仮免提督といじわる空母・改二   作:萩原 優

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イベントで出た課題を基に、艦隊大改革……と思ったらネジが足りん(´ヘ`;)
艦これあるあるですね。

さて、物語は佳境に入ります。三人の提督と、艦娘たちの物語、結末を見届けて頂けたら幸いです。



第135話『三人の提督』

 

Starring:提督

 

 まず俺がやったことは、状況の把握だった。正直久我には言いたいことがあるが、そんなの(・・・・)はもうどうでもいいことである。

 

 クーデターに関わらなかった士官たちが司令室の端末にとりつき、各部署と連絡を取り始めた。

 

「41cm砲ですが、艦砲そのものは無事ながら、これ以上砲撃を受けたら駆動系がもたないそうです」

 

 だろうな。あれはあくまで非常時の備えだ。今がその非常時なんだが。

 

「呉を囲んでいるのは一個艦隊200隻規模です。呉が完璧な状況なら、蹴散らせる物量差ですが」

 

 報告した士官が言葉を濁す。戦力だけあっても装備や資源がないのだ。

 

「工廠の復旧はどうなの?」

「設営隊と妖精が全力で取り組んでいますが、ご存じの通り頑丈に造ってありますから」

 

 つまり、呉の艦娘は戦力化できないということだ。

 

「大将閣下、偵察写真の解析結果です」

 

 綾郷さんが写真を受け取り、忌々しそうに歯を見せた。またよくないニュースらしい。写真を右手で受け取る。左手のない不便さが、さっそく頭をもたげてきた。それでも後悔や絶望の類がないのは、もっと大切なものを失わず済んだからだ。

 

「これ、例のお化け砲ですか?」

 

 木葉先輩が写真をのぞき込み、なるほどねとつぶやいた。

 

「これ、ムカデ砲ね。複数の火薬を連続で爆発させて、砲弾を加速するの」

 

 なるほど、聞いたことがある。連続で砲弾を加速するために、砲身の側面に、火薬を入れた薬室(チャンバー)を並べる。見た目がムカデに似てるからムカデ砲。そしてもの凄い射程を持つ。

 

「南洋のやつらも、手を変え品を変えだな」

 

 綾郷さんは写真を士官に返し、艦娘たちに見せるように命じ、額に手を当てた。そしてそれらの問題を解決したとしても、一番の難題が目の前にあった。

 

「それより、南方から来る主力艦隊だな」

 

 そう、それが一番大きい問題だ。呉を解放しても、現有戦力では対抗できない。

 

「さらに悪い知らせだ。佐世保も同じようにあの巨砲にやられた。艦娘は出撃不能だ」

 

 横須賀、舞鶴の救援艦隊はもう間に合うまい。ただでさえ南方やインド洋、欧州にまで戦力を引き抜かれているのだ。

 

「津田君、なにか無いの?」

 

 いきなり木葉先輩が聞いてきた。

 

「無いのって何がですか?」

「一発逆転のアイデアよ」

 

 そういう頼られ方は不本意である。しかしまあ、実は切り札が無いわけではなく。

 

丹賑(ニニギ)島ですが……」

「うん」

「現在ほぼ空です。艦隊の8割がこちらに向けて航行中です」

 

 提督二人が目をむく。俺も、これが空振りに終わって欲しいと思ってたよ。

 

「大淀のやつに、定期連絡が途絶えたら全力出撃しろと命じてきたんです」

 

 褒められるかと思ったが、二人は仲良く天を仰いでいた。

 

「それ、空振りに終わったら越権行為で懲罰ものよ?」

「そもそも、おめぇさんはこの事態を予測してたのか?」

「まさか。買い被りです。ただ、可能性は低くても何か(・・)はあると思ってましたので」

「十分神通力よ。一度覚悟を決めた人間って、こうなるのねぇ」

 

 先輩が呆れかえったように言うので、つい言い返してしまった。

 

「先輩も、すぐそうなりますよ」

「残念ながら、ね」

 

 軽口を叩き合いながら、スクリーンに日本近海の地図を呼び出す。

 

「連中が、呉を狙うか、佐世保を狙うか。丹賑の艦隊が全力を出しても、両方を守る戦力はない」

「なんだか、日本海海戦みたいになってきたわね。津田平八郎に改名する?」

 

 その冗談はそれこそ冗談じゃないが、気は楽になった。

 

「じゃあ、せーので、三人一緒に言いましょう。敵の目標は?」

 

 相変わらず軽いノリで先輩が言う。そして当然とでもいうように、その答えは一致していた。

 

「佐世保」

「佐世保だな」

「佐世保ね」

 

 呉はすでに封鎖済み。ここで大艦隊が後詰(ごづめ)に入れば呉は落ちる。しかし佐世保の工廠が修理された場合、奴らは艦娘の援軍を背後に抱えることになる。

 一方佐世保を破壊もしくは一時占領すれば、南洋艦隊の足を止める艦隊はいない。舞鶴と横須賀の艦隊を各個撃破できれば、日本列島を空襲し放題。日本は過去の敗戦直前と同じ状況になる。

 

「呉には耐えてもらいましょう。綾郷提督、防戦の指揮をお願いします」

 

 先輩は、躊躇なく綾郷さんに難題を吹っ掛けた。彼は苦笑するが、難色を示すことはなかった。

 

「分かったよ。ただし木葉、現場はお前が回せ」

 

 現有戦力を考えると、それはかなりの難事だろう。それには綾郷さんの権限と、木葉先輩の指揮能力が必要だ。

 

「救出された呉の提督たちも、力になってくれるでしょう」

 

 それでも快諾した先輩は、一言付け加えた。

 

「みんなを、頼むわ」

「ああ、任せろ」

 

 俺は迷いなく答える。

 

「敵艦隊を、迎え撃つ場所だけど……」

 

 木葉先輩の指が、ある海域を指す。今度は、それを茶化すことはしなかった。それは連合艦隊因縁の地。俺は頷き、答えた。

 

「敵との決戦場所は、坊ノ岬沖(・・・・)だ」

 

 

 

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