KV_another_Archive 作:器具類プロジェクト
ヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。]
疲れた。ある程度の距離までは奥空さんの運転で移動したが、
当然といえば、当然なのだが敵地の傍まで車で近づけばダイナミック廃車は免れない。
そういった訳で、程々の位置までは脚を休める事が出来たが、
再び徒歩で砂の散らばる道路を進んでいた。
[半径15Km圏内に、敵のシグナル多数検知。]
[おそらく敵もこちらが来たことに気づいているでしょう。
ここからは実力行使です!]
何処もかしこも砂と廃墟が広がるアビドスではあるが、
確かにバリケードや道路を遮るように停められた廃車が目立つようになってきた。
人の存在感があるが、治安の悪さを感じる独特の雰囲気を感じる。
一塊になって進軍していると、何処かに見張りでも居たのだろう。
慌ててはいるが、戦闘態勢を整えたお揃いのヘルメットをした集団が見えてくる。
「来たぞ!5人程度だが油断するな!」
「ヒャッハー!!!ぶっ潰してやるぜー‼」
「カタカタヘルメット団の恐ろしさを思い知らせてやる!」
「じゃあ、おじさんが先行するから援護よろしくねぇ~。」
肩から下げていた楯を何時の間にか展開している小鳥遊委員長が、
ショットガンを構えながら、その身を楯の陰に隠しながら距離を詰めていく。
近場の何分割になっているのか分からない中央分離帯に
身体を隠しながら少し慣れてきた自分の銃を構える。
何発か試射がてらに発砲するが、流石に距離が離れており、
殆どが当たらず、当たった弾もダメージになっていないようだ。
[『ホシノ、そのまま十時の方向に向かって制圧射撃を』]
[『シロコはドローンで二時の方向にある遮蔽物に向けてドローンで攻撃を』]
「おっけー。」
「了解、ユニット起動。」
ショットガンの火力によって自分達を守る車両に追い詰めれていく。
それをカバーしようとした団員もドローンの付加装置によってあえなく撃沈する。
その様子に慌てながらより前の遮蔽物に近づき、
未だ地に伏していない彼女達に向けて発砲を開始する。
圧倒的なアドバンテージを手にした銃撃戦を十数秒間繰り広げると
インカムからのクリアの声と同時に一旦ではあるが、銃撃音が止む。
[この先、1Km先の工事現場跡地に敵影ありです。]
報告を受けて、遠目に眺めると確かにこちらに向けて銃口を構えている姿が見える。
それでもこちらに向けて発砲したり、暴走する者が居ないのは
統率が取れている証拠だ。
防衛の為に設置したであろう看板や車両を利用しながら
小鳥遊委員長と先生の指示で着実に敵への距離を進めていく。
「ー痛ッたぁ!!」
同じ車両に隠れた黒見さんが、攻撃の為に顔を出したと同時に
こめかみを撃たれたらしく、盛大に仰け反って何とか踏ん張っている。
「あいつら絶対に叩きのめしてやる!!」
直ぐ様に車の陰から躍り出て、衝動のまま反撃を始める彼女に
他のメンバーも一瞬、衝撃が走ったが援護に回る。
[セリカちゃん!?]
[『ノノミ、セリカの援護!扇形に射撃を!』]
「セリカちゃんを虐める悪い人には、お仕置きですよ~♧」
「邪魔!」
アサルトライフによって狙い撃ちされた者は当然の事ながら、
捨て身の攻撃に出た彼女を狙おうとした者も十六夜さんによって吹き飛ばされる。
[支援物資投下します。]
赤い救急箱を提げたドローンが4枚のプロペラをはためかせながら廃墟を縫うように向かってくる。
頭上を通りながら黒見さんの目の前に綺麗に荷物をリリースして旋回していく。
「ごめん、ありがとうアヤネちゃん。」
[あまり無茶はしないで下さいね!大事にならなくて良かった。]
インカム越しに謝罪しながら、慣れた手つきで額の手当をしている彼女を眺めながら
残弾数を確認して、予備の弾を予め用意しておく。
[『皆も怪我はない?』]
恐らく何らかの方法でこちらの様子を把握しているのだろうが、実際に無事を確認したいようで
一息をついたタイミングで気遣うような声が聞こえてくる。
「私は今の所は大丈夫です!」
「こっちも同じく~」
「問題無しです☆」
[次が敵の本丸のようです。レーダーでの反応も桁違いですので充分に気を引き締めてください。]
「はい!」
思わず鞘を握る手に力が入っていると、ポンと手を置かれ振り向くと小鳥遊委員長の姿があった。
「うへぇ~こはねちゃんはもうちょっとリラックスしよう?」
「心配しなくても、こはねちゃんにこれ以上無理はさせないからさ。」
「そうですねぇ~緊張しすぎは危ないですよ♧」
「ホシノ先輩はちょっとリラックスしすぎ。」
藪蛇だったかも…と嘆く小鳥遊委員長を見て、少し肩の力が抜けたようで
深く深呼吸する。もう一息だと言い聞かせ、自分を奮い立たせた。
[『準備は出来たかな?』]
[『心残りがあったら気兼ねなく言ってね。』]
「ん、準備できたよ。」
「気合入れてこ~。」
「勿論!やってやるわよ!」
「うんうん!皆で頑張りましょうね☆」
[後方支援はお任せ下さい!]
「先生、指示をお願いします…!」
[『アビドス対策委員会、前哨基地制圧作戦、最終行動目的、開始!』]
「[「「「「はい!」」」」]」
報告にあった防衛拠点らしき場所には人影があり、ヘルメットが忙しそうに動き回っている。
先生からの指示が来るまで待機かと思っていると、バリケードから出てきた
色の違うヘルメットをした少女が大声で話始めた。
「テメェら!!!憎きアビドス共をぶっ飛ばす準備は出来たか‼」
「「「「押忍!!!」」」」
「ちまちま遠くから削るのは性に合わねぇ‼突っ込むぞぉ‼」
「「「「押忍!!!」」」」
「死ぬ覚悟がある奴だけ着いてこい!!!!!!」
「「「「おおおお!!!」」」」
「総員突撃!!!」
「「「「しゃあああああーーー!!!」」」」
「……猪?」
目の前で行われた決起集会を見た感想は、誰の口から漏れたものか。
全員が全員という訳では無いようで、バリケードから此方の様子を窺う銃口が見える。
あそこまで温度差が内部にあって良く維持できているな…
[……接敵まで残り10秒です!]
状況把握をしている間にも刻一刻と敵と私達の距離は縮んでいく。
幹部と思わしき赤ヘルを先頭に怒号を上げながらショットガンを手に突進してきた。
[『全員戦闘準備、ノノミ初撃をお願い。』]
「ノノミ~行きま~す!」
ミニガンを軽々と持ち上げて、道路一帯を覆うような弾丸はコンクリートを砕き
ヘルメット団に突き刺さっていくが、勢いは全く衰えない。
「痒い、痒い!ぶっ飛びな‼」
いの一番に射程距離を詰めた猪突猛進な赤ヘルは、攻撃の為に前に出ていた十六夜さんに狙いを定めたようだ。
余りの勢いに回避を取る暇もない十六夜さんはモロに受ける態勢になってしまう。
だが散弾が彼女に到達するよりも早く、鋼鉄の鈍い光がその間に割り込む。
「うへぇ~危ない、危ない。」
小鳥遊委員長が盾を担ぎながら、間一髪といったように笑いながら前に躍り出る。
お返しといったようにショットガンを構え、連続して銃弾を放つ。
何人かの腹部に直撃し、海老反りのような態勢で吹っ飛ばされ地に伏せる。
同様に直撃した筈で、防弾チョッキのような物を着用している様子もないのに関わらず
爛々とした瞳で小鳥遊委員長を睨んでいる。
「小鳥遊ホシノーーー‼」
こちらには最早目もくれず、彼女のショットガンの矛先は小鳥遊委員長に吸い寄せられている。
爆発音に近い銃声と薬莢が排出される音が聞こえるが、委員長の盾には凹み1つも着いていない。
「うへ~、めんどくさいな~。」
「ノノミちゃんに手を出そうとしたんだから、おじさん手加減しないよ?」
「リーダーに続けぇーーー‼」
「アビドス共に身の程を分からせてやれ‼‼」
レベルの高い銃撃戦に気圧されていた後続も参戦をし始めた為、改めて迎撃を開始する。
[『シロコ、グレネードの準備を。』] 「任せて。」
[『セリカはホシノたちの横から抜けようとする生徒の対処をお願い。』] 「言われなくたって!」
[『ノノミは、一旦10M前の遮蔽物まで後退、こはねはノノミの援護を。』] 「はい~☆」「了解です。」
「行くよ。」
閃光と共に爆風が巻き起こり、中々乱戦を抜けられない敵の団塊に大打撃を与える。
赤ヘルに習っているのか薄着の者が多いようで、その所為で爆発を肌で感じているようだ。
「ぐわぁ⁉」「うっ……」
「臆すな!進むぞ‼」
「通す訳がないでしょ‼」
シロコに爆破された側と反対を衝こうとしたヘルメット団員も、黒見さんに食い止めれらる。
数の差では有利な状況ではないが、それを巻き返す程の射撃と装填速度である。
また、車道の中央付近を避けざるを得ない為、結果として強制的な1対1を作り出す状況も味方しているようだ。
「十六夜さん、怪我は無いですか?」
「はい、ご心配をおかけしてすいません。全く問題無いですよ☆」
指定の位置まで移動を終えて、怪我の有無を確認するも肩を振るいながら彼女は笑顔だった。
危なくショットガンの餌食となる所だったのに気丈な事だ。
私なら恐怖で使い物にならなくなってもおかしくない。
[『ポイントに到着したかな?』]
「あ、はい。到着しました。」
「いったいどんな作戦なんですか?」
[『あっちの子達が突撃してきちゃったから、プランAは無理だね。』]
[『でもその分本陣が手薄になってる筈。』]
[……奇襲ですか!]
先生の意図に気づいたのか、通話を聞いていたらしい奥空さんが声を上げる。
なるほど確かに。現在最前線での戦闘は残りの3人で充分に戦線を維持できているし
後方で控えている彼女達からの援護を防ぐ事が出来るとなれば、後顧の憂いも断てる。
[でも奇襲……どこから掛けるんですか?]
パッと見まわしても一本道で、建物で囲まれた道路は左右に逸れる道は近くに存在しない。
あまり長時間戦闘から離脱する訳にもいかないだろう。
[『そこら辺一帯の見取り図を取り寄せたんだけど、緑色のビニール屋根の建物は見える?』]
[『そこの1階の突き当りの部屋から裏に出られて、暗渠の入り口…生活排水の地下道があるみたい。』]
[『陣取っている後ろの建物にも繋がっていて、上手く行けば近くまで気づかずに近づけるかも。』]
「地下水道……ですかぁ……。」
絶対にネズミが居る、小さい犬ぐらいの。いやもしかしたらキヴォトスではネズミも喋るかもしれない。
絶対に嫌という訳では無いが、当然気乗りする訳でもない。
ましてやお嬢様みたいな十六夜さんには辛いだろう。無理はさせられないし、私一人で行きます
と提案しようとすると、立ち上がった彼女は朗らかに笑う。
[分かりました。案内よろしくお願いしますね。]
[えっ]
[どうかしましたか?]
不思議そうにこちらを見つめる彼女を見て、自分の覚悟の無さを恥じた。
この戦場において最も信念がブレブレであると自覚し、膝を着きたくなる己を無理やり立ち上がらせる。
[大丈夫です、何時でも行けます‼]
[『了解、アヤネ。私はシロコたちのサポートを続けるから。』]
[『二人のナビゲーションをお願い。』]
[はい、了解しました。]
[それではお二人とも、ここからは私が引き継ぎます。]
[よろしくお願いします!]
[お任せしましたよ、アヤネちゃん。]
建物に侵入するタイミングでシロコがスタングレネードを使用してくれるようで、
息を潜めながら、その時を待つ。
[『シロコ、お願い。』]
「備えあれば患いなし、久しぶりの閃光手榴弾だ。」
どこかワクワクした様子のシロコが投擲するのを確認したら、すぐさま目を伏せる。
カッッッ‼という音の後に、瞼越しにも伝わってくる閃光に驚きながらも建物へと疾走した。
割れた窓ガラスを踏みつけながら店内への侵入を成功させると、外から呻き声が聞こえてくる。
前線のヘルメット団が更に数を減らしたのだろう。それでも止まない銃声を聞きながら先を急ぐ。
荒れ放題の店内は長い間、人の手が入っていないようで何の店舗だったのかも判別が着かない。
目的の物らしき扉を開けると、何個かのポリバケツと朽ちた植物の残骸があった。
見回すと直ぐに床へ設けられた大きなハッチを発見出来た。
錆びているが、果たして問題なく開いてくれるだろうか。
「ちょっと下がっててくださいね♧」
えいっと十六夜さんが取っ手を掴んで力むと、ギギギと数十キロは有りそうな金属製の扉が持ち上がる。
横に置かれた扉は重厚な音を立てながら再び床と接触した。
……キヴォトス人怖い。
久方ぶりの外気との遭遇を果たした暗闇は、漏れ入る光では照らしきる事は出来ない。
数瞬の思考の後、よしっと携帯の灯りを点けて私達は敵地への進軍を開始した。
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■
「リーダーの何時もの癖には困ったものだ……。」
「また少しずつ消耗戦しかければ良いのにな~」
「でも私はリーダーのそんなトコ嫌いじゃないっすよ。」
「……そうだな、だからこそ細かい所は私たちが考えようか。」
もう少しカタカタヘルメット団の幹部としての自覚を持って欲しいのだが、と何処か嬉しそうに愚痴をに吐く
参謀である彼女は冷静に戦況を眺めていた。
(アビドスの奴等の連中のは、既に補給は底をついたと思っていたのだが…)
何処かで考慮するべき事を見落としたのだろうか、それとも敵の補給能力を見誤った?
だが、それらを鑑みても最早風前の灯火であろう。あちらが必死に物資を搔き集めた所で
私たちにとっては痛手にならない。こちらは何時でも攻撃を与えられるのに加え
強力なパトロンも居る。ここを落とされても、再び装備を整えて虫の息の奴等を押しつぶせばいい。
この戦いもリーダーがアビドスの連中を打倒、疲弊させれば良し。
出来ずとも敗色が濃厚になった時点で拠点を焼き払い、銀蠅させなければ良い。
結局のところこの戦いは始まった時点で私たちの勝利は決まっていたのだ。
それでも慢心などはしない。徹底的に奴等を叩き潰し、団の中での実績を積み上げる。
そうすれば私たちの派閥の発言権は増し、パトロンの興味も引けるだろう。
こんなクソな世界で唯一である私たちのヒーローを王にする。
その為ならば、一切の障害を排除して見せるそう決めたのだから。
「…あん?1、2、3……んん?」
「どうかしたか?」
「いやさ、何かアイツら数足りてないよな?」
「お前ぇ……さっき二人後方に下がったろ?ちゃんと見とけよ。」
状況を逐一確認するためにも、見張りと支援を行う陣に残った仲間の会話に耳を傾ける。
皆、あぶれ者のために練度が高い奴は多くないが、見張りぐらいはしっかりして欲しい。
「それがさぁ…あいつら後方支援どころか、さっきから姿も無いんだよ。」
「まさか帰ったわけじゃないだ「代われ!!」 「は、はい」
最悪の考えが過ぎり、強引に覗き穴を掠め取る。アビドスの連中は全5名。
今日の侵攻戦で新しく刀を持った奴が確認されて、前線に出る人間も5人になった。
不確定要素はあったが、それでも急激に物資が増える訳ではないと捨て置いたが
この盤面では見失う訳にはいかなかった。
……やはり居ない、十六夜ノノミとイレギュラーの姿が見えない。
「……!総員全方位警戒―――――――――――――――――――
「お仕置きの時間ですよ~☆」
戦場に似つかわしくない間延びした声が聞こえたかと思うとバリケードとして置いていた車両が
穴だらけになっていく、まして看板やコンクリートブロックは積み木のようにはじけ飛んでいく。
この火力は間違いなく、十六夜ノノミのミニガン。だが、一体どこから――――
「……地下水道かッ‼」
ここら一帯には生活排水用途の下水道が広がっており、蜘蛛の巣のように点検通路が入り組んでいる。
有事の際に使えるとふんで塞がずに残していたが、連中も把握しているとは
記録など残っていないと思っていたが、思わず奥歯を噛んでしまう。
それでもまだ被害が重篤ではない、残った人員で対処すれば問題ない。
そう思っていた。
「うぐッ……」
先程までパニックになっていた拠点がやたらと静かになっていた事に気づくと
同時にその原因も把握する。
「イ、イレギュラー……」
身長以上もある刀を振り回しながら、その刀で拠点内の仲間の意識を刈り取っていた。
絶望を感じながらも、せめて参謀としての役目を果たす為に撤退の指示を出そうとした
私の目には小鳥遊ホシノの前に、地に伏したヒーローの姿であった。
動揺に動きを数秒を止めてしまった私の背後には、紺色の鞘が迫っていて
「ち、ちくしょう…こんな所で」
小豆色の双眼がこちらを真剣に見つめており、私の意識はそれを最後に途絶えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
■
[敵の退却を確認!]
[並びに、カタカタヘルメット団の補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認。]
最早慣れ親しんだキヴォトス流の解決方法を見事に成し遂げた私は、
通信を聞いて紐を肩にかけて大きく息をついた。
そこにお疲れ。とシロコがドローンを回収して労いの言葉を掛けてきた。
「これでしばらくはおとなしくなるはず。」
「よーし、作戦終了。みんな、先生、お疲れー。」
「はい、お疲れ様です。」
ペコっと頭を下げる私を手で制しながら、ぐるっと一帯を改めて確認するとよしっ、と
誰に聞かせる訳でもなく、呟いて号令を掛ける。
「それじゃ、学校に戻ろっかー。」
そう言って振り返った背中はとても力強いものに見え、アビドスを守ってきた歴史が刻まれているように感じた。
■
「えっっ。こはねさん、キヴォトスの外の人なの⁉」
「あ、はい。飽くまでも可能性ですけど…」
「ちょっと…ビックリした。本当に怪我は大丈夫?」
「とっても大胆ですね☆」
「うへぇへぇ~
…こはねちゃん、暫く前線禁止ね?」
「…先生?」
『…ホシノの決定は絶対だから。』
『あはは…。ごめんね。』
「先生⁉」