ボンバーバトル黎明期のボンガ世界に転生しました 作:ハニボン
サイレントでヒルなタウンフォールやって心臓止まってました……(アプデ前)
ボムスタジアム内にある、関係者用の会議室。
そこは大会運営に関する打ち合わせや、チームに関わる重要な話し合いなどに使われることが多く、普段、選手たちが立ち入る機会はそう多くない場所である。
そんな会議室の一室で、グレイたちは緊張した面持ちでスタッフさんと……ユキトの到着を待っていた。
自分たちのこれから……チームレインボーから離れ、独立し、新たなチームとして大会に参加することを伝えるために。
「アサギさん。本当に大丈夫ですか?」
グレイが隣に座るアサギに話しかける。いつも以上に真剣な表情で座して待つアサギは表情からはわからないが、内心穏やかではないようだった。
「……大丈夫であります、グレイ殿。不肖このアサギ、この腹掻っ捌いて介錯を受ける覚悟は、いつでもできております!」
「大丈夫じゃなかった!? アサギさんがそんなことする必要なんて全くありませんんからね!? 先生はおそらく責めることはないと思いますし、責任なら全部私にありますから」
「で、ですが自分は上官殿を裏切るような真似を……」
「違います、アサギさん。これは裏切りなんかじゃありません。そもそも二人を誘ったのは私です。だからもし誰かが責任を負うというのなら、それは私が負うものです。アサギさんが気に病む必要なんてありません」
「グレイ殿……」
きっぱりとグレイは言い切る。そんな堂々と構えているグレイに、アサギは不安こそ消えずとも頼もしさを感じ取った。
そんな様子のアサギをウルシ──怪盗ねずみ小僧が揶揄う。
「ふふん。ボンバー警察幹部ともあろう者が移籍程度で揺れるなんて……情けないね」
「なにおう、ねずみ小僧! 貴様のような泥棒には責任というものの重さがわからんのだ!」
グルルッ! と噛みつくアサギに、ウルシは涼しい顔で受け流しているが……グレイはその一瞬の陰りを見逃さなかった。
「……ねずみ小僧さんこそ、あまり無理しないでくださいね? 話は全部、私がしますから」
「……そう見えるかい?」
「アサギさんほどではありませんが、わかる人にはわかりますよ」
────親友だから。
正体を隠しているため言えないが、言葉にせずともわかるものだ。ウルシはむず痒くも悪くない感覚で、しかし不安である気持ちも再確認して少し複雑になっていた。アサギもそんなウルシことねずみ小僧の心境を察してそれ以上言うことはなく、黙って見守っていた。
二人の様子を見て、グレイは思う。やはり穏やかではない。
それは当然だ。二人ともユキトの元で教えを乞い、共に練習してきた。勧誘したグレイ言うのも変な話だが、ちゃんと話し合いをして正式に移籍と独立をしたとしても……やはりどこか裏切ってしまったような気持ちがあるのは、仕方がないだろう。
だが、それでも二人は選んでくれた。自分のチームで戦ってくれると、決めてくれたのだ。ならばリーダーとして前に出て胸を張らなければならない。
こんこん、とノックが鳴り、ドアが開く。入ってきたスタッフさんとユキトの姿を見て、グレイは気を引き締める。
この気持ちをちゃんと伝えるために、グレイは心を落ち着かせて言葉を紡いだ。
●~*
新チーム結成。グレイの独立と、ウルシとアサギの移籍。そして……BBCへの参戦。
スタッフさんに連れられた先で待っていたグレイから開口一番に告げられた内容に、予想だにしていなかった俺は大層驚いていた。
そんな俺を尻目に、グレイは話を続けた。
「初めて先輩たちの……先生のチームのバトルを見たのは、クロ先輩とサッカー部とのバトルでした」
思い返すのは俺が指導役として事務所に入り、メンバー探しをしていた頃の記憶。あのバトルをきっかけに、グレイはシロとクロに相談し、実習生としてチームの練習に参加するようになった。
「あの頃は新しいボンバーバトルのルールもまだ全然わかってなくて、ただすごいなって単純に思っていただけでした。でもそのあとすぐに先輩たちと一緒に練習したいって思って、考えるより先に先輩たちに相談してて、チームの練習に参加させてもらいました」
とんでもない我が儘ですよね、とグレイは自虐的に笑った。その表情はどこか懐かしむような、優しいものだった。
俺は口を挟まずに、黙って話を聞いていた。今は真剣に話を聞かなきゃいけないと思ったから。
「先輩たちとの練習は楽しかったし、先生の指導で成長して強くなっていく実感があって、充実していました。でもチームとして公式戦に参加するのはなんか違うって思っていて……ずっとなんでだろうって考えてました」
そこでグレイはすっと、まっすぐ透き通るような視線で俺を見つめた。
「その答えがさっきの573とのバトルを見て……ようやくわかりました。私は……先輩たちの、先生のチームと戦いたいんだって」
グレイの瞳には、炎があった。それは覚悟と決意であり、強敵や難敵に挑む……燃え上がる闘志の炎だった。
「先生。私もBBCに参戦します。私自身のチームで、先輩たちのライバルとして、先生のチームに挑ませていただきます」
迷いはなかった。もう揺らぐことのない芯の強さを持った、挑戦者としてのボンバーガール・グレイがそこにいた。
話し終えたグレイから感じられる意志の強さに、俺は圧倒されていた。後ろ向きな性格だったあのグレイが、答えを見つけて一歩を踏み出している。俺自身が導いたわけでもなく、グレイが自ら進むべき道を見つけたものだが……それが誇らしくて、成長したことにとても嬉しい気持ちになっていた。
グレイの決意を聞いた俺は……それに応えるよりも先にひとつ、確認しておくべきことがあった。
「ウル……ねずみ小僧さんとアサギがいるのは、そういうことでいいのかな?」
ぴく、と名指しされた二人がそれぞれ反応する。ウルシは平静を装っていたが、アサギの方はさっきよりもわかりやすく、不安そうな顔になっていた。
それを見て俺も責めているようで、悪いと思ってしまう。しかし確認しないわけにはいかなかった。
「はい。私がお二人を勧誘しました。二人は大切な親友で……一緒にチームとして参戦してほしいんです」
引き抜きになることを、グレイ自身もわかっていた。それを聞いてから俺はスタッフさんに視線を向けると、スタッフさんはいつもの薄い笑みを浮かべている。
「ええ。二人の契約は元よりいつでも本職優先で抜けられるようにしているので、移籍の問題はありません。私もさっきのバトルでライバルはなんぼあってもいいと確信しましたから、かなり前向きに捉えていますよ〜? ただし……大会参加に一つ、条件がありますがね」
試練を課す賢者のように、スタッフさんはグレイたちを見る。
「シューターとブロッカー。この二名のロールを確保してチームを完成させなければ、BBC出場は許しません。私達のチームからこれ以上の移籍も貸し出しはなしです。できますか? グレイさん」
「はい。必ずチームを完成させて、BBCに出場します!」
スタッフさんが与えた条件に、グレイは必ず成し遂げてみせると答えた。以前の後ろ向きだった頃とは違い、前向きな姿を見せるグレイに、スタッフさんも頼もしさを感じているようだった。
グレイは、自分のチームで俺たちに挑もうとしている。ウルシとアサギも、そんな親友のために共に闘う道を選んだ。スタッフさんもその決意を受け入れている。
ならば次は……俺が話す番なのだが。
「…………」
何か言おうとして、少し言葉を選んでしまう。
なんだか不思議というか……変な気持ちというか。グレイがようやく進むべき道を見つけられた。それが俺やみんなとの対決なら、ボム地球人として嬉しいことはない。
共に戦えないことが寂しくないといえば、嘘になる。だがウルシとアサギもそれを承知でグレイのためについていくことを決めたのだ。尊いものである。
スタッフさん同様前向きというか、応援する気持ちなのは間違いないのだが……いざその気持ちを伝えようとすると、なぜかうまく言語化できなかった。
「…………」
じっとこちらを見つめる四人の視線。グレイはまっすぐにこちらを見つめ、ウルシとアサギは少し不安そうに視線を揺らしながらも、目を背けてはいなかった。スタッフさんは興味深そうにこちらを見ている。
それを見て、俺はかけるべき言葉を決めて……先に今の気持ちを伝えることにした。
「……グレイ」
「はい」
「まずは自分の進む道を見つけられたこと、おめでとう。君が自分で考えて、自分のチームで戦いたいって決めたことを、俺は嬉しく思うよ」
そう言って、俺はウルシとアサギにも視線を向けた。
「二人もありがとう。グレイのために一緒に戦う道を選んでくれて。君たちが親友を大切に思っていることは、とても良いことだ」
実際、凄い覚悟がいることだと思う。裏切りとかそんなこと、俺やみんなは絶対に思わないだろうが……この二人は気まずい気持ちになっているだろう。わかる人にはわかるものだ。
「君たちなら第二回、第三回の予選を勝ち抜いて本選出場できるだろう。それまでは俺の生徒として指導してあげられるけど、BBC本選が始まったら……」
────正真正銘、俺達はライバルだ。
はっきりと、立場を再確認する。ウルシとアサギが息を呑む。しかし二人の視線にもう迷いはなかった。
そしてグレイは目を大きく見開き、瞳を輝かせながら俺を見ていた。先ほどの闘志の炎を宿したものとは別の、期待の眼差しで。
ああ……良かった。ちゃんとわかってくれている。
「俺の夢は、君達の最高にカッコいい勝利の姿を見ることだ。そういう意味じゃ、グレイのチームが勝ち進むのも俺の夢の一つになる。でも……今の俺はチームレインボーの指導役だ。本選で俺達は必ず、戦うことになるだろう。その時は全身全霊全力で────」
仲間として、ライバルとして。送るべき言葉は決まっていた。
だってボンバーマンは……ボンバーガールは、戦闘民族なのだから。
「ぶっ潰させてもらうよ。グレイ」
「────上等です。首を洗って待っていてください、先生。勝つのは私たちです!!!」
宣戦布告は成された。
・新鮮灰色うるし、チーム結成!
やっぱこの三人でチーム組ませてえな……と初期の頃から妄想してようやく形にできた。ウルシとアサギはめっちゃ気まずかったけど、ユキトのライバル宣言で迷いはなくなった。グレイはテンションめっちゃ盛り上がった。
・スタッフさんの思惑
573戦でバトルでライバルええなとなっていたのは本音だが、それ以外に目ぼしい他チームがいなかったため本選の盛り上がるかという懸念もあった。そこでグレイが名乗り出てくれたことで、イケる! と判断してグレイチームデビューを歓迎した。
次回からグレイチームのシューターブロッカー探しになるけど、そんなに長い話にはならないはず……多分……メイビー……。