KV_another_Archive 作:器具類プロジェクト
失踪したので初投稿です
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大人と子どもの境界線はどこだろうか。
ただ成長するだけで大人になれるのならば、このままきっと私は気づく事も無くその境目を跨いでしまうだろう。
何時か、何時もと同じ様に床から起き上がってから、ささやかな祝い事を終えた事に気づいて
今日から大人なのだと思って、そのまま朝の支度を始めて、昼前には忘れてしまう様なものだろう。
酷く雪の積もった坂道を登って行く、数分前に誰かが通った轍をなぞる様に歩いて行く。
もしも、ここでは大人になっても何も変わらないだろう。
大きくなったら自由になれると言う人が、よく居るがそれは嘘では無いだろうけど。
でもそれは出来る事が少し増え、行ける場所が少し広がるだけだ。
遠くに行ける気がするのは最初だけで、結局自分自身が何も変わっていない事実に気づく。
働いて、寝て、働いて、寝ての繰り返し
そんな退屈な生活に違いないと、自分では労働による賃金を得た事もない癖に
決めつけては勝手に絶望して、無為にその妄想中の地獄と大差無い生活を送っていた。
気づかない内に足が重くなっていく、早く家に帰って暖を取りたいと要求する理性に反して
身体は少しでも帰るまでのこの道程を長くしようとしていた。
ふとこのまま立ち止まってしまおうかとも思う。
なけなしの財布の中身を抱えて何処か知らぬ都市で、自分の知る者も居らず、自身の力だけで生きていく。
けどその財布の中身すら保護者によって齎されたもので、頭から爪先まで私の自前な物は存在しないのが
どうしようも無い程の現実で、変えようと思う事すらしないのが私自身で
そんな絵に描いた餅にすら成れない、稚拙な妄想以下の何かをしている内に見慣れた玄関についてしまう。
そんな些細な抵抗を今日も終えて、扉に手を掛けて■■■の家へと入って
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■
――アビドス住宅街・45ブロック地区
今日も今日とてアビドスを訪れた私達だが、昨日の帰り際に小鳥遊委員長に貰った
地図に従い進んでいると、準備をより整えた事もあってか位置情報でも近づけているが
依然として辿り着くことが出来ずに右往左往していた。
「先生…やっぱりさっきの所を左だったんじゃないんですか?」
『う~ん、戻るべきかな?』
▷『理論上では迷った時には右の筈なんだけど。』
「なんですか、その理論。」
そんなもの地理によって異なるだろうし、そもそもアビドスは迷路ではない。
いや自然の迷宮という意味では、ある種迷路と言えるかもしれないが
その場合でもその理屈は可笑しいだろう。
2人で戻るべきか協議を重ねていると、前方に見覚えのある制服姿が見えた。
「あ、黒見さん。」
『セリカ。』
こちらの存在に気づいていなかったようで、話しかけたら何処か気まずそうに狼狽えている。
やはり昨日の件を気にしているのだろうか。言葉に詰まったり、視線があっちこっちと忙しい。
「うっ……な、何っ……!?」
『おはよう。』
「おはようございます。」
「な、何が「おはよう」よ!なれなれしくしないでくれる?」
「私、まだ2人のこと認めた訳じゃないから!」
昨日もそう感じたが、彼女は気難しいというより生真面目なのだろう。
あまり本心から罵倒している訳では無いのか、内容を考えながら話している様に感じる。
一度拒絶したからには、その姿勢を崩す訳にはいかない。という雰囲気を発している。
「まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって。
いいご身分だこと。」
『セリカちゃんは、これから学校?』
「私達も今からアビドスに伺おうとしてたところで。」
「な、何よ!何でちゃん付けで呼んでんのよ!」
「私が何をしようと、別に先生とは関係ないでしょ?」
「朝っぱらからこんなところをうろちょろしてたら、ダメな大人の見本みたいに思われるわよ?」
それは仰る通りである。このまま校舎に辿り着けないと非行少女と職務放棄公務員という
最悪の組み合わせがこの住宅街に爆誕してしまう。……若干遅いかもしれないが、
「じゃあね!せいぜいのんびりしてれば?私は忙しいの。」
「え?学校に行くなら一緒に行こうって?」
渡りに船だとばかりに先生が黒見さんに対して提案をするが、しかめっ面が更に深まる。
生真面目なのもそうだが、嫌悪感を感じているのは確かかもしれない。
「あのね、なんで私があんたたちと仲良く学校に行かなきゃならないわけ?」
「それに悪いけど今日は自由登校日だから、学校に行かなくてもいいんだけど?」
彼女のあまりにも真っ当な意見に内心頷いてしまったが、ふと疑問が浮かんだ。
休みだというのに彼女は何処へと向かっているのだろうか。
もし私が彼女の立場なら、家でのんびりしているか遊びに出掛けるが
そんな様子と荷物には見えない。第一に面倒なので休日には制服を着ない。
「えーと、では何処に?」
「……そんなの教えるわけないでしょ?」
少し悩んでから、先生に視線を向けてから、ぷんっとそっぽを向いてしまう。
どうやら共に鉄火場を潜り抜けたからか、同年代だからか
比較的ではあるが、信用を得られているようだ。
「じゃあね、バイバイ。」
そういうと黒見さんは砂埃を立てながら走り去っていった。
先生と顔を見合わせると先生が少し悪い顔で切り出してきた。
『……追いかけようか。』
「尾行…ですね?」
どの道今日は黒見さんとの交流を深める為に訪ねる予定だったのだ。
このまま彼女の寄る可能性の低い学校で待ち伏せるよりも追いかける方が効率がいいだろう。
先生がアロナにここに戻ってくる為のナビをお願いしている間に
肩に掛けている紐の調整をして走る準備を終える。
『それじゃあ、行こうか。』
「スパイ作戦開始です…」
コンビニらしき建物がある分かれ道で立ち止まって振り返った黒見さんは
動画サイトで見た猫の様に数メートル飛び上がって小さな悲鳴を上げた。
「ひゃあっ!?な、なんでついてくるの!?」
「ついて行けば、どこに行くのかわかるから?」
「何言ってんの!?あっち行ってよ!ストーカーじゃないのっ!!」
あまりにもあんまりな言い様だが、確かに状況だけ切り取れば、確実に事案である。
ヴァルキューレのお世話になってしまう事間違いなしであるの確かだ。
量刑は不明だが、キヴォトスでも銃器以外の扱いは外基準な様である。
流石に実刑は不味いが、引く訳にもいかないのが現状だ。
「な、なにかヒントだけでも……?」
「わかった!わかったってば!行先を教えればいいんでしょ?」
「……バイトよ。」
「あ、あんたたちみたいにのんびりしてられないのよ、こっちは。少しでも稼がなきゃ!」
少し怒ったように、バイトをしている事を告げる彼女を見て
借金返済は本当に触れられたくない話題だったのだと感じられる。
「もういいでしょ?ついてこないで!」
もしここで引いてしまったら、彼女達の借金問題と向き合う資格を失う気がする。
それはそうと知人のバイト先が気になるという野次馬根性が芽生えてきたのも事実である。
ここまでくれば、最後まで着いて行こう。横を見るとどうやら先生もまだ走れる気の様である。
彼女がMARU肉という看板の前で立ち止まる。
ここがバイト先かとも思ったが、営業している雰囲気は無い。
どうやら流石にバレている様で、こちらを振り返る。
「うう……しつこい。」
「……え?バイト先が気になる?」
「ああもうっ!意味わかんない!あっち行ってよ!ダメ大人!!あっち行けってば!ぶっ殺すわよ!?」
激昂と赤面が半々といった表情で、凄い勢いで走り去ってしまう彼女。
先生の発言が確かにセクハラ染みていたのも事実だし、黒見さんの逃走もいよいよ本気になってきた。
これ以上の尾行は倫理的にも、先生の体力的にも厳しい。
先生もどうやら切り口を変えるようで、シッテムの箱を操作している。
どうやらバイト先を突き止めるのを諦めた訳じゃないのが、大人なのだろうか?
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■
小さいながらも活気がある店内には、小麦とかん水の匂いが湯気の熱気と共に充満していた。
その店内では慌ただしく、猫耳の少女が動き回っていた。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」
「何名様ですか?空いてるお席にご案内いたしますね!」
「少々お待ちください!3番テーブル、替え玉追加です!」
その姿は熟練したもので、滞りなく仕事を回しており、元気のいい彼女はよく店内に馴染んでいた。
笑顔を崩さずにテンポよく業務をこなしていき、新たな来訪者を迎えようとする。
「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで……。」
「わわっ!?」
扉が開き、お客様に笑顔で挨拶しようとした彼女だが、その動きは唐突に固まってしまう。
「あの~☆6人なんですけど~!」
「あ、あはは……セリカちゃん、お疲れ……。」
「お疲れ。」
顔見知りなのであろう。同年代の学生が訪れた姿を見て、思わず狼狽してしまう。
漸く絞り出した声は、何故自らの職場に彼女達が訪ねてきたのかを問い質そうとするものであった。
「み、みんな……どうしてここを……!?」
「うへ~やっぱここだと思った。」
「お邪魔しま~す?」
『どうも。』
「せ、先生たちまで……やっぱストーカー!?」
不穏な物言いを止めるように、先輩と呼ばれた一回り小さい桃色の髪をした彼女が否定する。
「うへ、先生は悪くないよー。セリカちゃんのバイト先といえば、
やっぱここしかないじゃん?だから来てみたの。」
「ホシノ先輩かっ……!!ううっ……!」
入り口付近にて繰り広げられるやり取りに対して、厨房から声が掛かる。
手ぬぐいを巻いた柴犬の大将が、店員に対して仕事の遂行を促す。
「アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそれぐらいにして、注文受けてくれな。」
「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……。」
かくして彼女にとって忘れられないであろう負けが確定した接客がこれから始まろうとしていた。
滅茶苦茶時間掛かったので失踪します。