「で、どこのどいつが根拠なき議題を上げた訳?そこのところ、話つけないと話にならないわよ」
「奥様、葉巻は没収です」
「禁煙してたのに何で再開するんですか」
「ちょっとは空気読んで?」
何かにイラついている母さんが、メイドさん達から葉巻を没収されていた。
今まで葉巻なんて吸ってなかったのに、どういった経緯で今吸おうとしたんだろうか。
今、中庭で男性管理委員会のメンバー達とタルラさんが正面に、僕と急いで帰ってきた母さんを中心に後ろにメイドさん達が勢揃いでお茶をしている。
お茶を素直に飲んでいるのは僕とタルラさんくらいだ。
「ねえ、何故か私のお茶が凄い味してるんだけど」
「5年前の茶葉です」
「ちょっと色々と喧嘩売ってない?」
空気が険悪なのは仕方ないとして、僕もそれは気になった。
まあ、確かに噂程度に囁かれているのはネット掲示板を見れば分かる。
姉さん達も昔は金で男遊びしてたって話もわんさか転がっていたんだ、それが一気に鳴りを潜めたら気にはなるだろう。
だからこそ、この豪邸の中に居る男がひどい目に遭っているんじゃないかという通報でも入った?
それこそあり得ない。
だって、いくら疑わしかろうと男性管理委員会が強制捜査に踏み切るはずがない。
そもそも、僕は敷地外に出ることはないし、何かするにしても外の人が普通に見れられる訳もない。
「面白いタレコミがあったのでね、これをご覧になってほしい」
そう言って胸の谷間からぺらりと一枚の写真をとりだし…………ちょっとふやけてないその写真?
「これは、いつ撮ったものかしら?」
「結構頻回に『パーティー』を開いているみたいだね」
「うーん、あ!このメイドさんが居るから夏のやつだ」
「普通はバーベキューしているのだから、そっちで気づかない?」
思い出した!クリスタルロボが発売する日が決った記念にみんなで肉を食べた日だ。
今はもう冬の季節、なんなら年末が迫ってきているから割と前にとられたんだ。
でも、ふやけてるからと言っても若干ピントがぼけているような気がする。
「この写真の持ち主だった人は執念深かったわ。これが金になると信じ込んでいたもの」
「へえ、いい絵が撮れてるから
「権利は男性管理委員会へ譲渡させてもらったの。だから持ち主の話はこれでおしまい」
「へえ、随分と舐めた真似をしてくれたじゃない」
「男性以前に人を守るためと言うやつさ。こちらからも
明らかに母さんがイラついているが、それを何ともないかのようにしのぐタルラさんを見て、相当の修羅場をくぐっているんだと感じた。
だって、不機嫌な母さんに対して姉さん達は何の太刀打ちも出来ないんだもん。下手したら拳が飛んでくるから遠巻きに見るしかなかったもん。
「この写真には明らかにご機嫌な君が映っている訳だけど、もしかしたら虐げられているんじゃないかという声も上がってね。こちらの界隈ではケイ家は男を狩っているという話は有名だからね」
「ふーん、変な話だね」
「君の事だけど?」
能天気に話してたら呆れられてしまった。
「この子はずっとこんな感じだから気にする必要はないわ」
「そう…………」
そんなに変なこと言ったかな?
母さんもメイドさん達もうんうんと頷いているんだけど、めっちゃ不服なんだけど?
そこまで変なことはした覚えはないんだけど?
「ともかく、君は普通に過ごしているんだね」
「普通って、何が基準で普通?施設で共同生活している男性を基準に?」
「うーーーん、とても賢い事を言うね君は」
困ったようにタルラさんは言った。
まあ、体は十代の若者だけど中身はとっくの昔に大人だからね。
「賢いだけじゃなくて多才、それも新たな市場を切り開いた凄腕が、まさか少年とは思わなかったよ」
「スリップ工房は伊達じゃないもん」
最初は割と軽い気持ちで、けれど本気で始めたことに誇りはある。
親の力を借りて商業化して、男性の需要が異常に高くなっていることに付け込んで事業を拡大させたズルはしてるけど、作ったものに後悔はない。
むしろ男が敵役とか全くなかったのがおかしいくらいなんだよ。エロさを求めるならもっと作れよ!
こほん、先駆者としての愚痴はさておき僕は今の生活に満足している。
不当な扱いもされてないし、むしろ早く寝るように色々と寝かしつけられているくらい手厚いほどだ。
「君に不満がなければ良いけれど、ちなみに女は週に何回抱いてる?」
「週35回」
「なんて?」
「スウェン?1日1回じゃなかった?」
「あ、やべ」
僕の言葉に反応したのはタルラさんだけでなく、母さんも反応していた。
いや、だって毎日体力を使わせて寝かしつけるために色々ヤってるんだけどさ?メイドさんだけじゃなくて姉さん達も暇な時間にやってきてはやる事やったりしてるし?
母さんもその中に混じってるけど、仕事で家に居ない事が多いから姉さん達の方が圧倒的に回数が多い。
要するに、みんな館の主に隠れてヤることやってる訳で。
「ふううぅぅぅ…………」
ものすごい溜息が母さんの方から吐き出された。
息だけでも分かる通りブチ切れしてる、ヤバい、姉さん達死んだわ。
「…………ちょっと信じられないんだけど、え?本当に7日間で抱いてる?そのペースで?」
「童貞を捨てた時は一晩で30人以上は」
「スウェン!悪いけどちょっとお喋りはこれくらいにして?」
「えぇー」
もうちょっと話したかったのに、隙さえあれば自分語りをして良いんだよ?
「どうせなら賄賂代わりに全員抱けば口止めできるのに…………」
「スウェン!」
母さんがハンカチを僕の口の中にキュッと突っ込んできた。
何か言おうとしてもモゴモゴと何も言えなくなった。
しかし、僕がこぼしてしまった言葉は大きな波紋を呼び起こす。
「…………あの、普通はそういうの、男の子は合わないと思うのだけれど」
タルラさんはすました顔をしているようで、頬を赤めながらチラチラと視線が僕に向いている。
タルラさんだけじゃない、一緒にガサ入れのつもりで来た男性管理委員会の職員も気にしないようにしているけど、サングラスの下で僕と母さんを交互に見ている。
…………これ、懐柔できるな?
ハンカチを咥えたまま、僕は男性管理委員会の面々を利用して、僕が男であるが故に起こるトラブルの後ろ盾の一つにしようと考えた。
ゲームを作るためなら、何だってするからね。
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