「戦争は変わった」

かつてそう言われた時代は終わりを告げた。
痛み無きビジネス《戦争経済》は終わりを告げ、世界は新たな時代に歩みを始める。

だが、戦いは終わらない。

戦争の最中に開発されたマルチフォーム・スーツ
正式名「インフィニット・ストラトス」。
そのスーツはやがて兵器となり、戦場に溢れかえる。
それにより戦場は激化の一途を辿る。

一体何故ISが作られたのか。何故兵器となってしまったのか。
それはやがて、かつて起こった事件「ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」にも
その前にも繋がるであろう事だと、この時誰も知る由はない。


性懲りにも無く作った試作作品です。
まだ読みきり段階ですので、皆さんからの意見を踏まえて連載するかどうかを考えてみようかなと
思ってもいます。その為、できればでいいのでご感想をもらえると幸いです。


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あらすじでも書いたように、思いつきの部分が多々あります。
その為、もし『この部分をこうしたらいいのでは?』という優しい人が居てくれたら
是非、指摘をお願いします。

唯。流石に叩きはご遠慮ください。


IS×MGS - Another Solid -

 

 

 

 

数十年昔の事。ある男が相手の男にこう言った。

 

 

 

「人生ってのは分からないものだな」

 

 

 

と。

 

 

 

「かつて敵同士だった俺達が今はこうして共に戦っている」

 

 

 

そう。戦争、戦いとはそう言うものだ。

何時、敵が味方になり、味方が敵になるか分からない。

敵・味方を区別する場所ではない。

 

それがその二人が知った戦場と言う場所の真理の一つだ。

 

 

 

戦いとは分からないものだ。

何時何が起こるかわからない、不確定要素が多く存在する場所。

 

あるのは、生きるか・死ぬか。

 

そして。何かを《失う》かだ。

 

 

かつて、ある男が言った。

 

「戦争は変わった」と。

 

 

かつて世界は実態無き組織に管理させられていた。

戦場も、情報も、あまつさえ人の感情もだ。

何もかもが、支配されてしまった時代。

その時代を唯一人の男が抗い続けていた。

 

実態なき組織によって生み出された一匹の《蛇》。

 

己を生んだ組織に、己と同じ境遇で生まれたもう一匹の蛇と戦い、そして勝利した。

 

 

男は、もう蛇ではなくなった。

唯の人となり、世界の行く末を、その残る僅かな命で見届けると決意し、その僅かな残り火を精一杯、生に尽くすのだった。

 

 

 

 

これは、その蛇がその長い戦いの間に見つけた、一人の少年の、蛇の遺産との戦いの記録である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 東欧 =

 

世界はかつて実態無き組織が支配していた。

しかし、蛇の戦いにより、組織は崩壊。

世界は自由の物となっていた。

 

情報の自由・感情の自由・戦争の自由。

 

様々な自由により、それでも飽くなき戦いは続く。

民族・宗教・資源・地位。

挙げればキリの無い、意味のない理由を武器に、今日も人はその命を散らし、戦い続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

その戦場から少し離れた廃墟。

かつて教会だったのか、割れたステンドグラスと壊れた女神像が立っており、天井も完全に無くなっていた。

あるのはホコリと崩れた天井の木材が置かれている長椅子だけだ。

 

其処に独りの男、少年が立っている。背丈は青年と言えるほどの高さ。体格も少ししっかりとしている。

だが、顔は見えない。フードマントを着ているからだ。

深く被るフードで顔を隠し、見えるとすれば口元だけ。後は少年の足ぐらいか。

黒の長いブーツを履き、紐でしっかりと身体と密着させている。

歩いている時に余計な足音を立てさせない為だ。

 

武器は手に持っているM4カービン。現在、米国でも採用されているアサルトライフルだ。

バレル下にはグレネード。更にロングレンジにも対応する為にスコープも付けられている。

自由なカスタムが可能なM4カービン。これを少年が何処で手に入れたのかは後々分かる話なので割愛する。

 

 

《 tell! tell! 》

 

 

少年の右耳につけられている小型の通信機が鳴り響く。

特に拒否する理由も無く、寧ろ待っていたというのが彼の本音だ。

その待っていた通信に出る為、彼は通信機の応答ボタンを押し、通信に応答した。

 

『待たせたね。位置を掴めたよ。其処から西に四キロ。独の研究施設内の地下二階だ』

 

通信機から聞こえるのは若い男の声だ。

喋り方がフレンドリーなのは少年と関係があると言う事か。

 

『警備状態はココの戦いの所為でかなり高いものだ。出来るだけ姿を隠して目的地に向かい、対象を・・・』

 

 

「ッ!!」

 

 

刹那、少年は何かを勘付き、椅子の近くに身を寄せる。

気配は頭上からだったらしく、顔を上げてその何かを確認する。

 

教会の上空を二機の何かが通過していった。

現在、普及している無人兵器の類ではない。

無人兵器は鳥の羽の様な姿で、羽の部分にミサイルを搭載している。

 

しかし、今彼の上を通過したのはその無人兵器ではない。

鳥ではなく人の姿をしていたのだ。人が空を飛べる訳が無い。

だが、実際に彼の頭上を通過していったのは人型をしていたのだ。

その姿を見て、少年はポツリと通信機越しに呟いた。

 

「ラファール・・・この戦場も荒れるな」

 

『ラファールか・・・最近、PMCでも雇用が多いって言うからね』

 

「・・・ISか・・・」

 

『どうかしたのかい?』

 

「・・・いや。何も無い」

 

 

 

 

IS。正式名称『インフィニット・ストラトス』。

数年前から現れた人型機動兵器の総称である。

当時、対人戦で最強と謳われていた無人兵器『IRVING』をたった一機で五機相手に出来ると言う事で、爆発的に進歩した兵器だ。

 

かつてたった一人の科学者が開発したが、当初は見向きもされなかったらしい。

しかし、とある事件を切っ掛けにISは普及。先駆者が雲隠れするまでに実に約500機余りのISの心臓であるコアが開発、世界の各国家に分配された。

当時はスポーツの一環として扱われていたISだが、現在は違う。

その大半が軍事用に転用され、列強国の主力の一翼を担っているのだ。

軍事用となったISは大抵が国軍に所属したり、IS専用の特殊部隊が設立させるなどして高い扱いを受けている。

 

だが、中には開発企業からの依頼でPMCなどに異動させられるものも多く居る。

それが今し方彼の頭上を通り過ぎた者達だ。

目的は性能チェックと実戦データの取得。その為、国軍よりも扱いは良いと言う所も少なくない。

その優遇さが搭乗者に拍車をかける。

傲慢と支配欲。自分が特別だという妄想。

 

何よりISは女だけしか扱えない。

これにより、世界は女尊男卑の時代に転がっていった、が。

 

戦場に男も女も関係ない。

戦場では兵士と言う単位に過ぎない。

それが原因で様々な末路を辿った女性は後を絶たない。

 

 

『兎も角、其処に居ては危険になる。直ぐにその場から移動しよう』

 

「分かった。一度通信は切るけど、目的地の近くに着いたらまた連絡する」

 

『分かったよ』

 

 

通信を切った少年は周囲に誰か居ないかと、辺りを注意深く見回す。

廃墟であるこの場所では隠れるところが多い。其処から攻撃を受けたという経験は彼も嫌と言う程経験した。

それに彼の師も常に周囲には気を配れと耳たこが出来るぐらいしつこく言われたので嫌な記憶として彼の頭の中から離れなかった。

一見嫌がらせかと思われるこの話だが、彼の事を思ってといわれると確かにと肯ける話でもある。

 

周囲をぐるりと見回し、目に見える範囲で敵が居ないのを確認すると、少年は身を屈めつつその場を後にし、移動を始めたのだった。

 

 

 

外では民族問題で対立する民兵・正規軍と対立相手の反正規軍、そしてPMCが戦いを続けていた。

双方無人兵器があるのは同じだが、反正規・PMC軍は軍用ISも戦力として加えている。

先ほど彼の頭上を通過していった者達のことだ。

総数は少なくとも一騎当千の戦力であるのは違いない。

彼の言うとおり、戦場は荒れ果て、民兵・正規軍は劣勢に立たされていったのだった。

 

『ヒドイもんだ・・・つい最近までスポーツの一環として扱われていたISが、今は軍の犬とはね。女尊男卑込みでヒドイ有様だ』

 

 

 

 

 

「ハハハハハ!!!失せろ雑魚ども!!私達女の前にひれ伏せッ!!!」

 

これが戦場でのIS操縦者の典型的な精神状態である。

女尊男卑が広がる世界でISの持つ力に溺れた哀れな者達。

絶対防御と言う障壁に守られ、死ぬ事は無いと信じきっている。

 

しかし、実際はそうも行かない。

空対空ミサイルや地対空ミサイルでダメージを負い、結局はヘリ同様に落ちていくという話は数多くある。

慢心と傲慢。高い地位に上った者達の辿る結末だ。

 

 

『正規軍がIS部隊と交戦している。位置情報を転送しておくから、其処には絶対に近づかないでくれ』

 

「了解」

 

 

ホットな場所に行く気はない。

そう思い、廃墟から廃墟へ。瓦礫から瓦礫へ。死体から死体へと移動し、戦場から離れていった。

 

死臭も爆煙の臭いも、銃声も悲鳴も狂気も。

何もかも聞き飽きた声と響きだ。

それでも戦場では絶えず響く。

 

 

いつから、ココが自分の居場所となってしまったのだろうか。

 

 

(俺の居場所・・・俺の・・・戻るべき所・・・か)

 

 

 

 

 

 

 

市街地から約四キロ。道中に目だった警備が見えなかったのが不自然だった。

何時もなら『派手な出迎え』が来ても可笑しくない。

しかし、それは彼の正面の有様を見て納得する。

 

 

「・・・厳重な警備だな」

 

『ああ。どうやら道中敵が居なかったのは・・・』

 

「ココに何かあると悟らせない為か」

 

東欧に僅かに残っていた森林地帯。

その森林の中にあった施設の周辺は厳重な警備が敷かれていた。

茂みから周囲の警備状況を考えるに、どうやら其処までしても知られたくない何かがあるらしい。

その為に、道中に敵兵と言う敵が一人も居なかったのだ。

恐らく、周辺を警備するほど厳重な物を守っていないという印象を民兵などに見せ付ける為だろう。

だが見ようによっては不自然と感じる事も出来なくない。

 

「ココで・・・間違いないか」

 

『だね。けど、どうやって中に入るんだい?』

 

「大丈夫。方法はあるさ」

 

『え・・・あ。なるほど・・・』

 

 

確信を得た少年はどうやって中に潜入するかを考え付いていたようだ。

 

 

 

 

さて。ココで研究所の構造を簡単に説明しておこう。

研究所は高い外壁によって守られ、更には四つの角全てに照明台がある。

門は正面に一つだけ。それ以外は見当たらないところを見ると、どうやら出入り口はアレだけらしい。

その正面の門を警備するのは機関銃が両サイドに一丁ずつ台座付きである。機関銃を使う兵士と恐らく増援などを呼ぶ為の通信兵を加え、両サイドあわせて四人。いずれも正規兵だ。

装備はMk.17と腰にGSRらしきものが刺されている。配置されている機関銃はM2だ。

まともに正面から行けば確実にやられるのは当然の事。

では彼はどうやって中に潜入するのか。

 

 

『正面の扉はロックが掛かっていて中からの認証が無いと開けられない。どうにかして潜り込まないと・・・』

 

「ああ。だから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

《ブロロロロロロ・・・》

 

 

 

其処に、一台のトラックがやって来る。運転をしているのは正規軍の兵士と言う所を見ると、関係者であり、何かを運んできたようだ。

少年はどうやら道中でこれが来るというのを知ったらしく、潜入時に使えるのではないかと思い、マークしていたのだ。

 

『なるほど。トラックに潜り込んで潜入するんだね』

 

「そう言うこと。だから・・・」

 

 

 

 

 

「ID認証をしている。コッチに身分書を出してくれ」

 

「了解した」

 

警備していた兵士が運転手のID確認中に同時平行で行われる身分証明書の確認をする為、運転手に身分書の提出を要求する。

運転手はそれを知っていたのか、座席の近くに身分書を置いており、それを取って警備兵に渡した。

警備兵はそれをタブレット端末型の機械に通し、運転手の身分を確認するのだ。

 

「・・・確認した。ご苦労さん」

 

「ああ。全く・・・この近くでドンパチなんてツいてなかったぜ」

 

「ああ、反政府の連中の事か。連中確か、PMCも加えてるって話だもんな」

 

「ISが軍用になって数年・・・俺達の職も危ないなぁ・・・」

 

「ハハハ。バカ言うな。俺たちが居なければISなんて所詮デク人形さ」

 

「・・・だよな」

 

端末が運転手の身分を確認し、警備兵がそれを確認すると、中に通すように連絡する。

その間、運転手と軽く言葉をかわし、彼の愚痴を聞いて相槌と共に彼と話していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ドカンッ!》

 

 

 

「ん!?」

 

「何だ・・・爆発か!?」

 

突如彼らからそう遠くない場所で爆発音が鳴り響き、警備兵と運転手は思わず爆発した方に顔を向けた。

距離からして遠くないのでもう一人の警備兵と顔を見合わせ警備兵は爆発が起こった場所に見に行く事にした。

 

「HQ。此方正面警備部隊。付近で爆発を確認。これより確認に向う」

 

『HQ了解。正面の警備を増強させる。確認に向ってくれ』

 

「了解」

 

通信を切ると、警備兵は向かい側にいる兵士に相槌を打ちMk.17を構えてその場を後にし、現場に向かって行った。

それを気になっていた他の兵士も一瞬ではあるが、爆発が起こった方に顔を向けてた。

その一時の隙が少年にとって最大のチャンスとなった。

 

 

「・・・すまないな。通っていいぞ」

 

「ああ・・・」

 

「心配するな。中の警備は万全だ」

 

「了解した」

 

運転手も気にはなっていたようで爆発した場所を見ていた。だが、中に入れば警備は厳重だ。安心感と油断にとらわれた運転手は警備兵の言葉を信じ運転手は足元にあるアクセルをゆっくりと踏みしめた。

門は開放され、中に入る事はできる。

さっさと門を潜って、こんな危険な場所から安全な場所に行きたいものだ。

一台のトラックはそのまま中にゆっくりと入っていった。

中に入れば警備の兵士と事故を起こすかもしれないからだ。

その為の細心の注意を払い、トラックは目的の荷物と共に中に入って行き、完全に中に入っていくと同時に門は再び合わさり、閉まっていくのだった。

 

 

小さな侵入者と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= 独研究施設・地下二階 =

 

所内地下にある一室。

其処には一機のISと一人の少女が居た。

ISは幾つものコードが取り付けられ、主無き今はその場に安置されている。

その主になる少女はいずれなるであろう自分の手足を黙って見つめていた。

 

 

「・・・・・・」

 

 

少女、ラウラ・ボーデヴィッヒは苛立っていた。

 

何時か何時かと来るであろう物を唯ずっと待っていたからだ。

到着の時間はとっくに過ぎている。軍人であれば時間は厳守な筈だ。と誰も居ない一室で独り言の様に考え込んでいたのだ。

 

 

《ピピピッ!》

 

 

彼女の手に持たれていた無線機が鳴り響く。

無線機の持つ手を挙げると、その怒りに満ちた表情をそのままに無線に応答した。

 

 

『少佐。今し方輸送車両が到着。現在荷をそちらに運んでいます』

 

「遅い。今まで何をしていた」

 

『も、申し訳ありません・・・移送中敵民兵などに足止めを喰らっていましたので・・・』

 

「言い訳は要らん。さっさとココに運んで来い」

 

『ハッ・・・』

 

 

冷徹な物言いに通信越しの男は何も言えない表情だと言うのが声で分かった。

彼女が少佐であるからと言う理由の他に彼女がISの操縦者だから。そして彼女の方が腕っ節も上だからと言う事だ。

ココまでコケにされると最早相手の男兵士達は彼女に陰口を叩くぐらいしか鬱憤を晴らすことは出来ない。

しかし、何処で彼女の部下が聞いているか分からない。

肩身の狭い部隊の兵士達はその日その日のストレスを日に日に溜め続けているのだった。

 

 

「・・・さて」

 

 

その元凶たる彼女は無線の周波数を変更し、また別の誰かに無線連絡を取った。

 

「私だ。技術班を集合させろ。作業を再開させる」

 

『了解』

 

相手は自分の部下だったらしく、簡潔に用件を言うと相手も了解の一言で通信を切るのだった。

その間、技術者と先ほど運ばれてきた物資を待つ為、再びその場に仁王立ちする事になる。

しかし、後は物資と技術者が来るだけなので左程苛立つことも無い。

彼女はそう思い、唯じっとその二つが来るのを待ち続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

その彼女が居る部屋から少し離れた部屋。部屋の有様からして倉庫か何かだろう。

中身には武器に弾薬。資材に機材。廃棄待ちの物も置かれている。

見ようによっては、人によってはココを宝庫といって片っ端から持ち去ろうと考える者も居るだろう。

しかし、持ちすぎるとかえって重さで自分が潰れたり、移動の邪魔となる。

プロであれば必要最低限の物しか取らないだろう。

 

《ガゴッ》

 

倉庫の天井にある廃棄ダクトの蓋が内側から開き、ゆっくりと少年が顔を出す。

顔には暗視ゴーグルが付けられており、彼の目には薄く深緑となった倉庫が見えていた。

 

「・・・」

 

周りに誰も居ないのを確認すると、少年はゆっくりと身体をダクトから滑るように出させる。

しかし、不用意に降りれば着地音でバレてしまう危険性もある。

だからこそ、降りるときはゆっくりと、地面に確実に足をつけるようにして降りる事。

教えられた鉄則の一つだ。

 

少年は両手をしっかりとダクトの端につかませ、顔から外に出していく。

静かに、ゆっくりと全身を出していき、足が完全にダクトから出ると、身体を一ひねりさせて空中で一回転させる。

そのまま降りれば頭から地面にぶつかるのは目に見えているからだ。

 

「よっ・・・」

 

下には地面があり、其処に足をつければ後は手を離せる。そこまで油断は禁物だ。

ゆっくりと下ろされた身体は胸下から腹辺りに下げられているM4によって地面との距離を感覚で測っていた。

 

そして、足のつま先が地面に着くと、それと同時に手を離し、少年は無事地面に足を付けた。

ふわりと着地の風が巻き起こり、少年が纏っていたフードマントの下が吹き上がる。

今まで戦場や廃棄ダクトなどの閉所に居た彼にとって丁度いい風が吹き込んできたので一瞬ではあるが、身体がリフレッシュしたような感覚が全身を下から掛け上がっていった。

しかし、そのまま緊張の糸が切れたら最後、自分の身に保証はない。ココは敵地なのだ。

 

「よし・・・」

 

直ぐ様M4を両手で持つと、適当な物陰に姿を隠す。

隠すといっても誰も居ない部屋でやって意味があるのかと思う者も居るだろう。しかし、仮に扉からイキナリ人が入ってきたら?

実はどこかで人が隠れて何かをしていたら?

あらゆる仮定を頭に置き、常に見つからないように移動する。それが潜入任務での最も注意すべき事だ。

 

 

「ん?」

 

すると、少年が身を隠すために近くに寄った木箱を見て少年は小さく声を出した。

其処には独語表記で武器の文字が書かれていたのだ。

今もって居る武器でも十分だが、個人的に何が入っているか気になる。

もしかしたら今使える銃なのかもしれない。手数が増えるのには越した事は無い。

そんな好奇心と建前を胸に少年は静かに立ち上がり、銃火器が入っているであろう木箱をゆっくりと開けてみたのだ。

 

 

「・・・サブマシンガン・・・MP7か」

 

 

中身は二丁ほど詰められたドイツのサブマシンガン、MP7だ。

P90を意識した物でP90同様に新しいカテゴリの一つとして開発された物だ。

新品であるからして最近運び込まれたのだろう。

その所為か銃本体があってもマガジンは空だった。

辺りを適当に見回す少年だっだが、マガジンの一つもありはしない。

あるのか空の銃本体だけだ。

 

「・・・諦めるか・・・」

 

と言いつつ、少年はさり気なく腰にMP7を刺し、結局一丁だけ拝借したのだ。

建前と好奇心では、どうやら後者が勝ったようだ。

その彼を見ていたのかと言うタイミングで突然彼の耳元の通信機がコールする。

 

 

 

 

『何ノンビリとMP7を拝借しているんだい?』

 

「・・・いいじゃねぇかよ。どうせからなんだし・・・」

 

『弾はコッチで補給できる?残念だけど、合っても2・3回使ったら無くなる位しかないよ』

 

「・・・・・・」

 

どうやら本当に自分の行動を見ていたようだ。証拠に通信機越しに飽きれた声で話が始まっていたのだ。少年もまだ若いと言う事か、子供の言い訳の様な言い方で通信相手に言い返すが、相手の自分の考えを突いた一言に何も言えなくなったのだ。

その彼に対し、直ぐに真剣な声になり、通信相手は少年に言ったのだ。

 

『それより、例の物資の行き先が分かった。其処から直ぐ近くの実験室だ』

 

「・・・そうか。これで、近づければ良いんだけど・・・」

 

『そうだね。どの道、この件は僕等で解決しないといけない。一刻も早く、彼女への手がかりを掴まないと・・・』

 

真剣と言うよりも暗い物言いで通信相手は話していた。

少年は男の台詞を唯黙って聞き、小さくため息を吐く。

そして。持って居たM4のロックを解除し、何時でも撃てるようにする。

 

「・・・任務を続行。目標の破壊に向う」

 

『ああ。実験室には恐らく警備兵も少なからず居る筈だ。気をつけて行ってくれ』

 

 

「了解した。ココからが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ショウタイムだ・・・!」

 

 

『・・・やっぱ君が言うと何か・・・』

 

「う・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?爆発現場には誰も居なかった?」

 

『ハッ・・・爆発跡からしてプラスチック爆弾なのですが・・・』

 

「・・・遠隔操作で火を入れて爆破したのは確かだ。なら近くに居る筈・・・・・・分かったわ。此方から衛星を使って捜索する。貴方達は戻って正面ゲートの警備に付きなさい」

 

『了解』

 

 

一方で、少年の通信相手が実験室と言った場所では既に数人の技術者とその護衛兵が到着し、作業に取り掛かろうとしていた。

その側で独軍の黒い軍服を来た少女が無線機を持って先ほど起こった爆発を見に行った警備兵達と交信している。

話の内容はどうやらプラスチック爆弾のC4による爆発なのは分かったが、肝心のその爆破を行った本人が何処にも居ないと言う事だった。

恐らくかなり遠くから爆破したか、爆破直後に移動したのか。考えられるのはこの二つだ。

しかし、それを捜索するには現場付近に兵を向わせる必要がある。そうすればこの施設に何かあるのではと少なからず考え持つ者達も出て来る筈だ。現状、それは何としても避けたい事態だ。

 

そこで、多少の時間は掛かるが、人工衛星を使い、上から探す事にしたと言う訳だ。

これなら大抵の場所に隠れていても直ぐに見つけられると言う事だ。

 

 

「・・・何かあったのか」

 

「あ・・・いえ、この近くで爆発があったのですが・・・現在衛星を使って捜索を始めたところです。」

 

「人で捜索はしたのか」

 

「ええ。ですが、何処にも居ないと報告が上がったので・・・現在、半径20キロの範囲で捜索をしようかと」

 

「・・・なら出来るだけ早く見つけろ。民兵や正規軍だと面倒事になりかねん」

 

「了解です」

 

 

通信をしていた少女は通信機を切ると共にラウラに簡潔な返事をした。

そして二人は作業が行われる正面に顔を向け、作業を見守っていたのだ。

どうやらISのパーツの取り付けらしく、二人の警備兵が小型のコンテナを一つ、運んでおいたのだ。

 

《ti.ti・・・》

 

機材に顔を近づけ、技術者達はデータを打ち込む。

その中で一人はコンテナのロックを解除、中から一つのパーツを取り出した。

そのパーツを見て、ラウラは眉を顰め、隣に居た少女に聞こえる程度に呟いた。

 

「あれが・・・」

 

「ええ。我が軍で開発した特殊兵器。違法だ何だと言われていますが・・・軍用だといえば合法の範疇です」

 

「・・・・・・」

 

不満が無いと言う訳ではない。

唯、自身の実力を甘く見られていると言う感覚はあった。

国の為であり、自身が信じる者の為にココまで来た。

その結果が彼女の目の前にある。

その受け入れがたい事実に彼女は唯黙って行われる作業を見つめるしか出来なかった。

 

 

 

 

 

が。それは直ぐに崩れる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《カラン》

 

 

 

 

 

「っ・・・!?」

 

「な・・・スタン・・・」

 

 

 

刹那。小さな金属音と共に何かが転げ落ち、その何かを見た少女二人は反射的に後ろにバックステップで下がった。

それと同タイミングに、警備兵と技術者達も気づき、腕などで顔を隠して即席の防御体勢を取った。それが短時間で出来る唯一の防御だからだ。

 

 

しかし、その防御は無意味となる。

爆発した何か、グレネードの中身は閃光弾だったからだ。

僅かに視界が漏れていても光は視界に差し込む。

その明るすぎる光によって人間は反射的に目を閉じてしまうのだ。

 

 

「ぐっ・・・!?」

 

 

「ぐわっ!?」

 

「なん・・・?!」

 

 

爆発した光と共にその場に居た者達の耳に甲高い音が鳴り響く。

それによって一時的に聴覚と視覚は封じられ、耳からは金属音の様な高い音が、目はぼやけた風景しか見えなくなった。

 

一時的な事ではあるが、視覚と聴覚が失われるのは戦場では死活問題だ。

視覚で敵の位置を把握し、聴覚で距離を見積もったりもする。

機械以上に大切な自身の運動神経を一時的に遮断させられ、その隙に攻撃を受けるという事はよくある話だ。

 

 

「一体誰が・・・」

 

「っ・・・」

 

 

しかし、それだけで済む話では無い様だ。

彼女達の周りには今度は濃い煙が吹き起こったのだ。

止まる事も無く、無尽蔵に広がる煙に、今度は皆、咳き込んでしまう。

 

「ごっ・・・ゴホッゴホッ!」

 

「今度はスモークだっ・・・ぐほっ・・・」

 

一体何が起こっているのか。

電撃的な出来事にラウラは戸惑うばかりだ。しかし、兵士としての冷静さは欠いていない。

動かずに煙が晴れるのを待ち、腰に刺していたUSPに手を付けていた。

 

「・・・・・・」

 

 

そして。煙が晴れたとき。

彼女の前には信じがたい事実が起こっていたのだ。

 

 

「・・・・・・ッ!?」

 

 

自分以外、全員倒れている。

彼女の視界には倒れた警備兵と技術者達が居ており、全員、呻きの一つも挙げていなかった。

一体あの一瞬でどうなってしまったのか。

あらゆる可能性を考えていた時。彼女の隣に一人だけまだ、彼女の部下が立っていた。

 

「っ!オイ、一体何が・・・」

 

 

「・・・・・・」

 

「な・・・」

 

 

彼女が部下に尋ねた直後。部下は音と共に重力に引っ張られ、地面に倒れこんだ。

彼女もやられた?僅かな短時間でこれだけの人数が一瞬にして?

信じられない事実が映りこみ、声に出来ない状態が続いた。

 

が。直ぐにその静寂は破られた。一つの金属を構える音と、たった一言によって。

 

 

 

「動くな」

 

 

「・・・!」

 

「銃を捨てて、両手を挙げな」

 

「・・・・・・」

 

後ろから声がする。

声の高さからして男。しかもかなり若い。自分と同い年ぐらいだ。

その後ろからホールドアップを命令する男。先ほどの少年だ。

mk.2を構え、変わらず顔はフードに隠れている。

 

彼がたった一人で全員やったのか?

彼女にとっては信じがたい事実だ。ココに居る警備兵は少なからず実力はある。

それをたった一人で、いとも簡単にと言われると、信じられないのも無理は無いのだろう。

 

 

「さぁ・・・」

 

「・・・」

 

 

だが、今はそんな事を考える時ではない。

どうやってこの場を切り抜けるか、それだけを必死に考えている。

 

「・・・分かった」

 

まず今は彼の命令に従うフリをするべきだ。

腰に刺していたUSPを抜き出し、ゆっくりと地面に置く。

そして、両手を見えるように挙げ、ホールドアップの姿勢をとる。

 

だが従うのはココまでだ。

ラウラが両手を挙げきると同時に足首を捻り、少年の居るほうに体を回した。

銃が無くとも接近戦で負ける気は無い。格闘戦の心得もある彼女にとって銃が無くとも戦える。

 

 

 

 

が。彼女が少年の居るほうに向き終わると同時に、彼女の腹に何かか当たった。

其処から、とてつもない電撃が発生し、彼女の全身を伝い走っていった。

 

「がっ!?」

 

 

「残念。そんなに優しいタチじゃねぇからさ、俺」

 

少年の片手には一本のナイフが持たれていた。ナイフは刀身が彼女の腹を抉らない程度に当たっており、刀身から電流を流したようだ。

電流を流すスタンガンなどの機能も備えた近接武器。スタンナイフとでも呼べばよいのか。

ナイフから流された電流にラウラは全身の力が入らなくなり、姿勢を安定できなくなった。

そのまま重力に引かれる様に地面に膝を突き、力尽きたように倒れたのだ。

 

それを彼は助けようとせず、ナイフを即座に離し、腰のホルスターに戻す。

助ける気は無いと言うよりも死にはしないだろうという考えらしい。

 

スタンナイフの電流は人一人が小一時間程気絶する程度の電流しか流されず、殺傷能力は寧ろ刀身が持っている。また、電流は一度使用するとチャージに時間が掛かる。

使いどころを間違えなければ効果は絶大なものだ。

 

「くっ・・・」

 

「悪く思わないでくれ。コッチも色々と理由があっからよ」

 

 

 

 

 

『ッ!!マズイ!”彼女”がシステムの改ざんを図っている!!このままじゃ手がかりが!』

 

「ッ!!」

 

刹那。通信越しの声に少年が反応し、安置されているISに向って一心に駆け出した。

安置されて作業途中だったISは接続されている端末から何かしらのハッキングを受けている最中だったのだ。

しかも処理スピードは尋常ではなく、まるで水が流れるようにデータは改ざん、消去されていったのだ。

 

「くそっ!間に合えよ!」

 

少年が端末に近づくと、腰部辺りから一本の有線接続コードを抜き出し、それを端末に接続する。

別のコードが接続された事により、改ざんのスピードは遅くなる。

画面には新たにハッキングと逆探知のウィンドウ表示が現れ、現在ハッキングしている相手に逆探知を掛けている所だった。

 

 

『くそっ・・・速すぎる・・・!』

 

「急げ、また逃げられちまう!」

 

「くっ・・・あと少し・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが。

 

 

 

《ピー・・・》

 

 

 

「・・・!」

 

『・・・くそっ・・・またか・・・!』

 

「・・・逃げられたか・・・」

 

『どうやら、例のシステムだけを破棄させたらしい。復元も恐らくは不可能だ』

 

「って事は、本来の能力だけがって事か」

 

『ああ。だが、どの道この機体はアウトだ。一応、AICだけは破壊しておいてくれ』

 

「了解した」

 

『あ、それと・・・』

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

= ヘリポート =

 

森林地帯の中に、ヘリポートが一つだけある。

簡易的なもので見張り台と金網の柵。そして倉庫が一つと言う素朴はものだ。

其処には『Ka-62・カサッカ』が一機、何時でも飛べるように待機状態で止まっていた。

乗組員は操縦席に居る一人だけ。どうやら彼がココまでカサッカを飛ばしてきたようだ。

そのヘリポートに一人、誰かがやって来る。いや、撤収してきたというべきか。

その正体は、先ほど研究所に潜っていた少年だ。

 

 

息絶え絶えではあったが、何とかカサッカの許までたどり着き、ヘリに乗り込むとそのままヘリの床に倒れこんだ。

 

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 

「お疲れ様。何とか”混乱”に乗じて脱出できたね」

 

「ええ。お陰で侵入する時以上に疲れましたよ・・・」

 

 

彼がどうやって脱出したのか。

それは、彼が反政府正規軍に分かるように研究所の位置をリークしたからだ。

方法はあえて伏せるが、それによって正規軍を目の敵にしている反正規軍は其処に戦力を集め、研究所への攻撃を開始。

結果、所内外は混乱状態になり、彼が脱出できる切っ掛けを作ったと言う事だ。

 

 

「すまないが、ドアを閉めてくれ。そろそろココから脱出するよ」

 

「ええ・・・頼みますよっと・・・」

 

少年が力一杯にドアを引き、閉じさせる。それを合図にカサッカは一気に上昇し飛翔した。

そのまま速度と高度を維持し、カサッカは戦域を離れていく。

そろそろココも戦いの火の粉が舞うだろう。と間接的にではあるが火の粉を撒いた本人は窓際で移動する輸送トラックなどを見て考えていた。

M4の安全装置を付け、銃をロックすると近くに置き、深くため息を吐いて、操縦している男に謝った。

 

「・・・すみません・・・また逃がしてしまって・・・」

 

「・・・仕方ないさ。今回も彼女が一枚上手だったって事さ。けど、確実に僕達も追いつき始めている。そろそろ尻尾の端が見えてくる筈だ」

 

「だといいんですけど・・・」

 

「それに、君一人が抱え込む話じゃない。これは僕らにも関係のある事なんだ」

 

「・・・ありがとう・・・博士」

 

「博士はよしてくれ。何時も通りで頼むよ」

 

 

 

 

 

「・・・んじゃ・・・」

 

少年は心機一転し、今まで被っていたフードを取る。

その中からは綺麗な黒の色をした髪が現れた。顔には少し焼けた後が残っており、首には紺色のバンダナだったスカーフが付けられている。

 

 

 

 

 

「・・・また・・・よろしく頼むぜ。オタコン」

 

「ああ。よろしく頼むよイチカ」

 

 

 

 

 

 

 

戦争は変わった。

かつて平和の為と思われていた物は、結局は人によって兵器としてしか見られなかった。

 

その兵器、ISを兵器ではなくさせる為。

そして、その全ての事を引き起こした者を止める為。

 

かつて、『愛国者達』と戦った者達が、再び日の目を見ることになる。

 

 


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