GBBBBは無法地帯【本編&DLC編完結】 作:ゼフィガルド
そして、時間は過ぎた。GBBBBは何度もバージョンアップを繰り返しながら、時には名称を変えつつ、サービスは継続されていた。
『は~い! 8代目レコちゃんです! 相方のカルパッチョさん! 次の実装はガイア・ギアになりましたけれど、行きつくところまで行きついた感凄くないですか?』
『なぁに、24年前にはね。今では、当たり前になっている宇宙世紀IFの開祖とも言える『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が始まったのよ? ここまで来たら、ガイア・ギアまでどんと来いよ!』
『凄いですね! 正に、GBBBBの生き証人!! で、いま何歳なんですか?』
GBBBBのロビーに設置されているモニタでは8代目レコと相方であるカルパッチョが軽妙な遣り取りをしていた。そんな様子を見上げながら、1人の少女が隣にいる『タンク・ガンダム』と『ドーラ・オリジン』に尋ねていた。
「ねぇ、お母さん、お父さん。昔、あの人と一緒にGBBBBをしていたって本当?」
「はい。それはもう、カルパッチョさんは何時でもクランを賑やかしてはイベントを開催していましたよ。今でも、彼女の奇声が耳に残っています」
「あの年になっても、あそこまで元気なのはもう素直に感動よね」
昔を懐かしむと同時に、今になっても落ち着きもしねーのかというドン引きも籠っていた。そんな彼女達の機体を見て、駆け寄って来る美プラが2機。
「おっす。まだ、皆は来ていない感じで?」
「セリトさん。それに、グスタフさんも」
「シーナ。ドーラ、久しぶり。って言う程でも無いけれど」
今まではユーザーが見立ての技術で再現していたレコも人気を博した為か、ついには公式でプラモが出るまでになっていた。勿論、GBBBBでも実装済みだ。
「同窓会ってことで集まったけれど、ドーラ達の所は子供も一緒に遊んでいるんだね。ウチの子達は皆FPSの方に行ったけれど」
「今はTPSやFPSの方が話題になり易いからね。どうしてもね」
GBBBBだけではなく、24年の間に様々なゲームが出た。このゲームも人が付いたり、離れたり。一時期はサービス終了の危機もあったが、こうして存続している。そんな彼らを見て、更に人は集まって来る。
「よぅ、お前ら。相変わらずで何よりだ」
「久しぶりだな。皆」
マシマとクロカンテもあの頃と同じ機体でやって来ていた。これまでに新しいガンダムは幾つも誕生したけれど、今もプレイしている者達はアセンブルも刷新したりすることはあったが、やはり同窓会となったらコレだった。
「ビアンカもフリーダムフリートも揃って来ましたね。カオスさんはやっぱりむりそうですか?」
「そうだな。今日はGBBBBでのビッグイベントがあるから万全の態勢を敷きたいってことでよ」
シーナが少しばかり残念そうにしていた。今日は特別な日だから、あの時のメンバーと一緒にイベントを見たかったが、そうはいかないらしい。そして、最後に2人がやって来た。
「いや~。ホンマ、遅れてゴメン。子供寝かせるのに時間掛かって」
「もう、皆揃っているのね」
現れたのはザタリオンとガンダム・サファイヤだった。そんな二人を見比べながら、マシマはうぅむと唸っていた。
「やっぱり、お前らが結婚したのが一番信じられねぇよ」
「それって、どういうこと?」
あの頃と変わらない威圧感を持ってコウラが詰めよっていた。人生、紆余曲折。何があるか分かった物ではない。彼らのちょっとした遣り取りを見ながら、シーナ達の娘が問うた。
「お母さん。アラタさんとリンさんは?」
「2人はここじゃなくて、別の所に居るんですよ。今から、見れますから」
シーナがモニタの方に目をやった。すると、画面が切り替わり宇宙空間が映し出された。今では珍しくもない光景なのだが。8代目レコの解説が入った。
『かつて、宇宙黎明期と呼ばれた頃。宇宙開発を快く思わない者達により、未来が阻まれようとしたことがありました。その危機を救ったのは、GBBBB初代チャンピオン。マイスターとその夫人でした。2人はかつて一商店街でチームを組んでおりましたが、実はもう1人。彼らには友人が居ました』
宇宙という広大な砂漠に2機のMSが航行していた。
自家用車と同じ位、ありふれた存在となった物で、今更取り上げる物でもないのだが、大きな意味があった。
『今日は、ようやくできたお迎えの日ってワケ! ニシシシッ! 今日は歴史的な日になるわ~~!』
『40代でニシシシッはきつくないですか?』
『うるせぇ!!!』
8代目レコからのツッコミを受けて、カルパッチョは大人げない反応をしていた。ロビーに集まっていたユーザーはモニタの映像を凝視していた。
~~
『アラタ君。接触回線の距離は保ったままで頼む』
『了解です。文、微調整は頼む』
『Yes。お任せください』
アラタが操縦するMSのモニタには、24年前から変わらない姿の文が映し出されていた。厳密に言うと、モデリングは改良されまくっているが。
『タクマさん、アラタさん。ロボ太さんへの充電は私にお任せください』
先頭を行く、旧式のガンダムを操縦するインフォちゃんから頼もしい返事が来た。機体の表面にはイラトゲームセンターの広告がでかでかと貼られていた。
『イラト婆さん。一体、何歳まで生きるつもりだ……?』
『200歳位までは生きそうですよね』
タクマが苦笑いをしていた。今は、科学技術も発達して健康寿命もすさまじく伸びている。200歳も夢物語ではない。
『タクマ、アラタ君! 私達もしっかり見ているからね!』
2人のモニタにはミサとリン。そして、子供達の姿が映し出されていた。
やんちゃだった娘達が、今やしっかりと母親をして家庭を見てくれているのだから、彼女達には頭が上がらない。
『お姉ちゃん達の友達ってどんな子かな。文はお爺ちゃんに遭うことになるけれど。楽しみ?』
『ハイ。私の自慢の友人達について沢山話して、どんな経験をして来たかも色々と聞いてみたいです。あ、見えてきましたよ』
技術の発展とはすさまじい。昔は地球にある特定物を探すことさえ途方もない話だったのに、今や地球よりも遥かに広大な宇宙に落ちている物すら見つけられるのだから、人類の発展には驚くしかない。
『いた』
先んじて、タクマが発見した。コロニーや人工物が浮いていることも珍しくない昨今だが、あまりに不自然なものがクルクルと回転していた。
スペースデブリにしてはあまりに人工的な形をしているが、MSではない。しかし、何処となく造詣はガンダムっぽい。中世風の造詣も相まって、見る人が見れば『ナイトガンダム』であることは直ぐに分かるだろう。
『タクマさん。近づきます』
インフォちゃんの機体が先んじて近付き、漂流物を確保した。
直ぐに外へと出て、自らの体から伸びるコネクタを挿して充電を始めた。すると漂流物が再起動をした。
『ロボ太さん。大丈夫ですか?』
『む・・・・・インフォ殿?』
『ロボ太さん。本当に懐かしい。ようやく迎えに来られました』
『これは一体』
再起動したロボ太は、インフォちゃんが操縦していたガンダムを興味深そうに眺めていた。この反応こそが、24年の月日を感じさせてくれる物だった。
『あなたが宇宙へ飛ばされた時、その行方を探すことは不可能でした。でも、今なら宇宙に漂う数センチ程度の落とし物でも見つけることが出来るんですよ』
インフォちゃんが指でジェスチャーをして、胸を張ってみせた。彼女のあまりに人間臭いモーションにタクマもアラタも笑わずにはいられなかった。
『タクマさん。声、掛けなくて良いんですか?』
『運転中はよそ見厳禁だろ』
楽しそうに会話はしているが、まだ回収作業の途中である。
突如飛来して来たデブリに吹っ飛ばされて悲劇となることも無くは無いので、帰るまでが回収作業という訳だ。
『宇宙も気軽に来られるようになりました。このガンダムはなんと自家用です』
『自家用!? モビルスーツが自家用!?』
世界で初めて実用化された時に取った、自分達の反応と全く同じだった。そろそろ、自分達もインフォちゃんに追いつく。
『よし、目標物の確保と起動を確認。タクマさん、今度は自分達が先導の為に準備をしましょう』
『そうだな』
一刻も早く、話し掛けたい欲求がタクマにありありと現れていた。インフォちゃんが自分達を指差した。
『ほら、見てください』
アラタとタクマは減速して、対象物を有視界に納める範囲まで近付いた。始めて出会ったアラタはMSで軽く手を振り、再会を待ちきれないタクマは直ぐに踵を返した。コロニーに連れて行く為に、今度は自分達が帰り路を確保する為だ。
『なんと・・・・あれは、まさか・・・・』
『人類の第二の故郷。宇宙コロニーですよ』
宇宙世紀の作品では、コロニーは棄民等マイナスなイメージもあったりはしたが、地球との対立……なんてことは起きることも無く、平穏に過ごしている。
当たり前だが、ガンダムという作品を通して幾度も悲劇の可能性を見て来た人達にとっては、夢のような生活だった。
『一体どれほどの時が流れた。私は・・・・なんという未来に来てしまったのだろう』
離れていてもインフォちゃんから送られてくるデータで音声は伝わっていた。タクマとアラタは笑いを抑えるのに必死だった。
『これがロボ太さんがみんなと守った未来の姿です』
『みんなと守った未来か・・・・共に見たかった。この景色を』
ロボ太の悲痛な告白を聞きながら、アラタとタクマは堪らず噴き出していた。まだ、死んでねーよと。だが、ここでインフォちゃんのネタ晴らしが入った。
『ヒトの進歩には驚かされます。あれから30年でこれ程の物を作り上げるのですから』
『そうか30年・・・・』
そう。30年である。少年がいっぱしの大人になる位の時間で、人類はここまでの発展を遂げたのだ。
『30年!? 30年しか経っていないのか!?』
『はい。30年です』
最も。その陰には、未来を信じて行動を起こし続けた人達の願いもあってこそなのだが。インフォちゃんの話を聞き、先程まで悲嘆の色は一変して、ロボ太の声は弾んだ物に変わった。
『なんと! それでは・・・・?』
『さあ、帰りましょう。みなさんお待ちかねですよ』
インフォちゃんがガンダムへと搭乗する。ロボ太も興味津々と言った様子で彼女の後を付いて行く。
『インフォ殿。私が操縦しても良いか?』
『ダメです。免許持ってませんよね?』
動かしてみたいという気持ちはわかるが、自家用車と同じ様な扱いなので当然免許もいる。2人の話しが聞こえる。
『・・・・モビルスーツは免許制なのか』
『これはウィルさんから借りた物ですから事故をおこす訳にはいきません』
ウィルから『再開するなら、彼が最後に見たMSの方が良いだろう』と言うことで、カドマツ達が使っていた物のレプリカを貸して貰ったのだ。
『しばらく色々なことでショックを受けそうだ』
『そうですか・・・・それは楽しみですね』
『楽しみ・・・・うむ。本当に・・・・楽しみだな!』
コロニーが目の前に見えて来る。まず、MSから降りたらロボ太に何と言おうか。何から話そうか。
『楽しみだ。本当に!』
『まず、俺達で最初にロボ太さんのショックを取りましょうか!』
2人がどんな話をするのだろうかと、楽しみしている自分がいる。この後、GBBBBに登場して、同窓会と一緒にロボ太も混じることになっている。
モニタの向こうではミサとリンが子供達と一緒に外に出る準備をしていた。話したいことは沢山あるし、ロボ太も聞きたいことは沢山あるだろう。だけれど、これからの時間も沢山ある。
――
30年前に分かれた友人の姿を見て、ミサの目尻には涙が浮かんでいた。
24年前に、タクマと寄りを戻してから随分と時間が経ってしまったが、こうして生きている間に再会することが出来るのは何よりも嬉しかった。
「(信じた未来が、現実を繋いで、私達の願いを叶えてくれたんだ)」
「お姉ちゃーん! もう到着するってさ!」
かつて、ロボ太と別れた時に願った想いは、ついに結実した。
あの時は願うだけだったが、この未来は自分達が引き寄せた物だ。先に玄関で待っている、リンに言った。
「うん! 今行くよ!!」
沢山の人と出会った。その中にはいつもガンダムの姿があった。
かつては全てを諦めた時があった。でも、そんな停滞を打ち砕いてくれたのは間違いなく彼らだった。
リビングに設置されているアクリルケースの中には、アザレアブレイジングとリン・カーネーションの姿があった。彼らを見て、リンは言った。
「行ってきます」
彼女は飛び出して行った。自らが引き寄せた素敵な現在に向かって。そして、これからも続いて行く素晴らしい未来へと向かって。
そして、GBBBBとガンプラバトルを愛する全てのプレイヤーに祝福を