KV_another_Archive   作:器具類プロジェクト

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投稿頻度が落ちたので初投稿です。


十壱 天下の廻りもの

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした。」

「ただいま~。」

「アヤネちゃんも、オペレーターお疲れ。」

 

ヘルメット団前哨基地の制圧という大仕事を終えた私達はアビドス校へと無事帰還していた。

お互いを労いの言葉を掛け合いながらもそれぞれの席へと着いていくアビドスの面々に

私と先生も椅子を出して貰い腰をかける。

 

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。

 これで一息つけそうです。」

 

そう笑顔になりながら、再び話し合いの態勢になる一同。

先程まで蜂の巣をつついたような騒ぎだった校内も落ち着きを取り戻していた。

 

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる。」

「うん!先生とこはねのおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」

「ありがとう、二人とも!この恩は一生忘れないから!」

 

「あの~?」

▷『…借金返済って?』

 

「……あ、わわっ!」

「そ、それは……。」

「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」

「……!」

 

何か喋りかけた奥空さんを慌てて制した黒見さんの様子を見て

また失言をしてしまった事に思い至り、咄嗟に頭を下げる。

 

「す、すいません不躾な質問でした!」

 

「大丈夫だよ、こはねちゃん。それにセリカちゃんも、いいんじゃない?

 隠すようなことじゃあるまいし。」

 

頭を下げる私を手で制しながら、黒見さんを諭すようにして

同意を得ようとする小鳥遊委員長に尚も彼女は食い下がる。

 

「か、かといいて、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

 

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに二人は私たちを助けてくれた人たちでしょー?」

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、二人は信頼してもいいと思う。」

 

シロコも私達のフォローに回ってくれるが、

それでも彼女は否定的な態度を頑なに崩さない。

 

「そ、そりゃそうだけど、二人だって結局部外者だし!」

 

苦し紛れといった風に反論する彼女であるが、またそれも事実である。

私達は彼女達に連絡を受けて、この学校に訪れただけで何の権限も道理も得ていない。

 

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。

 でも、この問題に耳を傾けてくれる大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」

 

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?

 それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」

「あ、あの私達は気にしないのでそこら辺に……」

 

黒見さんがいたたまれなくなって来る程に他の委員会の皆に

信用して貰えたのは嬉しいが、それ以上に申し訳なさが来る詰め方であった。

 

「う、うう……。」

 

実際に黒見さんも堪えきれず、と言ったように

抱えてきたであろう本音を堰を切る様にぶちまけ始めた。

 

「で、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、部外者が首を突っ込んでくるなんて……。」

 

「私は認めない!!」

 

そう吐き捨てて彼女は部室から弾かれた様に出ていく。

その背中は怒気に溢れているが、何処か寂しそうなものであった。

 

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見てきます。」

 

間を置かずに立ち上がった十六夜さんが、彼女を追って部屋から出ていく。

ほんの少しの静寂が訪れるとさっきまでの戦勝ムードは何処に行ってしまったのか

がらりと部屋が寂しくなっただけでなく、空気感も最悪のものになってしまった。

 

 

「……。」

 

 

「えーと、簡単に説明すると……この学校、借金があるんだー。

 まあ、ありふれた話だけどさ。」

「でも問題はその金額で……9億円ぐらいあるんだよねー。」

 

誰もが口を開こうとしない中で努めて何でもないかのように

小鳥遊委員長が語るアビドスの現状はあまりにも絶望的であった。

そこに奥空さんの訂正の声が挙がった。

悪い方向にと枕詞が付くが

 

「……9億6235万円、です。」

 

「アビドス……いえ、私たち「対策委員会」が返済しなくてはならない金額です。」

「これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。」

 

「ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く……

 ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました……。」

 

「そして私たちだけが残った。」

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、

 街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです。」

 

「そんな……何で…。」

▷『事情を説明して欲しいと言う。』

 

余りにも突飛な話に思考停止していると先生は現状の把握の為に

冷静に借金をする事になった経緯の説明を求める。

 

「借金をすることになった理由ですか?それは……。」

 

「数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。」

 

「この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。」

 

 

「学区のいたる所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい。」

「その自然災害を克服するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした……。」

 

ここに訪れるまでに調べた砂嵐という自然災害が、

あまりにも絶望的な事実と共に現実味を私に突き付けてくる。

街一つを丸々飲み込もうと、否飲み込みかけているという恐怖は

たかがアビドスを訪れただけの私には計り知れないものであるだろう。

 

「しかしこのような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行はなかなか見つからず……。」

 

「結局、悪徳金融業者に頼るしかなかった。」

 

 

「……はい。最初のうちは、すぐに返済できる算段だったと思います。」

「しかし砂嵐はその後も、毎年更に巨大な規模で発生し……学校の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化の一途をたどりました……。」

「……そしてついに、アビドスの半分以上が砂に呑まれて砂漠と化し、借金はみるみる膨れ上がっていったのです……。」

 

「……。」

「……。」

 

あまりにも辛い現実を語る彼女達に部室内の空気は鉛にも似た質量を持った様に両肩にのしかかってくる。

彼女達に説明を求めれば求める程に傷を抉る事になってしまう自分の無知を呪った。

 

「私たちの力でけでは、毎月の利息を返済するのが精一杯で……

 弾薬も補給品も、底をついてしまっています。」

 

「セリカがあそこまで神経質になっているのは、これまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。話を聞いてくれたのは、先生とこはね、二人が初めて。」

 

本当に、本当に誰も居なかったのだろう。

アビドス対策委員会の皆は自分達の学校を自分達だけで守ろうと走り続けていたのだろう。

そんな彼女達を慮る事があっても、誰が怒る事が出来るだろうか。

黒見さんの態度も今更になって部外者が介入してくれば、気分の良い物ではないだったろう。

寧ろあの瞬間まで私達2人を来訪者として歓迎してくれた事が

どれだけ彼女の人徳を表しているのかを感じ取れる。

 

「……まあ、そういうつまらない話だよ。」

 

「で、二人のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、

 これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。」

 

「もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。

 話を聞いてくれるだけでもありがたいし。」

 

「そうだね。先生たちはもう十分力になってくれた。

 これ以上迷惑はかけられない。」

 

そう締め括りながら委員長達は何時もの調子に戻ると、何でもないように寂しい事を言う。

私達に遠慮や不信感があるという訳では無いのだろう。

当たり前だったのだ、誰にも頼れずに今までたった5人でこのアビドス高等学校、アビドスを守ってくるのが。

 

果たして何の力も持たない一般記憶喪失の私如きが介入する権利があるのだろうか。

そんな私の思考を遮る様に先生が立ち上がる。

 

▷『自分も対策委員会の一員として、一緒に頑張ると言う。』

『対策委員会を見捨てて戻るなんてことはしないと言う。』

 

「そ、それって……。」

 

改めて力強く頷きながら、アビドスの借金問題の解決に協力する事を宣言する。

少し呆気に取られた様に、一瞬ポカンとした奥空さんが破顔する。

 

「あ、はい!よろしくお願いします、先生!」

 

この人は何時でも全く自分がぶれない。

道先がどうなっているのか分からずに立ち止まってしまう私の遥か先で

常に悠然と歩を進め続けている。

刀の柄に手を伸ばして強く握りしめる、息を吸って、吐く、勢いを着けて立ち上がる。

 

「私もアビドスの為に協力させて下さい!」

 

▷『……こはねも良いかな?』

 

「ん、勿論。転校生は何時でも大歓迎。」

「へぇ、2人とも変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうなんて。」

 

少し気が早いシロコは興奮したようにバッグから持ち歩いているのか書類を取り出している。

こちらを視線を向けて微笑む小鳥遊委員長は揶揄うようにおどける。

 

「良かった……「シャーレ」が力になってくれるなんて。これで私たちも、

 希望を持っていいんですよね?」

 

「そうだね。希望が見えてくるかもしれない。」

 

 

 

幾らか勢いを取り戻した部室の外から零れ落ちた

砂の混じった隙間風にかき消されそうな声が確かに私の耳に届いていた。

 

「……。」

「……ちぇっ。」

 

 

 





投稿時刻に間に合わなかったので失踪します
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