高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
しほは鬼皇流を、そして己の戦車道を明文化するまでに至ったみほを
一人前と認める他ないと悟り、その上でみほ本人から彼女の本心を聞きに来たのだ。
これに対し、みほは改めて鬼皇流創立はしほによる西住流の専決体制を確立し、
勝利至上主義思考を放棄して再編させる事が目的であり、
それさえ果たせば分家の許し以外は求めないし、両流派の共存も認めると答えた。
勝利至上主義思考の完成形としての一撃必殺を目の当たりとし、
その様な物を理想と掲げる事の沙門しさ、惨めさを見せ付けられたしほは
大会中に家元の座をりほから奪い取り、
新家元の名において勘当撤回の上で分家を認めると約束。
みほも母が正気を取り戻しつつある事を知り、家元を継いだらまた逢おうと返す。
と、そこに婿の常夫に連れられ、家元のりほも到着したのであった。
「おのれ恥曝しの裏切り者め、よくぞのこのこと戦車道に舞い戻りおって!」
「おや?どっかでお逢いしました?逢った様な気がするんですけど?
ああ、『用済み流』の家元でしたっけ?同じ家元として並び立たれた感想は?」
「よ、用済み流…」「酷過ぎる!」
開口一番裏切り者呼ばわりするりほに対し、カウンターの如き用済流呼ばわり。
実の祖母相手に早速わざと間違った名字を、それも屈辱的な間違え方をするみほ。
りほを完全に見限っている事の証だ。
今までのみほを知っている両親だけに、想像も付かないセメント対応にドン引きだ。
「誰が用済みじゃ!元孫とは申せ、西住の看板に泥を塗った上、
戦車道から身を退くといっておきながら謀ってのこのこ舞い戻り、
挙げ句外法に手を染めた腐れ外道め!この世から戦車道を消し去る気か?!
法の許しさえ有れば、簀巻きにして履帯で轢いてやりたい位じゃ!」
「元ねえ…自分で言ってるだけでしょ?お姉ちゃん言ってたよ。
勘当なんて法的には出来やしない、それがこの国のルールだって。」
その通り。前にまほがみほに語った通り日本に親子の縁を消す方法は存在しない。
厳密に言うと方法は有るには有るのだが、その対象は15歳未満。
当たり前だが、高2で16歳のみほは対象外だ。
「とうに聞いておるわ!全く忌々しい!
悪魔に魂を売り渡し、本家筋を一夜で没落させるだけならまだしも、
薄田社の未熟者共が不甲斐なくも負けおったせいで皆こ奴に靡きおる!
判事まで『お孫さんを褒めてやれ』じゃと?!けしからん!」
「お母様、仕方無いでしょう。それが法なのだから。
戸籍も成人していないと分けられませんし…。」
鬼皇流創設の際家元は己一人で良い、日本中の流派は無価値と断じたみほに対し、
家元の名において本邸出禁の上西住一族への接見禁止及び相続廃除を申し立て、
戸籍も分けると実質の勘当宣言を行ったりほだったが、
その実、物の見事に勘当に失敗していた。
何しろ薄田社戦での勝利により戦車道ファンの間で鬼皇流の名が上がった結果、
運悪く応対した者が悉く戦車道関係者の身内だった事が災いし、
名を上げた孫を褒めてやれとなだめすかされるばかりで申請は全て却下され、
出来たのは破門と本邸への出禁だけというしょうも無い結果に終わったのだ。
勿論、自分の流派を持つみほには効果が無い。
「勝手に家元を名乗って西住の名を無価値と罵るという侮辱を働いたのじゃぞ!
ましてや、二度と蘇らせてはならん外法の流派を蘇らせるとは!
何故斯様な輩がワシの遺産を継ぐ権利を消し去れぬのじゃ!
じゃが、改めて申すが茨城に逃げた時点での破門は解かん!
本邸へ顔を出す事も決して許さん!」
この通り、社会人リーグ優勝チームを完封した事でみほ率いる鬼皇流の武名は
最早全国に広まりつつ有り、
「正に鬼の女帝、西住と島田に続く日本戦車道の第三極か?」
「高校生の身で家元を張るのも納得の正しく真の天才」
「本気で日本の流派を統一しかねない怪物の群れ*1」
「今年の全国大会への鬼皇流参加は、わんぱく相撲に現役横綱乱入レベルの暴挙」
と世間の戦車道ファンからは恐れ戦かれ、
同時にこんな天才を勝利至上主義に惹かれた分家親族と後援者やメディアに
担がれるまま人命より勝利を優先するかの如き流儀の下に吊し上げ、
挙げ句の果てに逃げた先での鬼皇流創設宣言に対しあの様な声明を発した
りほは滅茶苦茶バッシングを受けているのだ。
当然、心情的に優位なのはどちらか明白だ。
「わぁ~ひっど~い!と言うか、さっきから元孫を腐れ外道呼ばわりとか口悪~い!
礼節と淑やかさと慎みと凜々しさの欠片も無~い!そうですか~!
じゃあ、一流派の家元らしく敷居をタシュで踏み潰して乗り込んであげるよ!
あ、もっと重いISー4の方が良いかも!許さないんでしょ?どうするの?殺す?
出来ませんよね?この期に及んで他流試合の一つも申し出てこない腰抜けには。」
「こ、腰抜けじゃとおおおおおおおっ?!」「あっ、間違えた。腰曲りだった!」
もう完全に祖母を笑い物にしてからかっているみほ。
「お嬢様、もうお止め下さい!大奥様はお嬢様が憎くて
なさっている訳ではないのです!唯、家元として
余りに重い物を背負われておられるが故、そうせざるを得ないのです!」
堪らず菊代が止めに入るが、みほはまるで相手にしない。
「ああ、菊代さん居たの?悪いけど、私はこの用済みを戦車道界から
蹴り出したい位憎んでるから庇わなくて良いよ!
と言うか、余りに重い物?ふーん、その気持ち、分かるよ!だって家元だもん!」
「「「「え?」」」」
「えって、…分からないと思った?
態 々 背 負 う 価 値 も 無 い 物を背負う自分は素晴らしいって
斜め上の自慢をしてるかっこ悪い事!」
「背負う…価値も無い…じゃと?」「みほ…何を、言ってるの?」
「何って…鬼皇流とは何か?の答えだよ。
用済みさんが背負ってるのって、要は武道として心身を鍛え、身を修める事とか、
護るべき伝統と格式とか、後継者を育て鍛える事とかでしょ?でもねぇ…
私にとって、そんな物はなーんにも背負う価値も無いよ!当たり前だよねぇ!」
「馬鹿な事を!これは武道の家元として背負うべき当然の義務…」
「ハイ、ストーップ!!正にそこが大間違い!!」
しほの横やりを大間違いと切り捨てるみほ。
何故なら、彼女には、否、鬼皇流には既存の流派とは決定的な違いがある。
「家元は私一人居れば良い、国中の既存の流派は無価値って言葉に踊らされて
もう一つ大事な事を忘れて無い?鬼皇流と既存の流派の決定的な違いを。」
「な、何の事を言っておる?」
「忘れたの?鬼皇流は世界初の『戦車道を武道と認めない』流派だって事。
鬼皇流にとて戦車道とは『戦車と共に散って尚戦いを求める亡霊と、
完成する事無く歴史の闇に消えた全ての戦車への鎮魂の祭儀』だよ!
だから、作法は全部宗教儀式として必要だからやってるだけ!
ほら、ウチのパトロンの東雲特車が他の学校に寄贈した車輌、
あれ、殆ど実戦投入されなかった戦車と試作途中で完成しなかった戦車だよ!
そういう車輌が唯思いっきり暴れれば、それで十分!
もうそれだけで何の流派がどう戦おうが、それもみーんな鬼皇流の内!
と言う訳でこの大会が終わったら、もう鬼皇流は勝ち負けとか
ど~~~~~~~~~~~~~でも良くなるもんね~~~~~~~~~~~~~!」
「「!!!!!!!!!!!」」
「戦車道は武道に非ず…じゃと?」
「……思い出した…この子は…確かに、戦車道を武道と認めないと言っていた!
(そうか…何かがおかしいと思っていた…独戦車を揃える黒森峰に
Ⅴ号・Ⅵ号等の実戦投入された車輌を1輛も送らなかったのは、
そう言う事だったのか…!!)」
しほは何か嫌な予感に気がついた。あの引っ込み思案なみほが自信に満ち溢れ、
家元として、最高権威として君臨してきたりほ相手に言いたい放題している。
まさか、更にとんでもない裏を隠しているのではないか?そんな予感がしてきた。
「ああ、まさかとは思うけど、勝ちに拘らないなら弱い流派だから
弱いまま西…用済み流に負けろとか舐めた口利いたりしないよね?
ってか強いって何?勝つって何?強さって我が儘を押し通す力でしょ?
勝利って我が儘を押し通し切る事でしょ?それさえやり遂げれば、
上っ面の試合結果は枝葉じゃん!禁欲?克己?そんな物高が知れてるよ!」
「あ、あ、あ…」
余りにも衝撃的なみほの持論に顔が引き攣る西住家の面々。
「大体さ、用済みさん家の流派って
『勝利を最優先します、その為なら犠牲も厭いません、だから私達は強いです』
なんて理屈にならない言い分が根っこにあって、その思考に背いた私を
恥晒しだの面汚しだの、外法に手を染めた冥府魔道の流派だの罵ったけどさぁ…
そりゃ、私やなのはさんは人として色々とおかしい事、異常な事は知ってるよ。
でも、それは私が見付けた己の戦車道を鍛える事以外どうでも良いからだよ。
頭の中には戦車道の事しかないんだ。
他の流派なんかそもそも道を走ってもいないから正道も邪道も無いよ!
だって『勝負の世界は、より鍛えた方が勝つ』これ以外の真理は存在しないもの!
だからさ…この場ではっきり言ってあげるよ。
戦車道に限っては用済みさんの方がずっと怠けてるし、不純物や言い訳だらけ!
これが、世間から恐れ戦かれる私と後ろ指を指される用済みさんとの差だよ!
これでも世間並みの伝統、格式、責任感だのが大事なら、用済みさん…でしたっけ?
アナタは所詮唯の人だよ。親が家元だから家元になれただけの。」
「お、おのれ~~~~~~~っ!ワシが唯の人じゃとぉぉぉおおおおお?!!
そんないい加減でちゃらんぽらんな小娘に、跡目なぞ育てられると思うてか?!!」
「え?子供を後継者へ育成するの?やると思った?
そんなの子供がやりたかったらで十分じゃん!
だってさ、私最初から決めてたんだ…鬼皇流家元としての西住家は私一代でお終い!
その先は仲間の誰かに任せちゃえってね!!もっとはっきり言ってあげるよ!
鬼皇流は家 元 を 世 襲 し な い !」
「……………!!……………!!」
「家元を非世襲とする流派」。武術界中探せば何処かには実在するだろう。
実子の後継者に恵まれず、養子縁組や婿入りという形で
仕方なく血の繋がらない者を後継者にした例などいくらでもある。
だが、少なくとも日本戦車道界で初めから家元の非世襲を明言した流派等史上初。
前代未聞、空前絶後と言って良い暴挙の中の暴挙である。
「ね?そんな重い物背負ってるから、戦車道に向き合えない。
おまけに娘に真面に親をやらせられない。聞いてたでしょ?
あの時の事だって、ホントは褒めてやりたかったって言ってるのに
責める事しか出来なくさせられて…お母さんが不憫すぎるよ!!
もう40過ぎた自分の子供に意志を曲げさせてまでそんな事させて
生きてて恥ずかしくない?ねぇ?」
「(あ、甘かった…みほが私に西住流と共存可能だと言ったのは、
高校戦車道に関しては根幹の書き換えが、もう殆ど終わっているからだったのか!
…負けた!この子は、みほはもう、この世の者では無い!
余りにも度を超えた、どうしようも無い怪物的天才…!
東雲特車の車輌を受け取った時点で、西住流は…流派として既に負けていた!)」
戦車道を武道として認めず、高校戦車道における使用車輌を悉く
『完成する事無く歴史の闇に消えた戦車』で置き換え、
ゆくゆくは大学、社会人も同様に染め上げて行く事で各流派をそっくり喰い、
後世に残すべき修身の教えを何一つ持ち合わせず、鎮魂の儀式へと書き換える
本当に流派の体を為しているのか疑わしい流派、鬼皇流。
今、その本性を知った事でしほは愕然とした。
目の前の娘みほは最早人ではない。この世の者ではないナニカだ。
「大体お母さんもお母さんだよ!本当に強さや勝つ事が尊いなら、
我慢せずに褒めてくれれば良いのに!それが強さだよ!強い人は我慢なんかしない!
それを教えないなんて、ほんっと使い物にならない家元だなぁ!本当に家元なら、
他流試合の一局くらい申し出てきたら?ぶぁ~~~~~~~~~~~~~~~か!」
「こ、このヤクザ者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「みほ、止めなさい!!お母様ももうその辺で…!」「二人とももう止めるんだ!」
見かねた夫妻が割って入ろうとしたその時だった。
「控えぃ、下郎!」
茂武姉妹、まほとエリカの時もあった謎の現象。みほの口から出た言葉なのだが、
どう考えても別人にしか聞こえない威圧感の声と言葉遣い。
「「「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」」」
「何事あろうとも進むのが西住。強きを、勝利を尊ぶのが伝統…トナ?
笑止…余の前には進み出ず、挑みもせず、勝ちもせず。所詮は上辺だけ…デ、アルカ。」
りほを指して言葉を続けるみほ(?)。しほとりほは蒼褪めて腰を抜かし、
常夫は訳が分からず狼狽えるばかりであった。
「
消えよ、この次は貴様の全てを水泡に帰してくれようぞ…」
それだけ言うと、みほ(?)は背を向け、その場から立ち去ろうとする。
「ヒ、ヒイイイイイイ!!しほ!!た、直ちにOGと師範共を呼び集めるのじゃ!!
や、やはり…こ奴はこの世に在ってはならぬ!殺さねば!!殺さねばならぬ!!」
「何と仰られるのですか!勘当宣言したとは言え、孫を殺せ等と!!」
「孫殺しの悪名なぞ知った事か!!例え吊されようとも、
ワシはこ奴をこの世から叩き出さねばならぬのじゃ!!こ奴を生かしておけば、
我が一族所か、戦車道がこの世から消え去ってしまうのじゃぁああああ!!」
とうとう正気を失い、みほ抹殺を門下に命じようとするりほ。
その様は伝統に固執する老害と言うより、何も知らぬ者がかつて
とてつもない災厄を引き起こした禁忌に触れた事で、
その時のトラウマを思い出させられた唯の老人の様であった。
「お母様、落ち着いて下さい!!あれは私達も知らない唯の隠し芸の類です!!
あの子はもう死んだのです!!帰ってくる等有り得無い事なのです!!」
「しほ!このような外道を庇うのか?!西住流を裏切るのか?!
こ奴を放っておけば、戦車道が消えて無くなると何故分からん!!
おのれ、さては結託したか?!まほがあの時言っておった
ワシを蹴落とさんとするこやつの企てに乗って不孝を働くのか裏切り者?!」
と、そこで闖入者が現れた。
「おーい、先輩、早く帰り…おや?」
何と今度は競技用防護服姿の織斑一夏その人。みほを探して回っていたのだ。
世間一般には日本戦車道の全流派統一を目論む恐怖の新興流派だと思われている。
鬼皇流旗揚げの瞬間、西住家の知っているみほはもう消滅していたのだ。
原作未登場のAFV紹介 その9・改
IS-4 大洗・IS学園学園連合カスタム
レギュレーション違反の筈だが「何故か」国際共通ルール下で使用可能とされる
ソ連重戦車ISー4のカスタム版。ディーゼルエンジンを束がチューンした事で、
出力が驚異の44%増。
最厚400㎜の装甲を50km/時超で運べるのはやはり大きかった。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.60×車幅3.26×全高2.48㍍
機関 チェリャビンスクトラクター工場製
V型12気筒ディーゼルエンジン・束カスタム 1,080馬力
最高速度 55㎞/時
重量 60㌧
乗員 4名
武装
主砲:43口径122㎜砲「Dー25T」×1
機銃:12.7㎜機銃「DShKM」×2
装甲(単位:㎜)
防盾 150
砲塔 前面 側面 後面 天板
250/200/170/30
車体 前面 側面 後面 天板 底板
140~160/160/100/30/30