魔法機士メガトンコウジ   作:コッコリリン

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書き溜めはここまで。短い? だってお試しなんだもの。原作と設定に矛盾があった場合なんとか修正頑張ります。途中で力尽きたら諦めてください。嘘です。

~追記~
大きく修正したことで展開がガラリと変わりました。ご了承ください。


第二話 コウジ、出撃

 

 

 

「Foo!! 今日の講義はお休みじゃーーーーい!! レッツ・パーリーダンス!!」

 

「果てしなくうるせえ!!」

 

 従来のど真ん中にて、午後からの講義が教授の急用によって中止になったためにテンション上げ上げではしゃぎながら叫ぶコウジ(バカ)、諫める友人。道行く人は関わりたくないとばかりに奇異の目で見ては通り過ぎていく。至極真っ当な対応である。

 

「まままま、そう怒んなって友人~。今日は平日、周りは学校アンド仕事、そしてウチらは自堕落タイム! 神が与えたもうた幸福を一緒に噛みしめようぜ~! 具体的には商店街で」

 

「ええい肩組むな鬱陶しい! 大体お前の言う幸福って商店街にあるうどん屋だろうが!!」

 

「Exactly」

 

「無駄に発音いいの腹立つ」

 

 周りの目など気にしないコウジとは違う友人は鬱陶しさを隠そうともせずにコウジの顔に肘を当てて押しのけようとする。一見すると険悪なようでいて、本人たちからしたらただのじゃれ合いである。

 

「……はぁ。わぁったわぁった。ちょうどお昼時だし、付き合ってやるよ」

 

「いよっ! 流石友人! 付き合いのよさと人のよさは天下一品! 将来嫁に尻に敷かれるであろうことは確定的だと有名なだけある!!」

 

「誉めてねぇよな? けなしてるよな? ぶちのめすぞこの野郎」

 

 そんなことを言い合いながら、途中で「……ちょっと待て。俺ってそんなんで有名なの?」と遅れて反応した友人からコウジはそっと目を逸らすというハプニングはありつつ二人は歩き慣れた町をブラブラと歩く。

 

 と、その足がピタリと止まった。

 

「……ありゃりゃ」

 

「なんじゃこりゃ……」

 

 二人の目の前に広がる光景。それは、見慣れた町の景色から一転した、凄惨なもの。

 

 電柱は折れ、アスファルトには大きな穴、ブロック塀の一部が崩れた、自動車事故でもここまでひどいことになるのか? と言われてもおかしくない状況の道だった。現在は誰もいないが、現場検証のためかその道を『立ち入り禁止』と書かれた規制線が道を塞ぐ形で張り巡らされている。

 

「なんかの事故か? にしちゃ地面に穴が空くなんて、普通じゃねぇよな」

 

「ん~……確かにすげぇよなー」

 

「な? しかもこの間なんて近くの動物病院でも車が突っ込んだらしいじゃん。この辺り住宅街だから見通し悪いんかね?」

 

「かもなー」

 

 何にせよ、この道は使えないとわかった二人は、多少遠回りにはなるが別の道を通ることを選択、踵を返して現場を後にする。友人が好奇心から他愛なく話を振ってコウジは相槌を打つ。

 

『……マスター』

 

『わかってるってクロス。気付いている気付いてる』

 

 その間、コウジの頭に語り掛けてくる声。コウジがクロスと呼ぶ声に応え、同意する。

 

『なんか、魔力? 反応ってのか? あるんよな』

 

『はい。反応からして日数は経過しているようですが、それでも濃い残留魔力を感じられます。確実に魔法関連の事件が発生した証です』

 

『ほーん……お前みたいなんを持ってる奴がいるってことか。結構長いことお前と一緒にいるけど、こんなん初めてだわ』

 

『同意します。まさか身近にマスターと私のような者たちがいるとは……』

 

 戸惑っているクロスに対し、興味を抱きつつも大したリアクションのないコウジ。世界は広いからそういうこともあるもんなんだなーというくらいしか考えていない。

 

『あ、そーいやこの間なんかお前以外の声がしたと思ったんだけど、あれ関係あんのかな』

 

『声……確かマスターが「うっせ眠いんじゃボケェい」と言っていたあの日のことですか』

 

『そそ。夢だと思ってたんだけどなー。なんつってったけかな……忘れた』

 

 夢うつつの中でなんかか細い声が聞こえたが、眠気が勝ったコウジはそのまま就寝。朝にはそんなことがあったことすら忘れていたが、クロスの話を聞いて思い出した……思い出したからどうということはないが。

 

『声、というのも気にはなりますが、確実にこの町で何かが起きているようです。マスター、念のため用心を』

 

『おっけおっけ……まぁ』

 

 ニッと、コウジは笑う。

 

『大丈夫。なんとかなるなる。な?』

 

『……ええ、そうですね』

 

「あ? なんだよ急に笑って」

 

「いや、こないだのパイ投げ祭りを思い出した」

 

「やめろ思い出すな。あれ悲惨だったんだかんな? 意味もわからずパイが四方八方から飛んできて地獄絵図だったんだかんな? 原因はなんか知らんけどあれで食堂がその日使えなくなったばっかりか俺まで掃除に駆り出されたんだからな? 俺クリームまみれのままだったんだからな?」

 

「そうか……コント研究会が大量に作り過ぎたジョークグッズのパイの処理を頼まれたんだけど、やっぱ実際に使うんじゃなくて普通に捨てればよかったか」

 

「お前らか原因ゴラァァァァァァァ!!」

 

「ごめんちゃい」

 

「うるせええええええええええ!!

 

 怒り狂った友人からコウジは逃走した。友人は追いかけた。双方、陸上競技選手もびっくりな綺麗なフォームだった。コウジは拳骨一発で許された。

 

 

 

 

 

 

「うぃー、食った食った」

 

『総カロリー1000オーバー。食べ過ぎですマスター』

 

「硬いこと言うなってー。うどんだと食べ過ぎちゃうんだよー」

 

『肥満による成人病が懸念されます。明日は食べたカロリー分の運動を推奨します』

 

「りょ」

 

 夕方。昼にうどんを食べてから友人と一通り遊び、夕食前でも軽くうどんを一杯(という名のドカ食い)たぐった後に友人と別れたコウジは、やや膨れた腹を摩りながら歩く。茜色に染まる空の向こう側に群青が混じり始め、もうじき街灯にも明かりが灯る時刻になろうとしていた。

 

「……なぁクロス」

 

 アスファルトをコツコツと音をたてながら歩くコウジ。ふと、口から相棒の名を呟くように呼ぶ。

 

『はい、マスター』

 

「この町に、ウチみたいな奴がいるんよな? ……どんな奴だと思う?」

 

『あの陥没した道から感じられた反応から判断するに、恐らく……いえ、確実に高ランクの魔導師でしょう。年や性別など、どのような人物かは把握できませんが』

 

「ふ~ん……」

 

『……マスターは、その人物に会った時に何を?』

 

 クロスの問いに、コウジは「ん~」とやや考え込む仕草を見せると、

 

「いんや、別に? 会ったら会ったで仲良くなれるならそれでいいし、仲良くなれんなら仕方ない」

 

『万が一、敵対することになった場合は如何しましょう?』

 

「あー、それなぁ……まぁ」

 

 左手を掲げる。夕焼けに照らされてオレンジ色に煌めく腕時計を、コウジは真っすぐ見つめた。

 

「そん時は、そん時考えるわ」

 

『御意。全力でサポートいたします』

 

「サンキュ」

 

 いい加減なようでいて、普段は脱力したような半開きの目には力が込められていた。そこにあるのは、信頼。自分一人ではどうにもならない時、いつも助けてくれる相棒に対する信頼がそこにある。

 

「まぁ、早々そんなことにはならないっしょ。巻き込まれ系主人公じゃあるまいし」

 

 ハッハッハ、と軽快に笑うコウジの声が、閑静な住宅街に響いた。

 

 

 

 そのコウジの耳に、脳に、甲高い音が届く。

 

 

 

「……んあ? なんじゃ今の?」

 

 突然の耳鳴りがするような音。不快に感じたコウジは小指で耳をほじる。呑気なコウジ、しかしコウジの頭に話しかけるクロスの声は、どこか焦燥を孕んでいるように聞こえた。

 

『マスター、強い魔力反応。ここから近くです』

 

「……マジ?」

 

『はい』

 

「マジかー」

 

 フラグ回収という言葉がある。口にした瞬間、実際に起きてしまう現象。それがまさか現実で起きるとは……コウジはガクリと肩を落とした。

 

「……しょうがない。行くか。クロス、ナビ頼む」

 

了解(ラジャー)

 

 コウジの脳裏に浮かぶ、めちゃくちゃになった道路の光景。あんなことができる存在が近くにいるというのに、何の関係もない人間が巻き込まれて被害を受けるというのを、わかっていながら何もしない程、コウジは薄情な人間ではない。パチパチと両頬を叩いたコウジは、クロスの案内の下駆け出す。

 

 しばらく走ること数分。コウジの身体に纏わりついていくる、べっとりとした妙な感覚。場所は、小さくはないが砂場と鉄棒くらいしか遊具のない、どちらかというと広場という方がしっくりくるような公園。コウジが一歩、公園に足を踏み入れると、より強い力がコウジを包んだ。

 

「うへぇ、こんな強いん今まで感じたことねぇや……よく今まで平然としてられたなぁウチ」

 

『恐らく、マスターは細かいことをお気になさらない性格故、魔力探知能力が疎いものと思われます。あの距離でやっと感じ取れる程度でしょう』

 

「そんな誉めんなって~」

 

『いえ、これは欠点です』

 

「ありぇ?」

 

 クロスにズバっとダメ出しされるコウジ。その時、再び強い音がコウジの脳に響く。

 

 瞬間、公園の一角が強い光を放ち始め、それは柱となった。

 

『マスター、来ます!』

 

「おおう?」

 

 クロスの警戒の声と共に、コウジが見上げんばかりのその光は、やがて形を成し、色をつけていく

 

 

 

———ギャアアアアアアアアアアアッ!!

 

 

 

「うわ、すっげぇでけぇ花」

 

 光が消えたそこには、一言で言えば巨大な花があった。その時点でただの花ではないことは明白。それよりも特筆すべきは、花弁があるべき場所には鋭い牙が生え揃った口と、本来なら地に張り巡らされている筈の根はうねうねと動いていること。

 

 何よりも、明らかな敵意をコウジに向けていることだろう。

 

「うーん、典型的なモンスターですわ……ちびりそう」

 

『近くに下着を売っている店を検索しましょうか?』

 

「うそうそ、冗談冗談」

 

 並の人間であれば、恐怖に叫び逃げ惑うか、気がふれて卒倒するか、脳が理解に追いつかずに座り込むか、のいずれかだろう。が、コウジはクロスとそんな軽口を言い合いながら、どうすればいいかを考えていた。

 

「……ひとまず、どうにかすっか。これ放置してたら子供らが公園で遊べん」

 

 言って、コウジは左腕を持ち上げる……その時、うねっていた花の根の一本がしなったかと思うと、鋭い音をたててコウジへ振り下ろされた。

 

 その一撃は、人間が食らえば肉片へと変わることは確実の威力。コウジはなすすべなく、根の一撃の餌食となる

 

 そうして、次の瞬間、弾くように飛んできた根の岩をも砕く一撃を受けた人間の肉片が散らばる

 

 

 

「と思っていたのか」

 

 こともなく。

 

 

 

 コウジが掲げた左手の先から伸びるように、何もない空間に突如として現れたそれ(・・)。それは、ガンメタリックブルーに輝く腕そのもの。前腕部分には分厚い盾のような装甲が設けられた、人間の胴体程の大きさのある拳を持ったその腕は、コウジを守るかのように伸び、根による決死の一撃を弾き飛ばしていた。

 

「さて、それじゃやるべ」

 

 改め、コウジは左手首に巻かれた腕時計を眼前に掲げ、

 

 

 

「サザンクロス、セットアップ」

 

『Standby Ready. Set Up』

 

 

 

 小さく、それでいて力強く言葉を発す。時計からはそれに応答した男性の機械音声が流れた。

 

 同時、男性ことコウジの足元に白く輝く魔法陣が展開される。それ奇異で、摩訶不思議で、そして神秘的な光景であった。

 

 コウジの腕から時計が離れる。すると時計はコウジの目の前で分解されていき、十字の装飾と幾つものガンメタリックブルーのパーツに分かれた。そして十字の装飾を中心にするかのように、無から生成された機械が装着されて形を構築していく。十字の装飾はガンメタリックブルーのバイザーに装着。バイザーの下には薄緑に光るゴーグル型の目に。耳から伸びるのは、さながらドラゴンの角を思わせる長いアンテナブレード。

 

 そうして頭部が完成。頭部から下の身体もまた、複雑な機械が組み合わさっていき、その上を腕時計の外装となっていたパーツが変形、次々と機械の上を覆っていき、やがてそれは装甲となって形作られていく。

 

 強靭な上半身、力強い下半身。次に生成された右腕の前腕は先に生成された左腕と同様、力強い拳と、真ん中に赤ん坊の頭サイズの緑色の宝石が埋め込まれた盾を思わせる分厚い装甲シールドが設けられている。

 

 やがて完成されたのは、全高2m程のある蒼い鉄の巨人。胸の中央に光る緑色に輝く宝玉を思わせるパーツとバイザー型の目がギラリと輝いた。

 

 次いで変化するのは、コウジの衣服。これまでは青いジャケットにジーパンという出で立ちだったコウジの服は光と共に変貌。年季の入ったベージュ色のレザージャケットを思わせる上着、黒いインナー、そしてジャケットと同色のズボンと黒い靴。最後、コウジの手元に現れたのは、イヤーカバーとゴーグルが付いたブラウン色の強いヘルメット。それをコウジは手元で一回転、素早く装着。

 

 そうして露わになったコウジの出で立ちは、まるで一昔前の戦闘機パイロットを思わせるような、華のない言ってしまえば地味な服装。その状態のまま、コウジは跳躍。目指すのは巨人の人でいう(うなじ)の部分に空いた空間にあるパイロットシートと二本の操縦桿が設けられた、所謂コックピット。

 

「よいしょっと」

 

 スポンと、コウジはシートの上に座る形で着地。操縦桿を握りしめたかと思うと、

 

 

 

「サザンクロス、見・参☆! ……つってな」

 

 

 

 巨人ことサザンクロスの駆動音と共に360°回転する右拳を突き出し、名を告げた。どこからともなくジャキーン! という音が聞こえた……気がする。

 

 やがてコウジはおもむろにゴーグルを目元に下げる。すると、ゴーグルの内側に電子音と共に表示される数々の数字、文字、グラフ。

 

『各機能チェック開始。

 

各駆動系統、センサー———異常ナシ

 

魔力接続回路———良好

 

L.C.D———出力安定

 

L.L.S———誤差許容範囲内

 

システムオールグリーン。セットアップ完了』

 

 クロスの声が、コウジの頭に届く。そして、コウジはパンパンと両頬を叩き、呟いた。

 

「———うしっ」

 

 少し赤い頬をしたまま、ニヤリと笑う。獰猛な獣を思わせるその笑みと共に、操縦桿を握りしめ、

 

「こんなことは初めてだが、なんとかなるなる! 化け物退治するぞクロス!!」

 

了解(ラジャー)

 

 クロスの了承を合図にし、コウジは足元のペダルを力強く踏み込む。それに連動し、クロスの身体が変異体へ向けて力強く足を踏み込み、駆け出して行った。

 

 巨体に見合わない素早さ。それを迎撃しようと、化け物の根がクロス、もといコウジへ迫る。

 

「クロス!」

 

『Hard Protection』

 

 クロスの右腕が持ち上がる。前腕のシールドに埋め込まれた宝石が光ったかと思うと、長方形の形のシールドが生成、腕を振るうと同時に根は弾き飛ばされて公園の地面を抉った。

 

 ならばと、今度は連続で根を振るい、さながら鞭の嵐をコウジへと見舞う。が、立ち止まったコウジは操縦桿を巧みに動かしてクロスを操縦し、

 

「うおおおおおおおお!!」

 

 プロテクションを纏った両腕で次々弾いていく。絶え間なく続く連続攻撃、一撃でももらえば致命傷の死の嵐に、コウジは引き下がることなく捌いていく。そして、

 

「っし、掴んだ!」

 

 一瞬の隙。根の二本をクロスの頑強な両手で掴んだかと思うと、それを手繰り引き寄せる。

 

「どっこい……!」

 

 そしてその二本を思いきり振り上げ、

 

「しょおおおおおお!!」

 

 勢いよく振り下ろす。その力は根を通し、波が押し寄せるかの如く変異体へと迫り、叩きつけられた。

 

 

 

———ギャアアアアアアアッ!!

 

 

 

 思わぬ反撃に叫ぶ化け物。だがコウジは止まらない。

 

「そぉい!!」

 

 掴んだ根を、そのまま引っ張る。あまりの力により、根は引きちぎられて化け物から液体をまき散らしながら離れていった。コウジはそれを無造作に投げ捨てる。化け物にも感情があるのか、怒り狂ったかのように今度は数本の根の切っ先をコウジへ向けて突き出す。串刺しにして葬ろうという算段なのだろうが、それを察したのかコウジはクロスの身体を操作して連続で前後左右に跳び、数瞬前まで立っていた地面が大きく抉れていく。

 

「ふんっ!!」

 

 最後の一刺しが地面を穿つ瞬間、コウジはその根をクロスの強靭な足で踏みつけて固定。抜け出そうとする間も与えず、すかさず根を掴んで強引に引きちぎった。再び轟く悲鳴に似た奇声、飛び散る液体。

 

 が、コウジは舌打ちする。

 

「キリがねえな」

 

 その視線の先、化け物の引きちぎった根の断面から真新しい根が生えてくる。やがて根は元通り、そこには五体満足の化け物の姿。

 

 いまだノーダメージだが、このままではジリ貧である。どうすかと、コウジはゴーグル越しに化け物を睨めつけた。

 

『マスター、分析完了しました』

 

「ナイッスー相棒。で、弱点は?」

 

 と、そこにクロスの声。根の一撃を躱しつつコウジは問う。

 

『はい。花弁の中央部分から強大エネルギー反応を確認。そのエネルギーを利用して再生しているようですが、そこを破壊すれば相手の動きも止まるかと』

 

「お前さんの一撃でいける?」

 

『Of course』

 

「そら上等。んなら……!」

 

 根を腕で弾き飛ばした次の瞬間には仁王立ちとなり、クロスの胴体を化け物へ向けた。クロスの胸元に埋め込まれた宝玉型の魔力照射装置がギラリと光る。

 

「くらえ! ゲッ〇ービーム!!」

 

『Ark Blaze』

 

 クロスの胸元から白い光弾が数発射出され、化け物の根を全て焼き切っていく。すぐさま再生が始まるが、それすらもコウジは光弾で阻止していった。

 

「いくぞクロス! エネルギー充填!」

 

了解(ラジャー)。フルチャージ』

 

 完全に再生しきる前に、握りしめられたクロスの右拳に白い光が集まっていく。それはやがてクロスの拳を包み込み、バチバチと放電している音が鳴り出した。

 

 大きな一撃が来る。それを察知したのか、化け物は根を完全再生すると、全ての根を振るってコウジを襲う。が、

 

「っしゃあ!!」

 

 跳躍。その巨体からは想像できない脚力を見せつけ、化け物の攻撃の範囲外へと飛び上がったコウジが駆るクロスの身体は、やがて化け物の頭上、もとい花弁の真上へ。

 

 化け物は反応できず、根はいまだコウジが先ほどまでいた場所に叩きつけられたまま。気付いた瞬間、化け物は動き出したが、

 

 

 

「この一撃が世界を救うと信じてッ!!」

 

『Buster Smash』

 

 

 

 その時すでに、クロスの凄まじいエネルギーが蓄えられた拳の一撃は振るわれていた。

 

 

 

 

———ギャアアアアアァァァァァ…………

 

 

 花弁の中央に轟音と共に叩きつけられた万物を破壊しうる一撃によって、花弁どころか茎と根も、さながら無邪気な子供によって踏みつぶされたように潰れた化け物が叫ぶ。それが断末魔だったのか、徐々にか細くなっていき……最後は白い輝きの奔流に呑まれ、消えていった。

 

 

 

 

「よいしょっとい」

 

 クロスから飛び降りるコウジ。クロスは一瞬白く輝き、次の瞬間にはその姿は腕時計へ。それに伴いコウジも元の服装へと戻り、そして再びコウジの左手首にクロスのベルトが巻かれ、収まった。

 

「お疲れさんクロス」

 

『No Problem』

 

 労うコウジにそう返すクロスの声を聞きながら、コウジは先ほどの死闘の跡を見やる。あちこちの地面はえぐれ、数少ない遊具も破壊されており、もはや子供たちが遊べるような場所ではなくなってしまっている。これは公園の管理者にバレたら大目玉くらってしまうなーと場違いなことを考えていたコウジは、倒した化け物がいた場所へと視線を向けた。

 

「……ん?」

 

 と、そこに何かがあることに気付く。公園をめちゃくちゃにした犯人である化け物の姿は影も形もなく、代わりに化け物が根づいていたところに青く光る何かがあった。

 

「なんだこりゃ?」

 

 コウジはおもむろにそれに近づくと、光の正体を見る。それは掌に収まる程に小さい、青い菱形の宝石だった。

 

 上へ掲げて、石を観察するコウジ。よく見れば石には何やら英数字のような文字が彫られており、そこにはXⅢとあった。

 

「えらい綺麗な石だな……クロス、なんかわかるか?」

 

『……先ほどの怪物が発していたエネルギーと同等の物がこの石から感じられます。恐らく、これが本体でしょう』

 

「マジか。じゃあ危ないもんだな……けどポイ捨てするのもそれはそれで危険か」

 

 下手に捨てれば、先ほどの化け物が再び現れないとも限らない。どうしたものかとコウジはしばし悩んでいたが……。

 

「……しゃーねぇ。持って帰んべ。調べんのはその後だ」

 

 ポケットに石を入れ、コウジは悲惨な状態となった公園から出るべく踵を返す。もうすっかり日も暮れており、橙と紺が交じり合う空になっている。

 

 誰かが来る前に、公園から立ち去るコウジは知らない。なんとなしに手に入れたその石は、大きな運命を引き寄せる力を持っていることを。

 

 

 

 

 その数分後。

 

 

 

「これは……」

 

「ひどい……めちゃくちゃになってる……」

 

「……ジュエルシードだけじゃない、別の魔力の痕跡がある。さっき感じた通り、やっぱり誰かがここで戦っていたんだ」

 

「え、じゃあジュエルシードは……?」

 

「誰かが持ち去ったんだと思う……僕たち以外の、魔導士が……つまりこの世界に、なのは以外の魔導士がいるということになる」

 

「そんな!? どうしようユーノ君!?」

 

「……とにかく、ジュエルシードを探し続けよう。その人が友好かどうかはわからない以上、今後は気を付けていかないと」

 

 コウジが去った公園で、そんな会話を繰り広げる者たち。

 

 だが、公園には一人の幼い少女と彼女の肩に乗るフェレット以外にいなかった。




オリ主紹介

宮下コウジ
19歳。海鳴市在住。大学に通う平凡な好青年(自称)。今作の主人公に抜擢されてしまった。とりあえず人生楽しんだもん勝ちをモットーに、常識の範囲内(たまに範囲外)にはっちゃける。好物はうどん。人生うどんオンリーでいいと思ってすらいる。好物というより中毒に近い。幼少期に拾ったデバイス『サザンクロス』を操る。魔法関連の事件には遭遇したことはないが、色々と便利なために操縦技術はピカイチ。このことから機械関連に興味を持っていて、そっち方面には結構明るかったりする。その技術が活きるかどうかは作者次第。多分この設定死ぬかもしれん。うどんは確実に生き残る。

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