人魚島と自衛隊   作:蟹アンテナ

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異世界の大陸

ガルチェア大陸・東ガルチェア方面 

大陸沿岸部の国、コロポニア王国。

大陸の東の果ての地に位置し、大陸各地の港と交易が行われており、大陸有数の大規模な市場が開かれている。

普段は活気に満ちた市場が賑わっている頃だが、ここ数日は沖合に停泊する巨大船の見物で桟橋が埋まっていた。

巨大船と言ってもただの巨大船ではない、まるで島そのものが動いていると錯覚せんばかりの巨体を持つ鋼鉄の海魔なのだ。

そして何よりも、つい先日巨大船の背後が割れたと思ったら内部から奇妙な船が現れ海上を滑るように走り、なんとそのまま陸地に乗り上げて馬車の様なものを荷下ろししていたのだ。

コロポニア王国にとって、いやこの世界の住民にとって船の概念を覆す乗り物が立て続けに現れたことで港町は大混乱に陥り、近くの村の住民の一部は夜逃げの準備に取り掛かる者すら居た。

だがしかし、コロポニア王国の民は商人でもある、未知の存在を恐れては商いなど出来るわけがない。

得体のしれない存在だからこそ、未知の宝を隠し持っているかもしれないし、それを口上で奥から引き出させて取引せねば商人ではない。

この港町は王国の首都でもあるため、海の向こうから現れた未知の国との交渉は王族が行っている様だ。

もし、今回新たに接触してきた未知の国と交易が出来るようになれば、更にこの国が豊かになるかもしれない、そんな欲望と好奇心と僅かな恐怖心の入り混じった熱い視線を沖に停泊している巨大船に街の住民たちは注いでるのである。

 

「いやぁ、動力船が無い国とは言え、活気があるもんですね」

 

「沿岸部にこの規模の国があって助かったよ。これでこの大陸の情報収集が捗ると言ったもんだ」

 

「しかし、良かったんですかね?領空侵犯と領海侵犯をしてしまったみたいなんですが」

 

「ここは地球じゃないんだ。やむを得ない事態だったんだから、向こうに呑んでもらうしか無いだろう」

 

「まぁ、でも例の島の連中を見てると領海も結構アバウトな感じだったし、セーフじゃないの?」

 

「人魚だったか?実際に映像を見ても正直信じられないが、彼らがこの大陸と同じ感覚とは限らんし、あまり参考にしすぎるのは良くないな」

 

「ウチらはこのまま待機だが、交渉に行った役人さんたちが無事にこの船に戻ってくることを祈るよ」

 

コロポニア王国王城、かつては大陸で魔物との生存競争に敗れ東側に追いやられて来た民が身を守るために建設した石を積み上げただけの簡素な拠点であったが、海の恵みを得られて比較的魔物が少ない場所だったために少しずつ人口が増えて行き、その度に集落は増築されていった。

国と呼べる程の規模ではなかった時代に、当時村の防衛を努めていた自警団の長が完成度の高い砦を設計し、魔物や他の集落からの襲撃に対する防備を整えて、その功績を称えられてその血筋の者は世襲制で集落の長となっていった。

それが、コロポニア王族の血筋であり、彼らを支えた腹心の部下たちが貴族の血筋である。

近しい血筋同士の交友が築かれた事で安定しているコロポニア王国だが、海の向こうから現れた謎の勢力への対応で会議は紛糾していた。

 

『あの様な巨大船で乗り付けて威嚇してくる様な国は追い返せ!』

 

『馬鹿を言うな!あんな巨大な船、かの帝国ですら建造できぬぞ!そんなものを作り出してしまう国を相手に追い払うことなんぞ出来ぬわ!』

 

商業を担当する貴族と軍事貴族が唾を飛ばしながら反論し合う。

 

『大体、事前に先触れすら出さずに領海に侵入すること事態が気に食わん!』

 

『彼らが言うには、ここに陸地、つまりガルチェア大陸がある事自体知らなかったそうです』

 

若手の貴族が発言すると彼に視線が集まる。

 

『なに?つまり、大陸外の島からやって来たと言うのか?』

 

『彼らは自らをニポンと名乗っております。ニポンは知らなかったとは言え領海を侵犯してしまったことを謝罪しております』

 

『ふむ、では不可抗力であったと、そう言いたいのかね?』

 

『その様です。…なに?ふむ…丁度ニポンからの外交使節が到着された様です』

 

下男が若手の貴族に耳打ちすると、引き下がり退室する。

かの国の使節が来訪したという知らせに貴族たちの顔つきが引き締まる。

 

『むっ、そうか、では小休憩後に使者殿と会談を始めようか』

 

貴族たちは日本に関する資料を現在判明している分だけも知ろうと資料をまとめた。

 

「まさか中世時代相当の文明とは…」

 

「どの道大陸との交易がなければ今後立ち行かなくなってしまうでしょう、今は兎に角情報を集めなければなりません」

 

「この港に貨物船を入港させるには莫大な投資をしなければならないだろうな、気が遠くなってくるよ」

 

扉からノック音が聞こえると、原色に近い濃い色をしたフェルトの服装の者達が現れる。

 

『よく来た異海の者よ』

 

『お初にお目にかかリまス。私、本使節の代表・努めるテます』

 

『ふむ、ニポン国だったか?聞いたこともない国だが、この最果ての地と言われた我が国の更に向こうに島国があったとはな、この短期間でよく言葉を覚えたものだ』

 

『ハッ、無作法なル事、お詫ビ申し上げマス』

 

『よいよい、何事にも始まりというものがある。貴国と新たな友人となれることを願っているよ』

 

『こちらコソ、よイ関係を』

 

全く異なる文明故に翻訳作業はまだ途中であり、しかし可能な限り早く未知の大陸との文明と接触しなければならない為、日本国はかなり前倒しして接触に踏み切ったのである。

だが、コロポニア王国側は、その存在を認めたこの短期間で簡単な会話ができるようになった未知の文明の能力の高さに評価と警戒心を高めた。

優れた学習能力と分析力を持ち、あの得体のしれない巨大船を作り上げる文明なのだ。

近年中央ガルチェアで暴れている帝国よりも警戒するべき相手であることは間違いない、コロポニア国王はそう判断した。

 

「ふむ、程よく薄暗いからこのまま使っても良さそうだな?」

 

「では、プロジェクターの準備をしましょう」

 

小声で使節団代表と団員はやり取りをすると、コロポニア王国側に一言断って扉の奥からプロジェクターを持ち込んだ。

 

『それは、何かね?』

 

『投影機・呼ぶモノでス』

 

『これかラ資料をお配リしまス・ので・ご参照クださい』

 

元から薄暗く、獣臭い蝋燭で照らされている程度の光量なので、そのままプロジェクターから映像が、スピーカーからは音声が鳴った。

流れている音声こそ日本語だが、表示されている字幕は東ガルチェアで広く使われている言語であり、言語学者が徹夜でやり遂げた血と汗と努力の結晶であった。

日本がどの様な国かの紹介、国の歴史の概要や首都東京の景色、そして最後に自衛隊の映像、そのどれもがコロポニア王国には衝撃的で、彼らの頭からは中央ガルチェアの帝国のこと等どうでも良くなっていた。

 

『こレまで、ガルチェア大陸、有りませんデシた。別の大陸あっタ』

 

『な・・・そ、それはどういう事かね?』

 

『我々、信じられナイ、デモどう考えテもそうとしか思えナイ』

 

『そレハ……』

 

海の向こう側から来た使節達が帰っていくと、コロポニア王国王城は誰もが頭を抱えていた。

 

『転移現象?異世界国家だと?そんな事があり得るのか?』

 

『しかし、過去の調査で彼らの国があると言う海域には岩礁か小島しかありませんでした』

 

『もし仮に、本当に陸地が出現したとなれば、これは大変なことになるぞ?』

 

『ですが、これは得難い機会です。もし彼らと交流できれば我らは大陸の他の国を追い抜いて大きく躍進出来るでしょう!』

 

『そんなに楽観的にはなれん、もし彼らに野心があれば我が国は歴史の痕跡すら残らずに消滅させられるかもしれんのだぞ?』

 

『もしそうなら使節団など送らずに既に瓦礫の山に変えられていることでしょう、あの魔法で映し出された動く絵の内容が本当ならばとっくの昔に焼かれているはずです』

 

『そ、そうか…そうだな、彼らと隣国になる以上はもはや止められない…か』

 

『見てください、彼らが持ち込んだ手土産の数々を』

 

美しい木目の表面が磨き抜かれた箱の中には、鋭く反射する片刃の剣や、洗練された宝飾品などが収められており、信じ難いことに硬すぎて加工が不可能とされていた金剛石を削ったと思われる首飾りと指輪もあったのである。

彼らの操る摩訶不思議な魔道具よりも身近で理解できる物でも、注意深く観察すればそれが途轍もなく高度な技術で作られていることが分かるのだ。

 

『これは、こちらから彼らの本国に送る人員を厳選せねばならんな』

 

『コロポニア王国の命運を賭ける重大な任務です。余計な意地を張る様な真似をする者が出ない様に細心の注意を払わねばなりません』

 

『可能な限り早くニポン語の習得をさせろ、ニポンの使節があの短期間で我らの言葉を習得したのだ、コロポニアの意地を見せるならばこちらにしろ』

 

『はっ!』

 

それから程なくしてコロポニア王国と日本国は国交を結ぶのであった。

湾岸設備の改良や、技術支援、そして高度な技術で加工された品の数々、コロポニア王国は東ガルチェアの中でも抜きん出た発展を見せ、その様変わりぶりにコロポニア王国を訪れた旅商人は驚愕するのであった。

そして、旅商人や吟遊詩人などを通じて大陸最東端の国が海の向こうの国と交易を始めたのだと噂が広がるのであった。

今やコロポニア王国は東ガルチェアの中でも最も注目される国であり、そしてそれを大きく発展させた未知の国にも向けられていた。

 

時空を超えて本来出会うことのなかった日本と異世界の国々の織りなす変化は、この世界に何をもたらすのであろうか?それはまだ誰も知らない。




1死に至る病に侵された帝国の皇帝が治療薬を求めて周辺国を好き放題→
2技術力に優れた国をガンガン取り込み医学知識も蓄積されるが治療薬見つからず→
3人魚の肉が不老不死の効果あり(とされてる)→
4日本列島まるごと異世界転移→
5日本海側に人魚島があり人魚達が亡命することで日本領土に編入される→
6沿岸部のまだ帝国に侵略されてない国に接触、異世界の大陸の橋頭堡として沿岸部の国と国交を結ぶ、海の向こうから島国が接触してきたという噂→イマココ!
7交渉中に人魚島関連で領土問題に、沿岸部の国々が実効支配出来ていないことから正式に日本領土と認められる→
8人魚島と日本の噂が流れ帝国に察知される→
9恫喝めいた領土交渉と生殺与奪の権を侵害する気満々の態度で交渉決裂→
10帝国が戦争ふっかけてくるも返り討ちに→
11帝国撃破、皇帝陛下しにたくなーい!(絶叫)→
12結局皇帝は末期がんで死亡、普通に国交結んでいたら手術が間に合ったかも知れない→
13大陸の国々や人魚を初めとした亜人達と交流を結び、共に発展していく(完)
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