奥へ運んだ。
アイツもしょっちゅう良い様に使われて大変だな……
なんか可哀想だから、あんまり時間を掛けない様にしてやろう。
「はい。僕も、今日はすぐにでも寮に戻りたいです。ロンとハーマイオニーに……勿論アリスにも、伝えなきゃならない事があるから」
「んぇ?」
それに、切り上げるのには大賛成だ。なんせ僕は今すぐ親友達に言わなきゃならない。
心配してくれてありがとうって。想いを無下にして、勝手な真似ばかりしてごめんって。
それを伝えて、やっと1歩だけ僕は変われるんだ。
急に名前を出されたからか、アリスはキョトンと首を傾げてこっちを見た。
そしてすぐに視線を戻した。未だ名残惜しそうに持っているキャンディへ。
うん、勿体無いけどそれは捨てようね? 恨めし気に見つめたって綺麗にはならないよ?
*
素晴らしき私の助言を得て、ハリーは守護霊を完璧に習得してみせた。
と言えば聞こえは良いものの、実際は忘れていた事を伝えただけである。なんてこった。
私は本当に教えるのが下手なのかもしれない。
将来はホグワーツの教師に、なんて曖昧に考え始めてたのに先行き不安だ。
しかし補助有りで盾までだったのに、補助無しで有体とは一体……?
あの瞬間の私は宇宙を背負った猫の様になっていただろう。
おまけに驚き過ぎてキャンディを落としてしまったのが悔しい。
あれはハニーデュークスで一番美味しいキャンディと評判なんだぞ……ちょっと高いんだぞ……勿体無い……
浄化呪文で綺麗にして食べようかと思ったけどギリギリで耐えた。流石に食べ物は気分的に駄目だった。
いやそんな事はどうでも良くて。
どうやらハリーは色々思う所があって私達に何か伝えたいらしい。なんだろう?
「ロン、ハーマイオニー、ちょっと良いかな」
寮に戻って、談話室でまったりしている2人へ駆け寄るハリーの後ろをてこてこ付いて行く。
顔は見えないけど明らかに真面目な雰囲気だ。
「あ、ハリー! どうしたんだよ、来ると思ってたのに」
「良くない事だと思い直したのよ。そうよね、ハリー?」
声を掛けられた2人はバッと反応した。ハリーが来なかった事を気にしていたからね。
見つかったんじゃないか、抜け道に問題があったんじゃないか、って。
ちなみに私はその確認と理由を付けて先に帰った。
ルーピン先生のお説教は予定してたから、そのフォローでもしてやろうかと思ったんだけど……
帰って早々に先生から事情を聞いて、多分来てくれるだろうと部屋で待ってた訳だ。
「あー……実は――」
そしてハリーは何があったのかをポツポツと語った。
先生から厳しく叱られ、自分が何をしていたのかを理解したそうだ。
私達の心配や不安を無視した事を謝罪された。
泣きたくなるくらい効いた、と本人が言ってた通り……どうやら相当に反省したみたいだね。
こうして私達に直接話してくれるとは。
真面目に怒られた、なんてこの年頃じゃ恥だと思って人には言いたくないだろうに。
あぁ、そうか。それで精神的に成長して守護霊に影響したのか。
いくらなんでもいきなり躍進し過ぎだし。大きな変化があったのは確実だろう。
「そう……でもお説教だけで済んで良かったわね」
話を聞き終わったハーマイオニーは心底安堵した様に、ホッと息を吐いて言った。
そういえば減点は無かったんだな。原作でも無かったけど、全く先生は甘いんだから。
「それで、その……僕はもう、ホグズミードには行かない。少なくともブラックの件が落ち着いて、ちゃんと許可を貰って、それからだ」
「じゃあこれでスッキリね。正直どうして良いか、私も分からなくなってたから……」
ハッキリと言葉にしたハリーへ、ハーマイオニーはもう一度安堵の笑みを向けた。
彼女も彼女で色々考えてただろうからね。
「皆には色々気を遣わせちゃったよね。ごめん、ありがとう」
「……謝るのは僕だ。軽く考えてたのは僕だって同じだよ。最初はそんな風には思ってなかったのに……結局ハリーを焚き付けて、一緒になって呑気に遊んで……ごめん」
こうして吐き出したからだろうか。ハリーは晴れやかに笑っている。
そしてずっと黙っていたロンは対照的に沈み、絞り出す様に謝った。
ハリーに釣られて彼も随分反省したらしい。
「ロンなりに僕の事を思ってくれてたのは凄く伝わってるよ。それこそありがとう」
「よせよ」
まぁそれもハリーの言う通り、ロンなりに考えた結果だったんだろうけどね。
友達想いだからこそ、目の前の問題を飛び越えて寄り添おうとしてしまっただけ。そんな感じだと思う。
繰り返しお礼を言われたロンは恥ずかしそうに笑って、拳をハリーの胸元へポスンと叩きつけた。
なんだかなぁ……青春だなぁ……
「……これもあなたのお陰?」
「ううん、違うよ。ハリー自身が考えて乗り越えたんだ」
後方保護者顔でホクホクしているとハーマイオニーがすり寄ってきた。
それは買い被りだ。なんでもかんでも解決出来る程私は凄くない。
まぁ、そう思う様な信頼をしてくれてるという事でもあるから嬉しいのだけど。
なんにせよ、ハリーは私が介入せずとも成長してみせた。その結果が守護霊だ。
自分を省みて、考えて、理解した……つまり大人になったからこそ。なんじゃないかな。
「一気に大人の階段上ったみたい。もう大人の男かもね」
「――っ!?」
ジニー、そういう意味じゃねぇ。座ってろ。
なんでピンポイントでそこだけ聞いちゃうんだ君は。
【守護霊】
取り留めも無い事を色々垂れ流すだけの、答えの無い考察未満の話。
守護霊は最も親近感のある動物の姿だという設定になっている。
そして動物もどきで変身する姿と恐らく同じであり後に変化する事もある、とも。
動物もどきで何に変身するかは生まれ持った動物的な素質だろう(その人がその動物っぽいとは限らない)
その素質に合わせて守護霊は姿を形作るのかもしれない。
もしくは父親の影響を受けた姿となるのかも?
一応、語源を辿ると父親という意味があるので。
スネイプはリリーを想い牝鹿の姿に。
ジェームズは元々牡鹿であるが、リリーも最初から牝鹿だったかは不明。
同じ鹿だったから惹かれ合ったなんて可能性も無くはないかもしれないが……リリーもジェームズを想う事で変化したのかもしれない。
男女として想い合うから雌雄で別れてるとか。
ニンファドーラはルーピンを想う事で狼に変化した。
ルーピン自身の守護霊も狼であるが、それは狼人間だからだろう(彼はそれが好ましくないのか、あえて有体での守護霊は使わない)
本来生まれ持っていた動物的素質が狼人間という素質で上書きされ、そっちに合わせて狼の守護霊へ変化したのかも。
こうなると守護霊がペアになっていない夫婦は可哀想である。
有体の守護霊を出せる魔法使いは少数、検証や確認もまともに出来ないだけで、一般的に守護霊はペアになるものなのかもしれないが。
幸福が必要な守護霊だからこそ、その幸福の根幹が変わったなら姿も変わる……となれば、守護霊は幸福と言うよりも愛なのかもしれない。
その愛を特定の1人に特別強く向けると変化するのだろう。
それなら闇の魔法使いには行使出来ないというのも納得感が出て来る……様な気がしないでもない。
実は家族愛が強いマルフォイ家は使える可能性があったりして。
でもって。愛であるなら、あのアンブリッジが有体で使えるのも分かる気がする。強烈な自己愛という意味で(分霊箱であるロケットの影響もあるらしいが)
そして姿の変化は術者の意識に関係無く勝手に変わる。
影響を受ける相手の守護霊の姿を知っている必要があるのかは分からない。
繰り返すが有体で扱えるのは少数なので、知っている場合の方が少ない筈。
認識の外にある何かによって影響し合っているのかもしれない。
これが霊的な何かが取り憑いているとかであれば色々しっくり来そうだが……エネルギーだと言われているので違うのだろう。
正直いくらでも語れるのだけど、長過ぎるので終わり。