高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
そして束率いる東雲特車創設以前の日本戦車道最大の後援企業であり
アジア一のスポーツ用具メーカー「薄田社」のオーナー一族にして
みほの実家西住家の本家筋にあたる古馬塚家の怒りを買い、
みほに対し事情聴取という名の吊し上げへの呼び出しが行われた。
だが、なのは、束、千冬の3人が家元後見人として代理出席した事で、
日戦連本部大会議室は更なる緊張に包まれる事となった。
「それで?本日は当流家元に如何なる要件でこの場を?」
「まずもって、まだ16そこらの小娘が勝手に流派を立てて
家元を自称するとは何事じゃ!」
真っ先に文句を付けたのは、みほの祖母で西住流家元のりほである。
「家元に年齢は関係なし、よって彼女は家元なの。
誇らしくないの?お孫さんが家元張れる位に成長したのが。」
「何が誇らしい物ですか!日本中の全流派を無価値と言い放ち、
家元は自分一人居れば良い等と…
ましてや、戦車道の何たるかを根底から否定し、
勝手にその意義を書き換えようとする等、
この世全ての戦車道に関わる者に中指を立てる行為ですよ!
あの様な輩に、戦車道をやる資格などありません!!」
しほも怒り心頭だ。が、そんな物で大悪魔トリオが怯む筈が無い。
「それがどうしたのぉ?
『礼節に富み、慎み深く淑やかで凜々しい婦女子を育む武道』?
…ハッ!そんな目的に戦車の介在する余地が那辺に有る?
『そうか、だから戦車が要るのか!』と言える要素が何処にある?
…ぜーんぜん無いじゃん!だからこそ、鬼皇流が意味を創り出すんだよ!
故に既存の流派等…無価値!!」
「こ、この小娘!流派を何だと思っとるんじゃ!」「誰かの自己流。」
「「「「「………!」」」」」
束の言葉に憤るりほに対し、流派という概念を
余りにも軽く流すなのはに一同が絶句した。
「何…じゃと?」
「流派なんて所詮、誰かの自己流を他の人が有り難がってるだけなの!
家元は既存の流派が有り難くなかった、だから皆で新しく作った。
悪い?…家元はね、既に己の戦車道を見付けた。分かるでしょおばさん?
つまり家元はもうおばさんの上を行ってるって事だよ!!」
「己の戦車道を…?では、そのみほが言う己の戦車道が何なのか、
言葉で説明出来るのでしょうね?」
「■■■■■■■■■■■戦車道。」
「「…………………………………!」」
どうやらしほと千代はなのはが言う「みほの戦車道」に
何か思う所があるらしく、一瞬はっとした顔をする。
「だから、鬼皇流は戦車道を武道と認めない。戦車道は『祭儀』であるべき。
まあ、これまで通りの勝敗のある競技としての戦車道は残るけど、
勝ち負けはもう枝葉!その上に、家元の戦車道が成立するの!
それに、勝ち負けを競うならもう戦車道を極めちゃった私が一番だし。」
「……………は?」「戦車道を…極めた?」
「そう!私は戦車道を極めたの!だって、私はISを極めたから!」
「戦車道を…極めたですって?」「しかもISも?!」「何て恐れ知らずな!」
なのはのカミングアウトにざわつく大会議室。
「馬鹿な事を言わないで!初めてIS学園で会った時、
アナタは戦車道という単語すら聞いた事が無かった筈!」
「確かにその通り。でもその後で極めたの!3日かかったけど。
おばさん日本二大流派の家元なんだって?今の私はおばさん位なら、
3人束に成った所で楽々蹴散らせるの!」
「たった3日で極めたですってぇ?!!人を馬鹿にするのも良い加減に…」
「御夫人っ!」
ここで千冬が徐に口を開く。
「この際、はっきり明言しておきましょう。彼女は本当の事を言っている。」
「………はぁ?」
「私が誰であるかは、皆様御存知でしょう。
私はモンド・グロッソ初回大会に日本代表として出場し、
初代ブリュンヒルデの栄冠を勝ち取リました。
前回大会までなら、この世で一番のIS操縦者と言えば誰か?と言えば、
誰もがこの私を上げるでしょう。」
「良く、承知しております。同じ女性の競技に携わる者として
成る程、見習うべき人物であると娘達にも言い聞かせた事は覚えています。」
「その私が明言します。
『高町なのははIS操縦者として私の遥か上を行く』と。」
「「「「「?!!」」」」」
「いやいやいや、お世辞やおべんちゃらなぞええ。
自分の教え子がちょっと出来が良い位でそこまで無理して持ち上げた所で…」
「これでもか?」
千冬が額を晒す。そこにはかつてなのはと一騎討ちを行い、
敗れて出来た傷がくっきりと残っていた。
「この額の傷、分かりますか?これは、高町と一騎討ちを行った結果、
一撃で機体から放り出され、完膚なきまでに敗れ去って出来た傷。
奴はISを腕だけ展開し、実弾を装填した完全装備のISに乗る私を打ち破った。
これが、その証なのです。」
「……………ま、まさか……!」
りほとしほの親子は思い出した。
なのはとの血縁の有無を確認させて貰う為にIS学園を来訪した際、
高木理事長からなのはがどういう存在だったかを聞かされたのか。
(「該当の生徒は相当の問題児でしてな、
何しろ入学初日に担任と決闘騒ぎを起こして負傷させ、
担任の額にはその時の傷が残る始末でして…」)
「その担任というのは、アナタだったというのか…。」
「如何にも。暴走核弾頭…この言葉に覚えは?」
「暴走核弾頭…はっ、まさか!!」
「聞いた事がある…!パリ、ヴェルサイユ、リヨンの三都市同時爆弾テロ事件と、
ベルリン同時多発テロ事件の実行犯が、確かそういう通り名で呼ばれていると…
まさか…彼女がその本人だとでも言うのか?!」
「誰も死なせずにあの様な大規模テロを実行する等、
篠ノ之博士位しかいないとは分かっていたが、
成程、直弟子ならその実行犯が務まるのも納得の事か…。」
「そういう事だ。高町こそ暴走核弾頭。
この女がISに触れてから私を超えるまで、
一体どれ程の時間ISを動かしたか、アナタ方には答えられまい!」
「ど、どう言う事なのです…!」
千冬は両手をパーにして見せた。
「奴はこれだけの時間で、ISを極めてしまったのだ!」
「じ、10週間…いや、10日でISを極めたと…?」
しかし、千冬はその答えを嘲笑う。
「つまらない冗談は嫌いなのだが…10分だ。」
「じ、じっ…ぷん?!」
「ああそうだ!この女はな!!ここにいる束から学園に入るすぐ前日に
専用機を与えられてたった10分動かしただけで、
初代ブリュンヒルデである私を超えたんだ!!
分かるか?!こいつはもう人間では無い!!
こいつの事を言いたいなら…言葉にするなら…『戦闘民族』…
もうそれ以外の言葉は無い!!
そんな奴が3日で戦車道を極めて、何が悪い!!!」
今までの鬱憤を晴らす様に捲し立てる千冬。
その鬼気迫る様子に誰も何も言えなかった。
無理も無い。皆気づいてしまったのだ。歴史が浅いとは言え、
ISの世界にもそれなりの掟や矜恃はある筈。
それをある日突然、何の前触れも無くなのはに破壊された。
彼女もまた被害者の一人なのだと。
尤も、なのはの場合空戦魔導に目覚めて15年経つので
厳密には15年と10分というべきなのだが、
この時点では千冬はなのはの出自を知らない。
故に、今の千冬の目にはなのはが10分でISを極めた
鬼か悪魔か大魔王にしか見えていない。
「織斑教諭…アナタは…彼女に脳を焼かれた被害者だったのですね…。」
「そうだ。こんな滅茶苦茶な奴がIS学園で生徒をやっているのも、
当流家元が見出した彼女の戦車道と全く同じ理由なのだ!
そして、もう一つの理由は『己と渡り合える強者を作り上げる』事…
ISに関してはこの私…そして、戦車道においては当流家元だ。」
「『自分の相手が出来る強者を作りたい』…その相手に、みほを選んだと。
………………で、では…みほに…あんな事をさせたのは…。」
「そうとも!西住みほに新流派創設を唆したのはこの私なの!
あの家柄なら良い旗頭に成りそうだし、きっと歴史に名が残るよ!良かったね!」
「何て事をしてくれたのよっ!」
とうとう憤りが爆発するしほ。
「あの子は自分の意思で戦車道から身を退いて、
普通の人生を送りたがってたのに!それをよくも…よくも魔道に引きずり込んで、
戦車道に中指を立てさせたな…許さない…もう何をされたって許さない!
みほを返せ!あの子を普通の子でいさせろ!!」
「ダーメ!あの子…家元は完成させるの!『戦車道を極めし者』に私がするの!
今はもう、家元自身もそれを望んでるし。
だから家元が『戦車道を極めし者』になったら返してあげるの!
だってさぁ…この私の、高町なのはの戦車道を見付けた私の相手なんか、
もうこの世の者には務まらないの!
だから私は、戦車道を極めてこの世の者では無い位強くなった家元と戦うの!!
そう!私の『最果ての戦車道』と戦える位にね!」
「最…果て…?」
「武道の最果ては一撃必殺。戦車道の、何と一撃必殺の成し遂げ易き事よ。
皆、隙を晒して迫り来る。そう、砲口を晒して迫り来る。
だから私は、如何に敵戦車の砲身に砲弾を飛び込ませるかに拘りたいの!
戦車道が、武道として既に完結している事を天下に証明してやるの!」
「何を…言っている?いつ弾が飛んでくるか分からない中で、
大きくて6インチそこらの的に弾を当てる芸当、出来る訳が…。」
「あ、あの…筆頭師範?」
「亜美!アナタは関係ないわ、黙っていなさい!!」
と、ここで教官だった防衛陸軍の亜美が徐に言葉を放つ。
「すいません、それは無理です!彼女の言っている事は事実なんです!
私は合同訓練に大洗側の教官として立ち会いましたが…
彼女、現代戦車の威力デモ用として私が持って来た10式の
訓練弾を 機 銃 で 撃 ち 落 と し て、
反撃で80㎜徹甲弾を砲身から車内に飛び込ませて
1発で無力化させました。…この様に。」
亜美が再生したホログラム式記録映像の中では、
44Mタシュに乗り込んだなのはが3km先をスラロームしながら逃げ回る
10式戦車からの訓練弾射撃を確かに同軸機銃で叩き落とし、
反撃の1発を砲身から内部に飛び込ませ、
一発で10式を真正面から破壊する一部始終が記録されていた。
「…嘘よ。」「じゃあ、この映像は何ですか?」「作り物よ。」
「筆頭師範!現実を見て下さい!!これは事実なんです!!」
血の気が引いた顔で否定するしほ。だが、亜美の言う通りこれは事実なのだ。
「嘘よ作り物よ幻よ!こんな事が出来る怪物は…あの子だけで十分よ!!
「「「(あの子…?)」」」
「信じるか信じないかは各々勝手にすれば宜しい。
何はともあれ御夫人、これでお分かり頂けたでしょう?
彼女は『戦闘民族』。人間と思ってはならないと。」
「そうなの!そして肝に銘じるの!!家元は…完成したら私を超えるのだと!!」
「もう止めて!!娘を…みほを人のままでいさせて!!人のまま生き切らせて!!
アナタの所にいたら、みほが人間でなくなってしまう!!
あの子の様になってしまう!!!」
「ヤダ!これが家元のご所望なの!!後見役として、これらは完遂するの!!」
「でもみほは未成年よ!私は実親としてストップを掛ける権利があるわ!!」
いよいよみほを返せ返さないの押し問答になりかけた所で、
束がなのはとしほに割って入った。
「ねえねえおばさん。さっきからあの子あの子うるさいけど…あの子って誰?」
「…………!」
束の声にはっとしたしほ。
その表情は、まさしく聞かれたくない事を聞かれてしまった様な表情だった。
「そ、そ、そ、それは…。」
他の出席者も相当ばつが悪そうな顔をしていた。
「知っているが、言いたくない」と顔に書いて有るかの如く皆口をつぐむ。
「そんなに家元を返して欲しいなら、
まず『あの子』の事を教えてくれない?
内容によっちゃ、考えてやっても良いかもね~。」
「答える気が無いのなら…家元は人間卒業おめでとうなの!…それでも良い?」
「止めて!!…そこまで言うのなら、『あの子』が何なのか話しましょう。」
「ならん、ならんぞしほ!!!あれを外部に話せば…
今度こそ西住流は…戦車道はお終いじゃ!!!」
「お母様、もう手遅れなのです。それでみほが人として踏み留まれるのなら…」
慌てて家元のりほが止めようとするが、しほはもう覚悟を決めた様だ。
しかし、思わぬ形で真実への接近は阻まれる。
「古馬塚会長、御入来!」
会議室の外から不意に声が聞こえ、次いで妻子を取り巻きの如く従えて
一人の老人が入室してきた。その姿に出席者達が目を向けると、
なのは、束、千冬以外の出席者が一斉に床に正座して額付いた。
「これはこれは古馬塚会長、お越しになるとは聞いておりませんで…。」
「うむ、お前も変わりないようだな、児玉よ。」
入ってきた老人の名は
西住家の本家筋にあたる東日本武術界最大の旧家、
古馬塚一族現当主にして、アジア一のスポーツ用具メーカー薄田社の会長。
そして戦車道後援企業連絡会の会長も兼任する者である。
即ち、その名と血筋を有する全ての者にとっての絶対者であり、
取り巻きであるこの男の妻子、つまり社長の
嫡男で同社副社長兼戦車道部監督の
強大な権力者として君臨する、正に武道を司る一族の降臨であった。
なのはの習熟速度のイカレっぷり表現…これでいいのかな?
極超短期間でトッププレイヤーを蹂躙した魔人感、
出ていれば良いんだけど…
原作未登場のAFV紹介 その9
IS-4
ソ連の重戦車スターリンシリーズの第4弾。
試作車にあたるオブイェークト701ー6の製造開始が戦後なので、
本来レギュレーション違反の筈だが、「何故か」国際共通ルール下では
使用可能車輌の一覧に名が記されている。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.60×車幅3.26×全高2.48㍍
機関 チェリャビンスクトラクター工場製
V型12気筒ディーゼルエンジン 750馬力
最高速度 43㎞/時
重量 60㌧
乗員 4名
武装
主砲:43口径122㎜砲「Dー25T」×1
機銃:12.7㎜機銃「DShKM」×2
装甲(単位:㎜)
防盾 150
砲塔 前面 側面 後面 天板
250/200/170/30
車体 前面 側面 後面 天板 底板
140~160/160/100/30/30