KV_another_Archive   作:器具類プロジェクト

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キャラエミュが難しいので初投稿です。


〇三 私の一部

 

携帯を購入した私達はその足で、電気街から離れた。

銃を購入しにシラトリ区の銃火器販売店へと足を運ぶ。

こちらも先生のリサーチで評価が良い物の中から近い物を選んだ。

 

外観は普通の店とそれ程変わりなく、年期の入った銃のイラストが貼っている壁と軒先のテントには「白鳥銃砲店」と記されており、あまり客足が多いようには感じない。

やや重い扉を引きながら開けると灰色の犬の店主がこちらを一瞥して「……らっしゃい。」と一言放ち、手元の新聞に直ぐに視線を戻した。

 

店内は薄暗く、壁に棚に所狭しと一面中に銃が置かれている。ここに来て多少は銃に慣れていたつもりではあったが、こうも多いと少々気おされてしまう。

先生は少し気難そうな店主に堂々と話しかけに行く。こういった対人関係はやはりまだ先生にお任せしたい。

 

『すいません、今日はこの子の銃を買いに来たのですが。』

▷『私も彼女も最近キヴォトスに来たばかりで、扱いやすいものをと考えたのですが。』

 

ようやくこちらに向き直った店主は目を瞑りながら訝しむ様に

「初心者か……。」と独り言つ。

立ち上がり、後方のバックヤードに向かうと

「……見繕う、ちょっと待っとけ。」

といい、数分で戻ってきた。数分ではあるが余りにも愛想のない店主に委縮し、途方もなく長い時間に感じた。

何となくだが、評価の割にあまり客足が多くないように感じた理由が分かった気がした。

 

「……なるべく反動が少なく、癖の無い物がいいだろう…。」

「……こういうのは数を試して、合う物を探したほうがいい。」

 

銃の箱を抱えた店主は、少しぶっきらぼうに言いながらも取り出す所作は丁寧なものだ。

初心者相手でも適当な銃を売り払うのではなく、面倒さを億尾にも出さない様子に何故この態度で続いているのかも分かった様な気がする。

「…お嬢ちゃん、利き手は右かい?」

「は、はい。右手です。」

 

いきなりの事でちょっと驚いたが、やはりプロなのだろう。しっかりと当てられてしまった。

 

「……まずは握り方だな。まっすぐパーで利き手伸ばしな。」

「そう、そのまま人差し指は沿わせたまま。親指と挟み込むようにして、残りの指は握り込む。」

「……安心しな、弾は抜いてるから。そう、利き手はなるべく上部を握るようにする。」

「そうしたら反対の手で、握ってる方の指を包む様にして握る。」

「…この時にグリップ側面……利き手の反対側に隙間がない様にしっかりと添える。」

 

あれよあれよと握り方をレクチャーされて、気づけばかなり様になっている。

教え方が、先程のぶっきらぼうさが嘘の様にとても丁寧だ。

 

「……まあ、こんなもんだな。」

「じゃあボチボチ始めるか。」

「こいつは、L&MのM&P9。サムセイフティが着いてねえが……まあ、おたくらなら大丈夫だろう。」

 

少し私の光輪に目をやったと思うかとそんな事を言う店主だが、まさかここでは生徒の頑丈さを勘定に入れて商売を行うのだろうか。まだ撃たれた事は無いが、私の耐久性はキヴォトス外準拠だと思う。

もし、大丈夫でも精神衛生上の都合で撃たれたいとは思わない。

 

「……次はヤーモリーのXD-Sだ。これは握るとセイフティが解除されるタイプでグリップのサイズも変更できる。」

 

この調子で少し握ったかと思うと店主が引き取り、新しい物を握らせてくる。

一度始まると目まぐるしく、銃をとっかえひっかえして説明を聞くといった事を繰り返す事十数分経った頃。

店主は少し逡巡した後、他に比べて明らかに年期の入った箱を開ける。だが、箱の様子と裏腹に銃自体は綺麗で手入れが行き届いている。

明らかに他とは違う様子で、店主はやや間があって口を開く。

 

「………こいつは湯の花。両側から操作出来るサムセイフティとインジケーター、まぁ薬室に弾薬が入ってるか確認できる仕組みが付いてる。」「握ってみてくんな。」

 

少々気が引けるが、教えてみて貰った通りに握ると、どう言う訳か不思議と手に馴染む。

あの日刀に手を伸ばした時のように自然と握る事が出来る。身体が覚えているのか。

もし、そうなら。前の私は暗殺者か何かなのか、少なくとも堅気では無いだろう。

他の銃ではこうはならなかったので違うと思うが、まるで落とした身体の一部であるように馴染んでいる。

 

「…うん、合ってるな。どうだここらで試し撃ちしてみるか。」

 

その言葉で気づく、ここに至るまで一発たりとも銃を撃っていない。

普通こういうのは試しながらするかと考えていたが、あまりにも勢いがよく、失念していた。

 

鍵を取り出しながら、レジの横から出てきた店主は試射場と書かれた部屋に銃を持っていく。

それに追随するように私と先生も入ると、中は存外に広く明るい。

既に的の調整を終えた店主が戻ってきて、台の上に銃と耳当てを置いた。

 

「サイトラインと腕の芯が真っすぐになるように構えて、引き金は人差し指の第一関節の少し手前になるように持つ。撃ったらスライドが元に戻るまで引き金は引き続ける…まずは打ってみな。」

 

そう言うと後ろへと下がり、また視線を新聞へと戻してしまう。助けるを求めて先生へ目線を送るとニコニコと笑顔で頑張ってというだけだ。こうなれば自棄だとしっかりと的を狙い構え、大きく深呼吸をした。

 

「噂のシャーレの先生ってのは、生徒の買い出しにも付き合うのかい。」

 

こはねの射撃練習を眺めていると、ふいに店主さんが話しかけてくる。

 

▷『他ならぬ生徒の為なら。』

『なるべく力になってあげたいと思ってます。』

 

「へぇ…瀟洒なこった。」

 

『…ところで、噂っていうのは?』

「……知らねえのかい?ほらよ。」

先程から読んでいる新聞をこちらに見せて貰うと一面に大きく、

【連邦生徒会の謎の部活シャーレの顧問 着任初日から大捕り物か!?】と書かれている。

取られた覚えのない写真と憶測である事ない事が勝手に書かれており、少し頭痛がする。

生徒の自主性は尊重したいが、こうも奔放だと対象が私である内は良いが彼女たちの将来を考えると悩ましい。

そんな私の雰囲気を感じ取ったのか、店主さんは少し同情したように新聞へと視線を戻す。

 

「……先生ってのも大変なんだな。」

『それでも、やりがいはありますよ。』

 

こはねは最初こそ少し外していたが、今は近い的には殆ど命中するようになっていた。

生徒の成長を直ぐそばで見届けることが出来るのは、やはり教職に就いていて最も嬉しい事の一つだろう。

 

「……深くは聞かねえがよ。あの子も訳アリだろう?無理して倒れちまったら元も子もないだろう。」

少し不器用だが、根底に優しさが感じる注告だった。

『…ありがとうございます、それでも。』

▷『先生は生徒の助けになるものですから。』

「……そうかい。」

 

何度か弾薬を交換して遠くの的にも当たるようになった頃、店主が声を掛けてきた。

 

「ぼちぼち良いだろう、撃ってみてどうだい?」

「…なんていうかとってもいい感じです。すごく合うっていうか、馴染むといいますか。」

 

それを聞いて少し頭を掻いた店主は、銃を眺めながら呟く。

 

「……それにするかい?」

 

私はそれを聞いてパトロンに尋ねる前に値段を確認しようとするが、箱に記入が無い。

若干引っ掛かりながら、店主に質問する。

 

「これにしようかなぁて検討してるんですけど、お値段って……お幾らでしょうか?」

 

ちょっと思案顔になったかと思った店主は指を3本だして答える。

 

「3万だな。」

「!?」

 

他の銃と比べても明らかに安い価格に驚いた。この銃はどう考えても安い物に見えないし、どう考えてもおかしい値段設定に思える。銃初心者だが、何かのケチが付く要素も見つからない。

先生も不思議に思ったのか、会話に参加する。

 

▷『すいません、素人判断で申し訳ないのですが。』

『相場より随分安いように感じるのですが、何か瑕疵が?』

 

この人は不良品を売るような人には見えないが、不自然な値段設定に少し警戒してしまう。

安い事に不都合はないのに、極端に安いと腰が引ける。人とは勝手なものである。

店主が少し悩んだ素振りの後で、ゆっくりと語り始める。

 

「……こいつは、とある都市の周年を祝う記念品なんだがな。交流があった先々代…俺の爺様だな。そん時はまだ小さいが工房もあって、採算度外視だったし何丁かだけだがな。ウチで作って卸したモンだ。」

 

「あっちじゃ銃が主流じゃねぇってんで、殆ど儀礼用みたいな扱いだったらしいが…まぁ正真正銘ウチの作った物って事で品質は確かな筈だ。」

 

「何てことはねぇさ、売り物じゃねぇからな。値段は今思いついたもんだしな。」

「銃ってのは誰が使っても同じ様に弾が出る。だが、人間ってのは体格、癖、経験と千差万別な違いがあって、引き金の引き方一つとっても差が出る。だからこそ適した道具というのは、その人間の人生をより良くするモンだと俺は思ってる。」

「お嬢ちゃんには銃を探していて、俺はこいつが適していると判断した。」

「……そんだけだ。」

 

そこまで語った店主は少し落ち着いたのか恥ずかしそうに背を向けた。

それを聞いてこの銃に見合った人間であると言って貰えた事に喜びと羞恥を感じる。

が、今の話を聞いてそんな貴重な物を私が貰って良いのだろうかとも思う。

躊躇いを覚えない事もないが、それこそここまで言い切ってくれたこの人に失礼にあたるだろう。

 

買います!!と喉まで出かかったが、相場以下とはいえ、安い買い物ではない。先生に確認を取ろうとすると、

こちらを見つめている先生と目が合う。

 

▷『こはねがしたいようにしていいんだよ。』

『私はその選択を大事にしたいな。』

 

やっぱり先生はとことんまで私を尊重してくれる。改めて先生と出会う事が出来て良かった。

 

「この銃、買います!!」

「毎度あり。」

先生から代金を受け取った店主は、事なさげにレジに入れ、銃と後ろの棚から箱を取り出して袋に入れた。

「……銃弾も幾らかつけておいた。何かあったらまた来な。」

やはり幾らかぶっきらぼうにそう語った店主に見送られながら店を後にする。

「…ありがとうございました!これ大事にします!」

もう視線を新聞に戻している店主は片手で手を小さく振り返してくれた。

銃の入った袋をしっかりと抱えながら私は次の買い物へと向かう。

とした矢先からグ~と大きな音を立ててお腹が、空腹の報告をしてきた。

初めての射撃の緊張から解放された身体は如実に食べ物を求めている。

 

▷『そろそろお昼ご飯にしようか。』

『何か食べたい物はある?』

 

「ふっふっふ、先生。今の私は飢えた獣です…!ラミ二タウンを更地にしてやりますよ‼」

私だけの銃を手に入れて高揚した気分のまま私は走り出す。

なに、今日だけで食べきれなくても問題ないだろう。私のキヴォトスでの日々はまだ始まったばかりなのだから。

少し焦ったようにお財布を確認する先生を見ながら、まずは何を食べようか出店を巡る計画を立てた。

 

 

 

 

また静かになった店内で店主は嬉しそうに呟いた。

「……俺の代じゃ、もう売れねぇと思ってたんだがな…。」

「学寮都市ねぇ……。」

大きな刀を背負い、光輪を浮かべながら微笑む少女を思い出す。

「あの嬢ちゃんが買っていくんなら、爺さんもあの銃も本望だろ。」

大きな欠伸を噛み殺しながら、新聞を読む。

 

銃器に華麗さや洒落たデザインが求められる現代において、よく言えば古風、ともすれば時代遅れ、古臭いと言われかねない商売方法を続ける頑固だが、確かな腕を持つ店主と大規模店舗にも劣らぬ豊富な品揃え。

ここは白鳥銃砲店。80年以上続く歴史を持ち、このキヴォトス、シラトリ区にて三代続いている銃器専門店である。

 

 

 




二次創作が増えないので失踪します。
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