まだ全然ストーリー進めてないけど書きたくなったので書きました。
 許してください。
 つべのコメ欄に同じもの書きました。

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先生の独白

 

 空崎ヒナは今日、シャーレ部の執務当番の為にシャーレオフィスまで足を運んでいた。

 今日も朗らかに笑みを浮かべる先生に淡い想いを抱きつつ、それとして仕事はそつなく熟していた。だが当の先生は何処か居心地悪く視線がたびたび泳いでおり、あまり集中出来ていない様子でもあった。

 先生は突然立ち上がり、いくつか纏めてあったファイルを抱えて出かける準備をしついた。

「そういえば、連邦生徒会に提出しなきゃいけない書類があったんだった。すぐに出してくるから少しシャーレを任せたよ、ヒナ」

「わかったわ。気をつけてね先生」

 

 そそくさと部屋を後にする先生の後ろ姿がなんだか小さく見えて、ヒナは一抹の寂しさを感じた。

 目を伏せ寂しさを飲み込み、先生が帰ってくるまで少しでも書類を片付けておこうと彼のデスクに積まれていた紙束を動かしていると、何やら少し大きめの手帳を見つけた。

 

 数多の生徒達を相手にする先生の事だ。些細な事でもメモを残していたり生徒との思い出を記していても不思議ではない。

 それを抜きにしてもデスクワークが主の人間ならばメモ帳の1つや2つは当たり前に持っていても不思議ではない。

 

 悪いと思いつつ、その中身が気になったヒナは後に後悔する。

 

「これは、日記……いや、手記かしら」

 

 書かれていたのは彼の独白であった。

 

 

 

 

 慣れてしまったいたわけじゃない。むしろ理解したというべきだ。銃が当たり前の世界を。

 

 ここキヴォトスに置いて銃とは当たり前の存在であり、その威力は外の世界と何ら変わらない代物である。それはリン達の話でもユウカ達から聞いていた話でも知っていた。けどそんなものは想像での事だ。

 

 先日、エデン条約の騒乱で撃たれ、その力を思い知った。たった1発。彼女達にとってはなんてことは無いただの1発。だが私にとっては命を奪うに値するたった数cm程度の金属片。それを受けて、私はあの場で死にかけた。私が弱いから。みんなが頑丈だから。誰が悪い訳じゃない。生きる世界が違うだけの話。

 今になって怖くなった。

 

 私の命を容易く断てる弾が日常的に飛び交うこの都市が。そんなものを当たり前に扱う彼女達が。遠い存在に思えてきた。実際そうなのだからしょうがない。私は外の人間で、彼女達はこの世界の人間だ。文字通り住む世界が違う。たったそれだけなのだから。

 

 あの日以降、私は銃を見るのが怖くなった。

 

 だがその程度でこれまでの責務を投げ捨てるわけには行かない。

 今更知っただけの事だと言い聞かせ、なるべく彼女達の持つそれを見ないように心掛けながら今日も私は笑顔を浮かべる。事件や騒動があれば駆けつける。そして指揮を取り、その場を収め、あの子達のケアをしてまたシャーレへ戻る。ただそれだけだ。

 

 しかしその我慢もいよいよ限界なのかもしれない。

 最近恐怖で足が竦む事が増えた。朝、生きている事実を知っただけで涙が流れるようになった。そして床に着くとき、明日生きて起きれる保証が無いことに不安を抱いて眠れない日が増えた。

 私はもう消耗しきっていた。もう楽になりたい。だが一度死ぬ恐怖を知ってしまった私にはもうどうすることもできない。

 

 嫌だ

 

 嫌だ死にたくない。

 

 死にたくない。

 

 死にたくない。

 

 

 

 進むほど、文字は震え、濡れた跡が目立つページ。

 最後に至ってはもはや行間など関係なく書き殴られたような粗さになっている。

 

 急いで手帳を閉じ、彼の机に戻したヒナは、ふと壁に立て掛けていた自分の愛銃に目を向ける。

 自分の力が流れていないそれは光を灯さず、ただの鉄色をして窓から差す陽光を浴びて黒光りしたいた。

 自分の身長程もあるMGを見つめ、ヒナはあの日の出来事を思い出していた。

 

 あの日、トリニティが襲撃された日、先生は何者かによって負傷した。その後なんとか一命を取り留め現在に至るまで回復していた先生だけど、やっぱり何処かで傷を負っていたようだ。それも仕方の無い事。否、そうなって当たり前なのだ。

 

 先生の体が銃弾に耐えられない事など周知の事実であり、最優先で守るべきはずの先生だった。それなのに私は守れなかった。そのせいで先生はあの時、死にかけた。

 

 今でも夢に見るあの一連の騒動。

 

 先生はもう大丈夫だと笑いかけてくれていたが、それでも恐怖はそう簡単には無くならない。

 やるせなさでただ立ち尽くしていたら、シャーレの扉が開かれた。

 

「ただいま」

「……先生」

 

 軽くなった鞄を抱えて戻ってきた先生はいつもと変わらない笑顔でそこに居た。しかしさっき見つけてしまった先生の独白とも取れるあの手帳を見てしまったヒナは、いても立ってもいられず、先生にぐっと詰め寄る。

 

「私、先生を守るわ」

「ひ、ヒナ?」

「もう二度と先生に危険が及ばないようにする」

 

 立て掛けてあった愛銃を手に取る。途端にデストロイヤーは目覚めるように紫の光を灯し、活動状態になる。

 

 それを先生に見せると、一瞬彼の顔は引き攣ったように震え、しかしそれも一瞬でいつもの平静を保つ。それでもやはり恐ろしいのだろう。彼の視線はじっと銃の方へと向けられていて、いつでも逃げ出したいのだと言う本音が見え隠れしていた。

 

「私は、あの日先生を守れなかった。だけどもし、先生が私をもう一度信じてくれるのなら、今度こそ私は先生を守る。如何なる脅威も近付けさせはしない。このデストロイヤーに誓って先生を守るわ」

 

 自身の身の丈もある巨大な愛銃を差し出すヒナに、先生は硬直した。

 触れろと言うその意思を汲み取り、彼は重たい足取りでヒナに歩み寄り、差し出された機銃に触れる。機械であるはずのそれはまるで生きているかのような光を見せ、触れると冷たいが確かな力強さを感じた。

 

「もしも先生がどうしようもなく困った時は私を呼んで。シャーレ部の当番としてじゃない。ゲヘナ風紀委員長でもない。空崎ヒナ個人として、先生を助けるわ」

 

「わかった……もしもそんな事があれば、ヒナを頼るよ」

「えぇ、任せて。先生」

 

 ヒナはふふ、と不敵に笑う。

 そんな二人だけのシャーレオフィスには微かだが確か二人の笑い声が響いていた。





 

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