勇者が回帰して大団円を目指す話 作:イイサカ ミサ
オリジナル:現代/冒険・バトル
タグ:R-15 残酷な描写 現代舞台 現代ファンタジー オリジナル作品 回帰 巻き戻り ダイジェストあり 四肢欠損の表現あり 勇者 ダークファンタジー
中からモンスターが侵略してくる巨大なゲートが現れたファンタジー現代で、勇者君が助けられなかった仲間たちを助けようと何度も回帰して奮闘するよ。
最後は登場人物皆が納得するようなハッピーエンドになるから安心して読んでね。
目の前では《魔王》が地に倒れ、黒い粒子となって大亀裂へとゆっくりと吸い込まれていく。
やっと、やっとだ。遂に戦いは終わったんだ。周囲の仲間達とこの喜びを、達成感を共有しようと振り返って
──────気づく。
後ろに拡がるのは骸の山。
これまでの過酷な戦いを共に潜り抜けてきた、もはや仲間以上の信頼と友情をもって繋がっていた第2の家族達。そんな人達は物言わぬ骸となって、地面に転がっている。
1番状態が良いもので四肢欠損。頭、手、足、右半身、左半身、上半身、下半身、綺麗な死体などここには無く殆ど総てが原形をとどめていない。
涙は、何故か出ない。
これまでも、人が死んだのを見るのは幾億回も見た。その度に、胸が締め付けられて、苦しくて、辛くて、吐いて、泣いた。
なのに、涙は出ない。何故?どうして?なんで?
「ぁァ─────!」
声すらも出ない、出そうに無い。
ふと、今の自分の体の状態に違和感を感じる。
足は満足に動かないし、手を伸ばしても指が見える事は無い。世界も左側が欠けていて、頭が体中の鈍痛に悲鳴をあげる。
嗚呼、そういう事か。
やっと全てを理解する。
僕は今、死にかけてるんだ。
顔の左側は吹き飛ばされ、喉は食い千切られて、右腕は引っこ抜かれた。両足は斬られた事でその機能を失い、二度と大地を踏みしめる事は出来ない。
割れたアスファルトへどくどくと流れ続ける血、動くたびにぼとぼとと零れ落ちる臓物。もうとっくに、自分は人間では無いんだ。こんなみてくれなのに、意識を保って、思考が出来ている。例えるなら、バケモノ。
せめて、死ぬ瞬間位は仲間達と、家族達と共に逝きたい。
残った左腕で地面を舐めながら這い、
グシャッ
パッ
そんな擬音が聞こえて来そうな程唐突に、視界が切り替わる。
真っ暗闇。一筋の光も無く、唯々漆黒。今まで目の前にあった仲間の死体はおろか、崩れて煙をあげるビルや、砕けて割れているアスファルトも全て消えた。代わりにあるのは上も下も分からない、黒。
そっか。僕、死んだのか。
『そうだねぇ、死んじゃったねぇ。』
突然の声に、思わず臨戦態勢をとる。相手に隙を晒さない様、匍匐を思わせる今の態勢から反射で立ち上がり腰にある剣を抜こうとして、手が空を切る。
『あぁ、ごめんねぇ。ワタシは敵じゃ無いよぉ。』
このたった数秒間の間に、理解出来ない事が連続して起きすぎて混乱する。
『1つずつ説明するから、まずは落ち着いてワタシの話を聞いてほしいなぁ。』
もし僕が、本当は生きていて今この状況が誰かの攻撃だったとしたら?…………いや、ここで戦って何になるんだ?もし本当に攻撃だったとして、どうせもう僕の守りたかった人達はいないんだ。戦う理由が無い、話を聞こう。
『うんうん、大人しく聞いてくれる様で良かったよぉ。それじゃあ、説明するねぇ。』
『まず自己紹介からだよぉ。ワタシの名前は繝?Α繧ヲ繝ォ繧エ繧ケ……おや?困ったなぁ、名乗れない。うーん、まあ《カミサマ》とでも呼んでよぉ。』
《カミサマ》?カミサマが僕なんかにどんな用が?
『ワタシが君に話しかけた理由は1つ。君に【回帰】の力、即ちやり直すチャンスをあげる事だよぉ。』
やり直すチャンス…………それは、具体的にはいつから!!?いや、なんでそんなに都合の良いチャンスを?
『あぁ、誤解の無いように言っておくけど君が【回帰】の力を手に入れたらワタシにとっても
『それと、具体的にいつからかと言うとねぇ、今日から丁度1年前……大亀裂が現れた日だよぉ。』
大亀裂。世界中に突然現れた大きな裂け目、僕達の世界と異世界を繋ぐポータル、空間の歪み、様々な呼ばれ方や多くの説があるそれには確かなことが1個だけある。それは、大亀裂の奧から異形の怪物達が此方の世界へと侵略してくると言うこと。
その数は、数百や数千なんて数じゃ無くそれこそ数万を飛び越えて数億規模の大群だ。一匹一匹が成人男性5~10人程度の力と銃の弾丸を防ぐほどの皮膚や鱗を持つ、しかもこのスペックで雑魚レベルの奴らだ。誰が呼び始めたか《魔物》。侵略最初期の頃は正に異世界ファンタジーに出て来そうな様相の怪物が殆どだった事もその呼び名を広めた一助になっただろう。
……ここからは蛇足だが。そんな魔物が現れてから暫く、早い人だと2,3週間経った頃に、人間の中にも魔物と同じ様に人間離れした膂力や耐久性を後天的に持つ者が現れた。理由は不明、今となっては十中八九、大亀裂や魔物の死体から漏れ出た魔力によるものだと分かるのだが、当時は突然現れた大亀裂や魔物の侵略で唯でさえ混乱していたのに、そこに追い打ちをかける様に魔力によって変異した人間が現れたのだ。国等の機関は完全にキャパオーバーによる麻痺状態に陥り、そのまま壊滅。世界は崩壊の一途を辿った。
まだ国がちゃんと機能していたら防げた問題も多く起こった、そのせいで死んでしまう人達も1人や2人どころじゃ無かったし……唯一無二の親友も死んだ。
望み過ぎなのかも知れないが、やり直せるのなら全てを、全員を救いたい。こんな事を言っているけど、地球の裏側とか世界中の人間を皆助けられる訳じゃ無いのは勿論分かっている。自分の手の届く範囲、狭く小さいけれどせめて、目の前にいる人は
『それはまた大きな目標だねぇ。そんな君に良い事を教えてあげるよぉ。』
『過去へと巻き戻った時、つまりは死んでしまった時。君はそれまでの力を全て引き継いだ状態で過去にもどるんだよぉ。強くてニューゲーム……はちょっと違うねぇ?多分、強くてコンテニューって感じかなぁ?』
つまり、今の強さのまま1年前に戻れる……!?
『そういう事だよぉ。しかも、君が得るのは【回帰】の力だからねぇ。戻るには1回死ぬ必要があるけど、繰り返せば繰り返すほど強くなれるんだよぉ。』
そうか、チャンスは1回じゃ無い。……じゃあ、何回までやり直せるんだ?
『
無限…………?本当に……?
『ワタシは絶対に嘘を吐かないからねぇ、本当だよぉ。』
『まあでもぉ?1回【回帰】の力を手に入れたら途中で諦めたくなっても、絶対に諦められないし未来永劫何もなせずに生き続ける事になるかもしれないリスクの方が大きいんだけどねぇ……』
そんな事は悩む理由にもならない、全員を救える可能性が少しでもあるんなら僕はその方法に賭ける。これでも僕は皆から《勇者》なんて呼ばれてたんだ、昔は恥ずかしかったけど今では自分に一歩踏み出す勇気をくれる呼び名だ。
『覚悟が決まってるねぇ、よぉし!それじゃあ【回帰】の力を与えよう!』
どれだけ時間がかかろうが、必ず全員を救う。それまでは決して、絶対に立ち止まらない。
『むむむむむ……はあぁ!!!』
あまり覇気の無いかけ声に呼応するように、心臓の近くが熱くなる。そして、ゆっくりと意識が深く沈んでいく感覚に包まれる。
『あ、そういえばぁ!オマケでちょっとした
眠りから覚めるように、目を開く。
周りを見回すと、場所は最後に《魔王》と戦った場所、つまり大亀裂の前だと分かる。尤も、まだここに大亀裂は生じていないんだけど。
「久しぶりに2人で外出したけど、っぱお前めちゃくちゃ食うよな、それに加えて運も良い。確かにな、じゃんけんして勝った方が会計全額奢るって言ったのは俺だよ?でもさ、会計の度にじゃんけんしてんのに俺の全敗って流石に俺が不憫だと思わねぇ?」
隣からの声に、思わず息が詰まる。分かってはいた、頭では理解してた。でも、いざ声を聞くとこんなにも……こんなにも溢れそうになるなんて。
ゆっくりと、声の主へと顔を向ける。
地毛なのだろう、学生時代からずっと変わらない少し赤みがかったくせっ毛。過去にクラスの女子に何冊もBL本を隠れて書かれていた最大の所以である少し幼さを残す整った顔。僕よりも二回り程高い背に、スラッと長い手足。
僕とは大凡釣り合っていないようにも思えるこの男が、僕の人生でたった1人の親友である
もう駄目だ、耐えられそうに無い。
必死に抑えていた涙が溢れだし、ぼろぼろと目から玉になって零れ出す。
「ト″ウ″ヤ″た″ぁ″~!ト″ウ″ヤ″ぁ″ぁ″ぁ″あ″あ″あ″あ″!!!」
トウヤが生きているとはっきりと確認するために、思わず抱きついてしまう。
「えっ!?はっ?ちょっ!??ま、
~10分後~
「ズズッ!ごめん……急に抱きついて泣いちゃって。」
「あ~、なんだ。俺の世間体とTシャツ以外は何とも無かったから実質無傷だよ。」
「全然大丈夫じゃ無い!?本当にごめん!ズビーッ!」
「謝りながら俺のTシャツで鼻かむな???」
「あっ、ごめん……ちょうど良い位置にあったから、つい……」
「あ″~、で?何があった?さっきまで楽しそうに食べ歩きしてたのに急に泣き出してどうしたんだよ。」
素直に、本当の事を話しても混乱させるだけだ……なんて答えようか。
「…………近くを歩いてた
「それは、辛かったな……」
ぽんぽん、とトウヤに背を叩かれる。トウヤも世間体とTシャツを失っていたが、僕もまた何かを失った気がした。
「うおっ!スゲェ、なんだあれ!」
突然、近くの男が空を見上げながら興奮した様子で声を上げる。
「ん?ホントだ、なんだあれ。」
トウヤと一緒に上へ視線を動かすと、空に謎の流星群の様な光の束が出来ているのが見える。
また来たんだ、世界の終わりが。
「なんか嫌な感じがする、離れよう。」
「たし、かに?なんか気持ち悪いな。離れるか。」
「じゃあ、はい。」
僕はトウヤに背を向けて、おぶさる様に促す。
戻って来てからの体は魔力が体中を巡っている事が分かるし《魔王》と戦う直前と変わりない。なんなら今の方が精神的にも体力的にも調子が良いまである。
「なに?俺におぶされって?ここから離れるんじゃねーの?急に冗談言われても反応しにくいって……ははっ、冗談だよな……?」
「これが1番速いから。嫌ならお姫様抱っこするよ?」
「正樹、背中借りるぜ☆」
トウヤが僕におぶさったのを確認したら、足に力を貯める感覚で魔力を集める。
てかやっぱりトウヤ大きいな……僕も日本人の平均よりちょっと高い位はあるんだけどなぁ。
「それじゃあ、行くよ?」
「あ、あぁ。」
返事を聞いた直後に、足に貯めていた魔力を吹き出して超速のスタートダッシュを決める。勿論、足下のアスファルトを壊さない様にしっかりと力加減は調整した。
「速あぁぁぁァァ!!!??」
「ごめん!すぐ着くからちょっとだけ待って!」
~3分後~
そこそこ高いビルの屋上から、これから大亀裂が出来る場所に注意を向ける。
「ち、ちょっ!正樹!いつから人間辞めたんだよ!マジで死ぬかと思った……!」
目の前では刻々とその時が近づいている。光が
「トウヤ、来るよ」
地獄の始まりが。
「え?」
刹那、激しい衝撃と蒼い光に辺りが包まれる。それと同時に硝子に罅が入った様な音が鳴り響き、空間に文字通りの亀裂が奔る。亀裂は街中どこからでも見えるほどには大きく、そして存在感を放っていた。
そんな巨大な罅がパキパキと音を立て始め、遂に
これまでの事とこれからの事に思いを巡らせながら、大亀裂をジッと見つめる。
〖《大亀裂》の発生を確認しました。ギフト《ア■・■■ネス・テ■ス》を起動します。〗
「へぁっ?」
突然話しかけられた事に驚き、変な声を出してしまう。
こんなこと、前は無かった。確かに大亀裂が出来たことによって特別な力は手に入れたが、変な声が聞こえるとかは無かった。ん?今
「えっと……名前はよく聞こえなかったからなんて言えば良いんだろ……ギフト?で、良いのかな?」
というか、会話が可能なものなんだろうか?
〖用件をお話し下さい。〗
「その、ギフト……?は何が出来るの?」
〖本プログラムで使用できる機能を列挙します。《
「…………《ステータス》。」
ギフトの事を意識しながら言われた言葉を発してみる。
=====
【詞月 正樹】
役職:魔術剣士
称号:《勇者》《-閲覧規制-の種》
回帰数:1
-身体状況-
HP:100/100
MP:25/30
-身体能力値-
筋力:D
敏捷:C
持久:A
精神:S
五感:D
魔力:E
-所持戦闘技能-
剣術:中級
身体操作:上級
魔力操作:下級
魔術(火):下級
-所持一般技能-
▼開く
-神意-
【回帰】の力
=====
「長っっっ!」
一通り目を通したけどこれは酷い。特に身体能力値と魔術関係。
持久と精神以外が想像以上に悲惨だ、確かにこんな能力値じゃあ魔王との戦いどころか後半のモンスター達から人々を守れなかったのは当然だろう。僕の鍛錬が足りなかったせいで助けられなかった命があると思うと心が締め付けられる。
次に魔術関係。一応職業には
「ところで、ギフト。」
〖用件をお話し下さい。〗
上記の2つに負けず劣らず気になる事がある。
「《称号》欄の
〖その質問にはお答え出来ません。ですが、時間経過と共に開示される情報です。〗
「そう、なんだ。」
まだ謎は多いが、皆を救えるんならそんなことどうだって良い。……よし、気持ちを切り替えて頑張ろう。
モヤモヤと引っかかる頭の疑問を隅に押し込めて、思考を目的へとセットする。
「あれ?そういえばトウヤの声がさっきからしない……?」
疑問に思ってトウヤの方を見ると、呆けたままずっと固まっていた。
「トウヤ?お~い!トウヤ~?」
「はっ!?空から降ってきた隕石みたいなのが空間にデケェ亀裂をいれる夢を見てたわ……」
「ごめん、現実なんだ。」
トウヤの肩をポンと叩いて、後ろの大亀裂へと親指を向ける。
「☆▼@●#*~~~!!!」
言語化出来ない音を出した後再びトウヤはフリーズした。
やっぱりトウヤの近くにいるといつも楽しませてくれる。最高の親友だ。
……今度こそ、絶対に助けよう。何が何でも、必ず。
たぶん次かそのまた次辺りで、ダイジェストで回帰します。こんなに丁寧に描写するのは少ないかも?