そう、作者が勝手に言ってます。
「この会場を
それは私が売られているときに来た、優美で優雅で、私なんかが見ていいのかと疑うほどの美しい方が言った言葉。
「大丈夫かい子猫ちゃん」
それは私に手を差し伸べてくれた美しいあの方が言った言葉。
* * * * *
私は奴隷。
いつの日からかもわからない。
手には縄が付き、奴隷になる前からずっと着ている服はどこもボロボロ。
地面のデコボコが直に伝わる荷台に入れられて、時には乱雑な荷物と、時には私と同じような子と、どこかもわからない場所から場所へ長い時間揺られてた。
大人たちのおカネの出し合いには何度か出された。けれど、小さい、不衛生、弱い、脆い、病弱。
いつ売れるのかいつ売られるのかわからないまま、ずっと前に感じた温かみが忘れられずに恋しくなって、寂しくなって泣いている。
どこか止まる場所が欲しい。止まっていたら温かくなるから。
人の温かみが欲しい。寒くて震えるから。
何回目かわからない大人たちのおカネの出し合い。
同じ荷台に乗っていたあの子は大きな人に買われた。
同じ荷台に乗っていたあの荷物は黒い服を着た人に買われた。
知らない荷台から出てきた子はわからない人達に買われた。
次は私の番。
だけどさっきまでの大人たちの声は飛び交わない。
場所を仕切っている大人の人も困った様子。
「で、では次の商品に」
何度か聞いた言葉とともに私は下げられる。
今回もまた私は。
売れ残り。
そんな時、裏手のほうから大人の叫ぶ声が聞こえてくる。
さっきまでとは様子の違う悲鳴。
見えてしまった宙を舞う赤い液体。
恐怖を掻き立てる要素が集まってしまった。
元来の精神の不安定さ、元々から感じていた慣れたはずの恐怖、そしてそれを覆いつくすほどの新たな恐怖。
手縄で引かれ歩いていた足はすくみ、その場に倒れこむ。
恐怖でいっぱいなはずなのに、何が起こっているのか騒ぎわめく大人たちのほうから目が離せない。
一筋、何かが横切り、騒ぐ大人の囲いが切り開いた。
「今夜の舞踏会の会場はここかい?」
言葉にできない、いまだかつて見たことのない美貌に身を包んだ男がいた。
他の廃れたような大人とは卓絶した存在、その場の空気さえも輝いて見えた。
「この会場を
その男が言った。
聞いていて心地がいいその声。
ふと希望が出てきた、この人なら私を助けてくれるかもしれない。
「た……す…、けて」
私の声は廃れていた。声を出す方法もうろ覚えで、擦れてロクな声が出ない。
あの方には聞こえてないだろうけど、ここじゃないといけない気がした。
2,3度繰り返した。
私の縄を持つ大人に何度か蹴られもした。
聞こえてないけど聞こえてほしい。
その一心だった。
「大丈夫かい子猫ちゃん」
その優美な男はこちらを見てくれた。
声が届いたのかな。
近くにいた大人を蹴散らして、赤色の水は豪華な絨毯のように床を色付ける。
「もう、大丈夫だ」
私に手を差し伸べてくれた。
その美しい手を汚してしまいそうで。
その美しい服を汚してしまいそうで。
その美しい気を汚してしまいそうで。
私は手を出せなかった。
縄に繋がれているからじゃない。
動けるけど、動揺していた。
汚してしまう罪悪感と少しの恐怖もあっただろう。
でも今出さなきゃ次はない。
そう、わかったから。
「た…、すけて………。」
ザラザラで色も悪く、か細く、弱いてを伸ばして。
優雅な光は私を掴んでくれた。
「さぁ、帰ろう!新しいお家へ!」
本当に怖かった。
汚してしまう罪悪感が原因なのか。赤色の水しぶきとなる大人達がそうさせるのか。
わからないけれど怖く、落ち着くことを知らない。
優雅な男は私を軽々と抱いて自ら道を切り開いた。
そんな中でも1つだけ安心できたものがあった。
温かさ。
護られている。
世界が表情を変えた。
ドス黒く、薄汚い、砂まみれの世界から。
輝かしい赤い水が飛び交う明るい世界へ。
全てが輝き、まるで花吹雪の中にいるよう。
そうしたら、これはバラなのかな。
バラ色の世界で私を救う王子様。
* * *
「ってストーリーなんですけど、どうですかね」
「サイコパスじゃねーか。」
えーっとねぇ、読んでくれてありがとう(?)
薔薇色の王子様に「大丈夫かい子猫ちゃん」って言われたい人生だった。
想像では華やかで華麗で、優美で煌めく王子様をイメージしていたのですが、、、。
なんか、血しぶき飛び交う闇オークションで奴隷を救う王子様って感じになった。
でもね、奴隷の子から見たらきっとそれは輝かしい薔薇色の王子様なんだよきっと。(←黙れ)