キヴォトスの原神   作:クロウド、

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主人公の正体は……まぁ、発生って言葉からわからなくはないと思います。


アリウスの『お父様』

 ―――アリウス本拠。

 

 小さな屋敷が建てられたその()()の庭でで一人の青年が手作りらしい木製の椅子に座り、テーブルの上で湯気を立てる茶器に目を向けていた。

 

 草原のような庭に様々な野菜や植物が育っていて、どれもみずみずしく、所々にはキラキラと光る様々な鉱石が地面から顔を出している。

 

「―――ヨラン」

「はい、『お父様』」

 

 青年の呼びかけに音もなく背後に現れた女性が答える。

 

「お前がまとめた、例の人物の調査報告は目を通した。確認するが、この報告に偽りはないな?」

「無論です。私が、いえ、我々がお父様をたばかることなどありえないことです」

「わかっている、俺も、お前達が俺を謀るなど考えてはいない。だが、あの報告書の内容が全て事実とすれば、かの人物の能力は現実味がないほどに飛び抜けている」

 

 瞑目しながら女性―――水縛ヨランが先日持ち込んだ報告書の内容を思い返す。

 

 つい先日、連邦生徒会長の失踪によって混乱していたキヴォトスの混乱を抑えるために彼女が残した指令によって設立された連邦捜査部シャーレ。

 

 そこに電撃就任した外から来た大人、『先生』。()()は就任直後シャーレの部室近くを占拠していた暴徒をその場にいた各学園から抗議に来ていたメンバーを指揮しそれを撃退、さらに暴徒を扇動していた矯正局からの脱獄囚()()()()()すら撃退した。

 捕縛こそ叶わなかったが、ヴァルキューレですら手を焼いた囚人を就任初日の大人が相手だったという事実はキヴォトスを震撼させた。

 

「ヨラン、お前の目から見て先生はどうだった?」

「……そうですね、急造のチームであそこまでそれぞれの長所を引き出せるのは素晴らしい指揮能力の持ち主と言えるでしょう」

「なるほど、連邦生徒会長がこの混乱するキヴォトスを鎮めるために呼んだという実力は本物というわけか」

「ふぅ……そして今、かの人物はアビドスにいると?」

「はい」

 

 報告の内容をすり合わせているうちに乾いた口を湯呑みで茶で潤しながら、本題を告げる。

 

「アビドスの対策委員会の一人が先生に手紙を送ったようです。常日頃からのヘルメット団からの襲撃で足りなくなった物資の補充を依頼されアビドスに向ったそうです」

「アビドスへの襲撃……。」

「十中八九、カイザーが絡んでいるでしょう。お父様、私はこの機にエンヒと進めていた計画を進めるべきだと考えています」

 

 再び瞑目し、思案する『お父様』と呼ばれる青年。だが、それは僅かなもので再び瞳を開くのと同時に席を立つ。

 

「……いいだろう、計画の実行を許可する。だが、お前のことだ既に手は打っているのだろう」

「はい、既に『便利屋68』に依頼を出しています。アビドスの生徒に手を貸すように、と」

「アル殿達か、お前の友人達の力を疑う訳では無いが……かなり大掛かりな仕事になる、スクワットを連れて行け」

「―――スクワットをですか?」

「アツコの新作も既に納品が済んでいるはずだ。ヒヨリとミサキも今は手が空いていたはずだ」

 

 スクワット―――それはアリウスが保持する最大勢力を意味する言葉、かつてはチームを示す言葉だったが、今ではそれぞれがそれぞれの役目を担う者たちのことだ。

 

「サオリはどうしますか? 彼女は今、ゲヘナに出張中ですが」

「あぁ、定期合同訓練に呼ばれているな。だが、それもあと数日だ、こちらも終わり次第合流するように伝える。そして、アズサは……今はブラックマーケットのはずだな。おそらく、アビドスへの襲撃の際の銃器の出所はあそこだろう」

「既に証拠は押収済みです。探し物の最中、アズサが上手く情報を集めてくれました」

「流石だな……友人ができたと聞いたときは俺もサオリも手を挙げて喜んだものだが。

 まぁ、まさかそのヒフミ嬢がブラックマーケットに入り浸っているとは思わなんだが」

「彼女のブラックマーケットの知識は我々以上でしたからね……。」

「全く、ナギサ殿が胃を痛めるわけだ」

 

 彼の脳裏にはブラックマーケットに入り浸る『お気に入り』の生徒のことについて悩む()()のことを思い出す。

 

「それで……お父様は……。」

「―――おそらく、カイザーの裏には()がついているだろう。カイザーが俺達に喧嘩を売ったのは独断だろうが、それでも奴は超えてはならない境界を超えた、いや、越えかけていると言うべきか

 奴は俺がでなければ話に応じないだろう」

「……お父様はやはりアビドスに向かわれないのですね」

「……わかりきったことを……俺には今更、彼女達に会わせる顔はない」

「ですがッ、それは私達の……。」

「言うな、これは俺の咎だ。お前たちのせいにするつもりも、お前たちにその咎を背負わせるつもりはない。

 そして、これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ」

「………。」

「行け。時間を無駄にするべきではないと、お前自身が知っているはずだ」

「……はいっ」

 

 ヨランは応えると、現れたときと同じように音もなく姿を消して去っていった。

 消えていくヨランの姿を見届けると青年は再び椅子にもたれかかり霧のかかった夕焼け色の洞天の空を眺める。

 

「全く、優しい子になってくれて親として鼻が高い限りだ」

 

 自分を気にかけてくれる優しい子のことを思い出して、微笑みながら懐から一冊の本を取り出す。

 

 ―――ある日、この身に宿った凄まじい力とともに脳裏に刻まれたこの力の本来の持ち主達の長く凄まじい記憶の一冊。これはそのほんの一部。

 

 ―――何者でもなかった自分を彼女達の『お父様』たらしめる存在。

 

 この本を見るたびに彼は己自身、そして、彼らに問いかける。

 

 

 

 

 

 

「偉大なる七神、そして、尊敬する旅人よ。俺は貴方達のようにあの子達を導けているのだろうか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 




アリウスってあんだけ酷い生活してたんだから、名前を与えられていない子もいたんじゃないかって思うんスよね……だったら、ねぇ?
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