KV_another_Archive 作:器具類プロジェクト
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「買いましたねぇ…こんなところですかね?」
▷『そうだね、必要なのは粗方買えたかな。』
『…ちょっと重くなってきたしね。』
昼食後も買い物を続けた私達は、そろそろ抱えられなくなってきた荷物と帰路に着こうとしていた。
私の替えの衣服、食器や消耗品、その他細々としたもの、先生もお茶菓子や植物の種や苗を買っていた。
……玩具店で買った物は輸送にしていたが、ああいった代物が好きなのだろうか。
人の趣味にとやかく言う筋合いは無いが、その、些か値段が尋常では無かった。
やや失礼気味な思考を隅に追いやり、買い残しが無いか確認をする。
「シャーレに戻っても大丈夫ですかね。」
『買い忘れたものがあってもあっちでも買えるだろうからね。』
▷『そろそろ、戻ろうか。』
そんなこんなで駅に向かう道を進んでいると突然前方の建物が爆発した。
一瞬の事で数秒固まってしまったが、荷物を置き、刀を何時でも抜けるようにして、銃の位置を整える。
先生の方を確認するとシッテムの箱を取り出して、既に通報を行っているようだ。
光輪がある為、多少は丈夫だろうと先生を庇う様に立つ。
そうこうしていると拡声器から声が響く。
「この銀行は、私達!!カクカクヘルメット団が占拠した!!命が惜しけりゃ、さっさと金を出しな!!!!!」
どうやら暴徒のようだが、余りにも杜撰すぎる。ここはヴァルキューレの支所がほど近い。
ましてや入口が爆発すれば、通行人が通報するだろう。どう考えても直ぐに捕まる。
中でも同じことを考えた人がいるのか、拡声器からこう続ける。
「はッ!そんなモン百も承知さ!私達の仲間が遠くで騒ぎを起こしているからな‼」
「ヴァルキューレの犬どもがもたもたしているうちに、トンズラかくって寸法さ!!」
なるほど、一応だが作戦らしい作戦はあったらしく先生に確認するとどうやら本当らしく、電話口でも駆けつけるのが遅れるとの事らしい。
だが、そうなると不味い。警察が到着が遅れるのであれば犯人の目論見通りに事が進み、未だ人通りが多いこの道で逃走の際に怪我人が出ない保証はない。
どうにかならないかと考えても、現状戦力としては耐久力が未知数で銃を握ったのも今日が初日な私と、指揮力は高いが銃弾一発が命取りになる先生である。到底犯人に太刀打ち出来ない処か、自分たちの身すら危うい状況である。
どうやってこの場から離れるかを考えていると先生は銀行へと向かおうとする。
「先生⁉危ないですよ!!ここは警察を待った方が…」
『アロナのお陰で少しなら大丈夫。』
『それに生徒を指導するのも先生の役目だからね。』
「先生……」
とても真剣な目でこちらを見ている。恐らく私がこのまま身を潜めていても、独りで行ってしまうだろう。
先生にとっては銀行の中に居るかもしれない生徒も強盗を働いている彼女達も護るべき子供なのだろう。
きっとキヴォトス中の生徒の誰が助けを求めても、等しくその求めに応じるだろう。
「…待ってください、私も行きます。」
「先生が死んだら、明日から住所不定の浮浪者ですからね。」
努めて笑顔を作るのを意識しながら、自分を鼓舞する。
『…そうだね、頼り強いよ。』
▷『こはね、ありがとう。』
先生は少し驚いた様子を見せたが、直ぐに微笑んで礼を言う。
計画があるようでシッテムの箱を見せてきて、説明を始める。
『見取り図を確認したら、この銀行には裏口があるんだ。』
『監視カメラで見ると、見張りは1人。』
『そこから侵入して、アロナがシステムをハッキングして電源を落とす。』
『この強盗の犯人は見張りの子を含めて4人居る。』
『暗闇に乗じて、制圧…が問題だったんだけど。』
『こはねが居るならもっと成功率が上がるね。』
さっきの今でここまでの計画をたて、私がいなきゃ自分の命を懸ける作戦だった事を暴露しているのは、
やっぱり先生は少し、いやかなりズレているが、きっとキヴォトスでは必要なのだろう。
どこから見取り図を手に入れたのだろうか。とか、今ハッキングと言わなかっただろうかという点は気にしない。
先生は生徒の為ならこういう大人の手段を取るところを厭わない。この教師としての先生との立ち振る舞いと大人としての二面性がきっと先生の大人としての決意の表れなのだろう。
そしてその手助けが出来るのは、少し嬉しい。今までお世話になってばかりの自分が役割を持てるというのは、心が躍る。なし崩し的に先生の下で生活しているが、きっと先生の傍なら後悔のない選択が出来る気がする。
そんな私の高揚を感じ取ったのか、再度確認をしてくる。
▷『まず何よりもこはね自身の安全を第一にする事。』
『あと、これを。』
そういって赤い小物を手渡した。
「これは…お守りですか?」
▷『うん、気休めかもしれないけど。』
『ないよりは良いかなってね。』
いつの間に買ったのか交通安全と書かれたお守りは、布製の手触りが伝わってくる。
ご利益が間違っていないか?と思いながらもポケットに仕舞い込む。
「ありがとうございます、これで戦車が出てきてもへっちゃらですね!」
……出てこないと願いたい。先生も考え至ったのか、曖昧に笑っている。
念の為、周囲のカメラを確認しても居ないらしい。出かねないのがここキヴォトスの恐ろしさである。
少々出鼻をくじいてしまったが、気を取り直す。
「じゃあ、始めますか…強盗制圧作戦!!」
『おー!!』
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「……オッせぇなぁ、金をバッグに詰めるのにどんだけ時間かかってんだ?」
「そもそもサツは来ねえのに見張り要るのかよ…かったりぃな。」
ヘルメットを被った少女はどう見ても気だるげな様子で、扉の前に銃を構えながら佇んでいた。
強盗中であるというのに緊張感の欠片も感じさせず、周囲への警戒はあまりにも杜撰であった。
そもそも警戒を出来るような性格であるのならば、こういた軽率な犯罪を行うことはないだろうが。
物音一つしない裏通りにいきなり鳴り響く落下音に彼女の興味が向くのは必然である。
カラン、カラン……
落ちた物体を拾う為に屈みこみ、彼女は物体を注視した。
「うん?紅茶の缶か?カラスか何かかなぁ……「ごめんなさい!!」「ぐへぇ⁉」
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紅茶を拾う為に屈みこんだ彼女がそのまま立ち上がる事は無く、そのまま裏路地で伸びてしまっている。
どうやらキヴォトスの生徒でも刀の鞘で思いっきり首を叩くと気絶するようだ。
「…死んじゃってないですよね?」
▷『多分大丈夫だろうけど……。』
『リンの話だと、骨折とかでも治るの早いみたいだよ。』
「それなら良いんですけど。」
お互いにキヴォトスに染まっていた事を自覚しながら、行動を続ける。
念の為に彼女の身体を端に寄せてから、内部に侵入する。
入口から入ると従業員用のトイレや物置が見える。それらを通過すると、だんだんと話し声が聞こえてくる。
先生と机に身を潜めながら、耳を澄ませる。
「早くしろって、言ってんだろうが!!」「すいません、焦って手元が…」
気の毒な程震えている従業員らしきロボットは、頭部に銃を突きつけられている。
強盗犯はヘルメットで表情は見えないが、明らかに苛立っており今にも発砲しそうである。
「いい加減にしろってんだよ!!わざと時間稼ぎしてんだろ!!」「ひぃ!」
苛立ちがピークに達したのか引き金を引く寸前で最早猶予はないだろう。
先生も同様に感じたらしく視線で合図をしてきたので、こちらも準備をする。
先生が端末を操作し、実行の文字に触れた。
次の瞬間には、室内の照明が消えて犯人達の動揺の声が上がる。
「くそ!どうなってんだ!!早くあk「ゴスっ!!!!!」「ぺぎゃ!!?」
「おいどうした!誰かいんのか⁉侵入者かよ!!「メゴッ!!!!!」「あがば!!!⁇」
なんだか人体からなってはいけない音が鳴った気がするが、非常事態のため無視だ。無視。
そもそも強盗なんてしているのだから、それぐらいは覚悟してほしいものだ。
二人気絶させたタイミングで、もう一人がライトを着けてこちらの姿が丸見えになってしまった。
「ふざけやがって!正義の味方気取りがよぉ!!」
銃口はこちらを向いており、不味いと思ったその時には弾丸は発射され―――
あまりにも一瞬の事で理解が追い付かない。私も強盗犯も人質も固まって、戦闘中に換気扇の音が聞こえる。
無意識の内に行った反射的な行動に呆然としていると、その奇妙な静寂を破ったのは強盗だった。
「ば、バケモンかよ…」
動揺した彼女は、次の銃弾を放つことは無く呆然としている。
『――こはね!ライトを!!』
続いて正気に戻った私は、咄嗟に銃を抜いてライトを撃つ。奇跡的に命中したそれは強盗犯を再び暗闇へと誘う。
「く、くそが!寄るんじゃねぇ!!」
気づいた時には、明かりを失った彼女が放つ明後日の方向への銃弾は私を捉える事は無く、無事接近を果たす。
鞘から抜いたことを咄嗟に思い出せた私は、峰打ちで最後の強盗犯の意識を刈り取った。
「ボキッッ!!!」「―――――ッッ!!!⁇!!」
「あっ…」
その声は誰のものだったか。私か、はたまた人質のものだったか。
痙攣し、口から泡を吹いて床に倒れ伏す彼女を見ながら鞘に納刀する。
今鳴った音は聞こえない、聞こえないことにして私達の強盗制圧作戦は無事に終わった。
非常事態につき、しょうがない。必要な犠牲だったのだと謝罪と言い訳を心の中にしまいこんだ。
締まらない最後だったが、その後無事に人質を解放し、到着したヴァルキューレの生徒に捕縛した犯人達をを引き渡した。犯人を連行する警察官の生徒たちは、犯人の首の惨状を見ながら憐憫の表情を浮かべていた。現場に残って事情聴取を行った生徒に先生からの説明を終えると、どうやら自己防衛で問題が無く、寧ろ感謝される運びとなり安堵した。
「成程。貴方がかのシャーレの…失礼いたしました。改めて犯人の逮捕のご協力感謝いたします!」
『私は何もしてないよ。』
▷『こはねが身体を張ってくれたから。』
「小一孁さんもこの度は本当にありがとうございました!何かございましたら今後もご協力をお願いします!」
彼女はきっちりとした姿勢で深々と頭を下げた。礼儀正しい彼女に少しむず痒さを感じる。
「そんな頭を上げてください!こんなの市民の義務ですし、そもそも最初は…」
私がうじうじしていると現場検証を終えたらしい鑑識さんから書類を渡されている。
一通り目を通した彼女は、こちらに向き直って話を続ける。
「失礼しました!今日はこの位で大丈夫です。後日何かありましたら追って連絡します。」
そういって彼女は電話番号を書かれた紙を差し出した。
「それでは、本日はご協力ありがとうございました!」
一糸乱れぬ敬礼を受けながら、私達は荷物を取りに銀行を後にした。
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路地の裏手に置いていた荷物の下へと、足早で向かった。
大きなレジ袋を覗き込むと幸い荷物は問題なく、再び帰路についた。
アドレナリンが切れたのか、ドッと疲れを感じる。隣を見るとどうやらも先生も疲れたのかレジ袋を握る手を頻繫に握りなおしている。気持ち早くなる足も疲労を訴えており、駅までが遠く感じる。
「色々ありましたね…。」
▷『大変な一日だったね。』
『すごく濃い一日になったね。』
今日だけで、カフェに電気屋、銃火器店やショッピングモールで、極めつけには銀行強盗だ。
日記を書くなら内容には困らないだろうなと思う。
キヴォトスにきて初めての戦闘となったが、無事(?)白星を挙げる事が出来た。
強盗犯の彼女たちも救急隊の方によると程度にもよるが、一月そこらで完治するようだ。
改めて凄まじい生命力だ。各学園の自治体には更に化物じみた回復力を有する人もいるらしい。
「流石にちょっと疲れましたね。帰ったら何か甘いものが食べたいです。」
『それならソラのところでアイスでも買おうか。』
「買った紅茶も淹れちゃいますか…!」
そんな何でもない会話をしながら、駅への道路をゆっくりと進んでいく。
すっかり陽は傾いて、ビル街をオレンジ色に染めていた。
歩道を行きかう会社員たちは足早に帰路につき、影が少しずつ伸びていく。
車道を走る車に反射する夕日に目を細めて、私はこの後の予定へ思いを馳せていた。
評価バーに色が着いたので失踪します。