「艦これ」いつかあの海で×ドリフトスピリッツ 第二幕 2024 -いつかあの頂で- 作:カービィ改二
最初のドライバーを倒した時雨に迫る、新たなる刺客。
―――奈美子の父親、相楽ヒュウガが一体何をしたのかを知るため、ニューヨークに降り立った奈美子と時雨。
そこは2つのパーツメーカーが車と領地を奪い合う魔窟と化していた。
コーディネーターである怪獣監督マルコ、そして情報屋サマンサと出会い、バトルの末に「ケミック」の技術主任ラージから、奈美子の父親について聞き込みを行うことに成功する。
しかし…ニューヨークを巡るこの混乱を引き起こすことになったキーマン、「オクティ」の凄腕ドライバー…その人物こそが、奈美子の父親であるヒュウガだった。
―――ラージとの出会いから2日後。
サマンサは密会をするため、チャイナタウンの料理店を指定してきた。人がいないから安心という話だったが、後から次々と訪れる者たちの姿があった。
既に時雨、奈美子、サマンサの3人が卓のそばの椅子に座っている。
「ラージからの情報によると、ケミックは本格的に『ドライブモンスター』、あなたたち2人に接触するつもりみたい。取り囲んでオクティを潰すつもりね…」
「僕たちはメーカーを潰すためにバトルをしているわけじゃないんだけど…まあ、これも修行の一環になるのなら…僕はそれでもいいかな」
サマンサの言葉に時雨は困惑気味にそう答えた。
「修行?」
「えっとね、サマンサ…そもそも私たちがニューヨークに来たのは、私のお父さんのこともそうなんだけど…今後プロのレースに出場することになっている時雨の、修行も兼ねているの」
「…そう。やっぱり車を奪う事とかが目的、というわけではないのね」
「ええ…それにしてもお父さん、一体ニューヨークで何をしたんだろう?こんな状況じゃ探すにも探せないし、ここにいるかどうかもわからない…」
すると、ウェイターが持ってきたのは…注文した春巻だった。
時雨が受け取り、卓の上に置かれる。皿には3本の春巻きが置かれている。
「…ええい、腹が減っては戦が出来ぬ!まずはご飯を食べましょ!」
「そ、そうだね」
奈美子の言葉に時雨がどこか苦笑いで言い、早速奈美子が春巻きを口にする。
だが、春巻きを食べた奈美子の様子が一変する。
「…何これ、マズっ!!」
「え?」
「一体何が入っているのよ…」
「ちょっと、大丈夫?」
奈美子の様子を心配したサマンサが声をかける。
だが、ふとサマンサは周りの様子を見ながら色々と思索する。
「(噂に遭わぬ創作中華料理ってことかしら…人気がないから密会の場所にしたんだけど、どうして今日に限って人が?)」
ふとサマンサが周囲を見ると、やけに人が多い。
普段なら潰れてもおかしくないレベルの店なのに、今日に限って異様に多い。
今回の密会した店はウェブサイトにも掲載されていない、古くて潰れそうな店なのである。
こんなことは、滅多にない。
すると、サマンサがそう思った時だった。
3人が座る卓に、一人のアジア人のような女性が迫ってきた。
「すいません、アンケートよろしいですか?」
「…?」
時雨が疑問に思う中、女性は紙とペンを手渡した。
紙を時雨が確認している中、こう口にした。
「もし答えていただけるのであれば、食事については私の方で全てお支払いしますわ」
「やった、ラッキー!お姉さんもしかしてアジア系の人ですか?なんか似たような人がいると安心しちゃうわ…」
「…いや、待ってくれ」
「え?」
「すいません、これは一体どういうことですか?」
そう言った時雨はアンケート用紙を女性に見せて、指を指す。
そこに愛車に積んでいるエンジンとターボのメーカー、戦闘力など多数の項目が記載されている。
「これって…どういうつもりですか?…アビゲイルさん」
「……」
時雨はアンケートを見ていて違和感があった。
そう簡単に愛車の情報をホイホイ教えてしまっていいのか。自分の情報を何が何でも盗もうとしているのではないか?
そうふと疑問に思ったのである。
そして何より、アンケート依頼人のところに書いてある名義も気になった。
「Chemic&Molec Inc. カスタムコーディネーター アビゲイル・リー」
どうやら時雨たちに対する次の刺客のようだ。
すると「チッ」と軽く舌打ちしたかと思いきや女性…アビゲイルは言葉を続ける。
「時雨様…ぜひともそのドライビングの腕を見込んで、我が陣営…ケミック&モレック社に、ご協力をお願いいたしますわ」
「…じゃあ、ケミックの」
「まさか…!」
時雨と奈美子が互いに口にしたところで、食事をしていた客たちが無言のまま立ち上がり、奈美子とサマンサが経てないように壁を作った。
どうやら全員ケミックの社員のようだ。
そして1人の男が出口へと向かい、車へと乗り込んでいく。
どうやらバトルする以外にこの場を切り抜ける道はないのかもしれない。
「…奈美子、行ってくるよ」
「時雨、大丈夫?」
「任せて…アビゲイルさん、コースは?」
「マネーストリートで。例のコースでバトルしてもらいますわ」
「……」
アビゲイルの言葉に静かに頷いた時雨は、そのまま店を出て愛車に乗り込んでいく。
―――vs業界20位販売員
推奨BGM:ONE NIGHT(from SUPER EUROBEAT vol.105)
相手の車はGDB-Cインプレッサ、コースはマネーストリート復路。
左レーン、Z33。右レーン、インプレッサ。
スタート地点に2台が並ぶ。
「(ラージのおっさんのとこならともかく、俺達だって腕を磨いてきたんだ…流れに負けるわけがねえ)」
ドライバーの男は静かにそう思っていた。
見かけにして明らかに20代以下の若者のアジア人。
自分たちとは経験も何もかもが違う…そう思っていた。
もっとも、相手のマシンの実力は想像を絶するものなのかもしれないが。
「(奈美子はいてくれたら精神的に落ち着くけれど、プロの世界に入った以上そうは言っていられない)」
一方の時雨。
今回はナビシートには誰もいない。
だがそれでも時雨は構わなかった。
何せこれから出場するレースにおいては、ラリーを除けば助手席にナビがいることはあり得ないのだ。
今後間違えなく、プロの世界においては自分自身との戦いになるだろう。
そしてそれを鍛え上げるためのいい特訓になるというなら…
時雨としては全くもって問題なかった、というよりは寧ろ好都合だった。
カーナビがカウントダウンを始める中、2台のエンジン音がこだまする。
3
2
1
GO!
「―――!」
「……」
2台が一斉にスタート。先手を取ったのは…Z33だった。
伊達に600馬力を誇るマシン。
見かけノーマルに毛の生えたマシンよりも先手を取るのは当然と言えば当然だった。
Z33が135キロに達した時点で、インプレッサはたったの80キロしか出ていない。それほどまでに加速力が違った。
「(くっ…速い!!)」
スタート直後のストレートで、先手を取られたインプレッサ。
だが、2台の車間距離がテールトゥノーズになったところで第1コーナーである左直角ロングコーナーへと飛び込んでいく。
「……」
スタートダッシュでZ33が猛加速する中、時雨は軽くアクセルを抜いたかと思いきやそのままハンドルを左に曲げた。
加速段階でアクセルを抜いて、そのままドリフト状態へ持って行ったのだ。
速度は140キロ台から130キロ近くまで落ち、ハンドルを右に切り返した後にアクセルを踏み続けることで後輪を空転させながらドリフトさせていく。
走行ラインは、まさしく車線上をグラインドするかのように迷いのないものだった。
そして左コーナーである以上…時雨が優勢であるのは言うまでもなかった。
昇り龍のような加速から一転、眼下の獲物を狙って急降下していくようにZ33はドリフトしていく。
その鋭さは間違えなく、ケミックのドライバーたちよりも優れたものだった。
「(は、速い…!!)」
一方、後方のインプレッサのドライバー。
速度は100キロ台にも到達していない中、こちらもサイドブレーキドリフトでドリフトさせていた。
だが、サイドブレーキというひと手間を加えたドリフトは明らかにアクセルワークのみでのドリフトに比べると、遅いと言われても仕方ないものだった。
やはりドライバー自身の実力に差があると言うべきだろう。
繁華街の中を駆け抜ける2台だが、完全に広がるばかりだった。
そしてそのままZ33は第2コーナー…今度は右のロング直角コーナーへと飛び込んでいく。
「(車線上を走るようにしたからか、速度は殆ど上がっていない…ならばこのまま飛び込む!)」
速度は130キロ台だった。
やはり長い直角コーナーということもあり、思うように速度が伸びないようだ。
一応相手の車もそれは条件は同じだが、コーナー区間が長ければ長いほど速度が固定化…あるいは下がってしまう可能性というのは当然高くなるわけである。
だがそれでも時雨にとっては好都合だった。
何せ次のコーナーも右のロング直角コーナー。
速度を上げたとしてもフルブレーキングでブレーキを消耗するだけである。
この先何戦も何戦もする可能性が高い以上、マシンを労わらなくてはならないのは当然の責務。
時雨にとっては「全開で踏み込む」よりも、「ペース配分を考えて勝ちに行く」というのが目標になりつつあった。
速度が130キロ台のなか、時雨はアクセルをリリースしてハンドルを軽く左に曲げたかと思いきや一気に右に切り返し、再びアクセルをフルスロットルに踏み込む。
Z33は後輪のタイヤが空転し始めたことにより、ドリフト状態へと移っていく。
ドリフト状態となったところで再び時雨はハンドルを左に切り返し、カウンターを当てつつアクセルをハーフスロットルのまま踏み続けてドリフト状態を維持し続ける。
白煙がわずかに上がる中、Z33は再び車線上に存在するレールをグラインドするかのように一本のラインを描きながらドリフトしていく。
その馬力をフルに生かした走りにより、完全に後方との差は広がっていた。
文字通りの大逃げ状態だ。
「(く、くそっ…!!)」
一方のインプレッサ。
ドライバーにとっては、あまりにも圧巻だった。
あのZ33が仮に600馬力以上であると仮定した上で、馬力の差はわかっていても…まさかここまであっさりと振り切られてしまうとは思っていなかった。
たった2つのコーナーであのZ33はインプレッサを置いてけぼりにしたのだ。
マシンスペックも文句はないが、ドライバーの腕も相当なものだ。
やはり「モンスター」という名に嘘偽りは存在しないのだろう。
なんとか第1コーナーを突破して第2コーナーへ連続ドリフトで飛び込んだのはいいが、突っ込みすぎたのか速度がもたついてしまっている。
おまけに明らかにオーバースピードのためにアンダーステアを誘発し、タイヤが完全に悲鳴を上げていた。
車線上のアウトコースすれすれに膨れた状態のまま、インプレッサは失速するかのようにドリフトしていく。
速度は100キロも出ていなかった。
だがそれでも諦めるわけにはいかない。
何せ相手のドライバーにとっては不利な右コーナー。
攻め込んでいけば追いつける可能性はなくはない。
そう思いつつ、第2コーナーでインプレッサはドリフトしていく。
だが…繁華街の光の中においても、Z33の姿は遥か彼方へと消えてしまっていた。
インプレッサが第2コーナー出口に近づいた時点で、Z33は既に吊り橋のはるか彼方へと走り去っていたのだ。
第2コーナーを立ち上がった時点でZ33の姿は、左レーンから右レーンへと変えて第3コーナーへと飛び込んでいた。
軽く数百メートルの距離を見せられたドライバーの男にとっては、もう諦めるしかない。
「(速すぎる…マシンもドライバーも、格があまりにも違う…!!)」
そう思ったインプレッサのドライバーは、諦めたかのようにアクセルから足を離して降参するのだった。
結果から言えば時雨の圧倒。
タイム差は7秒以上のぶっちぎりだった。
◇ ◇ ◇
バトルから店へと戻ってくると、時雨をアビゲイルが迎えた。
「お見事です、時雨様!技術主任のラージに勝っただけはあります!お使いのマシンも、ドライバーとしての技量も、プロに匹敵するものをお持ちですわ!」
「…どうも」
グイグイと迫ってくるアビゲイルに対し、時雨はどこか塩っぽい対応をしていた。
その様子がわざとらしいものであることを見抜いているようだ。
すると、アビゲイルはさらに口を動かす。
「いかがでしょう?我がケミック&モレック社の専属ドライバーとして働いてみては?あなたにしかできない仕事ですわ」
「…だったら先に奈美子とサマンサを開放するのが先じゃないですか?」
案の定時雨は塩対応だった。
そして口調はあまりにも冷静すぎた。
その様子を見ていたサマンサは、サマンサの方へやってきてあることを問う。
「…ケミックのお姉さん、この国が訴訟大国だと知ってて『脅迫』しているのよね?」
サマンサの言葉に、アビゲイルは「はて」とわざとらしい態度をとる。
「『脅迫』?はて、何のことやら?仰ってることがよくわかりませんわ。ここは自由の国、希望の都。脅迫だなんてとんでもない!私がしているのはあくまでもお願い…『オクティを倒すために、ケミックに入社してほしい』ってことですわ。オクティに協力したヒュウガのように…」
「(…やっぱり、ヒュウガさんが)」
アビゲイルがふと口にした、「ヒュウガ」という言葉。
時雨はその言葉にピンときた。
どうやらケミックの幹部たちからは相当に恨まれているようだ。
「(アビゲイル・リー…やり手の販売員で2年足らずで、幹部になった超成り上がり…周りはケミック社員に囲まれて、逃げることも出来ない。さすがの私もこんな状況は予想できなかった…どうする?)」
流石のサマンサもこんな状況になるとは思っていなかったようだ。
すると、アビゲイルとサマンサの間を取ったのは…奈美子だった。
「まあまあ、サマンサも怖い顔をしないで…ええっと、アビゲイルさん?バトルで勝ったらお父さんの情報を教えてくれるんですか?」
「もちろんですわ。私の知っていることはすべてお話しします。まあ、『勝てれば』のお話―――」
アビゲイルはどこか高をくくったかのようにそう口にした。
どんな相手だかは知らないが、自分たちにバトルを挑んでいればいずれ音を上げる…そんな魂胆が出ているようだった。
そしてそれを見逃さなかった時雨が、こう畳みかける。
「…なら、正面突破でいいですか?」
「と言いますと?」
「ここにいる人たち全員と、僕がバトルしますよ」
「時雨…」
「やった!少しずつだけど1歩前進だわ!時雨、頑張ってー!」
時雨の言葉にサマンサは心配しつつも、奈美子は時雨を信用しているようだった。
「わかった…ちょっと走ってくるよ。アビゲイルさん、次の相手を」
「…わかりました、では早速ご準備を(随分と自信があるようね…バトルで負けないと思っているのかしら?)」
「(…こんな状況でも時雨が勝つと信じているの?)」
アビゲイルやサマンサとしては予想外の展開だったが、次のバトル相手を指名する。
時雨は淡々と出口へと向かい、再びZ33へと乗り込む。
「(あの人はどこか僕に対して高をくくっているようだけど、むしろ好都合だ。僕の修行に役立つというのなら…これ以上にありがたいことはない。僕が成長する糧…特訓相手にさせてもらうよ…)」
エンジンを始動させ、コースへ移動する最中…時雨は静かにそう思っていたのだった。
―――数戦後。
チャイナタウンの店からコースは見える位置にある。
窓の外を見ていた奈美子がこう言った。
「うん、時雨の勝利ね!窓越しでも余裕って分かるわ!」
「本当に素晴らしいドライビングですわ…!時雨様こそストリートレース界の逸材…!」
窓の外を見ていた奈美子もアビゲイルも驚いていた。
やはりアビゲイルの言葉に嘘はないようだ。
◇ ◇ ◇
「信じられん…マシンスペックもそうだが、まるで自分の庭を走っているような…2年以上走り込んだ俺たちをあっさりと。何モンだよ、このドライバーは!!」
相手のドライバーはただただ絶句していた。
それほどまでに時雨の速さは異様だった。
「(僕が速くなったのか、それとも単に相手が遅いだけなのか…?)」
一方の時雨。
自分の速さについて鼻にかけることもなかったが、同時に相手が遅いだけなのか疑問に思っていた。
本当に自分が速いのか?それとも単に相手が雑魚だらけなのか?
そこについて時雨はわからなかった。
だが、特訓相手にしてはちょうどいい。
そう時雨は思っていた。
「(まあ、これが僕の特訓になるというなら…)」
組み手同然の事も時雨としては悪くなかった。
この先もずっと速く走るため、多くの人間たちと戦いたい。
加えて雑魚であってもたくさん継続的に走ることはきっとスタミナ付けになるはずだ。
そう時雨は思いつつ、次のドライバーを待っていた。
一方その頃。
「ところでサマンサ!どうしてこのお店を選んだの?今度はもっとおいしい店にしてよ!」
「(俺も思った…)」
「(仕事とはいえ、辛かった…)」
サマンサに話しかけた奈美子。
サマンサが選んだ店に関しては疑問があったようだ。
そして奈美子の言葉に、周りにいたケミックの幹部たちも同じことを思っていた。
やはり味的にはあまりよくないようだ。
だがその無神経な言葉に、サマンサは呆れてこう言った。
「いや、おいしい店なら密会なんか…ああ、わかったわよ。私はあまり食に興味がないから、今度仲間においしい店を聞いておくわ」
「えー?食に興味がないなんて勿体ないなあ。私たちの国に来たら、美味しい店に連れてってあげるわ!絶対に、『美味しい』って言わせてみせるから!時雨はそういう知り合いも多いんだよ?」
「……(強気になっていられるのも今のうち。連続してバトルすれば集中力も切れてくる。そうなればきっと…)」
サマンサと奈美子が会話する中、アビゲイルはどこか見下すかのようにそう思っていた。
どんなに時雨が速くても、彼女は所詮自分たちと同じ女。
遅かれ早かれスタミナが尽きるのは間違えない。そう思っていた。
そして何よりあまりに無神経すぎる。
アビゲイルがイライラするのも当然と言えば当然だった。
「そ、そう…楽しみにしているわ(ホントこの子、緊張感ないわね。まあアビゲイルもイラついてるし、これはこれで効果があるのかも)」
サマンサも奈美子の緊張感のなさに呆れてものも言えなかった。
だが同時に、これはアビゲイルをイラつかせるのに十分なのではないかとも思っていた。
「あっ、次のバトルが始まるみたい…頑張って、時雨!」
アビゲイルたちがスマホで見ていたライブ映像を見た奈美子。
そこには時雨とケミックのドライバーが横並びで停車していた。
どうやらスタート地点でライブで撮影しているようだ。
◇ ◇ ◇
―――vsゴリ押し販売員
推奨BGM:FIREBALL(from EUROMACH2)
相手の車はミニ・クーパーS(F56)、コースはマネーストリート往路。
左レーン、クーパー。右レーン、Z33。
2台がスタート地点に並ぶ。
「(少しペースを下げよう。いつまでも全開走行じゃタイヤもエンジンも持たない…)」
時雨としては全開走行で走っていても車が持たないのではないか…と思っていた。
先程の店にはかなりの客がいた。
これがもし全員ケミックのドライバーだったら…間違えなく車が悲鳴を上げるだろう。
必要なのはマシンマネジメントだ。
東京でのバトルでも同じようなことはあったので慣れているとはいえ、流石にコースにいい加減慣れてきた以上こちらでもやるべきだ。
スタートダッシュをあえてせず、そのまま追い抜いていく。
ストレート区間でのパワーでねじ伏せる方針になるのに時間はかからなかった。
そう時雨が脳内でスイッチを切り替えたところで、カーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。
3
2
1
GO!
「―――!」
「……」
マフラーからバックファイアーを噴き出しながら加速していくクーパー。
一方でスロースタートのZ33。
スタート直後のストレート区間で、加速差もあって徐々にクーパーがZ33を引き離していく。
だがストレート区間は上り坂。
スタートダッシュで先手を取ったクーパーだが、あっという間に加速が鈍っていく。
車間距離は車1台分開いていたが、あっという間にテールトゥノーズの状態になった。
「(くっ、わかっていたが速い…!)」
クーパーSの馬力は194馬力程度。どちらかと言えば小回りの利くマシンである。
チューニングをしていても、結局のところ毛が生えた程度にしか伸びない。
仮にエンジン載せ替えとかをしていたら話は別かもしれないが、結局のところ素の馬力が低いということは、やはり最高出力にも限度というものがあるのである。
速度は140キロ近くである。
2台がサイドバイサイドになったところで、第1コーナーの左直角コーナーへ2台が飛び込んでいく。
「―――!」
ブレーキを掛けたかと思いきやサイドブレーキを引き、後輪を強引に滑らせるクーパーS。
だが、Z33はそれからワンテンポ遅れてブレーキを掛けた。
当然そのワンテンポ分、Z33が先行する。
アウトコースという不利な条件なのに、曲がるのか?
そう思った時だった。
「……」
左コーナーなのにハンドルを右に曲げていた時雨。
アクセルオフからブレーキを掛けたかと思いきや、曲げていたハンドルを一気に左へと切り返す。
振り子の法則を活用したかのように、Z33は一気に左向きへと進路を変える。
そしてそのまま後輪が滑り出したところで時雨はハンドルを右に切り返し、アクセルを踏み込んでドリフト状態を維持する。
コーナー中間のオレンジポールを狙ったかのように、Z33は鋭いコーナーリングを見せる。
そのラインは文字通りのアウトインアウト。
コーナー中間のラバーポールスレスレを左フロントが駆け抜けたところで、Z33はコーナー出口へと立ち上がっていく。
出口寸前でアクセルをリリースしてハンドルをニュートラルに戻す。そしてドリフトが収まる中でZ33がアウトにわずかに膨れたところで、再び時雨はアクセルを踏み込む。
「――!」
アクセルを踏み込んだことで、Z33はコーナーの立ち上がりで弓矢のごとく推進していく。
速度は150キロ台まで加速する。
だが目の前には次の第2コーナー。
マシンが立ち上がる中で時雨は左ウインカーを出し、車線を左に変える。
この時点ですでにZ33はクーパーSを追い越していたのである。
「(は、速い…!!)」
ビュン、と風切り音がしたかと思いきや、気が付くとZ33はクーパーを追い越していた。
第1コーナーを立ち上がったばかりのクーパーSのドライバーは、ただ戦慄するしかなかった。
アウトコースからの大外刈り…まさしくマシンパワーをフルに生かした走りだった。
言い換えてしまえばただのゴリ押しかもしれないが、これも一つの戦略と言えば戦略だ。
高速コースでパワーを生かさない手はないということなのかもしれない。
車間距離はあっという間に車1台分以上に開いた。
目の前では車線変更をしたZ33が第2コーナーの左直角コーナーへと飛び込んでいく。
ブレーキをフラッシュさせたかと思いきやZ33は後輪を滑らせ、そのままの勢いで車線上をドリフトしていく。
先程よりかは攻め込んでいないとはいえ、インコースや立ち上がりの速度も相まって、スピーディにコーナーを駆け抜けていく。
あっという間にZ33のテールランプがクーパーSのドライバーの視界から消えかけていた。
「(くそ…!)」
視界から消えかけていたZ33を追いかけ、クーパーのドライバーもアクセルを踏み込む。
だが、既に視界から消えかけたZ33を追いかけるべく躍起になるあまり、足に力が入りすぎている。
少し頭に血が上っているようだ。
速度が130キロ台から150キロ台近くまで加速しようとしている。
そしてコーナーに飛び込もうとしてブレーキを掛けた瞬間だった。
「(しまった、速度が…!?)」
血が上ったことによるオーバースピード。
ブレーキングポイントは遅れ、明らかに突っ込みすぎている。
コーナーの先に消えかけたZ33を追いかけようとしたが故の油断だった。
サイドブレーキを引いて減速しようとしたが、オーバースピードでアンダーステアを出したクーパーSはドリフトしながらもコース中央のラバーポールをなぎ倒しつつ、左車線から右車線へと飛び出た。
ブレーキをずっとかけ続けていたので壁との接触はなかったものの、コーナーの立ち上がりは明らかに遅れた。
速度は90キロ台まで減速していた。
何とか右車線に飛び出たところで加速するクーパーSだが、完全に失速していた分、立ち上がりでスピードが全く伸びなかった。
そして前方のストレートにZ33は…はるか彼方にあった。
「(くそっ…)」
完全に置いてけぼりだった。
今の速度から加速しても、確実に追いつけないことはもう火を見るより明らかだった。
先行するZ33は吊り橋を渡り切り、第3コーナーへ飛び込もうとしているのだった。
「(純粋なパワーが低いワンエイティに比べたら、この車は…その数倍のパワーがあるも同然なんだ)」
一方の時雨は完全に実力をセーブしていた。
ハーフスロットルにすることで、エンジンをあえて回転させずに労るのだ。
元々時雨が乗っていたワンエイティは、かなりの改造が施されていた。
エンジン回りも冷却系もECUも…それで500馬力あるかないか程度。
一方でこのZ33はノーマルで280馬力、そこからチューンを施して600馬力。後付けターボでパワーもあり、軽量プロペラシャフトで加速も伸びるようになっている。
国産280馬力級のマシンで大幅な改造が施されている以上、ファインチューンのマシンでも軽くねじ伏せることは容易と言えば容易だ。
そしてそれが分かってしまった以上…本気を出し尽くす必要なんてものはないのだ。
マシンの最高状態をどれだけ維持し続けることが出来るか…それが、長期戦の秘訣でもある。
「(正直、ラージさんの時のドライバーよりも遅い…まだまだ遅い人ばかりだ。車も大したことがないし、技量も決して高いとは言えない…これじゃあヒュウガさんに倒されちゃうのも当然だよ…)」
第3コーナーである左直角ロングコーナーを駆け抜けるZ33。
だが操縦する時雨にとってはもう完全に余裕状態だった。
ラージとのバトルにおいては初めてのコースということもあり、緊張していた。
だがそれが、様々なドライバーたちと戦うにつれて解れてきているのを感じ取っていた。
このドライバーたちはラージたちのドライバーと大して変わらない。下手したらそれ以下なのではないか?
五十歩百歩のレベルなのではないかと思っていた。
そしてそう思う中で、「ケミックのドライバーたちがヒュウガに負けるのは当然」と思うようにもなっていた。
そんな中でZ33は第3コーナーから第4コーナー…右直角コーナーへと侵入する。
追いつかれることはないと思った時雨は、あえて車線を変えずに左車線のままZ33を走行させていく。
コーナー直前でブレーキを軽く踏み込み、ハンドルを右に曲げたかと思いきや再びアクセルをある程度踏み込んで空転させる。
「(まあ、この車はショウさんがチューン方針を決めてくれてるし、ヒュウガさんは…あのミナコさんの旦那さんだもんね)」
相楽ヒュウガの妻であり、相楽翔と相楽奈美子の母親、相楽美奈子。
時雨自身はヒュウガとバトルしたことはないが、ミナコとはバトルをしたことがある。
慣れないオフロードでのバトルに加え、レクチャー同然だったとはいえ、彼女の技量は時雨もある程度はわかっている。
そんな人物の旦那であるヒュウガであるならば…それは間違えなくとんでもない技量の持ち主なのだろう…そう時雨は考えた。
そしてそんなドライバーを相手にするとなれば、今戦っているケミックのドライバーたちも太刀打ちが出来ないのも当然と言えば当然。
そう時雨は認識していた。
そしてそう認識した時、Z33は第4コーナーを立ち上がってゴールへと駆け抜けていくのだった。
―――一方その頃。
「あれ、アビゲイルは…作戦会議中かしら?別のドライバーと話しているわ…」
店において、奈美子はアビゲイルを探した。
すると、店内の端でケミックのドライバーたちと会話するアビゲイルの様子があった。
どうやら作戦会議中のようだ。
するとサマンサは気になったかのように奈美子を見ていた。
「ねえ奈美子、あなたは随分時雨の事を信頼しているようね。バトルで負けることとか、そういうの考えたことないの?」
「うーん…ない!」
「(…え、即答?)」
「(即答しやがった…)」
「(軽く考えてたけどすぐ答えたぞこのアマ…)」
その即答ぶりにサマンサはおろか、周りにいたケミックのドライバーたちも驚くしかなかった。
そんなあっさり答えられるとは思っていなかったのである。
すると奈美子は持論を展開する。
「時雨は、特訓も兼ねているとはいえ…お父さんが何をしているのかを知るために付き合ってくれて、わざわざニューヨークまで来てくれた…だから私は言い切る。『時雨は絶対に勝つ』って!」
「……(すごく信頼されているのね…)」
サマンサとしては奈美子の持論もわからないことはなかった。
自分の特訓も兼ねているとはいえ、まさかこんなところ…ニューヨークまでやってくるとは。
それは間違えなく信頼されている証拠だろう。
だがそんな中で、にこやかだった奈美子は軽く顔を曇らせた。
「でも…そんな時雨も、決して無敵ってわけじゃないの」
「…どういうこと?」
「時雨にはね、幼馴染のライバル…ともいうべき人がいるの。その人もレーサーデビューが決まっていて…一度時雨とその人はサーキットでバトルしたのよ」
「…結果は?」
「レースとしては、時雨が勝ったわ…でも、時雨は言っていたの。『この勝負、僕の負けだ』って…あの時はかなり落ち込んでいたわね」
「そんなことが、時雨に?」
D1地方戦を終えた後、あるドライバーとバトルをした時雨。
試合結果自体は時雨の勝ちだったが、相手のドライバーに終始押されていた。
そんな経験をした以上、時雨は「試合に勝って勝負に負けた」と強く認識したという。
そしてその経験が、時雨を特訓へと突き動かす大きな要因となっているのだった。
「勝負に負けて、試合に勝ったってところかしら…あの時の時雨は、決して喜んでいなかったわ」
「…それが、特訓の切欠?」
「まあ、それもあるんだと思う。その人はね…時雨曰く、『天才で、かなりの運も持っている』んですって。どんな車もあっさりと乗りこなしてしまう…そんなドライバーなの」
「そう…(時雨の実力も結構なものなのに、それの上を行くドライバーが時雨の知り合いに…?一体どんな人物なのかしら…)」
サマンサとしてはそのドライバーの方にも軽く興味を持っているのだった。
―――同じ頃。
「何をやっているの!?会社がいくらかけて、あなたたちの車をチューンしたと思っているの!?」
時雨に敗北を続けるケミックのドライバーたち。
だらしないその姿に、アビゲイルの怒りが飛んだ。
「す、すいません…でもアイツ、滅茶苦茶速いですよ!?」
「言い訳はいいわ!誰でもいいから早く時雨を倒して!!(ここで『ドライブモンスター』の車を手に入れ、パーツを分析してケミックの車全部に搭載すれば早くなる…ここで手に入れば、役員になれる…!!)」
アビゲイルはそう思いながらも、次のバトルへとドライバーを誘導するのだった。
―――さらに数戦後。
「(段々慣れてきた…もうある程度手を抜いても普通に勝てそうだ)」
深夜ということもあり、軽くあくびをした時雨。
その彼女が操縦するZ33の後方では、相手のマシンが必死に食らいつこうとしつつも全く追いつけない状況だった。
どこまでいってもレベルが大して変わらないのである。それどころか対戦相手の質がどんどん下がっているようになっているように思える。
何べんも何べんも走っているうちにコースは覚えた。もう自分のスローペースでも確実に相手には追い付かれない。それでも全くもって自分は油断していない。
これで相手が速ければ文句のつけようがないのだが、逆にどんどん遅くなっているように感じる。
自分のペースは全くもって落ちていないのに、相手が遅くなっている。
こんなのでは特訓もくそもないだろう。
「(いやいけない、油断しちゃダメだ。でもアビゲイルはいずれ出てくるから…それまで実力をセーブしないと。手の内を出し尽くさないようにして…)」
意図的に手を抜いて、大トリとのバトルで実力を十分に発揮できるようにしたい。
そう時雨が思っている中、Z33はゴールした。
一方で店の方ではアビゲイルと奈美子が会話していた。
「…ところでナミコ様、時雨様を見ました?連戦に次ぐ連戦で大変な状態に…このままバトルすれば…」
「ああ、慣れてるので大丈夫だと思いますよ?」
「え?」
「ケミックのドライバーも運転悪くないですし、時雨にとってはまあいい経験だと思います」
「まあ!さすがナビですわね…以心伝心というものを、初めて見た気がしますわ…!(連続のバトルに慣れている?フン…!)」
アビゲイルは皮肉たっぷりにそう言うも、奈美子には伝わってないようだった。
「箱根で会ってからそれなりの付き合いなんですよ。なんかデレますね…」
「…ちょっと失礼します」
奈美子の言葉にどこかかっとなったのか、アビゲイルはバトルを終えたドライバーたちの方へ向かう。
「どうなっているの!?休まずにバトルをしているのに、どうして勝てないの…?」
「すいません、俺ではアイツに勝てない…いや、他の連中でもきっと無理だ…!」
「何なのよ…どうしてそんなに弱気なの?オクティのドライバーを相手に、ここまでやってきたじゃない!!いつだって何とかなった。だから今回だってどうにかなる。一体何があったというの?どうして無理だって言いきれるの?」
弱気になったドライバーの声に、アビゲイルは檄を飛ばす。
すると、バトルをしたケミックのドライバーがこう口にする。
「それが…そう感じたとしか、こっちにもさっぱりで…ただわかることが1つあるんです」
「な、何よ?」
「あのドライバーは、走れど走れど一定のペースを維持し続けているんです!殆どタイムが変わらない…いや、連戦である以上、マシンコンディションに対してタイムが縮んでいるんです!!俺たちとは根本的に何かが違う…!!」
「そ、そんな馬鹿な事…!」
動揺するアビゲイル。
普通に考えて何戦も何戦もすれば音を上げるのが当然だ。
だがあのドライバーは全くもって音を上げる様子がない。
一体どういうことなのか?
あまりの予想外の事態にアビゲイルは動揺するしかなかった。
すると、その様子を見かねた別のドライバーがこう口にした。
「…ちょっといいか?あのドライバーに休憩も入れずに連戦させてどういうつもりだ?返答によっては降りさせてもらう」
「待ちなさい…どういうつもり?時雨が…相手が強いからって怖気づいたの?」
「オクティとのバトルには、罵りあいの暴言こそあれ、お互い納得ずくだった。商売敵だから…だが相手は流れのドライバーだ。フェアじゃない…仮に買ったとして、お客様にどの面下げて、心の底から自社のパーツを進められるって言うんだ?」
ドライバーの言葉に対し、アビゲイルは冷静にこう言った。
「…時雨のマシンにはオクティとのバトルを終わらせる可能性がある。だから私はあの車を手に入れ、分析してケミックの車をコーディネートする。ケミックの社員たちが義務感や仕事でバトルをしないように、愛車を使ってバトルをせず、ドライブが嫌いにならないように…!!」
アビゲイルは信念を露にするように、そう言うのだった。
―――一方同じ頃、店内にて。
「教えて奈美子。あの国でどんな走りをすれば、あんなにタフになれるの?」
サマンサは奈美子に質問していた。
「うーん…しいて言うなら、ニューヨークまで飛んで、私のために頑張ってくれるから?あとは…いろんな人生経験かな?アハハ…」
「フフフ…いいんじゃない。お互い大事な仲間ってことね。尊敬するわ。自分のためもあるんだろうけど、誰かのためにも頑張れるなんて…」
奈美子の言葉に対し、サマンサは軽く笑うのだった。
―――そして更に30分後。
遂に時雨はアビゲイルが用意したドライバーたちをみな倒していた。
店へと時雨は戻ってきた。
「ふう…やっと全員倒した」
「時雨、お疲れ!アビゲイル以外全員…って何そのカギの数は!?」
「いや…ルールだから持っていけ、って言われたんだけどさ…僕も本当に困ったよ。たくさんの車が放置されているんだよ?」
時雨が両手に持っていたのは、大量の車のカギだった。
ビッグゲームというルールがある以上、いやでも貯まってしまうのだろう。
すると、アビゲイルの方へと向かった時雨はカギを手渡そうとしていた。
「これ全部返すよ。別に僕はいらないし…」
だが、どこか苛立ちを露わにしていたアビゲイルはこう言い放った。
「…返さなくて結構ですわ。そのカギはいわば勲章…ケミックのドライバーを倒したという強さの証とも言えますもの」
「そうは言っても、困ったなあ…名誉なんて別に僕はいらないし、奈美子のお父さん…相楽ヒュウガの情報が欲しいんだ。だからこのカギは…」
そう時雨が口にしたその時だった。
「この、鈍感ドライバー!!」
あまりの無神経さに、遂にアビゲイルの怒りの沸点が限界を突破してしまったようだ。
流石にその様子に対し、時雨も驚いた。
「あ、アビゲイルさん?」
「時雨、私はねぇ!あなたたちをハメたのよ!?野心のために卑怯な手を使ったの!!」
「卑怯な手?はあ…?」
「それをわかって言っているというの!?勝ったが故の恩情?慰め?オクティに勝つには手段を択ばなかった私への当てつけなんでしょ!?」
時雨に対し、アビゲイルはぐいと迫った。
だがその態度に対し、時雨は困惑するしかなかった。
「うーん…ルール違反なのはわかるけど、やっぱり人から横取りするのはあまりいい気がしないんだよね…皆車が好きで走っているのはわかるし。何となくだけど…皆ショップで一生懸命仕事をしてるってこともね」
時雨の奔放すぎる言葉に対し、アビゲイルはどこか呆れるようにこう口にした。
「奈美子を横に乗せて。それで私と決着を付けましょう」
するとその言葉を聞いたサマンサが声を掛ける。
「アビゲイル、どういう風の吹き回し?わざわざ自分に不利になるような、そんな真似をして勝てると思っているの?」
だがその言葉に、アビゲイルはこう口にした。
「部外者は黙ってて。ケミックの皆が納得するバトルで勝ちたいと思っただけよ…状にほだされたわけじゃないし、腕前を認めたわけじゃない。私は正しいと思って行動した。自分がとった行動に悔いはないわ…だからこそ、ケジメをつけたいの!私を信じてバトルした社員のためにも…私が信じた正しさのためにも!負けるわけには…行かないのよ!」
文字通りの宣戦布告だった。
「…わかりました、バトルしましょう。車を並べてください」
そう言って時雨はアビゲイルを軽く睨みつけた。
ボーっとしている時雨から真剣モード…文字通りの戦闘モードになった瞬間である。
「…!?」
時雨の眼光にアビゲイルは一瞬びくりとした。
蛇に睨まれるかのようだった。
だがそれでも喧嘩を売ってしまった以上もう引くわけにはいかない。
遂に決戦の火ぶたが切って落とされようとしていた。
◇ ◇ ◇
―――vs野心家のアビゲイル
推奨BGM:YOU ARE THE ONLY ONE(from EUROBEAT FLASH vol.18)
コースはマネーストリート復路。相手の車は、ボディは黒色で派手なステッカーなどでカスタムされているRKクーペである。
左レーン、RKクーペ。右レーン、Z33。
2台が並んだところで、互いのエンジン音がこだまする。
「(わかっている…この相手は、私が到底かなう相手なんかじゃない)」
2台はスタート地点に並んだ時、アビゲイルは時雨がバトルしている時に奈美子へと話しかけた内容を思い出していた。
『エンジンの回転数の事?そりゃエンジン音だけじゃ無理だけど、アスファルトをつかむタイヤ音、ゴムがすり減る時の煙の量、あとは時雨の表情…私は助手席に座るナビゲーター、たとえ助手席に座っていなくても…時雨も車も大丈夫なことくらい分かるわよ』
奈美子は、エンジン回転数までわかっているように口にしていた。
流石に疑問を覚えたアビゲイルはそこについて指摘すると、奈美子はそう答えていた。
その言葉に対しては、自分やケミックのドライバーたちはおろかサマンサですら絶句していた。
加えて奈美子曰く、「これは首都高でとても厳しい人に手ほどきを受けた」という。
それ自体が異常なのに、なぜあのナビゲーターは自覚していないのだろうか。
自分たちは到底相手にならないとんでもない怪物を相手にしてしまったのではないか?
いやでもそう認めるしかなかった。
「(それでも…!私は努力の末に幹部まで成り上がってきた!!こんなところで簡単に折れるわけにはいかない…!)」
2年間死に物狂いで働いて手に入れた幹部の地位。
それは彼女にとってまごうことなき自信となっていた。
そしてその自信こそが、彼女の速さの秘訣ともいうべきものだった。
自信家であることが彼女の速さをさらに際立たせる大きな要因になっていたのである。
そしてそんな自信がある以上、半端な負けは彼女も許せないのだった。
「(…通過点でもたついているほど僕も暇じゃないんだ。邪魔をするなら…叩き潰す。ハメたというなら猶更)」
一方の時雨。
遂に大トリとのバトルということもあって、両手両足に力がこもっていた。
だが彼女には自信はなかった。
いや、自信を持つ必要がなかった。
アビゲイルに勝つことはあくまで通過点でしかない。
自分のライバルの存在はもっともっと遠くにいる。
そしてそうである以上、追いつくためには立ち止まることは許さない…そう時雨は強く認識するのであった。
「(何度も何度もバトルしてきたことで、タイヤがいい具合に削れているのがわかる…ドリフトにはちょうどいい具合だ)」
一方で時雨はマシンコンディションが最良の状態であることを感じていた。
ケミックのドライバーたちとバトルし続けたことで、いい具合にタイヤが削れたのである。
タイヤが完全に温まり、このバトルがおそらくピークだろう…そしてそうであるなら、間違えなくドリフトにはちょうどいい。そう彼女は思うのだった。
互いの思いが交錯する中、カーナビのカウントダウンが始まろうとしていた。
3
2
1
GO!
「―――!」
「……」
ギアを変え、スタートダッシュを決める2台。
スタートで先行したのは紛れもないZ33だった。
だがノーマルでも440馬力の性能を持つRKクーペも決して遅れてはいなかった。
車間距離はテールトゥノーズというべき状態。互いに速度は120キロは出ている。
そんな状態の中、第1コーナーの左直角コーナーへと2台はすぐに飛び込んでいく。
「―――!!」
「……」
ブレーキロック寸前までブレーキを踏み込むアビゲイル。
一方、どこか緩やかにブレーキをかける時雨。
両者がハンドルを左に曲げ、互いのマシンのタイヤを滑らせる。
そして互いにハンドルを右に切り返してカウンターを当て、アクセルを再び踏み込む。
インコースを攻めるRKクーペ。アウトコースで徐々に追いつかれるZ33。
スタート直後のマージンは徐々になくなりつつある。
コーナー中間のトンネルを抜け、繁華街の光を切り裂くかのように駆け抜けていく2台。
インコースを取っているアビゲイルのRKクーペがZ33に食らいつく。
「(いくら性能が高いZ33でもアウトコースでは不利だ、このマージンを生かす…!)」
「……」
躍起になるアビゲイル。冷静に場を受け流す時雨。
インコースを駆け抜けるRKクーペがZ33とサイドバイサイドになる。
パラレル状態の2台が第1コーナーを立ち上がろうとしていた。
「くっ…!」
「……」
コーナー出口でアクセルオフからハンドルをニュートラルに戻す2人。
そしてタイヤの空転が収まったところで、2人は再びアクセルを踏み込む。
コーナーを立ち上がった2台で…先行したのは、Z33だった。
アウトコースというハンディがないかのように、Z33はRKクーペより先行する。
2台はあっという間にテールトゥノーズの状態になる。
「(…ここよ!)」
だがそれをアビゲイルはわかっていたかのように、右ウインカーを出してRKクーペを右車線に移動させる。
Z33のスリップに付けば、離されてもその距離を抑制することが出来るだろう。
そう思ったのかもしれない。
何より第2コーナーは右のロング直角コーナー。
アウトコースである左車線は圧倒的に不利であることを悟ったのだ。
そしてそれを見越したかのように、或いは後方からプレッシャーを与えるためか、RKクーペは右車線…つまりZ33と同じ走行レーンへと移ったのだ。
そして移った以上、Z33とRKクーペは完全に付かず離れずの距離…それこそテールトゥノーズの状態だった。
「……」
時雨はZ33の後方にRKクーペが食いついてきたことを把握していた。
バックミラーが先程よりも眩しく感じたのだ。
どうやらパラレルドリフトで動揺を誘おうとしているのだろう…そう彼女は認識した。
パラレルドリフト自体は公道レースにおいて時雨はあまり使わないが、相手への揺さぶりのために使うことがある。
ではもしやり返されることになったらどうするべきか?
…その答えが次のコーナーで明らかになる。
2台の速度が互いに140キロ台である中、第2コーナーの入り口が迫る。
「―――!」
「……」
ブレーキを踏み込むアビゲイル。
一方で軽くブレーキを踏み込み、ハンドルを左に曲げる時雨。
速度を減速させたアビゲイルに対し、時雨はオーバースピード気味に飛び込んでいく。
だが次の瞬間だった。
「(…ここだ!)」
ハンドルを左から右へと切り返し、アクセルを踏み込む時雨。
後輪が滑り出したところでハンドルを再び左にわずかに切り返してカウンターを当てる。
お得意のフェイントモーションが炸裂し、インコースの路肩にフロントを乗っかる形でドリフトするZ33。
狭い車線において、極限なまでのアウトインアウトを描いている。
そしてその勢いのまま、Z33は後方のRKクーペを引き離しにかかっていた。
「(離される…?同じ速度で、ドリフト出来ない!!)」
アビゲイルにとっては予想外だった。
第1コーナーではまだ食らいつけたが、第2コーナーで同じ走行レーンに移ったのはいいが同じ速度で全く飛び込めていない。
同じ走行レーンに飛び込んでパラレルドリフトをすれば相手の動揺も誘えるだろう。
そう思ったのはいいが、実際はZ33のドリフト時の速度が速すぎてRKクーペを置き去りにしようとしていたのだ。
足回りもやはりあのZ33は強靭なのだろう。
自分が同じ速度でドリフトしたら間違えなくアンダーステアでコーナーの外側へと持って行かれてしまうに違いない。
そう思う中、アビゲイルは左にハンドルを曲げてRKクーペにカウンターを当て続ける。
だが一方、同じくカウンターを当て続けていたZ33は完全にRKクーペよりも速い速度でコーナーを駆け抜けていく。
RKクーペのドリフト速度、120キロ台。一方でZ33は140キロ台を記録している。
20キロという速度差は車間距離を広げるのに十分すぎた。
「(今までのバトルではスロットルを半分くらいでずっと踏んでいたけど、ここから求められるのは本物のパワーだ…)」
第2コーナーを立ち上がった先にあるのは、吊り橋上のロングストレート。
ここが時雨にとっての勝負ポイントだった。
今までの雑魚戦ではある程度スロットル…つまりアクセルを踏み込む程度で、フルスロットルは数えるほどしかなかった。
それほどまでにこのZ33の性能は高いと言えばそれまでだが、同時にマシンを労わった結果と言えよう。
だがこのバトルは話は別。今日の大トリなのだ。
繁華街の先、吊り橋が時雨の視界に入った。
左に曲げてカウンターを当てていたハンドルをニュートラルに戻し、アクセルをリリースする。
そしてそのままタイヤの空転が収まったところで、再び時雨はアクセルを踏み込むのと同時に、ある動作も行うのだった。
「(この車は…僕を心から愛してくれた人の、魂が込められているんだ。そうである以上、半端な敗北は許されない…!)」
そう認識した時雨は、追い打ちと言わんばかりにハンドルのニトロスイッチを押すのだった。
自分が操縦しているZ33は、決して自分だけが操縦している車ではない。
自分の事を心から愛してくれた人間の魂が、宿っていることを時雨は改めて認識した。
そしてそうである以上、時雨は相手のドライバーを完璧に打ちのめす方向へとシフトした。
ニトロを使ったことで、ストレート区間においてZ33は140キロ台から一気に190キロ近くまで加速した。
タイヤもきっちりとグリップする中、時雨はアビゲイルのRKクーペをあっという間に引き離していく。
後方のアビゲイルのマシンのヘッドライトの様子は消えてなくなった。
圧倒的な加速を得たZ33は、そのままの勢いで第3コーナーへと飛び込んでいく。
「―――!」
190キロ台からブレーキをロックする寸前まで踏み込んで、ハンドルを左に曲げる。速度は150キロ台。
そしてそのままの勢いでハンドルを一気に切り返し、フェイントモーションで第3コーナーを立ち上がる。
白煙を巻き上げながら、Z33は第3コーナーを立ち上がっていく。
だが、第3コーナーを立ち上がってもZ33はドリフトし続けている。
目の前には最終第4コーナーの右直角コーナーが迫る。
連続するコーナーを1つのコーナーに見立てるかのように、Z33はドリフトし続けているのだ。
第3コーナーと第4コーナーの間のストレート区間もZ33はタイヤを滑らせ続け、そのままの勢いで第4コーナーへと飛び込んでいく。
第4コーナーに飛び込んだところでハンドルをわずかに右に曲げてドリフトアングルを調整。
アクセルをハーフスロットルの状態で踏み続け、ハンドルをわずかに左に曲げてドリフト状態を維持しながらZ33をコーナーへ飛び込ませた。
第4コーナーに飛び込む直前に殆ど失速のなかったZ33は、そのままの勢いで第4コーナーを駆け抜ける。
コーナー出口でずっと左に曲げ続けていたハンドルをニュートラルに戻し、アクセルをリリースする。
タイヤの空転が収まったところで最終ストレートに向けてアクセルを全開に踏み込んで立ち上がっていく。
下り坂ということもあって、速度は150キロ台から190キロ近くまで加速していくZ33。
そしてそのまま最終ストレートを駆け抜けて圧倒的な実力差を見せつけてゴールするのだった。
「くっ…くそ、ったれ……!」
一方のアビゲイル。彼女は吊り橋上のストレート区間で完璧にやられていた。
Z33に食らいつくべくニトロを使ったのはいいが、これもあまりの性能差があって150キロ近くまでしか加速しなかった。
正確にはタイヤがパワーに食らいつかず、アウトコースへと膨れてしまったために100キロ台まで失速していたのだ。
全くもって自分は相手にされていなかった…それほどまでに、相手は速かった。
ドライバーたちが勝てないのも当然と言えば当然の速さだった。
一応自分も食らいつく努力はした。だが、それ以上にあのZ33と時雨の実力は自分の想定の範疇を凌駕していた。
どんなにコーナーを攻め込んでもストレートでスピードを出してももう追いつけない。
そんな現実に直面したアビゲイルは、素直に負けを認めるしかなかったのだった。
―――勝者、時雨。
タイム差は6秒以上の圧勝だった。
―――バトル後。
時雨は例のチャイナタウンの店の駐車場にZ33を駐車して、サイドブレーキを引いた。
「ふう…」
「お疲れ、時雨。随分余裕そうだったわね」
一息ついた時雨に対し、奈美子がそう話しかける。
バトルの様子からして随分と余裕そうだったのは、奈美子でもわかった。
「そう、かな?まあ…緊張がほぐれたのは、あるのかな」
「緊張?」
「ほら、ラージさんとのバトルでもこのコースは何度も走っていただろう?あの時は僕、全力走行だったんだ。でもその経験に加えて、今日ケミックのドライバーたちとバトルしているうちに…段々とコースのことが分かってきたように思えたんだ。コースを覚えて、段々慣れてきたから…緊張もほぐれたんじゃないかなって」
「そっか…時雨、本当にすごいわ。いつもありがとう」
「僕は別に、大したことをしていないよ。まあ…速くなれたのも、きっとバトルしてくれた人々のおかげだと思うんだ。少しは…速くなれたかな、って」
「ふふっ…心配は必要なかったみたいね。あ、そうだ。アビゲイルに声を掛けに行きましょ?」
「うん、そうだね」
そう言って時雨と奈美子はZ33から降りるのだった。
愛車から降りた先、アビゲイルとサマンサがアビゲイルの愛車…黒色のRKクーペの前で待っていた。
時雨と奈美子がやってくると、アビゲイルはため息をついたかと思いきや…鍵を奈美子に投げた。
奈美子と時雨が顔を合わせて軽く互いに頷いたかと思いきや、アビゲイルに奈美子が話しかける。
「愛車のカギをそんな風に扱うものじゃないわ…はい。ちゃんと大事に乗ってあげてね」
そう言って奈美子はアビゲイルに鍵を返した。
すると、その様子を見たアビゲイルは独り言のように呟いた。
「…私は負けて、2人は勝った。でも、あなたたちにルールは通用しない…相楽ヒュウガも同じだったわ。話してあげる…お父さんの情報を」
「じゃあ…そうだね、どうしてヒュウガさんはケミックとバトルしたのかな?わかりますか?」
時雨の言葉に、アビゲイルはこう持論を展開し始めた。
「オクティはニューヨークの隣、ニューアークで低所得者向けにジャンクからパーツを作って販売していた、小さなメーカーに過ぎなかったわ。ヒュウガはオクティの技術力にほれ込んで、シェア拡大のために協力したってケミックで噂になった…でも、真実は違ったわ」
「違った?」
「それって…一体?」
時雨と奈美子が互いに聞くと、アビゲイルは改めてこう言った。
「バトル後に彼はこう言ったの…『よう、ネーちゃん。あのさ、車はいらないから社長に取り次いでくれない?』って」
「…?」
「はぁ…!?血のつながった娘だけど、お父さんが何を考えているのか意味わかんないんだけど…」
時雨の頭上に疑問符が浮かび、奈美子が「わけわからない」と口にするのも無理のない話だった。
すると、それを見たアビゲイルがさらに口を動かす。
「でしょう!?意味わかんないのよ!ずっと取り次ぐ相手を探すためにバトルをしてたって…もうホントなんなのよ、あの人…」
「うーん…でも、それだけじゃ奈美子のお父さんが何をしようとしたのか、真意がわかりませんね」
「もっと詳しく聞かせてもらえませんか?どうして社長さんなんかに取り次ぎのお願いなんか…」
するとアビゲイルは、ストレスを爆発するかのように饒舌になった。
「ああ、そっちが聞かないって言っても話に付き合ってもらうわ!!バトルしたのは半年前なんだけど、たった1人でケミックのテリトリーに…」
「うん、うん…」
アビゲイルと奈美子はいつの間にか意気投合したようだ。
すると一人蚊帳の外になっていた時雨に、サマンサが話しかけた。
「意気投合しちゃったわね。敵の敵は味方ってことなのかもね」
「は、はは…」
「ところで時雨、1つお願いがあるんだけど…」
「お願い、ですか?」
「しばらくはニューヨークに来るまで来ない方がいい。流石に今晩はやりすぎた」
「え…」
「あなた、どれだけの数の車とバトルしたのか覚えていないの?」
そう言ってサマンサは時雨に自覚を促す。
時雨が覚えているだけでも軽く20人以上。
いくら時雨が省エネモード、というべき実力で連戦を重ねていたとはいえ…流石に一気に20人以上の相手をするのはやりすぎたのかもしれない。
「それは…たしかに僕はたくさんのドライバーとバトルしましたが」
「ケミックの警戒は高まる一方だし、今日みたいに罠にはめられる可能性もあるわ。また連絡するからしばらくしていて、いいわね?」
「………」
そう言ったところで、サマンサはその場を後にした。
サマンサの言葉に時雨は何も言い返せなかった時雨。
意気投合して会話しているアビゲイルと奈美子だが、時雨は再び蚊帳の外となってポツンと残された。
だが、ふとはっとしてあることを思い出した。
そしてある気持ちが強くなっていく。
「(悪いけどサマンサさん…僕には時間がないんだ。あと2ヶ月もない。それまでに僕はあの国に戻らないといけない。ケミックもそうだけど、オクティやリブラがどれだけの規模かわからない以上、申し訳ないけど…勝手に動かせてもらうよ)」
残り期間は1ヶ月半とちょっと。どれだけの規模かわからない以上、奈美子の父親が何をしたのかをさっさと知ってあの国に戻らないといけない。
そうであることをわかっている以上、何が何でも攻め込まなくてはいけない。
時雨は独断で行動する必要があることを自覚するのだった。
2人の刺客を倒した時雨と奈美子。
更なる壁が2人を待つ。
(第13話End)