高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
10対30の殲滅戦はなのはの驚異の長距離狙撃の技量と
二枚看板の上にコネで口だけの無能者を置いていた薄田社チームの歪さが災いし、
薄田社側は早くも二枚看板の茂武姉妹の妹継代を含む半数を喰われてしまう。
しかし、薄田社チームの悪夢はこれに留まらなかった。
視点・薄田社チーム 長代中隊
「よし、再編が終わったな…
これより履帯の跡を追う!残ったⅤ号F型は私に続け!」
『『『『『はい!』』』』』
残った9輛のⅤ号F型を集結させ再編し、聖王小隊の追跡にかかる長代。
しかし、ここで長代車の操縦手が何かに気付いた。
「んん?副長、何か白い物が落ちてませんか?」
「何?…見てくる!移動は暫く待て!」
長代が降車し、操縦手の言う白い物を拾う。正体はメモだった。
「何々…?『丘からの狙撃・挑発で敵を引きつけたら、
北東の模擬市街地奥の高台でハルダウンしつつダックイン、持久戦に持ち込め』
か…。やはり予想通りであったか…。
よし、各車聞け!これより北東の模擬市街地の向こう側の高台に向かう!続け!」
『『『『『はい!』』』』』
視点・鬼皇流 聖王小隊
「よーし、敵は計画通りにこっちに来ているの!」
砲手席を杏と交替し、カモ号の上から後方の敵の様子を伺っていたなのは。
「でも良かったんですかぁ?計画のメモ無くしたままで。
もしかしたら相手に拾われてるかも知れないですよ?」
「それなら、それでも良いの!どの道、ここまで来たらもう勝ち確なの!」
「は、はぁ…」
「おっと、こうしちゃいられないの!さあ、後は彼女の言う通りに動くの!」
そして、迎えのISー4・1号車と合流した事でなのははそっちに乗り移り、
聖王小隊と分かれて別行動に移るのであった。
視点・薄田社チーム 長代中隊
「見えた!敵駆逐戦車小隊発見!」
とうとう視界に聖王小隊を捉えた長代中隊。しかし何かがおかしい。
「いや待て…何だあの速さは?!」
『速過ぎる!これでは振り切られてしまうぞ!』
何と前方を逃げる聖王小隊の逃げ足は優に50km/時に達していた。
不整地での全速力が30km/時前後が限界のⅤ号F型では到底追いつけない。
仮に整地なら70km/時は出して来るだろう。
『副長、こっちは既に出力全開です!これ以上は出せません!!』
戦車道において、ルール上条件を満たせば戦車の改造は原則として自由である。
現に、岡山のBC自由学園は史実で8km/時も出せない
ルノー FT17の足回りをカスタムし、
20km/時で走れるまで速力を強化している。
また、21世紀の工作精度で作った部品を使用する為、
使用車輌が現役だった大戦期よりスペックや信頼性は上がっている。
しかし、目の前の聖王小隊の速度はそんな物では説明不能である。
『あの駆逐戦車は44Mタシュが設計元の筈。ならば出力は500馬力強程度。
不整地であの速さは有り得無い…はっ、奴等…まさか!』
「何か知っているのか?!」
『副長!史実のハンガリーは、確かこのⅤ号F型と同じ機関のライセンス生産を
企てていたんですが、ドイツから許可が下りずじまいだったと聞きました…。
もしかして…換装予定の機材にカウントされていたのでしょうか?』
「あり得るな。HL230なら200馬力近く出力を上げられ…
いや、それを考えても速過ぎる!奴等、何を積んだ?!」
『後で問い詰めましょう!パトロンの東雲特車が何か仕組んでいるのかも!』
「そうだな。何はともあれ、あの速さに追い縋るのは無理か…」
『どうします?』
「予定通り、高台には向かう。我等が敵本隊の正面を受け持っている間に、
乙骨隊長のⅥ号B型に側面を衝いて貰おう…。」
視点・鬼皇流本隊 タシュ3号車「カバ号」
「やって来参った、やって来参ったぜよ…」
タシュ3号車「カバ号」の操縦手、
幕末史マニアのおりょうこと野上武子が一人呟く。
「おりょう、緊張してるのか?言葉使いが変になってるぞ。」
装填手でメンバーのリーダー格、
ローマ史マニアのカエサルこと鈴木貴子もいつでも砲弾を取り出せる様構えながら
今か今かと待ち構える。既に80㎜砲には1発装填済みだ。
「あや、隊長からの連絡は?」
「『まだ待て、もっと引きつけろ』と。」
車長のエルヴィンことWWⅡ史マニアの松本里子が
カバ号乗員唯一の1年次、通信手の大野あやに問うがまだ待ての一点張り。
「正に大阪冬の陣、真田丸に籠る兵士の気分だな…。」
砲手の左衛門佐こと戦国史マニアの杉山清美は自身のソウルネームの元ネタ、
真田信繁が勇戦した大阪冬の陣を連想した様だ。
「「「それだ!」」」
「……このノリは慣れないなぁ。」
あやが先輩のノリに慣れる日は未だ遠い。
視点・薄田社チーム 長代中隊
「見えた!あの高台に立て籠もっているのか…」
とうとう本隊の前に姿を現す長代中隊。
『副長!高台の様子が変です!』
「んん?」
『開示された車輌の数と、見えている砲塔の数が全然合いません!
どう見ても30輛以上は見えています!!』
確かに部下の言う通り、高台から見える砲塔は彼女達が開示した
車輌数を遥かに上回る。
「ちっ…偽物か!どれかに本物が紛れているのだろう!
それと、乙骨隊は今どうしている?」
『乙骨隊は市街地を別方向から迂回しつつありとの事!』
『副長、アレを!』
「むっ…御令嬢…。」
長代が双眼鏡を覗くと、高台にダックインしたタシュ1号車の
砲塔ハッチから身を乗り出すみほの姿が。
競技用装甲服を着込んだその姿は、ゴーグルで覆った目元しか見えない。
「(安全な競技の為とは言え、あんなテロリストやゲリラ紛いの御姿になられて…
見るに堪えん。何としても邪流の夢から覚まさなければ!)
各車距離500まで詰め、牽制で一斉射を行い、直ぐさま背後の市街地に入れ!
打って出た所を、乙骨隊に側面攻撃させるぞ!」
『えええっ?!どれを狙えば良いのですか?』
「当てずっぽうで良い!引きずり出す事が最優先だ!」
『『『『『はい!』』』』』
「射てぇ!!」
長代の号令一下、9門のKwK44/1が一斉に75㎜弾を放った。
視点・鬼皇流本隊
「被弾した者は居るか?!」
『いえ、全車健在、損害は皆無です!!』
「よーし…総員… 思 い 切 り 笑 い 飛 ば せ ! ! 」
何の因果か、長代中隊の一斉射は全て偽物に命中。
この結果に待っていたのは、鬼皇流チーム45名による一斉大爆笑だった。
視点・薄田社チーム 長代中隊
「ぐっ…馬鹿にしてぇぇぇ…!!」
『何をしているザマス!!この期に及んで1輛も倒せていないとは、
それでも西住流の師範ザマスか?』
「乙骨隊長?!隊長には伏兵をお務め頂きたかったのに、今出張られては…!」
『お前が余りに不甲斐ないから、
代わりにアテクシが正面から潰してやろうと言うザマス!それっ、突撃ザマス!』
本当に役に立たない女である。
そして、この行為が薄田社チーム完封負けの決定的原因となる。
「距離500、徹甲弾装填!」
「砲撃よーい!あの勘違いお嬢様を集中砲火ザマスーっ!」
次の瞬間、みほが内部に身を隠してハッチを閉め、無線で号令を下した。
直後、薄田社チームの目の前が真っ白になった。
「「「「「ギャァアアアアアーッ!!!眩しい!!!眼がぁあっ!!!」」」」」
何と、みほの背後には強力なサーチライトが隠されていたのだ。
彼女が薄田社チームに照射したのは、
明るさ蝋燭10万本分の超強力LEDサーチライトである。
新月の夜でも10㎞先まで読書可能な代物、いくら昼間だろうが、
1㎞もない近距離でそんな物を点灯されたら目が眩むのは当然である。
「め、目眩ましだとぉぉぉおおおおお!!!この卑怯者ぉぉぉおおおおっ!!!」
「ヒイイイイイイイ!!何も見えないザマス!!!」
大混乱する薄田社チーム。そこにみほの大音声で鬼皇流各車が一斉に発砲した。
そして、この砲撃が更なる大混乱を齎した。そりゃそうだろう、砲撃は何と…
「う、後ろからだとぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお?!」
何と砲撃は背後の市街地から飛んできたのだ。
「西住流師範の免状持ちなら、敵がどこに居るのか丸わかりの状況で
芋を引いて近くの市街地に立て籠もる真似はしない。」
そう判断して、市街地の建物の向こう側から窓越しに砲撃を叩き込んだのだ。
勿論、サーチライトに向き合う形となる為、
乗員は特注の遮光ゴーグルで対策済である。
そして、ここで長代車も撃破判定を喰らい脱落の憂き目に遭うのであった。
「だ、騙された!あのメモは嘘っぱちで前方の敵戦車は全て偽物…
御令嬢が一人だけ、例の外部視察用防護バリアとサーチライトごと
偽物の砲塔に乗っていただけだったのか…!」
そう、なのはがあのメモを置いのていったのはわざとである。
勿論、作戦の内である事は言うまでも無い。
視点・鬼皇流 鉄人小隊
「時は来た!鉄人小隊、敵側面を衝く!!キンガ、続けーっ!!!」
「
そして、この隙を逃す鬼皇流ではない。
満を持して2輛のIS-4が側面突撃を敢行した。
「鉄人小隊が動いた…ライト消灯!続けて射ち捲れ!!」
みほの号令でサーチライトが消灯。
それに合わせてISー4が轟然と122㎜砲を叩き込む。
「グワーッ!!ヤラレターッ!!!」「こ、このぉぉぉ!!」
流石に社会人リーグ優勝チームだけあって反撃してくる車輌もいるのだが、
目が眩んで平常時の様な射撃はままならない。
砲塔正面、合計400㎜の装甲に阻まれ、まるで効き目が無かった。
「流石ISー4なの!何ともないの!!グズグズしては居られないの!
箒ちゃん弾種
「はい!よい…しょっと!」「ホウキ、装薬も忘れるなよ!」
「わ、分かっている!せーのっ!…入った!装填!」
「喰らえ!!」
「お、おのれーっ!!あのメモは三味線だったのか!!
だが只でやられてたまるか!せめて市街地のタシュを…」
運良く被弾しなかった一部のⅤ号F型が市街地に向き直った瞬間…。
BLAM!!!
「な、何ッ!!!」
何と今度はみほがいる高台から砲撃が。隠れていたのは聖王小隊。
実はあのメモに書かれていたのは事実だった。実と見せて虚、虚と見せて実。
一瞬の隙を創り出し、そこに全力全開の火力をぶちかまして
あれよあれよと15輛いた敵車輌も残すは乙骨車只1輛。
「キィィィィィぃイイイイイイイイイーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!
この卑怯者卑怯者卑怯者ーっ!!道連れにしてやるザマスーッ!!!」
最後の悪足掻きとばかりに乙骨車が主砲をみほの入った偽砲塔に向けた瞬間。
「させるか!!」
パッカァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン…ザクッ!!!
なのは車から放たれる122㎜砲の砲声と、
何かが折り取られて宙に放られ、地面に落ちて突き刺さる音が。
その正体に一同驚愕した。
「ああああっ!!ほ、砲身が!!根元からポッキリと…」
「「「「「叩き折られてるぅぅぅぅぅぅぅうううううう!!!」」」」」
何となのはは乙骨車の主砲に砲弾を叩き込み、
砲身を叩き折って砲撃不能に追いやった。
「(これこそ鬼皇流射法奥義『
記録映像で『彼女』がそう呼んでいたこの射法、名前はともかく、
その本質は『装甲厚に関係なく、一撃で無力化させる』。
砲身全損が即撃破判定とされた昔なら、フラッグ戦を一発で終わらせられる絶技、
回避する方法は砲身を隠す、即ち攻撃を放棄する他無し…まさしく奥義なの!)
今なのキンガ!!トドメヲサセー!!!」
「射ち方初メ!!」
そして、キンガ車が放った122㎜弾が乙骨車の砲塔側面を直撃。
貫通、撃破判定を示す白旗が上がった。
『そこまでぇ!!薄田社チーム30輛、全滅確認!勝者、大洗・IS学園連合!』
コレにてゲームセット。ここに社会人リーグ優勝者、薄田社チームは全滅し、
鬼皇流の旗揚げ戦は1輛の損失も出さない完全勝利で幕を閉じたのであった。
この程度の奴等が社会人最強なのか?と自分でも思う。
でも、指揮官がへっぽこで、
エース姉妹の連携前提の戦い方が主眼なのに片割れを速攻で潰され、
しかも相手は冷戦末期以降レベルの長距離砲戦可能…となれば、
負けても仕方ない…位には…なったかな?
原作未登場のAFV紹介 その13
Eー50
WWⅡ最末期にドイツが計画した次世代戦車開発計画Eシリーズの中戦車担当。
Ⅴ号戦車の後継車輌を予定していたとか。
もしかしたら完成したらパンターⅢと呼ばれていたかもね。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長7.20×車幅3.70×全高2.90㍍
機関 マイバッハ製 V型12気筒ガソリンエンジン
「HL234完全版」1,200馬力(史実:900馬力)
最高速度 60㎞/時
重量 60㌧
乗員 5名
武装
主砲:71口径88㎜砲「8.8㎝ KwK43」×1
機銃:7.92㎜機銃「グロスフス MG42」×1
装甲(単位:㎜)
防盾 80
砲塔 前面 側面 後面 天板
185/80/80/40
車体 前面 側面 後面 天板 底板
100/60/60/40/40
史実との変更点
史実で900馬力しか出せなかった試作品のHL234エンジンと違い、
期待されていた最大出力1,200馬力を発揮できる
過給器付きの完全版HL234の搭載計画が見つかり、そちらを搭載。
砲塔はⅤ号F型の使い回しでは無く
Ⅵ号B型によく似た新規設計版の設計図が見つかったので、
Ⅴ号F型にはデカすぎて搭載できなかったKwK43も問題なく搭載可能だった。