高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 いよいよ全国大会の予選リーグも間近である。
この時期になると、各校は学園艦への偵察活動を盛んに行い、
情報収集に励むのだが…。


第20話  敵を訪ねて三千里です!

「さて…今大会、予選リーグ1回戦の相手は三千里農業高校である!」

 

 みほが部員達を前に訓示する。口調の変化に部員達も慣れた様だ。

 

「IS学園の調べにより、既に同校のチームは車輌を東雲特車からの寄贈を受けた

ナウエルDL43中戦車で統一している事は明々白々!」

 

 使用車両の情報に関しては大洗・IS学園連合チームは圧倒的有利である。

何しろ自校を含め、今年の大会使用車両は全てパトロンの東雲特車製なのだ。

何処に何を寄贈したのかを全て把握しているメーカーの筆頭株主(セシリア)大株主(なのは)

同盟相手のチームに居ると言う時点でそのアドバンテージは絶大だ*1

 

「この通り、ハード面においては当方が基礎性能で勝る事は明らか。

だがしかし、それが覆るのが戦車道である!」

 

 尚、大洗側は機密保持の為チームが活動休止した

薄田社社有の訓練場に教員ごと移動し、そこで授業と訓練に勤しんでいる。

これではどこのチームも入り込めまい。

何しろメンバーが筆頭株主を務める会社の子会社の私有地なのだから。

当然、IS学園も以下同文である。

 

「よって更なる情報収集の為、あんこう号装填手、秋山優花里に対し

三千里農業高校への潜入を命ずる!」

 

「お任せ下さい!推しの戦車を駆る高校のチーム、

徹底的に調べ上げて情報を持ち帰ってご覧に入れます!」

 

「宜しい、決行は今月X日とする。生徒会執行部には当該生徒の

当日の公欠の手続き申請に取りかかって頂く!」

 

「あいよ、任せといて!」

 

「では、本日の訓練を開始する!一同、茂武コーチに礼!」

 

「うむ。早速始めるとしよう!」

 

 防衛軍の現役将校故、どうしても本業を外せない亜美に替わり、

流派違いとは申せ、社会人リーグ優勝チームのエースをコーチとして迎えた事で、

大洗戦車道チームの基礎練度は目覚ましく向上していた。

 

 また、訓練に際して族長(タシュ)鉄人(スターリン)の両小隊は

長距離砲戦を重んじる鬼皇流の流儀に基づき兎に角行進間射撃を徹底した。

内膅銃や弾薬のメーカーの全面バックアップのお陰で

低コストで思う様射撃訓練が出来るとあって、

大洗・IS学園共に目に見えて練度が向上している。当面の目標としては、

3km先の移動目標に3発中2発以上命中させる程度の精度を目指しているが、

今のペースなら、順調に勝ち進めば全国大会決勝までには

全員達成出来る日も夢では無い様だ。

 

 

 

 三千里農業高校 学園艦 搬入口

 

 そして潜入作戦決行当日…学園艦と本土を行き来する

売店やコンビニの定期船の1隻に三千里農高の制服を着た優花里の姿が有った。

 

「思えば他校の学園艦に乗るのは初めてか…。さあ、行こう!」

 

 優花里がいざ甲板に上がるとそこは一面の田園地帯だった。

 

「『三千里の前甲板は農地だらけ』…事前の衛星写真で見た偵察通りですね。」

 

 戦車道広報等での調べで、三千里は使用車輌をナウエルで統一し、

同好会の部への拡張記念にアンツィオに親善試合を申し出た結果完敗し、

今年収穫した野菜を同校に半分進呈する事を

約束させられている事が分かっている。

 

「お陰で収入源の一部を徒に失った事で、最近は周囲から白眼視されている…か。

明日は我が身、桑原桑原。」

 

 そうして、生徒を装って戦車道部の部室に見学の申請を行うと、

すわ入部希望者か?という事もあり、部室や車輌の見学は問題なく許可された。

 

「やあやあ、良く来たね!アタシが戦車道部部長のマルコだよ。」

 

「ど、どうも、二年次の秋山です。」

 

「それじゃ、案内するから付いてきてね。」

 

「はい、本日は宜しくお願いします。」

 

 そうして、マルコの案内で優花里は車輌倉庫内部へ潜入した。

 

「これがウチが使っている戦車、アルゼンチン製のナウエルDL43だよ。」

 

 ポーランド製7TP双砲塔型と並ぶ推しの戦車が眼前にある。

その事への高揚感を隠しながら近付くと、優花里はある異変に気がついた。

 

「あれ?ちょっと砲身が伸びてませんか?前見た時は車体より突き出て

無かった様な気がするんですが…?」

 

 流石に推しの戦車である。優花里は瞬時に変化を見破った。

 

「そうなんだよぉ。最初に積んでいた主砲…クルップM1909は

アンツィオとの練習試合でガッキンガッキン跳ね返されてさぁ…。」

 

 そりゃそうだ、P43bisもセモヴェンテ75/46も

前面装甲の厚さはあのⅥ号E型と同じ100㎜。

それだけ厚いと明治末期の75㎜砲で射貫くのは

対戦車榴弾(HEAT)でもない限り無茶が過ぎるし、

同砲にそんな砲弾は配備されていない。

そんな訳で、三千里側はナウエルの主砲を換装していたのだ。

 

「まあ、史実での換装案があったボフォース製

40口径75㎜野砲への換装を日戦連に申請したら、

『メーカーに詳細が残っていないから史実通りの再現ができない*2

って言われて却下されちったからねぇ…」

 

「そうなんですか。じゃあ、今搭載しているのは何ですか?」

 

「それはね、日戦連から代案として、同じ40口径75㎜砲である

アメリカ製M3戦車砲への換装が許可されたんだ。

おまけにエンジンと変速機も改装して貰って、

何とか路上で48km/時出せる位にはなってるんだ。」

 

「へえ、どこの会社に頼んだんで?」

 

「肥後重機って所なんだ。

それでね、整備に来た人がまた凄いんだ!」

 

「ええ?誰ですか?」

 

「今度戦う大洗・IS学園連合の隊長さん…例の鬼皇流の家元と同じ名字だから

聞いて見たら、実の親子なんだって!」

 

「へえ!ご家族の方、相当怒ってたんじゃ無いんですか?

向こうの家元さん、記者会見でああまで言ってましたし…。」

 

「まあ、家元と次の家元さんは絶対に潰さないと!って気なんだけど…、

お父さんは、『娘の成長を喜ぶべきか、

家族を引き裂いた行為に怒るべきか、凄く複雑だ』って言ってたんだ。」

 

 Y染色体の無い一夏は特例で許可を得たが、戦車道は男子禁制。

父の常夫はそこまでみほに敵意を持つ理由はない。

 

「そうなんですか。そうそう、

他の部員の方とかともお話をしたいんですが…。」

 

「ああ、これから練習が始まるから、その時にでも。」

 

 こうして、優花里は丸一日かけて練習風景を見学し、

他の部員とも対話を行い、夕方には離艦の為、マルコ達と別れた。

 

「大会、頑張って下さいね。相手は相当ヤバいみたいですけど。」

 

「ま、まあね。それで、聞きたいんだけど…。」

 

「何でしょう?」

 

「君、この時期に見学に来るって事はひょっとして入部希望なのかな…?」

 

「うーん、私1人っきり今から入ってもお役に立てるとは思えませんよ。」

 

「あっ…。」「そっか…そりゃそうだよね。」

 

「すいません、只の冷やかしみたいな真似をして。それじゃ、本日はこれで。」

 

 こうして、優花里はまんまと去って行った。

 

 

翌日…

 

「マルちゃん、向こうが使用車両を開示してきたよ!」

 

 そう言ってタマが持ってきた書面には以下の内容が記されていた。

 

「次の試合、大洗・IS学園連合の使用車両はこちらになります。

 

ISUー122BM×1

ISー4×1

44M タシュ×5

44M イシュトヴァーン×3」

 

「ISUー122BM…?」

 

「今調べたら、60口径の122㎜砲を搭載したソ連製の駆逐戦車なんだって。

それとマルちゃん…かなりヤバい知らせが有るんだ。」

 

「え?何?」

 

「昨日きた子…多分スパイだよ。

だってうちの学校の2年次に、秋山って名字の生徒がいなかったんだから!」

 

「えっ…?」

 

「うちの情報、片っ端から持ってかれちゃったみたいだね…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁああぁあああぁああぁぁぁああああぁぁああ~!」

 

 マルコはただ絶叫するばかりであった。

 

*1
何しろこの二人で東雲特車の株の53%=過半数を抑えているので、二人が賛成したら社長の束も逆らえないのだ。

*2
要するに作者がスペックを調べきれなかった。悲しい…




原作未登場のAFV紹介 その6・改

ナウエル DL43・三千里カスタム

 アンツィオとの戦いで惨敗した事から、収入源を徒に失って白眼視を受けている
三千里戦車道チームが再起を図って改装したナウエルの姿。

寸法   車体長6.22×車幅2.33×全高2.95㍍
機関   FMAーロレーヌ・ディートリッヒ製
     W型12気筒ガソリンエンジン「12EB・肥後重機カスタム」
     450馬力→540馬力
最高速度 40㎞/時→48㎞/時
重量   35㌧
乗員   5名

武装
主砲:30口径75㎜砲「クルップM1909」
          ↓ 
   40口径75㎜砲「M3」×1
機銃:12.7㎜機銃「ブローニングM2」×1
   7.65㎜機銃「マドセンM1926」×3

装甲(単位:㎜)
防盾    80
砲塔    前面 側面 後面 天板
      80/65/25/25
車体    前面 側面 後面 天板 底板
   55~80/50/25/25/25

史実との変更点
1・主砲
 史実で換装計画のあったボフォース製40口径75㎜野砲への換装を日戦連に申請したが、
「メーカーに詳細が残っておらず、史実に忠実な再現が出来ない」として却下。
その替わりとして、同じ40口径75㎜砲である米国製M3戦車砲への換装が許され、
そちらに換装。

2・動力系統
 史実では重量35㌧の中戦車にも関わらず、懸架装置に軽戦車向けの物を導入した結果
重量過多で故障を頻発した上、履帯も誘導輪と上手く噛み合わず、
調整を間違えるとすぐ外れる等足回りが問題だらけだったので、
東雲特車が安全対策の名目で製造過程で足回りの欠陥を修正していたが、
この度西住家の婿、常夫の勤め先である装軌車専門の整備会社「肥後重機」に
動力系統のチューンアップを依頼し、出力90馬力増と変速機の調整により、
整地での最高速度が48km/時まで向上した。
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