妻に先立たれ、娘と二人暮らし。その娘が成人を機に結婚をすると言い出した。娘の家庭教師のミケーラにゾッコンの父は、この機に彼女にプロポーズ。返事は、誕生会の後という事に。

仕事でロサンゼルスから日本に向かう飛行機の中で、エイプリルフール生まれの娘の誕生会が始まった。さてどんな嘘が語られるのでしょうか?

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4月1日生まれの娘(季節の便り~12ケ月・SS・コメディ)

 パ――ン! 飛行機の中にクラッカーの音が鳴り響いた。

 大きな音に思わず私は耳を塞ぐ。

 

「カーラ、18歳のお誕生日おめでとう」

 クラッカーを鳴らしたミケーラが、カーラの頬にキスをする。

 

「おめでとうカーラ。もう大人の仲間入りだな」

「ありがとうパパ、嬉しい」

 思春期の難しい娘を残して、妻が死んで5年。片親になった娘を守れるのは私だけだとだと頑張ってきたが、いかんせん仕事もあり、寂しさから家に引き篭もってしまった娘をどうしてやることもできなかった。

 そんなとき、アルバイトで家庭教師に来たのが、オランダから来た留学生ミケーラ・ハーセ。彼女の励ましで、娘は元気を取り戻した。

 カーラはその後15歳で大検に受かり、高校をスキップ。ミケーラのかよう大学に入ってしまった。年の差からいじめられやしないかの心配したが、そこはミケーラが常にフォローしてくれた。二人は実の姉妹のように仲がいい。

 その上、カーラが引きこもっている間に書いた小説が賞を取り、私の年収の3倍も稼ぐ流行作家になってしまった。一重にミケーラの教育のおかげだ。

 賢く、優しく、美しいミケーラ。妻亡き後、こんな素晴らしい女性にあったことがない。私はいつか彼女を私の妻にと考えていた。彼女なら気難しい娘も反対はすまい。

 なのに、彼女は1週間前にこういった。

「大学院を卒業し学生ビザも切れるので、私はオランダに帰ります」

 だから私はこういった。

「なら、アメリカ国籍をとればいい。私と結婚してくれ。そして娘のカーラの母親になってくれ」

 

 彼女は驚いて、しばらく考えていた。

「カーラの考えも聞かないと……」 

 返事はカーラの誕生日パーティの後でと言うことになった。

 

 そうしていま私達は太平洋のど真ん中の上空、ロサンゼルス発、日本行きの飛行機の中にいる。カーラの小説の日本語版の出版の打ち合わせのための訪日だ。出版社の都合で今日になってしまった。

 カーラが成人の祝いは、自分の本当に生まれた時間にしたいと言うので、誕生日パーティは飛行機の中で身内だけですることになったのだ。ミケーラが、家族だけの特別スイートの座席を手配してくれた。

「もう成人か。子供ってあっという間に大きくなるんだなぁ。パパ寂しいよ……」

「パパ、お誕生日恒例のクイズ行くわよ。いつものようにヒントは三つまで。これも、もう最後ね。私も成人してパパの子供は卒業だから」

 

 これは妻が生きている頃からの我が家の恒例行事だ。

 大抵は私が負けて、娘の可愛い願い事を叶えたものだが、もしその願いが無理なことなら、私にはとっときの拒否権があるのだ。

「カーラそれは嘘だね、だって今日はエイプリルフールだもの」

 なんと私の娘のカーラは、4月1日《エイプリルフール》生まれなのだ。

 

 

 

 カーラが喋れるようになってから、16年間で2回だけ私は拒否権を発動したことがある。

 8歳の歳の子供が「先生に侮辱された! 殺してくるから、ライフル買って」なんて願い叶えれるもんか!

 もう一つは妻の死んだ13歳の時の願い「ママを生き返らせて」だった。

 私は「カーラそれは嘘だね……」というしかなかった。

「ええ嘘よ。言ってみたかっただけなの。でもパパにお願い。私が成人するまで再婚はしないで。私にあたらしいママを作らないで。わたし、とてもそう言う事に耐えられそうもないの」

 

 私はそれを今まで守ってきた。

 私自身、妻の思い出の前にそういう気持ちになれなかったせいもある。

 しかし私はミケーラに会ってしまったのだ。娘の成人の誕生日がこれほど待ち遠しかった事は無い。

 

「パパ、私結婚するの。相手はパパの知ってる人よ。さあ誰でしょう?」

「えええええー!本当なのか?」

「そうよ。これが一つ目の質問の答え。ダメじゃないパパ、質問の無駄遣いしちゃ」

 

 私が知っている男……必死にカーラの周りの男達を思い出す。

 ダメだ、数が多すぎる。背が高く男まさりでサバサバしているカーラを、男達は女というより、仲間として扱っていた。服だって、よく私とお揃いで着ていた。

 男達の中に紛れると、どこにカーラがいるか見つけられないくらいなんだ。

 そのカーラが結婚?相手は一体??……さっぱりわからない。

 

「二つ目の質問。こんな大事な事、なんで今まで黙ってたんだ?」

「反対されると思ったの。パパと私は結構べったりだから、パパが娘離れできてないんじゃないかとか、心配だったし。ちょっと歳が離れてるとか、いくらなんでも早すぎるとか言われるんじゃないかって。これが二つ目の質問の答えよ」

 

 確かに私達はベッタリだった。成人したばかりでは結婚には早いかもしれない。

 しかし、歳が離れてるなんて、反対の理由にはならない。私だって二回り離れたミケーラと結婚しようとしているのだ。

 そして娘もまた、共に人生を歩むパートナーを得てお互い新たな人生を始めようとしている。すばらしいことじゃないか。

 

「三つ目の質問。その人を本当に愛しているのか?」

「ええ。私は、この人と出会うために生まれてきたと信じてるの。この人と結ばれないのなら、私一生独身で過ごすわ。これが三つ目の質問の答え。パパ、答えわかった?」

 

「わからない、今年も私の負けだな。誕生日の願い事はなんだい?」

「パパが私たちの結婚を祝福してくれる事。それだけ」

「だったら反対なんてしないよ。お前が選んだ人なんだ。喜んで祝福するとも。

 だいたい反対したってもう成人しているお前は自由に結婚できるじゃないか」

 

「ありがとうパパ大好き!」カーラが私に縋り付く。

 そして振り向いてこう言った。

 

「さあ、賭けに勝ったわ。私と結婚してミケーラ」

「ええ、あなたならやり遂げると信じてたわ。カーラ」

 そういうと、二人は私の目の前で熱烈なキスを始めた。

 

「は?」私は今何を見ているんだ?

 

「言いましたでしょうミスター。お誕生日パーティの後で返事をすると。貴方のプロポーズはお受けできません。私はカーラと結婚しますから」

 

「私達ずっと愛し合ってたの。だから私、成人する日をずっと待ってたのよ。

 オランダでは正式に、同性婚が認められているから、私達あっちで暮らすわ。

 ミケーラには私のマネージャーをやってもらうつもりなの」

 

「なのにまさかのミスターからのプロポーズ。私、本当に困ってしまって。

 だからカーラにいいましたの。貴方から『私たちの結婚を祝福する』という言質を取れたら結婚してあげるって」

 

 

 世界が、ガラガラと音を立てて崩れ出した。嘘だ、これは嘘に違いない。

 そうとも! 今日は4月1日《エイプリルフール》。嘘をついて良い日なのだ。

 

 

「わ、私のさっきの言葉は嘘だ! だから賭けはカーラの負けで、結婚は無効だ」

「あら、それはダメよパパ。だって今日は4月1日じゃないもの」

「何をいうか、今日はお前の誕生日。4月1日に間違いない」

「いいえミスター。さっき誕生日のクラッカーがなった時、飛行機が日付変更線を超えました。今日はもう4月2日なんです」

 

 

【国際日付変更線】日付の更新の矛盾を防ぐために、地球の会場に設けられた、ほぼ経度180度の地点を結ぶ理論上の線。太平洋上にある。

 地球を旅すると、経度が15度異なるたびに1時間だけ現地時刻が異なっていく。そこで旅行者が15度ずつ移動するたびに時計の針を1時間ずらしていくと、世界を一周した時、時刻は正しい日付が1日異なることになってしまう。

 これを防ぐために国際日付変更線を西から東にまたぐ場合は、日付を1日戻し、東から西にまたぐ場合は、日付を1日進める。

 

 

「あの時、西から東に私たちの乗った飛行機は線をまたいだ。日付は1日進み今日は4月2日。だからもうエイプリルフールの『嘘』は使えないの。   

 そのために日本の出版社に打ち合わせの日を合わせたもらったのよ。ぴったりの時間の飛行機探すの大変だったんだから」

 

「ミスターの耳元でクラッカーを鳴らして耳を塞がせ、『日付変更線を通過しました』のアナウンスの声が聞こえなくしたんです。最高のタイミングだったでしょう?」

 ミケーラが笑った。

 

「だからもうパパは反対はできないの。だって今年のお願いは『パパが私たちの結婚を祝福してくれる事』パパは『喜んで』と約束したわ。だからわたしたちを祝福してね」

 娘はそういうと、隣のエコノミールームから男を1人呼んできた。

 2人は牧師を待機させていたのだ。

 そうして飛行機の上で、2人の結婚式が始まり、私の見ている前で、2人は指輪の交換をし、誓いのキスをして結婚の宣言をした。

 

 こうして私の妻になるはずだったミケーラは、私の目の前で私の娘と結婚したの

 だった。

 

 ……誰かお願いだ、全て4月1日《エイプリルフール》の冗談なのだと言ってくれ。

 

 

【後書き】

 私はBLとポルノは大嫌いですが、LBGTQ +の方達は応援してます。お幸せに!

 


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