KV_another_Archive   作:器具類プロジェクト

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投稿まで期間が滅茶苦茶な位に空いたので初投稿です。


十陸 我他彼此

 

無事に5人全員が集合できたアビドス対策委員会と私達であったのだが

カタカタヘルメット団の包囲網を突破するべく、先生の指示のもと戦闘を開始していた。

住宅の殆どが砂の下に沈みきったのだろう荒野と呼んで差し支えない敵地を突き進んでいく。

道中で給水塔を爆破して一網打尽にするべく手榴弾を投擲したり、既に打ち捨てられたであろう鉄道の跡地を通過するなどのイベントを乗り越えながらも順調に歩みを進めていた。

そんなタイミングで突如として先生からの通信が入る。

 

『ホシノ、シールドを展開!総員対ショック姿勢!!』

 

最後となるであろう敵集団を認識した瞬間であった。

突如として上空から飛来したその鉄の塊はとてつもない衝撃と共に、私達から少し離れた地点に着弾した。

咄嗟に廃棄されていた車両の影へと退避する。向かい側でも同じ様にシロコ達が身を隠して様子を窺っている。

どうやら負傷無くやり過ごせた様ではあるが、被弾してしまえばキヴォトス人であっても只ではすまないだろう。

 

「ッあれよ!」

 

そう叫ぶ黒見さんの言葉でこれが件の戦車による仕業である事を理解出来た。

既に折れかかっているミラーを拝借して身を乗り出さずに敵陣を観察させて貰う。

コヨーテブラウンの迷彩色の車体が微かにではあるが見える。

周囲にいる団員はどうやらこちらを深追いせずに戦車の周囲を固めている。

確かに膠着状態が続けば続く程に相手側には増援がやってくるだろう。随分と統率が取れている様に見える。

無暗に飛び出す訳にもいかず、少々息を整えながら、銃弾を補充して刀剣の紐を調節する。

そうこうしていると先生からの通信が入り、準備していた作戦を実行する事となった。

立ち上がってタイミングを待っていると何やら通信を聞いていた黒見さんの様子が可笑しい。

 

「……え、いや!絶対に駄目でしょ!?」

「先生も、先輩たちも何考えてるの!!」

 

……そういえば彼女はこの作戦内容を聞くのは今が初めてであっただろうか。

やはり根が真面目なのだろう。一部外者の私の身を案じてくれるのは嬉しいが

このままでは危険な事には変わりないし、死にに行くわけでは無いのだから。

 

「大丈夫ですよ、黒見さん。」

「アンタもちゃんと駄目ってー」

 

湯の花をホルダーへと仕舞い込んで、刀剣の状態を確認する。

常日頃から自己流でも手入れしている甲斐もあり、刃こぼれ一つもない。

これなら作戦に支障なないだろうと安心した。

 

「取り敢えずあれは何とかするので、後の事はお願いしますね。」

「ちょっと!?ああ、もうッ!!」

 

―――――――――――――――――――

 

「あいつらビビッて出て来ないぜ。」

「このまま増援を待って包囲攻撃を行う。

 数の優位があるからと油断するなよ。」

 

戦車の周囲を警護するヘルメット団は、一時的に生じた休憩時間に会話を行っている。

その姿勢は緊張感があまり感じられるものではないが、構えは乱れずに視線も対象から逸れない。

 

「つってもこっちには戦車もあるし、勝ち確じゃないか?」

「既に仲間を奪還されると想定していた時間との大幅なズレが生じている。

 あちら側にも伏兵が居ないとは言い切れない。警戒は十分にすべきだろ。」

「まーそりゃそうか。……と敵さん動き始めたぜ。」

 

車体から飛び出してきた件の少女は、姿勢を低くしてこちらへと突っ込んでくる。

発砲する様子も無く、腰にぶら下げている日本刀に手を添えたままで走り続けていた。

スピード自体は速いが、その進行は一直線とあまりに愚直なものであった。

 

「撃つか?」

「いや作戦通り、引き付けてから戦車での攻撃を行う。」

「弾丸を切ったってやつか……。」

 

そんなんありえんのか……?と独り言を呟くが返事は無い。元々返事を期待していた訳では無いので

そのまま待機状態へと戻り、号令が掛かり愚かな刀剣少女に砲弾が降りかかる瞬間を待つ。

着実に少女はこちらとの距離を詰めてくる。背後にも注意を配るが、後続が続く様子は無い。

自殺志願者なのか、痺れを切らして連携を乱したのかは分からないが、どちらにせよ戦線離脱は免れないだろう。

5、4、3とカウントダウンを開始した指令役に従い、車内に居る砲手は照準を合わせ終わっている。

ヘルメットの位置を調整して今の内に轟音に備えておかねば、耳が暫く使い物にならなくなってしまう。

 

ゴォン!!!!

 

衝撃と共に戦車が少し後ろへとノックバックする。

砂埃で対象の姿が見えないが、少なくとも回避できる様なルートでは無かった。

あれは直撃不可避であった。暫くはベッドから起き上がるのも難しいかもしれない。

 

「……対象、沈黙。回収して人質に……?」

 

砂煙が晴れたらそこに動くものは無い筈だ。意識はあっても地べたに這いつくばっているだろう。

それこそゲヘナの風紀委員長の様な化け物でもない限り。その筈だった……。

 

「不可能ぇねぇ!何でこっちに向かって走り続けてんだ!?」

 

護衛の1人から思わずそんな悲鳴が上がる。周囲に動揺が走る中で、観測を行っていた団員だけは

何が起きたのか状況を把握出来ていた。

 

(あいつ…!砲弾が着弾する前に上に飛び乗って、爆風で空中に飛びやがった!!)

(物理的に在り得ねえだろう…!どんな動体視力と耐久してやがるんだ!?)

 

「っ次弾装填!総員射撃、近寄せるな!」

 

動揺している間に、化け物とヘルメット団の距離はかなり近づいてしまっている。

だがその分こちら側の攻撃も問題なく、行える射程に入っている。

人数の優位はこちらにある上に、相手は銃火器を現在構えておらず殆ど丸腰だ。

そうであるにも関わらずその場にいる団員に嫌な汗が流れていた。

不安を掻き消す様に引き金を引く。

 

その構えはあまりに大振り過ぎて、見る者がみれば隙だらけである様にも見えるだろう。

だが彼女のその目は爛々とその車両を見据えている。

中空に跳ねた小さな少女はふっ、と短く息を吐いてそのまま重戦車の装甲へと振り下ろすと

するりと、まるで薄いコピー用紙を切り裂く様に刀が振り抜かれる。

搭乗していたヘルメット団には幸い当たる事は無かった様だが、腰が抜けてしまったのか動く様子は無い。

 

たった今、刀を納刀した少女の傍らには、上から下まで両断された重戦車がその機能を失い転がっていた。

 

―――――――――――――――――――

 

 

ぶっつけ本番であった為、成功するか不安であったが無事に重戦車の無力化成功に安堵する。

流石に主砲からの攻撃が来た時には、かなり焦りを覚えたがハリウッドスターの様な回避を出来て良かった。

もう一度やれと言われても、ご遠慮願いたいのが実情だし、恐怖を感じる暇も無かったのが要因だろう。

背中を掠めた爆風が今尚残っている気がする。アドレナリンで何とかなっているが、夜中辺りに痛むかも。

今になって冷汗が出てきた。予め戦車の装甲を貫通できるのは知っていたが、浅慮が過ぎたかもしれない。

 

「…………ッ!ぼさっとするな撃て!撃て!」

 

意表を突かれて硬直していたらしいヘルメット団らが、無数の銃火器を私に向けて構え始める。

こういった点でも浅慮過ぎた気がするが、これに関しては私では流石に弾ききれない。

1人で戦っていた場合の話、ではあるが。

 

「うへ~本当に真っ二つなんて、おじさんビックリだよ。」

 

何時の間にかショットガンの射程距離まで接近している小鳥遊委員長が、包囲していた1人を無力化しながら話しかけてくる。私に意識が集中している間に、近づいたのだろうか。私自身は疎かヘルメット団も気づかぬうちに接近していた為、攻撃を受けた彼女はモロに直撃してしまったらしい。あれは今日中は起き上がれないだろう。

 

「うん、素晴らしい太刀筋だった。こはねは凄腕の侍。」

 

「あ~~~もう!!!!次からはこういう危ない真似しないでよね!」

 

 

後ろからアビドスの面々が続々と追い付いており、つくづくキヴォトス人の身体能力を痛感する。

自分も半ばキヴォトス人入りしかけている気もするが、未だ一般人である事は諦めていない。

 

相手の様子を見ると、虎の子の戦車を失って戦線も一気に上げられてしまい動揺しているが戦意は失っていないようである。そうこう思案している内に棒立ちの私目掛けて射撃が飛んでくる。もう何となく分かってはいるのだが心情的に当たりたくないのでしっかりと弾丸を弾き飛ばす。そのまま返す刀でノックアウトを狙いに行くと咄嗟に自前であろう銃で防御しようとする相手に向かって振り下ろす姿勢から咄嗟に突きの攻撃に切り替える。

銃身を余程強く握っていたのか、ヘルメット団はそのまま銃ごと後方へと吹き飛んでいく。

 

出来るならしっかりと気絶を確認したいが、今吹き飛ばしたヘルメットに反射して別のヘルメットを確認出来た。

既に引き金に指を掛けている彼女に対して何とか振り返って迎撃を試みようとする。

 

だが最初に動いたのは相手でも私でもない第三者であった。混戦状態であるこの状況であっても響く連続する重低音が聞こえると、目の前のヘルメット団は地に伏す。その背後で小さく手を振ってくる十六夜さんの姿を確認して私は何が起きたかを把握出来た。

 

あのミニガンを担ぎながらここまで走ってきたのだろうか。私は調べたんだぞ、あの軽々と持ち運んでいる銃火器が100Kg近い重量の代物であるという事を。か細い脚にいったいそんなパワーが詰まっているというのか。

だがお陰様で助かったこの間隙にお相手の確認を行わせて貰おう。

近寄ってみるとしっかりと握っていた銃は手元から離れており、時折呻き声を上げている。

本当に気絶しているかは不明だが、時間も無いので弾倉だけ抜かせて貰う。

 

周囲を見ればアビドスの面々が押している状況だが、まだ残存兵が居るようだ。

ノーコンという訳では無いが未だ混戦状態にあるこの戦場で的確に精密射撃を行える自信が無いので、

店長に心の中で謝罪しながら、刀剣のままで鉄火場へと身を投げ出した。

 

 

 




一周忌なので失踪します。
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