KV_another_Archive   作:器具類プロジェクト

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展開が牛歩なので初投稿です。
カスの進捗なので、申し訳ない。


〇五 セミナー/道連

 

「会計の方…ですか?」

『うん、今度シャーレに来る予定だよ。』

『ツーサイドアップの子なんだけど覚えてる?』

 

書類仕事に一区切りをつけて、机で昼食を摂っていると先生が訪問予定を告げる。

私達のキヴォトスでの生活が始まった日にシャーレの入り口で見かけた生徒の一人が、銃弾の請求書を持ってきてくるのだと言う。当然と言えば当然だが、ここでは銃弾も予算の中に堂々と含まれており、額も中々なものだ。シャーレ奪還までに生じた諸経費はシャーレが支払うとの事で、まだ経理が出来る人員は疎か簿記に関する知識を持った人間が居ないのが現状のシャーレであり、書式が存在するはずもない。それも含めて相談に来てくれるらしく、情報の共有をしておこうとの事だった。

 

 

ミレニアムサイエンススクールとは、科学技術に力を入れている学校らしく最近では三大学園の一つに数えられる程の影響力を持つ最新の学園らしい。その中でもセミナーは生徒会に位置する組織らしく、そこの会計というのは学園中の決算や出納管理を一手に担っている為学園内においても重要なポストにあるようだ。

 

…何というか本当にキヴォトスにおいては学校の権限が大きくないだろうか。

今時創作物の中でも生徒会がここまで権力を有しているのは珍しいだろう。

実際に企業の運営と同様の仕事量なのだろうが、それでも些か負担と責任が過剰に感じる。

到底私と歳が1、2も変わらない人達が、そこまでの責務を負っているのはキヴォトス特有の価値観であり、学園都市たる所以なのだろう。

 

 等とその創作物も記憶にない私が考えても無意味なのだろうが。

 

そんな風に明後日に方向に思考を飛ばし、先生が二つ目のコッペパンの包装を剥いたと同時にノック音が鳴る。

きちっとした挨拶がした後に件の人物が訪れた。

 

「こんにちは、先生。この間お話した請求書のひな型を持ってきました。お手すきの際に、あら?」

私に気づいたらしい彼女はその先の言葉を中断して、先生に説明を求める。

「この間シャーレの入り口に居た方ですよね?先生こちらの方は…?」

 

▷『彼女はこはね。』

『シャーレに住み込みで私の手伝いをしてくれているんだ。』

「こんにちは、小一孁こはねです。シャーレでお世話になってます。よろしくお願いします。」

 

パンを置き、座位だが礼をすると、彼女も改めて挨拶を返してくれた。

「一応初めましてになりますね。私はミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカです。」

丁寧に挨拶をした彼女は本来の目的に立ち返り、本筋に戻る。

「お食事中にお邪魔してしまいすいませんでした。」

『ううん、気にしなくて大丈夫。』

「では、お二人がお食事の間、机を片付けてますね。」

 

そういって机に向かおうとした早瀬さんは、少しの逡巡の後に指摘をした。

 

「ところで……先生、もしかしてお昼って、そのコッペパンひとつだけなのですか?」

「僭越ですが……もう少し栄養のある食べ物を召し上がった方が良いと思いますよ?」

「そうやってパンだけですと、体調を崩してしまうかもしれませんし。食事一つとっても生徒の規範になり得るんですから。」

 

そう、そうなのだ。先生の今日の昼食はコッペパン一本のみなのだ。私もパン二つにチョコと褒められたものでは無いが、先生は成人男性に必要なカロリーも摂れていないだろう。私の昼食はシャーレでの給金――連邦生徒会からのご厚意で日当で支払って貰った。―――から捻出したものだが、先生は私のお金なのだからと申し出を断って、パンのみ食べている。

 

「……はい?通帳の残高がほとんどなくて、月末まで食費にお金を割けない……?」

「シャーレの先生が、そんなに薄給のお仕事だったなんて知りませんでした……意外ですね。」

 

そんな事は無い。決して高給取りではないし、危険と釣り合っていないが先生は人並の給料をもらっている。ならば何故か。

 

会話をしながらも作業を進めたいた彼女は、机に乗っていた一枚の領収書に気づき、内容を読み上げる。

 

「あれ、この領収書は……キヴォトスの中央にある有名なおもちゃ屋さんの?」

「購入日が先週、購入した物は……限定版・変身ロボット、10万円?!」

 

値段を聞いた私は先週と同じ視線を送る。気まずそうに顔を背ける先生は何時もより小さく感じる。

カフェで珈琲しか飲まずにマスターを困惑させた事を許した訳ではなく、視線を送り続ける。

 

「先生っ!この領収書はいったい何ですか!?このお金があれば、優に一ヶ月分の食費になるじゃないですか!」

「おもちゃのために食事を抜くだなんて、言語道断ですよ!」

 

そうだ。もっと言ってやって欲しい。先生の給料なのだから何に使おうと先生の自由だ。趣味のことであれば尚更

に。だがそれは人として最低限度の生活を保つ最低限度を保障した前提で成り立つものである。

ここで先生も流石に不味いのかと思ったのか反論に出た。

 

▷『ただのおもちゃじゃないよ!生活必需品だもの!』

『このロボットが買えたんだから、食事ぐらい何てことない!』

 

呆れながら少し強めにチョップをする。悶絶しているが、早瀬さんはうんうんと頷いている。早瀬さんとは仲良くなれそうだ。

 

「ダメです!消費は計画的にしないといけません!」

「このままでは良くないですね……先生の支出記録、私がこの目で直接確認します!家計簿はどこですか?」

 

こちらに視線向ける早瀬さんに横に首を振る。未だに蹲っている先生は、家計簿はないんだ、とだけ言い残し呻き続ける。

 

「……はい?先生、家計簿をつけてないんですか?」

「だからこういう衝動的な消費をしてしまうんじゃないですか!」

 

考える素振りを見せた早瀬さんはしゃがんで先生に提案した。

 

「……先生、私も手伝いますから、先月の領収書を全部集めてください。」

「今から領収書を整理して、先生の消費をチェックします!」

 

そう宣言した彼女の元、先生と私は必死にレシートをかき集めた。

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

その後も早瀬さんに怒られた先生は約束を取り付けられしょぼんとしていた。

こういった所は素直に悪癖だと思うので、これを機に食事代ぐらいは残して欲しいものだ。

すっかり冷めてしまった珈琲を飲みながら一息つくと話題は私のものになった。

 

「記憶喪失ですか…。」

 

▷『うん、そうなんだ。』

『何か知っている事はない?』

 

「そうですね……制服も見た事ないですし、鉄道会社も聞いたことがありませんね。」

「連邦生徒会も流石に制服や名簿の照会は行うでしょうし……お力に成れずにすいません。」

 

深々と謝罪をする彼女を慌てて止める。

 

「顔を上げてください、早瀬さん!元々は記憶喪失になった私?が悪いんですから!」

 

だんだんと自分でも何を喋っているのか分からなくなったが、彼女はそれを見て微笑み姿勢を戻してくれた。

少し照れくさくなったが、空気を察してくれたのか彼女はそういえば、と前置き疑問を尋ねた。

 

「その刀は小一孁さんが目覚めた時に一緒に持っていた物なんですよね?」

「はい、キヴォトスだとあんまりメジャーじゃないんですよね……?」

 

少し見せて欲しいという彼女に、手渡すと繫々と観察を始めた。

 

『何か気になる事がある?』

 

「……あまり詳しい訳では無いんですが、監査の時や部活の視察で鉄鋼に触れる機会も多いのですけど、これ。ただの日本刀じゃないかもしれません。」

 

『材料が特殊って事?』

早瀬さんは鞘に納刀した刀を返しながらも続ける。

 

「詳しい事は機材がありませんから何とも言えませんが、調査の価値はあるかもしれません。」

「うちの部活動にそういう事に詳しい生徒が居るので、もしかしたら何か分かるかも。」

 

『こはね、一歩前進したね。』

▷『心強い助っ人だ。』

「本当にありがとうございます!!」

 

思わず椅子から立ち上がり頭を下げるのを、早瀬さんが止めるという先程と反対の状況になる。

だが、ここまで進展が無かったのだ。この希望は一筋の光明が差し込んだようであった。

今すぐに帰りたいという訳では無いが、記憶は取り戻しておきたい。

かつての自分にも生活があり、家族も居ただろう。もしかしたら家族も探しているかもしれないのだ。

進展が得られたのは望外の奇跡といえる。

 

「こういうのはお互い様ですから。ミレニアムサイエンススクールの科学力を存分に振るわせてもらます。」

「私個人としても知人が困っているのを見捨てるのは心苦しいですからね。」

 

何度も御礼をして、その後も会話をしていると時間になり早瀬さんを見送る運びとなった。

 

「それでは先生。本日はここらへんで失礼しますが、くれぐれも無駄遣いは控えて下さいね。」

「小一孁さんも、今度は是非ミレニアムサイエンススクールに遊びに来てくださいね。」

 

▷『今日は何から何までありがとうね。』

『また来てね、ユウカ。』

 

「是非!次の機会はこちらから訪問させて貰いますね!」

 

電車のドアが閉まり、警笛の音がホームに響いた。白線の外側から少しずつ小さくなる車窓を見送った。

学園都市での良き出会いに感謝しながら、私達は階段を登った。

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「あれ、先生と例の記憶喪失の子じゃん。」

 

リンさんからの連絡を受けて、連邦生徒会を訪れた私と先生はピンク髪の少女に声を掛けれらた。

 

「私の事ご存知なんですか?」

「あーとね、先生が来た日の夕方には業務連絡があってね。記憶喪失の学籍を持たない生徒が、サンクトゥムタワー内にて発見されてシャーレの先生の保護下にあるってね。それで情報共有があったんだけど、初めましてだよね?」

 

その後、もうすっかり慣れた自己紹介を終えて、再びの質疑に戻る。

 

「で何かようかな?取り敢えず今のところ緊急の任務はないと思ったんだけど?」

 

首を傾げて、先生の担当する業務を端末で確認しているようだ。

 

『リンに呼ばれたんだ。』

▷『何処にいるのか知ってたら教えて貰える?』

 

「リン先輩に?あ~本当は案内したいところなんだけど、今忙しくてね~」

 

そう言いながら明太子チップスと書かれた袋から数枚チップスを手に取り口に運んでいると、

近くを通りかかった髪を後ろに纏めた生徒が衝撃の真実を告げる。

 

「嘘つかないでくださいよ、由良木交通室長。今休憩するって部屋出たばっかじゃないですか。」

「えッ⁉」

 

私が唖然としていると、当の本人はあちゃ~といったように髪を掻きながらきまりが悪そうにしている。

「とほほ、まさかの部下に売られる事になるなんてね~」

そういって伸びをすると、諦めたようにポテチをしまい込みんで部下に見送られながら先導を始めた。

 

「先輩なら多分今は部屋で休憩中の筈じゃないかな、こっちだよ」

 

「そういえば、さっき連絡した時アユムがリン先輩の所に向かうって言ってたけど。先生達の案件に関係してるかもね。」

 

▷『アユムも?』

『やっぱり何か分かったのかな。』

 

「さぁ?まあ本人から聞いた方が早いからさ、着いたし直接聞いてみなよ。」

と歩を止めて、他と比べて大きめの扉の前に立ち、こちらに向き直った。

それじゃと休憩に戻ろうとすると思い出したように、書類を取り出して手渡してきた。

 

「リン先輩にこれ渡しておいてよ、頼まれてたんだけど私はこれから忙しいからさ。」

 

休憩で、と枕詞が抜けているが、確かに書類の受け渡しの手間は確かに惜しいだろう。

了承をして、後ろ姿を見送ると改めて扉をノックをした。

数瞬おいて、入室を促す返事があった。

 

「失礼します。」

▷『失礼するね、リン。』

『要件を伺いにきたんだけど。』

 

室内には、大きな机と幾つかとソファーがあり、その上には書類がこれでもかと重ねられており、

マグカップを傾けながら書類を整理している眼鏡を掛けた女性と金髪の穏やかそうな表情を浮かべている女性が書類を抱えながら言葉を交わしている。

 

改めて書類を机においた彼女は立ち上がって会釈をする。

 

「…先生、小一孁さん本日はご足労頂きありがとうございます。」

 

『今日は連絡ありがとうね、リン。』

▷『アユムもお邪魔するよ。』

 

「こ、こちらこそ先生、今日もお疲れ様です。小一孁さんも初めまして、こんにちは。」

「ご丁寧にありがとうございます。連邦生徒会の皆様にはお世話になってます。」

 

お互いに頭を下げあう攻防がひと段落した頃に、リンさんが話を進めた。

 

「本日は小一孁さんの身元についてですが、進展があったのでご連絡させて貰いました。」

『「!」』

「それッ本当ですか⁉」

 

殆ど無いに等しかった自らの以前の記憶の手掛かりを掴んだという、話を聞き、少々興奮してしまった。

私は先生に宥められてソファーに座りなおした。眼鏡の位置を直すとリンさんは再び始める。

 

「小一孁さんの制服についてですが、改めて調べましたが、連邦生徒会のデータには改造制服の可能性も考慮しても一致するものはありませんでした。」

付け加えるように岩櫃さんが、報告を続ける。

「小一孁さんはキヴォトスの何れかの学校に所属していたという履歴がなく、恐らくはキヴォトス外部の方であると推察できます。」

 

「…そうですか。やっぱり私キヴォトスの外から来てたんですね。でもだったら何で……」

 

あの日、あの地下室で眠っていたのだろうか。と疑問を浮かべる。

 

「……小一孁さんが目覚めた、先生がやってきた日から数日間遡って周囲の監視カメラを調べたのですが、小一孁さんや怪しい人影は確認できませんでした。」

飽くまで確認した範囲ですが、と付け加えたリンさん。

「私達も確認したのですが、あの日小一孁さんがこのD.U.付近で目撃されていませんでした。」

 

『いきなり現れたって事?』

 

「はい、突飛な話になりますが。……現状その様に見えることは確かです。」

 

それは奇怪だ。このキヴォトスで幾つかの神秘を目撃してきたが、人がいきなり現れる。

ましては、記憶喪失にするなんてものは聞いたことが無い。

だが、これで記憶を失う前の私が自分の足でここを訪れた可能性がグンッと下がった。

 

『隠し通路とかは?』

「か、考えれらなくは無いですが、会長が行方不明になった際に捜索をおこなった時に発見されなかったので、可能性は極めて低いと考えられます。」

 

中々に話が壮大になってきたが、結局分からないことが分かった事は理解できた。

肩を落としていると、リンさんがこちらを見て何か気づいたようで話題を変えてきた。

 

「……そちらの書類はモモカから渡されたものでしょうか?」

そうだと、書類を手渡すと頭が痛そうに額を抑えて唸る。

……はぁ、全くあの子は。直接提出するように伝えたのに…こほん、失礼しました。こちらがご連絡した進捗があったものです、ご確認ください。」

 

再び手元に戻ってきた書類を確認すると、大分古い書類のコピーなのだろう。

色が褪せて字も古いものが散見され、判別が難しい物ある。だが大きく「ハイランダー鉄道学園」の文字があり、事業書には那由他鉄道との共同路線についてと記されていた。

 

「……これって!」

「はい、小一孁さんの持っていた定期券の那由他鉄道の情報を調べた所、随分と古いデータでしたが、こちらの事業書をモモカが発見してくれました。先方には確認を取りましたが、責任者が既にいらっしゃらないようで交渉が難航しています。」

「この間の事もあって連邦生徒会の影響力が低下しており、昔の業務計画書を精査する事の必要性を疑問視しているようで……。」

 

申し訳なさそうに俯いている岩櫃さん、本来なら連邦生徒会長の捜索を進めたり、滞っていた業務を進めたい筈なのに見ず知らずの自分の為に時間を割いて、心を痛めていることからも彼女の人徳が伺い知れる。

 

「それでも…。」

 

『この共同路線の場所が分かれば…。』

▷『こはねのお家が見つかるかも…!』

 

先生も同様の意見だったようで目を見合わせる。自分の事のように笑顔を浮かべている先生に苦笑してしまう。

大きく事態が発展し、再び定期券と書類のハイランダー鉄道学園を交互に見やる。

私の自分を探す旅の指針が見えてきたようで、何だか心が逸った。

 

―――――――――――――

その後も、先生との業務の打ち合わせをしている彼女たちの話を理解出来ないながらも耳を傾けていると

時計を確認したリンさんは、この会議の終了を告げてきた。

 

「先生、本日はこの辺りで。残りの任務依頼はについては追って連絡します。」

「本日はお二人ともありがとうございました。」

 

再び立ち上がると、また綺麗な会釈をして眼鏡を直した。

退室しようとする私達に柔らかな笑顔の岩櫃さんが、声を掛けてきた。

 

「これっ……私のモモトークです。宜しければ交換しませんか?」

微力ながらお力になれるかもしれませんから。と付け加えて、QRコードを表示している。

もちろん私は快諾し、新たなトーク画面が表示された。

 

「……これからよろしくお願いします、アユムさん!」

 

また私の旅路に道連が増えたのを実感して、部屋を後にした。

 

 




更新がズレたので失踪します。
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