高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
アジア最大のスポーツ用具メーカー薄田社のオーナー一族をも務める名門古馬塚家。
しかし、史上最強の機動兵器ISの発明者にして人類史上最大最悪の天才、
そしてアジア一の大富豪でもある東雲特車社長の篠ノ之束に
薄田社の株式を全て買い占められ、抗議した会長の古馬塚富栄は
その場で役職解任の上懲戒解雇を言い渡される。
更に束は薄田社からの古馬塚一族完全粛清を図り、
残された妻子、社長の杏手と息子の宗繁に対しても
束子飼いの戦車道チームに試合で負ければ首にすると言い渡した。
戦車道チームを率いるは束唯一の直弟子にして戦車道を極めし者、高町なのはと
生家西住流を裏切り、全日本の流派に宣戦布告した鬼皇流流祖家元・西住みほ。
この極悪コンビ率いる鬼の精鋭共に薄田社戦車道チームは勝てるのか?…あれ?
「試合開始!!!」
日戦連から派遣された審判長の号令一下、訓練場に号砲が鳴り響く。
視点・鬼皇流チーム
「遂に始まった…
『了解、中間の丘へ向かう。アヒル、レオポン、続け!』『『了解!』』
「
「「「「はい!」」」」
「それでは…者共、散れ!!」
みほの号令一下、各車一斉に散開する鬼皇流チーム。
果たして、3倍の敵を如何に始末する気なのだろうか?
視点・薄田社チーム
「まさか高校生が、それも
日本中の流派全てを潰すと宣言するなんて…世も末ね。」
「去年の件、命より勝利を優先するが如き周囲の責めに耐えかねて…
とうとうあの様な
こんな暴挙に手を染めてしまうなんて…お労しや。」
「やはり…『彼女』の血筋に生まれたが故なのかしら?」
このような会話を交わしているのは薄田社戦車道チームの副隊長にしてエース、
西住流師範の免状を持つ姉妹、茂武長代と妹の継代だ。
この薄田社戦車道チームが社会人リーグ優勝に輝いたのは、
この姉妹の力が多分に影響している。
と言うのもこのチームの隊長の乙骨はかつてのオーナー一族、
古馬塚家の腰巾着をやっていた重役の子であり、
そのコネだけで隊長をやっているへっぽこ女に過ぎないのだ。
そして、薄田社チームは乙骨がⅥ号B型×9輛+VK16.02×1輛を率い、
姉妹がそれぞれⅤ号F型×9輛+VK16.02×1輛を率いる編成である。
「はいはい、アナタ達、お喋りの時間は終わりざぁます!
あの勘違いした夢見る箱入りお嬢様に現実を分からせるざます!
アテクシは例によってしっかり後方を護るざぁます!
姉妹仲良くキリキリ働くざます!Panzer For!」
意気揚々と前進する薄田社チーム、この後泣きを見るとも知らずに…。
視点・鬼皇流 聖王小隊 イシュトヴァーン1号車「カモ号」
「見ぃ・付・け・たぁ♪」「うげ…もう見付けたんですか?」
「それで?なのはさん、敵さんはどんな感じ?」
「距離3,500、呑気に30輛総出で隊列組んで向かってくるの!」
丘の上に陣取り、ハルダウンで車体を隠しながら様子を伺う聖王小隊。
小隊長車のカモ号の砲手席には、本来座っている筈の杏に代わり
何故かなのはが座っていた。と言うのも、聖王小隊はみほから
「丘からの狙撃で1輛でも減らす為、
聖王小隊はなのはを同伴させる様に」と指令を受けていた。
「さて、どれを殺ろうかな…
客、到着!誰を殺る?」
『では、姉妹の片方を最優先で。次にレオパルトを。』
「もう片方は?」『ノータッチ。』「その心は?」
『片割れが嫌でも挑発に乗る。』
「大変結構!弾種
「了解!」
「しっかし、WWⅡまでの車輌で冷戦末期~現代張りの間合いで
戦える人間とか、ホントに反則だよね~。ねえ、ソド子、アンタは見える?」
「えーと…点しか見えないんだけど…何でこの人見えてるの?」
「「ヒェッ…」」
双眼鏡で車外から敵部隊を見ているカモ号の車長、
風紀委員のソド子こと園みどり子は全く見えていない様だ。
バレー部再建を夢見るアヒル号車長磯部典子と
自動車部出身のレオポン号車長中嶋麗羅に至ってはドン引きしていた。
「おっとこうしちゃ居られない、弾種高速徹甲弾、弾薬を込め!」
「「了解!」」
アヒル号、レオポン号も弾薬の装填を開始。
「アヒル号、レオポン号。これより距離3,000まで引きつけ、
高速徹甲弾にて連続、各個にて射撃開始、1,250で後退する。
尚、砲塔正面は防盾越しでは射貫不可能につき、
照準孔か比較的装甲の薄い車体を狙え。」
「「距離3,000から1,250まで高速徹甲弾で
連続、各個にて照準孔近辺か車体を射つべし、了解!」」
3,000mまで引きつけるのは、聖王の主砲KwK43の高速徹甲弾の貫通力は
3,000m先への正撃で凡そ180㎜弱と言われており、
Ⅴ号F型の車体前面装甲に貫通判定を出せる
理論上ギリギリの距離と言うなのはの判断だ。
そうこうしている内に、何も知らない薄田社チームが隊列を組んで迫り来る。
「3,200…3,150…3,100…3,050…3,000!」
…挨拶代わりなの…射ち方初め!」
「「「射てぇ!!」」」
BANG!
なのはの号令一下、3門のKwK43の砲声が轟いた。
視点・薄田社チーム
ヒュゥゥゥ……………………ン
「!!! (この風切り音…まさか!)」
BLAM!!!
「何ッ?!」
次の瞬間、着弾の轟音が響き、
Ⅴ号F型の1輛から撃破を示す白旗が上がる。やられたのは…
『やられた!』「継代?!」
『姉上、すいません!砲塔前面、照準孔近辺を抜かれました!!』
中隊長の一人で茂武姉妹の妹、継代車が砲塔前面、
防盾の覆っていない箇所をピンポイントで射貫判定を受けたのだ。
尚、アヒル号とレオポン号の射撃は1発が長代車の円錐形防盾で弾き返され、
もう1発は失中した。
『え?嘘!!』『何処から?!!』『何も見えない!!』『継代車被弾?!』
「落ち着け!!落ち着けー!!」
忽ち狼狽える薄田社サイドだが直ちに姉の長代が一喝して鎮静を図る。
「まだ1輛やられただけだ!!被弾箇所から見て敵は11時方向…
あの丘の方角だろう!直ちに突撃!レオパルトは離脱して、回り込め!」
「「「了解!」」」
長代の号令で、長代中隊は直ちに丘へ突撃。
継代をやられた継代中隊と乙骨中隊も後に続く。
また、前進偵察の為3輛のVK16.02が隊列を離れる。
「(一体何が起こっている?!遠過ぎて見えなかった…
こんな攻撃を受けたのは…まさか…いや…そんな筈は…!)」
長代が過去の体験をたぐり寄せていると、
向こうでドガッ!!という轟音が響き、
VK16.02の1輛が撃破判定を受けて停車していた。
視点・鬼皇流 聖王小隊
『やった!今度は当たった!!』『あぁぁ…外れたぁ!』
アヒル号砲手の佐々木あけびの喜ぶ声と
レオポン号砲手の星野慶子の落胆の声が通信機越しに聞こえてくる。
「エースの片割れがやられても即立て直し、
こちらへの突撃を敢行する…か。模範解答なの!」
古今東西、射撃を受けたら射って来た方向に突っ込むのは
戦車道のみならず実戦でも常識である。
「レオパルトは全部潰せ!弾は通常徹甲弾で良い!
潰し終わったら、今隊長車を潰した中隊のⅤ号への高速徹甲弾射撃を再開!」
(Ⅴ号F型の不整地での全速力は30km/時前後、
即ち分速500mだから1,750mを走破するには最低でも3分半掛かる。
KwK43の発射速度は毎分8発前後、
だが装填手は職業軍人ではなく腕力で劣るアマチュアの女子高生、
実態は早くて毎分6発…それが3輛、3分半有れば理論上射てるのは63発。
照準を絞る時間を考えれば2~3分の1…まあ、1個中隊はトばせるかな?)」
「徹甲弾、入った!」
「そぉい!」
装填手の桃の声で計算を止め、VK16.02に向けて一発ズドン。
照準器の向こうで車体に貫通判定を喰らったVK16.02が白旗を上げる。
残る1輛もレオポン号が仕留めた様だ。
「(よしよし、東雲特車特製の内膅銃射撃訓練の効果が出てるの!)」
「彼奴等の目は潰した!Ⅴ号に高速徹甲弾を叩き込め!
ここで1中隊を完全に潰す!!射ち捲れぇぇぇぇええええ!!」
「「おおおおおおおおおおお!!」」
視点・薄田社チーム
『副長!丘の上から発砲炎!!3輛程居ます!!』
「何ッ?!奴等丘の上から射っていたのか?!」
『えええーーーっ?!!』『そんな?!3kmは離れているのに…』
BLAM!!
『また1輛喰われた!!』『やられた!!車体を抜かれた!!』
『履帯が切られた!!!動けない!!』
『信じられん…何故当てられる?!』
『WWⅡの車輌で冷戦末期張りの長距離砲戦を仕掛けるとは!!』
ここで薄田社チームが聖王小隊の所在に気付く。
とんでもない長距離砲戦を仕掛けられていた事にまたもや動揺を隠せない。
「くっ…向こうもⅥ号B型と同じ8.8cm KwK43搭載車、
旧枢軸最強格の戦車砲の面目躍如と言った所か…。
(拙い、このまま有効射程まで近付こうにも、
その間に全部喰われてしまう!
いや、そもそも聖王の傾斜30°の120㎜前面装甲は
見かけの厚さ240㎜+斜面効果補正により、
実質的な防御力は300㎜では済まされん!
彼の長門型戦艦の舷側装甲をも凌駕する装甲等、
KwK42所かKwK43でも到底射貫出来る物では無い!
いや待て、相手は射界に限りの有る駆逐戦車だ!!
大きくスラロームすれば…)」
と、駆逐戦車共通の弱点、射界の狭さを衝いたスラロームで
近付こうとした次の瞬間…
『たーかーさーごーやぁぁぁぁああああー!』
「「「「「うわぁ!!!」」」」」
いきなり薄田社チームの無線機から木霊するのは、
世阿弥の能「高砂」にて歌われる祝言曲の冒頭。
『この浦舟にぃ!帆を上げてぇ!』
『『『『『この浦舟にぃ!帆を上げてぇ!』』』』』
「な、何だぁーッ?!」「コレは世阿弥の『高砂』?!」「な、何故ここで…?」
声の主は鬼皇流の聖王小隊+なのはの計13名である。
一体どういう手を使ったのか薄田社チームには見当も付かないが、
大音声で高砂を合唱し、無線に流していたのだ。
『『『『『月諸共に出潮の!』』』』』
『『『『『波の淡路の島影や!』』』』』
『遠く鳴尾の沖過ぎて!はやすみのえに着きにけり!』
『『『『『はやすみのえに着きにけりぃ!』』』』』
最後は一同大爆笑。一体全体、何がそんなに面白いのか?
「な、何だったんだ一体…?」「挑発の…積りかしら?」
「だが、一体何故この曲なんだ?」
長代中隊が困惑していると、その答えは早速明らかになった。それと言うのも…
「キィィィィィィイイイイイイイイーーーーーーーーーッ!
このアテクシを独り者と知って嘲るとは、何処までも生意気な高校生ザマス!!
叩き潰してやるザマスぅぅぅーっ!!」
隊長の乙骨が大激怒。トウの経った独身のザマス女に祝言曲を叩き付ける。
精神攻撃としてはこれ以上は無いだろう。
「突撃!!突撃ーっ!!」
いきり立ってⅥ号B型で突撃を仕掛けるが、
Ⅵ号B型の足では不整地で19km/時が精一杯。
今から撤退予定距離の1,250mまで近付くには直線でも5分近くかかる。
と言うより、一番の問題は…
『長代、隊長命令ザマス!!!さっさと道を空けるザマス!!!
あのガキ共はこの乙骨直々に先頭に立って潰してやるザマス!!!』
「た、隊長?!!この状況で前線の交代なんてやったら…。」
『良いからどくザマス!!!命令ザマス!!!
お前は別働隊として敵の本隊でも探すザマスーっ!!』
この通り、すぐ前の長代中隊をどかさないと前面に出られない事である。
しかし、長代の言う通り、この状況で前線を交代しようとすると…
視点・鬼皇流 聖王小隊
「先頭をⅥ号B型と交代か…流石にこの距離で狙うには車体が強固過ぎるの!
砲塔の、それも防盾の覆っていない所を狙うしか無いの!」
「ちょ…そんなのなのはさんしか出来ないって!」
「私達じゃ、そんな狭い的まだ狙って当てられません!」
「心配無用!Ⅵ号を狙う必要は無いの!!…手本を見せるの!!」
「「???」」
「そぉい!!」
なのはは適当なⅤ号F型に発砲。
砲弾は履帯を破断し、たちまちあらぬ方向に向きを変えながら
慣性で動き続けるⅤ号F型。そしてその後ろには…。
「「う、うわああああああああああ!!」」
乙骨の突撃命令で急進していたⅥ号B型が。
当然、止まりきれずにⅤ号F型に衝突。
衝撃で撃破判定装置が作動して双方行動不能に。
「ハイッ、こんな感じなの!!ダメ元で良いから、早速やってみるの!!!」
「「りょ、了解…」
この後、何とか1度ずつ追突事故を起こさせたアヒル号とレオポン号であった。
そして、1,250mに近付いた所で一斉に後退し、丘を降りた所で反転離脱。
本隊との合流地点へ向け全速力で駆けていったのであった。
視点・薄田社 長代中隊
『い、居ない…?』『逃げたか…!』
「くっ…こちらの交戦予定距離がジャスト1kmと知って、
そこに入る前に逃げ出したか…敵別働隊は本隊と合流する気だな…
生き残ったⅤ号は私の元に集結しろ!
然る後履帯の跡を辿り、別働隊を追跡する!」
『了解!!!』
「恐らくは、市街地か…糞!まさか半分喰われるとは!
しかも内6輛はあんな心理攻撃から持って行くとは…これが鬼皇流なのか?」
視点・鬼皇流 本隊
「こちら鮟鱇、各車、準備は良いか?」
「「「「「「はい!」」」」」」
「みぽり…隊長、聖王小隊はⅥ号3輛、Ⅴ号9輛、レオパルト3輛を喰って
無事に役目を果たして帰還するとの事!」
『素晴らしい!』『は、半分喰ったのかよ!』『うわぁ…』
聖王小隊+なのはの戦果に一部を除き喜ぶ所かドン引きする一同。
「(まだ大洗の皆もIS学園の皆も練度は不十分…
今はまだ、なのはさんにおんぶに抱っこが必要か…
せめてお姉ちゃんと戦う時位までは、
高校戦車道チームとして恥ずかしくない練度まで鍛えないとなぁ…)」
何はともあれ、戦いはまだ終わらない。
敵の頭数はこちらより多く、エースもまだ片方が健在なのだから。
この時点での残存車輌
大洗・IS学園連合チーム(鬼皇流)VS薄田社戦車道チーム
ISー4×2
44M イシュトヴァーン×3
44M タシュ×5
計10/10輛 計15/30輛
原作の「○○さんチーム」が「○○号」に置き換わっているのは、
短く表現できるからと言う事でラウラが入れ知恵しました。
原作未登場のAFV紹介 その12
VK30.02(DB)
ダイムラー・ベンツ版のパンター中戦車のプロトタイプ。
どう見てもT-34のパクリです。本当に(略
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.80×車幅3.28×全高2.69㍍
機関 マイバッハ製 V型12気筒ガソリンエンジン
「HL230 P45」 700馬力
(史実:マイバッハ製 V型12気筒ガソリンエンジン
「HL210 P45」 650馬力)
最高速度 60㎞/時(史実56km/時)
重量 35㌧
乗員 5名
武装
主砲:70口径75㎜砲「7.5㎝ KwK42」×1
機銃:7.92㎜機銃「ラインメタル MG34」×2
装甲(単位:㎜)
防盾 80
砲塔 前面 側面 後面 天板
80/45/45/16
車体 前面 側面 後面 天板 底板
60/40/40/16/16
史実との変更点
史実で搭載していた最大出力650馬力のHL210 P45から
完成版のパンター中戦車の主機、「マイバッハHL230」への換装許可が
日戦連から下りたので早速換装。最高速度は60km/時の大台に達した。