主ゆかなので苦手な方は注意してください。
※pixiv様でも掲載しています。
とても長い時間が過ぎたけど、あっという間だった気がする。
3年生が卒業して、もう一年が経とうとしている。
一年前の明日、約束の日。
その日に僕は一度死んだ。
――――――
覚悟は出来ていた。
でも、いざ目を閉じるとニュクスを前にした時以上の恐怖と未練に包まれた。
人間、死ぬときは聴覚が一番最後まで残っているというのは、実際に経験した僕がこの身をもって証明しよう。
みんなの足音が聞こえた。
僕を呼ぶ声が聞こえた。
それでも、必死に目を開けようとしても、口を開こうとしてもできなかった。
最後に聞こえたのは最愛の人の声。
「いつまで寝たふりしてるの結城君?」
この声を最後に、僕には無が訪れた。
これは後に聞いた話だけど、桐条先輩がすぐに救急搬送を頼んでくれたおかげもあってか、その日のうちに奇跡的に僕の心臓は再びこの世に生を刻み始めたらしい。
それでもなかなか意識は戻らず、君のことはずいぶん泣かせてしまったみたいだね。
そんな僕にもようやく目覚めの時が来たのが大体1か月後、僕の右手に温かさを感じたんだ。
桐条先輩の計らいで個室のなかなか良い病室を使わせてもらっていた僕の病床に君がいた。
あの時、あんなに重かった瞼がなんの違和感もなく開いた。
「おはよう、ゆかり」
僕がそう言うと君は信じられないようなものを見るような目で僕を見て、突然泣き出したよね。
「おはようじゃないよ、バカ理。……ほんとに、君は」
久しぶりに触れた君の髪はこの世のものとは思えないくらい奇麗だった。
まるで、死後の世界があるのかと錯覚してしまったほどさ。
そのあとは、またあの時みたいな足音が聞こえて。
あの時とは違ってもう夜だって言うのに。でもそこでようやく、僕はまだ生きていたんだって実感が持てた。
――――――
リハビリには大して時間がかからなかった。
シャドウとの戦いで体中鍛え上げられていたのかな?
学校には2週間遅れで復帰できた。
「一緒の登校も久しぶりだね」
「……そうだね」
「ここら辺ってうちの生徒は私たちの寮生くらいしか通らないよね?」
「……そうだね」
「……今日は順平達も先に行ってるよね?」
「……そうだね」
「ねえ、わからないふりしてるでしょ?」
そう言って君は、ムッとした表情を浮かべる。
それがたまらなく愛おしくて、もっとたくさんの表情を見せてほしいと思った。
「なんのこと?」
「もういいでーす。イジワルする君とは手をつないであげない」
「ごめん、ごめん」
そう言って手を差し出す。
僕の手を見つめて、でもなかなかつないでくれない君。
こうなった君とは我慢勝負だ。
僕はまっすぐ君の瞳を見つめる。
「あー、もう。その目には弱いんだよ」
今回は君が折れる方が先だったね。
――――――
日常の幸せを噛み締めながら、去年とは比べ物にならないくらい穏やかで、でも充実した時間を過ごした。
やっぱり、時間が経つのは早くてついに卒業式が目の前までやって来た。
「ねえ、理」
「なに?」
「明日、卒業式終わったらさ……」
「うん」
「……私の部屋に……来てほしい」
「それはいいけど、改めて誘うこと?」
お互いの部屋の行き来なんて、今更断りを入れてするほどのことじゃない。
今日の朝だって、ゆかりの部屋で起きたわけだし。
「……絶対だから、式終わったらすぐ来て」
「よくわからないけど、わかったよ」
「よし!じゃあ、高校生活最後の登校をしようか」
「そうだね」
――去年の美鶴の突然の演説放棄から、数名の生徒が式中に脱走するという事件のせいか今年は厳重な警備が張られていた。――
「何かあったの?」
「あー、去年ね……」
複雑そうな表情をしている彼女を横目に僕たちは高校生活最後の登校をした。
式自体は特に変わったことはなかったと思う。
証書授与で名前を呼ばれた時に順平が寝ていて、返事が遅れてたのはきっと彼のいつも通りだろう。
教室に戻ってから、何人かのクラスメイトと少し話しているとゆかりの姿がないことに気が付いた。
そう言えば、すぐに来てって言われてたっけ……。
ちょうど談笑も終わり、クラスメイト達は各々写真を撮ったりしていた。
「じゃあ」
さっきまで話していたクラスメイト数人に声をかけ、僕は足早に学校を去ることにした。
「結城先輩!」
下駄箱から靴を取り出していると後ろから呼び止められる。
何度か話した覚えがある後輩の女子生徒だった。
「……あの、先輩っ!私……」
決意を固めたような表情の後輩。
少し離れた所には影から彼女を見守っているのであろうほかの二人の女子生徒が見えた。
「私、去年から時々話しかけてくれる先輩がずっと……好きでした!」
意外なほどに心は揺れなかった。
卒業式の告白シーンなんて、順平達に見られたら数年は呪われそうだ。
「ありがとう。でもごめん」
「……そうですよね。でも聞いてもらえて嬉しかったです」
そう言うと彼女は涙ぐみながらも笑顔を作って言った。
「先輩、卒業おめでとうございます」
流れる涙に切なさを必死にこらえる意志の強さを感じさせられて、魅力的に見えたことは心の中にしまっておこう。
「ありがとう、じゃあ」
女の子の泣き顔はあまり見てはいけないとゆかりに言われたことを思い出し、長居は無用だと立ち去ろうとする。
「先輩に彼女がいることは何となく気付いてました。でもこれで高校生活最後の思い出は私ですね」
去り際にそんな言葉を投げかけられた。
こんなところ、ゆかりに見られたら気まずい……。
「ほんとに君はモテるよねえ」
学校の玄関を出て、すぐのところに彼女が居た。
「いや、まあ、その……」
「先に帰ろうと思ったけど、思い直して待っててみればこれだよ」
「……」
「……すぐに来てって言ったのに」
あきれた態度をとっていたのに、少し悔しそうなゆかりがいじらしい。
「……ちょっと妬いてる?」
「……当たり前でしょ?逆に妬かないと思った?」
「……ごめん」
「……」
「……」
二人の間に気まずい沈黙が流れる。
……。
「……い、一緒に住んでくれたら許す」
衝撃的な言葉と共に沈黙を破ったのはゆかりだった。
「だ、だって大学は一緒でも寮からは出るわけだし、お互い一人暮らしにするよりは一緒に住んで家賃とか諸々折半した方がいいと思うし……」
僕は黙って続きを促す。
「……あーもう!もっと、ずっと一緒に居たいの!」
ああ、僕が告白した時もこんな顔をしていたっけ……。
「ありがとう、ゆかり。僕も一緒に居たい」
そう言うと嬉しそうな表情をした後に少しむくれる。
「理はいつも、そういうことを簡単に言うよね……」
「ゆかりに嘘は吐きたくないからね」
「そういうところだよ!」
こうやっていろいろな表情を見せてくれるゆかりに信頼されていると改めて感じる。
「そういえば、この後はゆかりの部屋に行くんだっけ?何か用事があったんだよね?」
「うーん、それはもういいや」
「え?」
「予想外の状況だったけど言えちゃったし、高校生活最後の思い出も無事取り返したし!」
「言えちゃったって同棲の話?」
「ど、同棲って……まあそうだけど」
同棲という言葉の響きに照れているのか、また少し頬が赤くなっている。
「家とかもう調べてたりするの?」
「美鶴先輩が紹介してくれるって。ほら、私たち大学生になると言ってもまだ自分たちだけじゃ家の契約とかできないし」
「それもそうか。でもそうすると美鶴先輩には同棲してるってバレちゃうね」
僕がそう言うとまたゆかりは顔を赤くする。
「っ~~そうじゃん!どうしよ、言うことばっかに気が向いてて全然考えてなかった」
「まあ、もうこの際だし変に隠さず発表しちゃう?どうせ離れるつもりはないし」
………………。
「ゆかり?」
「……ほんとに理は」
そう呟いて深く息をつくとこう言った。
「もう離さないから、浮気は絶対許さないよ?」
珍しく素直で直球な独占欲に、今度は僕が顔を赤くする番だった。
初めまして、嵐山田と申します。
この度、ペルソナ3の推しカプである主人公(結城理)×岳羽ゆかりの二次創作小説を書いてみました。
原作崩壊している点もあるかもしれませんが楽しんでいただければ幸いです。