KV_another_Archive 作:器具類プロジェクト
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無事に殿を打倒してカタカタヘルメット団が態勢を立て直す前に追撃をしかけて
完全撤退をさせる事が出来たアビドス高校の面々と私は校舎へと帰投していた。
「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど。」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……
勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……。」
冗談なのだろうが、起きかけていた事態が事態なだけに私も苦笑いする事しか出来なかったが、奥空さんのツッコミによって改めて何とか暴徒を退ける事が出来て良かったと安堵する。
「先生の指揮が良かったね。私たちだけの時とは全然違った。」
「これが大人の力……
すごい量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人ってすごい。」
もちろん、こはねもすごかった。と気にしていなかったが
シロコがこちらも褒めてきて悪い気はしなかった。
それはそうと資源と装備に関しては単独でこんな風に持ち運べるのは、シッテムの箱を持っている先生ぐらいだろうし、戦闘指揮に関しても、アロナによるハッキングで敵の位置を割り出すの兎も角、状況判断に関しては素人目に見ても、先生は一般的な大人とは比べるもないだろう。
シロコの中での大人に対するハードルがグングンと上がる音を幻聴すると、
ホシノ委員長――小鳥遊委員長がシロコにすすっと近づき、ワザとらしく話始める。
「今まで寂しかったんだね。シロコちゃん。
パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ。」
赤子をあやすような口調で寸劇のように語る小鳥遊委員長。
高校生で高校生の娘……うん、やめよう。凄くインモラルな話題である。
呆れ半分、困惑半分といった表情の黒見さんが、同じ思考に至ったのかは分からないが
ツッコミながら止めに入っていく。
「いやいや、変な冗談はやめて!先生困っちゃうじゃん!
それに委員長はその辺でしょっちゅう寝てるでしょ!」
「そうそう可哀そうですよ。」
朗らか笑いながら、十六夜さんも止めに入る。
私と同じような表情をした奥空さんが、先生へ立ち上がって向き直る。
「あはは……少し遅れちゃいましたけど、あらためてご挨拶します、お二方。」
「私たちは、アビドス対策委員会です。」
「私は、委員会で書記とオペレーターを担当している1年のアヤネ……。」
「こちらは同じく1年のセリカ、」
「どうも」
彼女は頭だけで礼をしてきながら、一言相槌を打った。
先程までの激情家の一面は鳴りを潜め、礼儀正しい普通の女子高生がそこに居た。
「2年のノノミ先輩とシロコ先輩。」
「よろしくお願いします、先生~。」
「さっき、道端で最初に会ったのが、私。」
「……あ、別にマウントを取ってるわけじゃない。」
間をおいて訂正する彼女を見ながら、そういった発言をするという事は
シロコは負けん気が強く、一番という事に執着があるのでは。
邪推だが、クールに見える彼女の内面推理としてはあながち間違いではないかもしれない。
「そして、こちらは委員長の、」
「3年のホシノ先輩です。」
「いやぁ~よろしく、先生ー。」
欠伸を噛みころしながら、気の抜けた返事をする彼女は戦場での彼女とまるで別人だ。
はたしてどちらが素の彼女なのだろうか。案外どちらも本当の姿なのかもしれない。
「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……
そのため「シャーレ」に支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、
その危機を乗り越えることができました。」
「先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られてしまったかも
しれませんし、感謝してもしきれません……。」
『゛対策委員会とは何かを聞く。″』
そもそも対策委員会とは何なのか。
アビドス素人の私達はこの会議に参加するための前提条件を満たしていない。
聞かぬは一生の恥とばかりに堂々と先生は挙手をしながら質問をしている。
「そうですよね、ご説明いたします。対策委員会とは……このアビドスを蘇らせるために
有志が集った部活です。」
「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!
全校生徒といっても、私たち5人だけなんですけどね。」
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った。」
「学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくって
カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの。」
「現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい。在校生としては恥ずかしい限りだけど……。」
本当にアビドスが好きなのだろう。シロコや他の対策委員会の皆からも確かなこのアビドスへの愛を感じる。
そもそもこんな状況に陥っても、自治区を見放す事も絶望に打ちひしがれる事もなく
自分達に出来る最善を探し続ける彼女達は、まさにアビドスを守る為に立ち上がった有志というに相応しい。
「もし「シャーレ」からの支援がなかったら……今度こそ、万事休すってところでしたね。」
「だねー。補給品も底をついてたし、さすがに覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生。」
「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」
「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど。」
「あー、確かに。しつこいもんね、あいつら。」
「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか……。
ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに……。」
希望が見えたといえ、終わりの見えない問題に追われ続けて、流石に気が滅入るのだろう。
この状況が何時までも続くのではないだろうか、そんな不安が伝わるようだった。
そんな中で思いもよらない方向から声が上がった。
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー。」
「え!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ……!?」
「皆さん、流石にそれは驚きすぎでは……」
「ん、こはねも後数日も一緒に居れば分かる。」
「俄かには信じられなくなるわよ……。」
余りにもあんまりな言い分におよよと泣く真似をしながら小鳥遊委員長は話を続ける。
「いやぁ~その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。
おじさんだって、たまにはちゃんとやるのさー。」
「……で、どんな計画?」
黒見さんが、露骨に訝しみながら続きを促す。
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。
ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー。」
「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。今こそ奴らが一番消耗しているだろうからさー。」
「い、今ですか?」
性急ではないかと驚く、奥空さんの疑問が挟まる。
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし。」
「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30Kmくらいだし、今から出発しようか。」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし。」
「確かに……。このままジリ貧を続くよりは。」
実際問題、全然ありなように思える。
相手の補給能力は未知だが、少なくとも今のアビドスよりは持久力があるのだろう。
先生が居る事で、補給線を伸ばさずに強襲を好きなだけ掛ける事が出来る。
「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」
少しこちらの様子を窺うような視線を向けてきた奥空さんに対して先生へと手を向けて
決定権をたらいまわしにした。そういった戦略的な事はからきしな上に
優柔不断で何の権利も持たない、私には荷が重い。
『゛同意する。″』
「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー。」
「善は急げ、ってことだね。」
「はい~それでは、しゅっぱーつ!」
まるでピクニックにでも行くかのように私達による
カタカタヘルメット団の前哨基地への襲撃作戦が開始した。
今週短めなので、二本目上げるかもしれないので失踪します。