KV_another_Archive 作:器具類プロジェクト
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「いや~今日は本当にお疲れ様だったね、こはねちゃん。」
「いえ、こちらこそ皆さんにお世話になって…」
「いやいやあんな大立ち回り出来る子なかなか居ないって。」
▷『送って貰っちゃってごめんね、ホシノ。』
『シロコも。』
アビドスに改めて協力する事を決め、一時的に帰路に就こうとした私と先生だったが
当然ここまで来た道を二人で戻れる訳もなく、シロコに同伴をお願いしたところ
小鳥遊委員長も着いて来てくれる事になり、私は労いの言葉を掛けられていた。
「仲間に帰り道を案内するのは当然。」
「まあ、そういう訳だから気にしなくて大丈夫だからね。」
私達を先導するように前を歩く2人は迷いなく進んで行く。
やはりというか私達が迷っていた時とは比較にならない程の速度でどんどん進んでいる。
もう既に昨日の夜に彷徨っていた道路は後方に過ぎ去っていた。
案外学校まで近い距離であったと思うべきか、近くまで来ていたのに辿り着けなかったと思うべきか
少しナイーブにならないでも無いが、次回からは迷わなければ良いと結論付ける。
「ん、それよりもこはね。」
「はい?」
話を切り出すタイミングを窺っていたらしい彼女は
歩きを止める事なく後ろを振り返って、私に話掛けてきた。
「さっき途中で聞きそびれた件、歩きながらでも良かったら聞かせて欲しい。」
「…ああ!」
『何の話?』
一瞬何の事であるか分からなかったが、先程の興味津々な様子を思い出して
彼女が聞きたがっている話題に思い当たり先生に説明する。
「えーと、この間のシラトリ区での銀行強盗について興味があるらしくて…」
「ん、あそこの銀行は直接的なセキュリティは低いけど、直ぐ近くにヴァルキューレの支所があるから
一見無防備に見えるけどなかなか難しい…!」
「良くご存じですね?」
▷『何だか話の雲行きが怪しいような?』
「中々他所の銀行を見に行く機会が無いからこんな形で生の体験を聞けるのは貴重。」
「何だか緊張してきました…上手く話せるか分かりませんが頑張りますね!」
並々ならぬ熱意を傾けているのが分かる彼女の期待に沿えるかは不明であるが
少しでも上手に話せるように話を整理しようとした時―――
「シロコちゃん?」
先程まで笑顔のまま沈黙していた小鳥遊委員長がシロコに声を掛ける。
大きな声を出した訳では無いにも関わらず、妙に迫力のある声であった。
気づけばその場の全員が彼女の様子を窺っていた。
その表情は先程までと変わらずに笑顔であるが、一点違いがあった。
眼が、眼が笑っていないのである。
「シロコちゃん、おじさん前も言ったよね?」
「いや、これはその」
「そういうのは駄目だって」
「待って欲しい、ホシノ先輩」
一歩一歩またシロコに近づく彼女は、さながら鬼神の様な迫力と表現する他無い。
ここで助けを求めるようにシロコから視線が送られるが、そもそも
状況が飲み込めていない上に、尋常では無い気迫を出しているあそこに割り込む気概は無い。
『ちょっと良いかな?』
▷『状況が飲み込めて無いんだけど…』
「うへ~、それはそうだよね。」
「一応確認だけど、こはねちゃん。」
「は、はい?」
「銀行強盗した訳じゃなくて、強盗犯に出くわしたんだよね?」
「…?はい、そうですけど。」
「え」
「……良かった良かった。おじさん流石に無いとは思ってたけど自信無くってさ~。」
「話が…話が違う………。」
何故だが凄く驚いたように声を上げるシロコは
遥かに小さい筈の委員長の前で捨てられた子犬のように
くう~んとオノマトペが幻視できそうな程に萎んでいる。
『何だか別の回答が存在するような口ぶりだけど。』
▷『どうして驚いたのシロコ…?』
「お恥ずかしい話なんだけどね…」
どこか据わりの無い様子で言葉を選んでいた彼女は
覚悟が決まったようで口を開いた。
「シロコちゃんって銀行強盗に憧れがあるみたいで」
あまりに大胆な告白に私と先生は思考が止まってしまい一瞬の静寂が走った。
何十秒、もしかしたら数瞬だったかもしれない、その静寂を破ったのは
暫定有罪の被告人である彼女であった。
「ん、ちょっと興味があるだけ。今はやってない。」
「シロコちゃん?」
「ん……」
「えぇ…?」
ふんす、と興奮気味に否定した彼女は即座に委員長に圧を掛けられ
再び砂まみれの道路に膝を落とした。
素直な私の感想を述べてしまうと、理解不能であった。
一体どんな経緯があれば、銀行強盗に憧れを抱くのであろうか。
今朝方私達の命を救い、先程まで共に肩を並べていた筈の仲間が
実は宇宙人でした。と告げられた程の衝撃であった。
まだ宇宙人の方が納得出来たかもしれない等とまた思考が横へ逸れる。
否、聞き間違いであるかもしれない。そう思いなおして再び委員長に尋ねる。
「あの~聞き間違いでしょうか?銀行強盗に興味があるって…」
「残念なんだけど…中々おじさんが注意しても治らなくてね。」
「銀行強盗を撃退では無く?」
「あくまでも銀行強盗は趣味みたいなものだから…」
彼女の発言を聞いて大きくため息をした委員長はどこか遠い目をしており
日頃の苦労が見て取れると共に、シロコの発言が真実である事を雄弁に示していた。
膝から崩れ落ちそうになる両脚に何とか力を入れて踏みとどまる。
いや、やっぱり駄目かもしれない。ちょっと頭痛くなってきた。
「はぁ……そういう訳でもし気分悪くしたらごめんね?」
「いえ、それは驚きましたけど……。」
ほらシロコちゃんも、と言いながら頭を下げる彼女を
慌てて止めながら、何とか命の恩人且つ仲間の弁護を図る。
「全然大丈夫ですよ!いえ本当に!」
もちろん銀行強盗は駄目だと思いますけど、
と付け加えながら話を続ける。
「シロコさんも別に本当に銀行強盗をしようという訳じゃないみたいですし、
私も教室にテロリストが入ってきたら~って妄想しますしね!」
実際はした記憶も無いし、どこに通っていたのかも覚えていないが
恐らく咄嗟に口をついて出た辺り、あながち間違いでも無いように思える。
このキヴォトスでは実際にテロリストが侵入してくる事もあるだろう
それに比べれば、一瞬で借金を返済できるかもしれない
夢の一攫千金のチャンスである銀行強盗を空想するのは余程健全なものだろう。
「……ありがとうね、こはねちゃん。」
「こはね……!!」
心底申し訳なさそうな顔で、子供の過失を謝罪する様に先程とはまた別な表情を見せるホシノ委員長に、
恰も救世主が現れたかのようにこちらを目を輝かせて見つめるシロコを見つめ返す。
こんな程度で恩返しが出来たとは到底思っていないが、少しでも彼女の助けになる事を祈る。
「先生もごめんね、ウチの問題に付き合わせちゃって…。」
『生徒の相談ならいつでも大歓迎だよ。』
▷『……本当にいつでも相談に来てね。』
「あはは~なるべく頑張るねぇ。」
自分に言い聞かせるように何度も頷いたり、空を見上げるのを繰り返すと
よしっ、と手を叩いて彼女は再び道を歩きだした。
「それじゃあ2人にこれからも頼りにさせて貰うためにも
ちゃんと帰って貰って、英気を養ってもらわなきゃね。」
「ん、賛成。」
シロコはそう言いながら立ち上がって砂を払いながら、委員長の後を追い始めた。
その足跡を辿る様に私達も砂まみれの道路を歩き出す。
お互いに知らない事ばかりだが、
きっと、多分、メイビー
これからもっと互いについて知れるだろう。
そう思い疑問を振り払うように首を振り、明日のための帰り道を急いだ。
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「シロコちゃん、帰ったらお説教延長だからね。」
「ん………。」
大変お久しぶりです、器具類プロジェクトです。
年内の更新予定の筈が、気が付けば年が明けて一月も終わってしまいました。
結局私の文章力では、描写が遅々として進まずに時間だけが過ぎてしまいました。
流石にこのままではモチベーションにも影響してくると考え、未だ推敲の足りぬ作品ですが
結論として未完のままで投稿する運びとなりました。
自己満足な意味合いの強い本作ではありますが、何卒お付き合いの程宜しくお願い致します。