リアルで色々とあったので、めぐり合わせが悪かったのかも知れません。
ガルチェア大陸、中央ガルチェア
ネフィリア帝国帝都
『何という損害だ…。』
『陸海空合わせて30万、いや、40万近くの将兵が失われたというのか…。』
『被害はそれだけに留まらない、砦や城塞も半数以上が瓦礫と化している。軍艦もほぼ全滅だ。』
『ここから更に賠償を支払わなければならないというのか…。』
ネフィリア帝国は敗れた。
ガルチェア大陸有数の大国にして列強最強のネフィリア帝国の敗戦という報は、衝撃とともに大陸中を駆け回った。
東ガルチェアの国々と死闘の末に相打ちならばまだ分かる、だが、ネフィリア帝国はまともに損害を与える事も出来ずに惨敗したのであった。
しかも、東ガルチェアの中で直接ネフィリア帝国と交戦した国は実質1国だけだったのである。
そう、大陸外の群島国家、たった1国である。
『最東端の国、ニパン国。』
『水平線の彼方から裁きの大槍を投げて城塞を粉々に砕いたという。』
『空飛ぶ大剣で竜騎士団をズタズタに引き裂いたという。』
『どれもこれも荒唐無稽な話ばかりだ。』
『だが、間違いなくニパン国が帝国を倒したんだぞ?』
『ネフィリア帝国に潜んでいた我が国の密偵が危うくニパンの攻撃に巻き込まれる所だったそうだが、鉄の羽虫が帝都上空を飛び回っていたそうだ。』
『少なくとも得体のしれない怪物を使役しているのは間違いなさそうだな。』
東ガルチェア沿岸部に突如出現した島国ニパン国。
それが、中央ガルチェアの国々に衝撃とともに刻まれた名である。
かつて双璧をなしたギガンティア覇獣国を下したネフィリア帝国は、長らくガルチェア大陸最強の名を轟かせていた。
それを陸海空全てを完封し、ネフィリア帝国帝都を土足で踏みにじる暴挙に出た国は後にも先にもニパン国だけだろう。
ネフィリア帝国敗北の報を聞きつけた中央ガルチェアの幾つかの国々は既にネフィリア帝国の植民地に密偵を放つ動きを見せているが、それを止める兵力は、もはやネフィリア帝国には存在しない。
精強で知られる魔導艦隊と魔獣騎士団は既に失われてしまったのである。
敗戦したネフィリア帝国は当然が如く、此度の侵略戦争を引き起こした責任と損害賠償を東ガルチェアの国々から要求されており、彼等が進軍した通り道の国々は実際に瓦礫の山と化し亡国に成り果てているのである。戦争責任は重大であった。
しかし戦争末期、ニパン国が帝都に進軍している最中に皇帝はミサイル攻撃の恐怖により末期癌が悪化、高ストレスが原因の多臓器不全により崩御してしまったのである。
元々皇位継承が予定されていた皇太子が正式に皇位継承をし、新皇帝となり、父親の敗戦責任を引き継ぐ事になった。
ただ、幸いにもニパン国は比較的民間施設に損害を与えていなかったので賠償を支払う余力は残されていた。
しかし、多くの男手と船と魔獣を失っているのである、それらは暴力装置であると同時に労力でもあり輸送力でもあったのだ。国力の低下は否めなかった。
東西ガルチェア戦争で受けた爪痕は大きく、ネフィリア帝国軍が侵攻した通り道の国々はイナゴに食い尽くされた畑の如く滅ぼされ亡国と化し、王族の血筋を持つ分家が大陸中央部の中小国に散っているのみである。再建は絶望的であった。
また、進軍中に自衛隊の砲撃や爆撃に晒されたネフィリア帝国軍だったもの達は戦地で今なお埋葬されておらず、遺体は飛び散った肉片の状態で遺体と呼べるものですらなくなっていた。
今はただ静かに腐敗していき土に帰るのを待つのみである。
『もうネフィリア帝国に従う必要は無くなったんだ!!』
『我々は自由だ!ネフィリアの奴らを追い出せ!』
『ニパン同盟万歳!ニパン帝国万歳!!』
『ネフィリアの兵を探せ、俺達の国から叩き出してやる!!』
軍事力を大きく削がれたネフィリア帝国は見る影もないほどに弱体化し、その隙をつかれて周辺諸国に離反工作を仕掛けられ、植民地の独立を許したり奪われたりした。
かつてのギガンティア覇獣国と同じく敗者は、甚振られ、啄まれるのである。
・・・・・ネフィリア帝国が今まで中央ガルチェアで行ってきたように。
ガルチェア大陸、東ガルチェア
『聞いたか!?あのネフィリア帝国がニポン国に敗れたらしいぞ!?』
『嘘だろ?中央ガルチェアを制したあの巨大国家が!?』
『いや、本当だ。既にピクシアやレプラニアからもネフィリア帝国軍を撃退した報が届いている。』
『はぁ!?都市国家と商業連合に過ぎない小国だぞ?何をどうやったらネフィリア帝国軍を撃退できるんだ?』
『既にニポン国の攻撃で壊滅してて、その残党がそっちに流れ着いたんだ。』
『ほう、つまりは死にぞこないと言う事か。』
『とは言っても地竜や走竜も僅かに生き残っていたみたいだぞ?』
『そうか、結構な被害が出たんじゃないか?』
『ところが、ニポン国が防壁に手を加えていたみたいで、地竜の突進は跳ね返すわ、走竜を射殺すわネフィリア帝国軍を寄せ付けなかったみたいだ。あぁ、犠牲も出なかったみたいだな。』
『到底信じられない話だが、事実ならば凄まじいな。』
東西ガルチェア戦争が与えた衝撃は中央だけでなく東ガルチェアにも広がっていた。
フォモルーン山脈に隔てられていたとは言え、距離的にネフィリア帝国に近かった国々は、西からの圧力を気にする必要がなくなり安堵した。
しかもネフィリア帝国を倒した国は集団安全保障の提言国であり盟主とも言える国、いわば味方陣営である。
既に残党とは言え、魔獣騎士団の襲撃を跳ね返すだけの設備強化がされており、鉄筋コンクリートによる防壁の補強だけでも恩恵は大きかった。
しかも、これから集団安全保障を結んだ繋がりで東ガルチェアの国々と本格的な交流が始まるであろう事が予測される。
日本主導の集団安全保障に参加する国々は大きく発展する自国の明るい未来の姿を青写真に浮かべていた。
特に、ネフィリア帝国の圧力に怯えて暮らしていた中小国、被差別民であった亜人国家は、大陸の雄であるネフィリア帝国を打倒したという日本国に注目を向ける。
[世にも珍しい二足歩行する獣、もしくは爬虫類]として毛皮や鱗を剥ぎ取られて剥製にされる事も珍しくはなかった彼等は、知性を持つ人類として認める日本国という存在が信じられなかった。
『オキノ海の向こうの島国がネフィリア帝国を倒したらしい。』
『あの覇権国家が?にわかに信じられぬ。』
『なんでも人魚を保護した事でネフィリア帝国に睨まれたらしい。』
『不死の妙薬とやらが目当てか?』
『ネフィリア帝国はな、だが確かニポン国と言ったか、彼の国は人魚を守るために帝国に引かなかったそうだ。』
『亜人を人間が守る?一体何の冗談だ?美談仕立てにするにせよ、もう少しまともに盛るぞ?』
『いや、ニポン国は集団安全保障とか言う同盟を立ち上げて、律儀に参加してる国を守っているそうだぞ?』
『その結果、ネフィリア帝国を撃退か、伊達や酔狂では列強国を倒すなどありえない話か。』
『つまり、ニポン国とやらは本気なのか?』
否、未だに信じきれてはいなかった。だが、現に不死の妙薬とされる血肉を持つ人魚族は、大陸最強の国を倒した日本国に保護されている。
海の民、または人魚族は、明確に一つの人種として認められ、それに異を唱える者は居なくなった。
人間たちから同じ知的生命体として認められていなかった亜人達は、人魚族が認められたのだから我々もと、次々と日本国と交流を結ぼうと詰めかけた。
爬虫類人族、獣人族、ケンタウロス族、甲虫人族など、このガルチェア大陸の何処に潜んでいたのかと思わんばかりに多種多様な種族がコロポニア王国の日本大使館に押し寄せたのである。
その人間離れした姿にコロポニア王国は難色を示したものの、日本大使館では多少驚かれたりはしても明確に差別されたり不当に扱われる事無く、正式に交渉が進んでいった。
東西ガルチェア戦争後、大陸中にその影響力を広めていく日本国の恩恵にあやかろうと、種族を問わず、集団安全保障に参加する国が激増することになった。
「それで、人魚の連中には大陸の奴らが言う様に血肉に不老不死の効果が本当にあるのか?」
「結論から言うと不老不死の効果は無い、唯の迷信だ。」
「……まぁ、そんな所だと思っていたよ。」
「だが、寿命を伸ばしうる性質はあるかもしれないな。」
「どういう事だ?」
「人魚の血肉、つまりは、血液や細胞などにこの星の人類の肉体の損傷を癒す成分が含まれていたんだ。」
「そりゃ凄いな、俺達には効くのか?」
「残念ながらこの世界の人類特有の代謝が関係する反応だから、恐らくは我々には通用しないだろうな。」
「まぁ、妙な疑いを持たれるよりはその方がいいんじゃないか?」
「そうだな、だが水から水素を奪って酸素を合成する成分や、その他珍しい代謝が沢山確認されているから、その特異な体質は研究し甲斐がある種族だと思うぞ?」
「ちゃんと研究に協力してくれる彼等に感謝するんだぞ?」
「当然さ。」
不死の妙薬とされる血肉を持つ人魚族は、その後の科学的な検証の結果、その細胞内に異世界人の肉体の再生を促す成分が含まれている事は確認されたが、不死身化させるほどの薬効を持っていない事が判明し、ネフィリア帝国が仮に彼等を狩っても皇帝の崩御は確定していた。
また、地球人類である日本人にはその効果は未知数であるが、少なくとも有効的な効能は確認できず、根本的に異世界人と地球人とで体の構造が違うのでその特異的な成分の恩恵は得られないと思われる。
不死の妙薬の存在がそもそも出鱈目な迷信に過ぎなかった事や、癒しの成分が日本人に効き目がない事が判明し、コロポニア王国を中心にじわじわと周辺国に知られるようになると、日本国が不死の妙薬目当てに人魚を保護したという偏見は収まりつつあった。
一方、中央ガルチェアはネフィリア帝国が大幅に弱体化した事で情勢が悪化しつつあり、ネフィリア帝国は植民地を喪失したり独立させないように残り僅かとなった兵力を鎮圧に割き忙殺されていた。
また死に体となったネフィリア帝国を啄む目的で帝国の植民地に工作を仕掛ける周辺諸国も、かの帝国を倒した日本国に介入されないか神経をすり減らしていた。
あのネフィリア帝国を一方的に屠る圧倒的な破壊力が自分たちに何時向けられるか気が気でないのだ。千載一遇の機会であると同時に、得体のしれない怪物に睨まれる可能性があるのだ。
日本国としては、西から干渉される心配はなくなったので、東ガルチェアでの地盤固めに戻ることが出来る。中央ガルチェアの歴史的な因縁に関わるなど御免である。
フォモルーン山脈の一角にヘリポートを備えた監視拠点を築いて最低限の監視をしつつもネフィリア帝国との交渉のための臨時大使館を帝都に設置し、海上自衛隊の護衛艦隊は本国に撤収。中央ガルチェアの情勢が落ち着くまで塩漬けにされた。
『父上…。』
棺には崩御した先代皇帝が収められている。
遺体は整えられて薄く死に化粧がされているが、帝都襲撃の際に父のもとに駆けつけた皇太子は、見るも無惨な惨状の吐血と粘液にまみれた最期の姿を知っている。
多少痩せて落ち窪んでいたが、鷲の様な眼力と皇帝たる覇気を備えた男であった。
それが今や、干からびた枯れ木の如くその姿を晒している。
だが、無理はない。父のもとに駆けつける最中に堅牢だったはずの城塞が積み木の様に崩れていき、天から降り注ぐ大槍が炎とともに兵士たちを吹き飛ばしたこの世の終わりの様な光景を見てきたのである。
むしろ、自分自身がよくあの破壊の嵐に巻き込まれなかったのか不思議なくらいである。
先代皇帝の国葬は恙無く行われ、その遺体は埋葬された。
『ニパン国、彼の国があれ程とは誰もが思っていなかった。』
『父上には時間が残されておらず、焦っていたのは分かっているつもりだった。』
『だが、もし皇位継承をもう少し早く行っていれば、彼の国と穏当に国交を結べていれば…。』
『いや、どれも空論だ。私も当初は平定する国が増えた程度の認識だったのだ。』
『結局、何も変わらぬか。』
望まぬ形で皇位継承をした新皇帝は、もっと早くに皇位継承して父を隠居させていれば、穏当に国交を結んで正式に日本の高度な医療を受けさせることが出来たかも知れないと強く悔いた。
彼に出来ることは先代の残した負債の精算、そして国の再建である。
ネフィリア帝国は東ガルチェアの国々に損害賠償を支払わねばならない、皮肉にもネフィリア帝国を啄む周辺諸国を牽制するには自国を滅ぼしかけたニパン国を利用せねばならなかった。
東西ガルチェア戦争の混沌は暫く後を引くことになるだろう。
……だが、やがて異次元惑星エルメチスの世界情勢は安定し、人や亜人を含めた文明が交流を結び、共に発展していく未来が確かに存在すると、この世界に生きる人々は感じていた。
異空の民の導きによって。
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エルメチス人
所謂この惑星の人類にあたる種族。
標準人類であり、外見は地球人類に酷似している。
しかし、収斂進化で似ているだけで当然ながら祖は地球人類と異なるために、骨格レベルで地球人とは違う。
高度な知性を持ち、手先が器用で、大凡ホモ・サピエンスと同等の能力を持ち合わせている。
また、未知の鉱物器官を持ち、魔法という地球の物理法則では説明のつかない体系の技術を操ることが出来、研究の対象となっている。
また、地球人類と比べると闘争本能がやや強めであり、地球の歴史と同じく戦乱の時代を送っており、その敵意は日本国に向けられることもある。
此度の東西ガルチェア戦争が、まさにその一例である。
亜人種
日本が最初期に接触した人魚族を含めた、この惑星を支配している標準種族から離れた姿をしている知的生命体の総称。
標準種族自体が、この惑星における人類に当たる存在だが、亜人は彼等の近縁種や、別の祖先を持つ知的生命体を含むので彼等からしたら、地球人類である日本人も亜人にあたる生物である。
日本人は一見するとこの惑星の人類に酷似した姿のために見た目で差別されることは少ないが、骨格は違うので勘が鋭い者には違和感を持たれて嫌悪感を抱かれる事もある。
一口に亜人と言っても、二足歩行する狼の様な種族から、リザードマンの様な爬虫類人間も存在する。
これだけ多種多様な知的生命体が同時期に存在するのはこの惑星の特異な環境や、進化の過程で分断されて最近まで接触していなかったのが、理由として説明できる。
何れにせよ、天文学的な奇跡の連続で時期が重なった結果と言える。
この惑星の標準人類と比べると身体能力的に秀でてる種族も居るが、人口の多さと比較的先進的な技術を標準人類が発展させていることで、個としての強さの差を埋められている。
基本的に、この世界の人類から差別の対象にされており、奴隷どころか人間とすら認められない場合のほうが多い。
1死に至る病に侵された帝国の皇帝が治療薬を求めて周辺国を好き放題→
2技術力に優れた国をガンガン取り込み医学知識も蓄積されるが治療薬見つからず→
3人魚の肉が不老不死の効果あり(とされてる)→
4日本列島まるごと異世界転移→
5日本海側に人魚島があり人魚達が亡命することで日本領土に編入される→
6沿岸部のまだ帝国に侵略されてない国に接触、異世界の大陸の橋頭堡として沿岸部の国と国交を結ぶ、海の向こうから島国が接触してきたという噂→
7交渉中に人魚島関連で領土問題に、沿岸部の国々が実効支配出来ていないことから正式に日本領土と認められる→
8人魚島と日本の噂が流れ帝国に察知される→
9恫喝めいた領土交渉と生殺与奪の権を侵害する気満々の態度で交渉決裂→
10帝国が戦争ふっかけてくるも返り討ちに→
11帝国撃破、皇帝陛下しにたくなーい!(絶叫)→
12結局皇帝は末期がんで死亡、普通に国交結んでいたら手術が間に合ったかも知れない→
13大陸の国々や人魚を初めとした亜人達と交流を結び、共に発展していく(完)→イマココ!
了。