田舎に帰省した女の子が久しぶりに会った友達から、一方的な依存と愛をぶつけられる話

人外幼女攻め、女の子受け

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女の子が神社に住む人外幼女に囚われて一方的な愛をぶつけられる話?

「やっと着いた~!」

「ほんと、遠すぎて困るよここは」

「久しぶりね~、3年ぶりくらいかしら?」

 

 暑過ぎて倒れてしまうんじゃないかと思うほどウザったい日差し、東京ではあまり聞かなかったこの季節特有の蝉が鳴く音。

 私はおばあちゃんの家に帰ってきた。

 

「ほら、寂しがってたし早く顔を出してくると良いよ」

「私達より先に奏の姿を見た方が喜びそうだもんね」

「うん、じゃあ先にいくね~!」

 

 

 

 —

 

 

 

 玄関で靴を適当に履き捨てて、急ぎ足でお婆ちゃんがいる居間に向かい、そして勢いよく戸を開けた。

 

 まだこっちに気づいてない。

 かなり大きな音を立てて部屋に入ったつもりだったんだけど……まあ、いいか。

 歳だし、耳が遠くなってしまったんだろう。

 

 私は気づかないおばあちゃんを横に部屋を見渡すことにした。

 

 懐かしい光景。

 おばあちゃんは昔と変わらず古びたこたつテーブルの下で寝転がって、つまらなさそうにテレビを見ている。

 

 変わらない。

 

 家具の配置やお婆ちゃんの姿、そして外の景色も、

 何も変わっていない。

 

 ここだけ時が止まっているかのように錯覚してしまうほど――――――

 

「遅いわボケ! 死ぬまで儂に会いに来ないんかと思ったぞ!!」

 

 ?!

 

「ご、ごめんごめん、お婆ちゃんは元気そうだね」

 

 少しぼ~っとし過ぎていたみたいだ。

 

 いきなり話しかけられてビックリした。

 最初の一声から怒鳴りを入れてくるのはやめて欲しい。

 

「当たり前じゃ、バカ孫が成人するまで死にきれんわい」

「あはは……」

 

 もう90歳を越えているというのに、この様子なら100歳まで元気なままかもしれない。

 

「おい、父親共はどこにいる?」

「ちょっと遠い場所に車を停めに行ってるだけだからね、すぐ来るよ……それよりそこに置いてあるスイカを食べて良い?」

「あぁ、お前が食わんかったら誰も食べん」

 

 本当、口の悪さも相変わらずだ。

 

 でも、こうやって私の好きなスイカを切って置いてくれてるところに面倒見の良さを感じる。

 昔は分からなかったけど、今思えば凄く有り難いものだ。

 

 そしてスイカを食べながら、私は黙っておばあちゃんのたまりにたまった愚痴を聞いていた。

 少しするとお父さん達が戸を開けて入ってきて――

 

「3年も待たせるバカがどこにおるんじゃあ!」

 

 帰省が遅いことにイライラしていたお婆ちゃんが、居間に足を踏み入れてすぐのお父さんを殴り飛ばし、それから3年の空白を埋める談話が始まった。

 

 

 

 —

 

 

 

 話がひと段落する頃には15時、

 丁度良い時間だ。

 

 居間にはおばあちゃんと私の二人きり。

 お父さんとお母さんは私達が寝る予定の部屋を掃除していてここにはいない。

 

「あの馬鹿どもは――」

 

 おばあちゃんは基本的に私が黙ったままでも永遠に喋り続けてしまう。

 どうにかして会話を切り上げないと、いつの間にか数時間経っていたなんてこともザラにある。

 

 会話の隙が出来るのを見計らって――

 

「暑さもマシになってきたし、ちょっと友達に会いに行ってこようかな~……なんて」

 

 ふぅ……なんとか言葉をねじ込めた。

 タイミングをミスると怒られるんだよね。

 

 私が夏休みを利用してこのど田舎に戻ってきたのには理由がある。

 

 一つ目の理由は勿論おばあちゃん、

 そしてもう一つは、長いこと待たせてしまった昔の友達に会うこと。

 

「…………お前はこの村にいる間、東京へ帰るまで家から出るな」

 

 友達が相手とはいえ、すぐ帰るからとか適当に流して、3年も経ってるから怒って……

 

 ?

 

「え? いまなんて言ったの」

「聞こえておったろ? 言った通りだ。これはお前のことを心配して言っている」

 

 聞き間違いじゃないらしい。

 

 家から出るなとはどういう事だろうか。

 いや、それ以前に帰省してずっと家にいるなど論外だ。

 話にならない。

 

「嫌だよ、折角帰ってきたのに……何を心配してるのか分かんないけど、私は友達に会いに行こうとしてるだけだよ?」

「土地が喜び、森は(ざわ)つき、動物達が狂い始めた。何故だか分かるか?」

 

 あーあ、また始まった。

 

 おばあちゃんは歳でボケているのか、たまにこういう変な事を言い出すのだ。

 ちょっと怖いからマジでやめて欲しい。

 

「い、いきなり何……分かんないけど、今の話とは関係無いんじゃないかな」

「全部お前が帰ってきてからの事だ。立ち入り禁止と書かれた森に近づくのはもうよせ」

「え、バレてたんだ」

 

 少し驚きだけど……まぁ、今の今まで何も言って来なかったんだから、さほど気にする事でも無いように思える。

 

「はいはい、じゃあ夕食までには帰ってくるね~」

 

 そういって部屋を後にしようとすると……

 

「お、お前は人の話を聞いとらんかったんか馬鹿孫娘がぁ!」

 

 おばあちゃんが私の腰に両手を巻き付けて、動きを止めさせられてしまった。

 歩けない……

 

 流石に引き摺ってでも行くという訳に行かないので離して欲しいけど。

  

「ち、ちょっと何すんの、動けないじゃん」

「だから動くなと言うとろう!」

 

 ここまで焦ってるお婆ちゃんを見るのは初めてだ。何をそこまで怖がってるのか、私には全く理解出来ない。

 

 うーん、

 まあ別にそこまで急ぐことでもないし、また今度にしよう。

 

「……分かったよ。家から出ないから離して」

「そうか、分かってくれたか。今日の夕食はカレーだ。他にも奏が好きなおかずを作るからな」

 

 私が言うことを聞いたことに安心したのか、お婆ちゃんはすぐに話題を切り替えてきた。

 

 …………はぁ。

 

 帰ってすぐに会いに行けるって期待に胸を膨らませていたから、ちょっと……いや、かなり不服だ。

 

 でも私が不機嫌になるのを察知して、すぐに食べ物で釣ろうとしてくるおばあちゃんの姿を見ると、別に良いかとも思えてくる。

 

「それじゃあ儂はメシの支度をし――」

 

 そう言って立ち上がろうとした瞬間、外から飛んできた何かが高速で部屋の障子を突き破り、壁に突き刺さった。

 

「え、ちょっ、だ、大丈夫!?」

 

 私の心配をよそに、おばあちゃんはすぐさま壁の方に歩き出し、突き刺さった飛来物を引っこ抜いて確認し始めた。

 

 頬を擦れ擦れで飛んできたから、当たったんじゃないかと思ったけど、別に大丈夫そうだ。

 

「その飛んできた物はなんだったの?」

「…………これは……矢文じゃ」

 

 矢文。

 弓矢を用いて遠くから放ち、文書を送るというもの。

 

 おばあちゃんはその手紙を読み終えると、さっきまであんなに元気な表情だったのが、嘘のように真っ青だ。

 

 ……もの凄く書かれている内容を知りたいけど、私に関係無いことで下手に首を突っ込んでも怒られるだけだろうし……

 ここは我慢。

 

「えーっと……おばあちゃんって随分とスタイリッシュ?な友達がいるんだね」

 

 少し……じゃないか。

 だいぶ周りを包む空気が悪く感じたので、私からそう話を切り出した。

 

 それにしても、昔の人だからって矢文を使うというのはどうなんだろう、法律について詳しく知らないけど捕まったりしないのかな。

 

「……儂に矢文なんかをかましてくる友人はおらん、馬鹿なのは3年経っても直らんらしいな」

「あ、そうなんだ。じゃあ内容は何だったの?」

「…………それは言えん」

 

 やっぱり教えてもらえない。

 矢文が飛んでくるなんて経験はこれから先、生きてても無いだろうし、内容を知りたかったな。

 

「奏、お前は友達へ会いに行きたいと言っておったな。行ってきても……いいぞ」

 

 あれ?

 一体全体どういう風の吹き回しだろうか、

 あんなに駄目の一点張りだったのに。

 

「え、行ってきて良いの? 別に遠慮とかせずに私行っちゃうよ?」

「あぁ……お前のバカさ加減を見てると、きっとどうにかなってくれるんじゃないかと思えてきた」

 

 ?

 どうにかなるとは何の事だろうか。

 ほんと、おばあちゃんは相変わらず訳の分からないことばっかりだ。

 

 まあいいや。

 

 私はすぐに外へ出る準備をして、そして外履きを履いてる最中に、何故かお婆ちゃんが見送りに来た。

 

「それじゃあ、行ってくるね~」

「生きて帰ってくるんじゃぞ......」

「はいはーい」

 

 私はそれだけ言い残し、そして玄関の扉を開けた。

 

 それにしても随分と尖った行ってらっしゃいだった。

 おばあちゃんが見ている最近の時代劇には、そんな変な挨拶があるのかな?

 

 

 

 ---

 

 

 

 周りを見渡せば田んぼ、もしくは畑ばかり。

 麦わら帽子を被ったおじさんやおばさんが、その中でせっせと作業をしている。

 

 有難いことだ。

 ここに住んでいた頃は、たまに野菜持って帰らされたのも良い思い出である。

 

 それにしても暑い。

 暑過ぎる。

 

 この時間でも家から出ればすぐに灼熱地獄で、少し歩くだけですぐに汗だくになってしまう。

 水筒を持参しておいて良かった。

 

 

 —

 

 

 そして30分ほど歩いて、立ち入り禁止という看板が立てられた看板を見つけた。

 

 久しぶりにここまで来たけど、かなり疲れた。

 流石にここで座りたくはないので、膝に手をついて休憩だ。

 足元には小さい花が咲いている。

 

 昔はもうちょっと楽に来れた気がするけど……これが運動不足ということかな。

 

 目的地はもう少し先。

 がんば――

 

 ――ビィィィィイイイ……――

 

 突然、すぐ近くから動物の鳴き声が聞こえてきた。

 

 鳴き声にすぐ反応してパッと顔を上げると……

 目の前にいたのは――鹿だった。

 

「なんだ鹿か~、焦ったぁ……」

 

 なんて言葉が安堵と共に口から溢れてしまったけど、

 不注意にもほどがあったな、私。

 

 音も聞いてなければ前も見ない。

 これで視線の先にいたのが熊だったら死んでいる可能性だってあった。

 

 もう少し危機感を持て私。

 

「…………」

「…………」

 

 お互いを見つめ合う謎の時間。

 人間同士ならいざ知らず、相手は動物。

 

 何なのだろうかこの鹿。

 

 しばらくすると鹿は首を一度傾げて、また同じように鳴き声を発し、森の方へと歩き出した。

 

「あぁ……なるほど、ついて来いって言ってるんだ……」

 

 別に動物の言葉が分かるわけじゃないけど、なんとなくそう言ってる気がする。

 というか、なんか昔もこんな経験があった覚えが……う~ん、思い出せない。

 

 そうして記憶を掘り出していたら、鹿の姿が遠くなっていて……

 

「あ、鹿さん! ちょっと待ってえ~!!」

 

 置いて行かれないように、私は走ってついて行った。

 

 

 —

 

 

 鹿から離れないように、くっ付いて行動している。

 どうやら私の目指している行き先と同じようだ。

 

 森の中だからだろうか。

 さっきまでの蒸し暑さを感じない。

 

 空を見上げると、大量の雲が空を覆い隠していた。

 

 これは……なんとなく分かる。

 雨が降る。

 

 私は歩きながらバッグの中を漁り、折りたたみ傘を探した。

 だけど見つからない。

 

 わざわざ準備をしてきたのに、傘だけ持ってくるのを忘れたのだ。

 

 このまま雨が降り出すと困ってしまう。

 神社は間近だけど一度家に帰るしかないだろうか。

 

 あの子を相手に数分だけ挨拶して帰るなんてしたら、逆に機嫌が悪くなりそうだし……ここは一度帰ろう。

 

「ごめ~ん鹿さん! 私、一度家に帰るn――」

 

 不意に背中から温もりを感じた。

 指で触れられる感触。

 

「なんで帰ろうとしてるの?」

 

 懐かしい声。

 懐かしい着物姿。

 懐かしい匂い。

 

 後ろへ振り向くと、私の友達が昔と変わらない姿で立っていた。

 

「ひ、久しぶり……つむぎちゃん」

「久しぶり、大嘘つきさん。それで来て早々、なんで帰ろうとしてるの?」

 

 やっぱり怒ってた。

 名前で呼んでくれない。

 

「えっと傘を忘れちゃって、このままだと帰る時に濡れちゃうから……」

「3年も私を待たせて、そんな理由で帰らせるわけない」

「はい、ごめんなさい」

「…………」

 

 何を考えているのか、分かりづらい顔。

 つむぎちゃんはいつも無表情だった子だけど、私には分かる。

 これは不機嫌も不機嫌、超不機嫌だ。

 

 まあ、あっちに引っ越すのを言わなかった私が全部悪いんだけど。

 

 それにしても3年もすれば、昔の友達なんて忘れてるんじゃないかと思ってたけど、しっかりと待ち続けていたらしい。

 長い時間ずっと私のことを考えていてくれてたと思えば、これほど嬉しいことはない。

 

 鹿の次は友達との無言の間。

 それも凄く居心地の悪い方のやつが始まってしまった。

 

 久しぶりの再会をこんな空気にするつもりはなかったんだけど……どうやって立て直そうかなぁ。

 

「…………また、私のところに来てくれて嬉しかった。嫌われたのかと思ってたから」

 

 悩んでいると、あっちから話を切り出してくれた。

 

「ううん、嫌いなんかじゃないよ! その……何も言わず遠くの街に行ったのは親の都合と、お別れの挨拶をすると泣いちゃうと思ったからで……」

「……そう、分かった。じゃあ、この話は終わりにして私と遊ぼう?」

 

 

 

 それからは神社の周りでたくさん遊んだ。

 途中からは私のことを案内してくれた鹿や野良猫、リスなども混じっていた気がする。

 

 忘れてたけどつむぎちゃんは、動物と心を通わせれるっていう特技があるんだった。

 別に鹿や猫に日本語で話しかけてるわけじゃないからあんまり目立たなくて、すっかり記憶から消えていた。

 

 さて、

 天気も悪いし良い時間でもあるから、そろそろ帰りたいけど。

 

「ねぇ、帰っても……」

「ダメ」

「でも、もう日が沈んじゃうし、お腹空いてきちゃったし……」

 

 あんまり遅くなり過ぎると、お父さん達が心配するだろうし、

 なんなら帰った後、お婆ちゃんに叩き伏せられるかもしれない。

 

「お腹が空いたなら私が作る」

 

 作る?!

 

 つむぎちゃんって料理出来たんだ。

 食べてみたいかも……

 

 じゃ、ないんだよね。

 何を考えているんだ私。

 手料理はもちろん気になるけど、帰らなければいけない。

 

 う~ん、考えるんだ。

 

 私の年齢は15歳。

 もうほとんど大人である。

 

 1日くらい何も言わず、友達の家に泊まっても大丈夫なはずだ。

 

 そうだ、問題ない。

 

「それならお言葉に甘えさせて貰おうかな」

 

 

 

 —

 

 

 

 神社から少し歩いた先にある、木に囲まれたかなり古く見える古民家。

 つむぎちゃんはそこで家族と一緒に住んでいるらしい。

 

 一度家に入れて欲しいとお願いしたことがあるけど、即拒否。

 まあ、私のお婆ちゃんの家も基本的に家族しか入れない事になってるし、そこは仕方ないと納得出来た。

 

 今日はそのお家にお邪魔出来る。

 

 つむぎちゃんは家の前に立つと、さっと玄関の戸を開けて、挨拶も無しに入って行った。

 

「早く入って」

「う、うん。お、お邪魔します」

 

 勝手な偏見だけど、家族以外の出入りを禁止する家庭って、お婆ちゃんみたいな気難しい人が仕切ってるイメージがあるから、ちょっと怖い。

 緊張する。

 

 なんて考えていたけど、一通り家の中を見せて貰った感じ、他に人は居ないようだ。

 というか家の中は綺麗だけど……なんというか、人の温かさを感じない。

 なんだこれ?

 

「えっと……つむぎちゃん、家族の方は?」

「お父さんとお母さん、両方とも仕事中で数日は帰ってこない。だから今日は泊まって行って良い」

「そ、そうなんだ」

 

 し、仕事なら家に1人だけだったとしても仕方ないのかな?

 よく分かんないけど、家庭の事情は人それぞれだし……

 

「奏はここで待ってて、夕飯を作ってくるから」

 

 テレビや机が置かれている、この家の居間であろう場所で待つように言われた。

 

 なんか普通に置かれてるけど、この森の中でテレビ番組とか見れるのかな、

 いや、見れるから置いてあるのか。

 

 それにしても、手料理を食べれるっていうのは凄く嬉しいけど、友達1人に作らせるというのは罪悪感が残る。

 それに慣れていないせいかもしれないけど……この家、ちょっと不気味に感じるし、つむぎちゃんについて行った方が安心かな。

 

「つむぎちゃん、私も手伝うよ」

「そう、分かった。ならついてきて」

 

 

 

 —

 

 

 

 外は豪雨と一緒に雷まで降り出している。

 この状況だと今日は帰れないのが確定しているようなものなので、私は心置きなく2人でせっせと夕飯を作ることに励んだ。

 内容はまあ、普通に和風料理って感じなのかな?

 

 そして今は作ったご飯を食べながら会話する時間だ。

 

「つむぎちゃんって料理出来たんだね。凄く美味しいよ」

「別に私一人で作ったわけじゃないから、その言い方はなんか癪」

「えぇ……」

 

 天邪鬼な返しがきた。

 でも、まあ……喜んでるのが隠しきれていない。

 指摘すると本当に嫌そうな顔をされるけど。

 

 それにしても自分が料理をする事が出来る人間で良かった。

 幼い頃に厳しく教えてくれたお婆ちゃんには感謝しかない。でも、ご飯を食べる時に正座を強要されるのは本当に最悪だった……

 

「ねえ、手紙は読んだ? 」

「え、手紙?」

 

 私宛に手紙なんて届いた覚えもないし、家族から聞いた覚えもない。

 手紙で思い当たるのは、ここに来る直前に飛んできた変な矢文だけ。

 

「ごめん、読んでないっていうか、多分届いてない……かな? 」

「……そう」

「その手紙にはなんて書いてたの?」

 

 手紙の内容を届いてない状態で、本人から先に聞くというのは、なんか違うかな?

 あんまりその手の常識の話について学んでないから、聞いて良いのか分からない。

 まあ、聞くんだけど。

 

「別に……『早く私に会いにきて(今日、奏が来なかった場合、村人全員を殺す)』って書いただけ、奏が読んでないなら別に良い」

「あ、そうなんだ。えっと……会いに来るのが遅くなってごめんなさい」

 

 改めて口にされると本当に申し訳なくなる。

 

 一カ月後には、また会えなくなるのに、どうやって話を切り出せば良いんだろ?

 困ったな……

 

「……」

 

 ?

 何故かこっちを見つめている。

 でも話しかけてこない。

 

「どうかした?」

 

 もしかして考えてることがバレた?

 ……なんて、流石にないか。

 

「…………」

 

 つむぎちゃんは口を閉ざしたまま立ち上がり、スタスタと足音を立てながらこっちに近づいてきた。

 手を伸ばせば触れられる距離まで……

 

 私は手に持っていた(はし)を下ろして、正座のままつむぎちゃんの方へ体を向けた。

 

 状況は全く理解出来ない。

 でも、ご飯を食べてて良い空気じゃなくなったのは確かだ。

 

「その、えっと……?」

「……少し静かにして」

「……」

 

 その言葉を言い終わると同時に、背中へ腕を回され、抱き締められた。

 とても力強い抱擁。

 

 あっちから抱きしめてきたのは初めてで、少しだけ驚いた。

 でも、驚いたのは本当に少しの間。

 一瞬だけだ。

 

 私はそれ以上に……つむぎちゃんの体の小ささに驚いている。

 

 何故今になって気づいたのだろうか。

 つむぎちゃんは初めて出会った時から、体が成長していない。

 

 かなり変だ。

 

 ううん、

 おかしいのはこれだけじゃない。

 

 動物との正確な意思疎通に、人の生気を感じさせないこの家。

 もしかしたらあの矢文も……

 

 多分、見落としてる――いや、見ようとしてなかっただけで、きっと他にも沢山あるかもしれない。

 

 心に絡まっていた紐が解け始めた。

 そんな気がする。

 

「この村を出て賢くなったんだね」

 

 少し寂しそうな顔で、私の心を見透かしたように言った。

 

「え?」

「今まで起きた出来事に違和感覚えたんでしょ? 」

「わ、私はなんとも思ってないよ? 都会の方に行けばそういう子もいるだろうし……」

「ふ~ん……別に良いけど」

 

 ――バリバリバリッ!――

 

 突然、近くで鳴った轟音と共に部屋の明かりが消えた。

 

 私が音のした方向を見ると同時に、

 自分の体が一瞬、宙に浮く感覚がして、

 気づけば押し倒されていた。

 

「奏はまた、しばらくすればその東京って場所に行っちゃうんでしょ」

「そう……だね」

 

 上から覆い被さる形で押さえつけられてしまった。

 小さな体に反してとても人とは思えない力強さだ。

 ピクりとも動けない。

 

「知ってる? 知的生命体は、一度上げてしまった生活水準を下げることは出来ないの。人はもちろん化物や神様まで」

「……」

 

 化物や神様?

 

 いや、それ以前にこの話。

 今の状況に関係ないと思うけど……

 

「分からない? 私は奏のいない生活に耐えられないって言ってるの」

 

 そういうことか。

 でも……

 

「そんなこと言われても――」

「奏の意思も周りの環境も全部関係ない。もう決めた事だから」

 

 明かりが無い薄暗い部屋、顔が暗くてよく見えない。

 

 う~ん。

 ……今までの会話をなんとなく整理した感じ、ただただ私のことが大好きなのでは? という結論に至ってしまう。

 そう思うと、たとえ人間じゃない何かだとしても、どうにかなる気がしてきた。

 

 腕の拘束が解かれた、

 見えずとも分かる、吐息が交じり合うほどの距離感

 一体何をされるのだろうか。

 

 つむぎちゃんは倒れている私の首にそっと唇をよせ、柔らかく押し当てた。

 

「……つむぎちゃん?」

 

 返答はない。

 

 

 唇で首筋をそっと撫でたかと思うと、歯を立てた。

 甘噛み。

 優しく首の肌を吸い、かすかに歯を立てては離す。その繰り返し。

 

 傷がつかない程度に優しく……どうしようもなく私を求めているというのが伝わってくる。

 

 …………おかしいな、

 普通はこんな事をされたら嫌な気分になると思うんだけど、全くそんな感情が湧いてこない。

 

 むしろ求められている事に、喜びや愛しさすら湧き始めた。

 そんな気さえする。

 

 なんか好き勝手されてるし、こっちも何か仕返しをしたくなってきた。

 

 私は自由になった腕で、行為に(ふけ)っているつむぎちゃんの体を抱き締め、優しく背中をさすった。

 

 すると甘噛みがピタりと止んでしまった。

 

「……私の気持ち……伝わった?」

「言葉で聞きたいかも」

「それは無理」

 

 無理かぁ、

 無理なら仕方ない。

 

「ちなみになんで首にしたのか聞いても良い?」

 

 あの距離なら唇にキスされるかと思ったけど、その斜め上を行かれてしまった。

 途中、少しだけ怖かったけど、すごく愛されてるみたいだし……まぁ、別に良いかな?

 この子に好いてもらえることには、嫌悪感もないし。

 

「……首にするキスは相手への執着や支配したい欲求を表すって大昔に聞いた、だから奏は……私のもの、私の言いなりになるべき」

「随分と大きなホラを吹くんだね。大嘘つきちゃんだ」

「……」

 

 絶対、唇にキスをするのが恥ずかしくて途中でやめただけだ。

 だけど、今思えばそういうところも可愛げがあって面白い。

 

「さっきも言ったけど、奏の意思や周りの環境も全部関係ない、死ぬまで一生この山から出さないから」

 

 あれ?

 これ本当にどうにかできる……?


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