高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 みほの本音を直接聞きに来たしほに、改めて自分の目的がまほに語った通り
しほが家元を継承して流派を専決し、勝利至上主義を捨てる事だと返答したみほ。
勝利至上主義の行き着く先を見せつけられたしほはそれを聞き入れる他なく、
大会中に母りほに家元から降りて貰い、代替わりを成し遂げると約束した。

そこに常夫と菊代に連れられて家元のりほが到着。勝手に流派を興し、
西住流を虚仮にした物言いを外法に手を染めたと憎しみを隠さないりほに対し、
この世の者とも思えない発想の鬼皇流の概要を説くみほに皆震え上がる。
その物言いに、りほは最早みほは生かしておくだけで戦車道への災厄となる、
殺さねばと口走る程に正気を無くしていた。

 と、そこにみほを探しにきた一夏の姿が。果たして、
高校戦車道への競技参加許可を得た人類初の男に、西住家はどう反応するのか?


第25話  人類初の男です!

「おーい、先輩、早く帰り…おや?」

 

「ああ、えーと、IS学園の…織斑…君だったっけ?」

 

「ええ、探したんですよ…あの、先輩?あの人達…どちら様?身内の方ですか?」

 

「ああ、あの人達?私の一応…両親と、お祖母ちゃんだった人。

あと、実家に仕えてる女中さんの責任者。」

 

「一応って…一応って何よ、一応って。」「ひ、酷い…!」

 

「あ、ドーモ、ハジメマシテ。IS学園の織斑一夏です。」

 

「オリムラ…イチカ…?あれ、何処かで聞いた事が…あっ!」

 

「ま、まさか…ISを動かせる人類唯一の男、織斑一夏?!」

 

「あ、知ってるんですか!はい、そうです!その織斑一夏なんです!」

 

「え?!お、おおおおおおおおお男?あ、アナタ男よね?どうして男が競技に?!」

 

「おのれ小僧!さては男女を偽ったか?!

戦車道を男子禁制と知っての狼藉か卑怯者?!」

 

 男子禁制の競技に堂々と男の身で参加している現実に、

事情を知らない西住家の面々は慌てふためくばかり。

しかし、一夏の競技出場は合法である。何故なら…

 

「あれ、御存知じゃないんですか?

俺、日戦連からちゃんと許可貰って参加してるんです。ほら、コレ見て下さい。」

 

 一夏は一枚の文書を見せる。それは日戦連から発行された競技出場許可証だった。

 

「競技…出場…許可証…?」「確かに児玉理事長の署名が入っておるが…。」

 

「実は俺、男だけど生まれつきY染色体が無いんです。

男の身でISを動かせるのもそれが原因で…。」

 

「「はぁ?!」」

 

「Y染色体が無いですって?!それでは…」

 

「はい、ルール上、俺の競技出場を禁止する根拠が無いって事になって、

連盟から出場許可を貰ってさっきの5km狙撃やった人の車輌で

装填手、やらせて貰ってるんです。」

 

「「( Д ) ゚ ゚」」「な、何とぉーっ?!!!」

 

 流石の西住家も男の身ながら完璧にルールの穴を衝いて

出場許可を得た一夏に唖然呆然。

 

「と言う訳で、俺の競技参加は連盟公認なんで、

それだけは理解して頂きたいんですが。」

 

「うーむ、連盟が許すなら仕方無い…。」

 

「成る程、事情は分かりました。そう言う事なら文句は言えません。

では、こちらも改めて名乗りましょう。

私がみほの母で西住流次期家元のしほです。

こちらは夫の常夫、そして私の母で現家元のりほです。

で、彼女が当家の女中頭の井手上菊代となります。」

 

「アッハイ…西住先輩には、いつもお世話になっております。」

 

「西住だとぅ?こ奴は外法に手を染めた裏切り者じゃ、既に勘当しておる!

西住姓を付けて呼ぶ事は許さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(◎谷◎)

 

あ゛ぁ?!

 

「「「「ビビクッ!」」」」

 

 りほの言葉に突如一夏の態度が豹変する。

 

「ふーん、先輩を西住って呼んじゃいけないんだぁ…そうなんだぁ…。」

 

「な、何ですか急に?」

 

 突然挑発的な口調になる一夏。

当たり前だが、一夏は鬼皇流家元後見人の一人千冬の弟である以上、

西住家周りの事情は全て知っている。

 

「じゃあ先輩、みほの名前ももう要らなくね?勝手に新しく名乗っちゃおうぜ。

うーん、先輩は鬼皇流家元だから名字は鬼皇で良いや…で、名前は…あ、そうだ!

みほの『ほ』を残して…鬼皇流の『き』をくっつけて…きほ…

ハイ!西住を名乗っちゃいけないなら、先輩の新しい名前は『鬼皇きほ』でーす!」

 

「絶対ダメッ!!」

 

 一夏考案のみほの改名案を激しく拒絶するしほ。

 

「そうじゃ、その名前は益々許さん!!その様な名を名乗るなら、

例え人殺しの罪を背負おうとも貴様等を履帯に掛けてくれる!!」

 

「はぁ?俺知ってるんだぜ?15歳からは改名に親の許可は要らないって。

西住を名乗らせないのなら、こっちが勝手に好きな名前に変えても良いだろ?!

俺だってアンタん家と本家のフルボッコ家の関係は

千冬姉となのはさんから全部聞いてんだよ!つーかさ…調子乗んなよテメェ…。」

 

「ヒィ!」「い、いきなり何を…!」

 

 いきなりキレる一夏。彼とてセシリアと並ぶなのはの一番弟子。

理不尽に目上面をする輩へのキレ芸は、既に見たり経験したりで会得していたのだ。

 

「やれ先輩を殺さないと一族が滅ぶ、戦車道が滅ぶだの変テコな妄想並べ立てて…

で、止めようとした自分の子供に言うに事欠いて、

自分を蹴落とそうとしてるだの言いがかりまで付けるわ、

で、勘当しといて勝手に名前考えたら偉っそうにダメ出しし腐って、

〆は殺害予告ですかぁ?ねぇ?」

 

 一夏は怒りの形相でりほに詰め寄り、言葉の続きを叩き付けた。

 

 

 

 

(◎谷◎)

ど の 面 下 げ て …

 

「ヒィ!な、何をする気じゃ?!」

 

 

 

 

 

(◎谷◎)

家 長 面 し て ん だ …

 

「や、やめぇ!寄るな来るな…!」

 

 

 

 

 

(◎谷◎)

 

こ の 盆 暗 バ バ ア ! 

 

 

「ヒイイイイイイ…こ、こここ小僧、貴様今何と言った?!」

 

「なあ女将さん、あんた何時までこんな盆暗ババアの娘やってるんだ?

先が思いやられるぜ。」

 

「お、女将さんって…我が家は旅館ではありません!」

 

「あっ…す、すいません。おばさんって呼ぶには見た目がそれらしくないんで。」

 

「いや、そこを謝るの?!もっと他に謝るべき事があるでしょう?!」

 

「(無視して)で?天下の西住流の家元様が、俺みたいな卑怯者に何の用だって?」

 

「うぎぎぎぎぎ~っ!!最近の小僧はここまで非礼を働いて詫びも出来んのか?!

もう良い!二度と当家の者の前に面を見せるでないわ!」

 

 とうとうりほは菊代を連れて立ち去ってしまった。

 

「き、君、あれは言い過ぎだ!確かにトメさんも非常識過ぎるが、

それを差し引いても失礼過ぎる!」

 

「旦那さん!あーでも混ぜ返さなきゃ本当に女将さんまで勘当されてましたって!

俺は悪くねぇ!あのババア、先輩を生かしておけない位憎んでて、

それを庇おうとした女将さんを裏切り者呼ばわりしてた所、聞こえてましたもん!」

 

「そうだよお父さん。これでお祖母ちゃんだった人が

お母さんに何もせずに終わったんだからファインプレーとしか言えないよ。」

 

「みほまで…確かにそうだが、

これでトメさんは益々意固地になってみほを許さなくなるよ。」

 

「大丈夫だよ、誰も許しなんて請うてないもん。許せないのなら、

戦車道で勝って見せれば良い。そうすれば、何も奪われずに済むんだから。

さあ勝てる物なら勝ってみろ、下手に動いた瞬間今日の試合みたいに

超超長距離狙撃を連発して片っ端からズドンだけどね!…ってね。」

 

「もう仕方有りません。常夫さん、腹を括りましょう。世代交代の時です。

お母様では西住流の歪みを正せない。ケジメを付ける為にも身を退いて頂き、

家元の座は私が奪います。それが、私達夫婦とこの子の仲直りの第一歩なのです。」

 

「…………そうか。男子禁制の世界だから、どこまで助けられるか分からないが、

して欲しい事があれば、すぐに教えてくれ。」

 

「分かったわ。…みほ、最後に言っておきます。」

 

「どうしたの?」

 

「家元や分家親族がアナタをあそこまで責め立てたのは、

やれ十連覇を棒に振って看板に泥を塗る様な真似をしたとか、

勝手に流派を興したとか、そう言う事ではないのです。

 

アナタがあの時の事を責められた時、何て反論しました?

『仲間を無駄に失ったらどれだけ勝っても負け犬』と言いましたね?

彼女達はそれが許せないのです。過去のトラウマを呼び起こされた事が。」

 

「過去のトラウマ?昔、何があったの?」

 

「その答えを知りたければ、一つ約束なさい。この母が大会が終わるまでに

西住流の代替わりを成し遂げるとアナタに約束してみせた様に、

この大会で黒森峰と直接対峙する位に勝ち進んで見せると。

 

まほにはアナタに勝ったら全てを話すと言い渡してありますが、

黒森峰と直接対決に持ち込めば、戦いの結果はこの際もう問いません。

大会終了後、アナタのチームのメンバー全員を招待するので

必ず熊本に戻ってきなさい。

 

何故、この母や家元が『きほ』と言う名をああまで拒むのか。

何故、家元達がアナタの物言いを嫌悪したのか。その全てを話しましょう。」

 

「うん、分かったよ。必ずお姉ちゃんと直接対決するまで勝ち残る。

だから、その時は見届けに来て!」

 

「無論です。さあ、常夫さん、帰りましょう。」

 

「ああ。」

 

「そうだ、女将さん。帰る前に言いたい事があるんだ。」

 

「何ですか?」

 

「仮にも女将さんの目の前で女将さんの親を罵ったお詫びと言っちゃ何だけど…

最後に聞いてくれませんか?俺が知ってる限りでの

女将さんやあの馬鹿ババアと先輩や俺の師匠のなのはさんとの差を。」

 

「お母様と…みほの差?」

 

「ズバリ『教える奴に個人として向き合えるかどうか』の差です。

俺の姉貴…ブリュンヒルデの織斑千冬は仕事で教師やってるけど、

まだ就職して日が浅いからなのかなぁ…学園側のマニュアル通りの、

個人差の概念を余り考えてない教え方しか知らないから、教えられる側の筈の

なのはさん所か、先輩にも教える側を上達させる速さがまるで敵わないんですよ。

 

なあ女将さん、女将さんは先輩と先輩の姉貴を一個人として見てますか?

『一生自分と同じ人格を持つ事はない一個人』だって理解してますか?

それを弁えないと、女将さんも、先輩の姉貴も、この先流派を継いでも

一生先輩に勝てずじまいですよ。

 

俺等が戦車道初めて1か月そこらで社会人チームを完封出来る位やれるのは

先輩やなのはさんがそこん所を弁えて稽古を付けてるからです。

俺が知ってるのはこれだけです。俺の言葉をどうするかは女将さん次第です。」

 

「成程。よく覚えておきましょう。いずれその言葉が、当流の益になると信じて。

…もう行きなさい。仲間を待たせてるのでしょう?」

 

「そうですね。次は…先輩の姉貴と直接対決する時に逢いましょう。それじゃ!」

 

 かくして、西住夫妻とみほ・一夏はそれぞれの帰途に就いたのであった。

そして、その様子を伺う影が約一名。

 

 

 

「アレが次の相手、鬼皇流家元の家族か…相当啀み合っているわね…」

 

 そこに居たのは豪州軍の夏服を模した制服姿にカウボーイハットの金髪の女生徒。

コアラの森学園戦車道部の副長、蕨双葉(ワラビフタバ)である。

 

「(隊長を探していたら、とんでもない場面に出くわしてしまったな…

それにしても、鬼皇流の家元は相当恐ろしい女だ。

自分の母親に祖母を蹴落とさせようとするとは…

 

しかも、あの記者会見の通り戦車道を武道から

おかしな宗教に作り替えようとしているのも事実らしい。

あの名家の家元である祖母からああも殺意を抱かれる程憎まれるとは。

 

おまけに連盟の許可を得たとは言え、男を平然と試合に参加させるとは!

しかしあの超VIP、織斑一夏が試合に出てくれるのは戦車道のPRになって

ある意味喜ぶべきではあるのかもな…西住みほ…一体…彼女は何処を見ている?

戦車道を作り替えて何をしようとしている?次の試合で直に聞いて見たくもあるが…

余り深入りすると、命が危ういかも…)…んん?」

 

ふと何かの気配を察し、後ろを振り向くとそこに彼女のお目当ての相手が。

 

「あああっ!隊長!こんな所におられたのですね!さ、帰りますよ!」

 

そう言うと、蕨は隊長を「担ぎ上げた」。そして担がれた隊長が一言。

 

「グルルルルル…ヴー!」

 

 彼女の腕に抱かれている「隊長」の正体、それはコアラの森の校名が示す通り、

同校のマスコットを務める一頭の雌コアラであった。

 

 

 

そして、西住親子の帰りの車の中では…

 

「な、なあしほ、一つ聞きたい事があるんだが…

みほがいきなり恐ろしい声で話し出した後、正気を無くしたトメさんを

止めようとした時にしほがもう死んだって言っていた『あの子』って…

誰の事なんだ?」

 

「常夫さん!聞いて居たのですね?本当なら生涯隠しておきたかったのですが…。」

 

「婿殿!そちには関わりの無き事じゃ、控えておれ!!」

 

「い、いや…トメさんやしほの物言いを聞いてると、トメさんがみほを憎むのは、

『連覇を棒に振られた事や伝統と格式を虚仮にされたから』と言うより、

『物凄いタブーを犯したから』なんだとしか思えなくて…

その…僕も知らずに西住家のタブーを犯したりして、いきなり『ハイ、離婚決定!』

なんて事には成りたくないんだ。だから…そうならない為にも、頼むよトメさん。」

 

「…やれやれ、婿殿は心配性じゃの。まあ、知らずに禁忌を犯されては困るがの。」

 

「聞かれたからには、致し方在りません。お母様、構いませんね?」

 

「…好きにするが良い。」

 

「ええ。何はともあれ、今は黙って熊本に帰りましょう、向こうで全てを話します。

唯、一つこの場で言える事があります。それはあの声の正体に関してです。」

 

「声の正体?」

 

「そうです。私自身、とても信じられない事なのですが…

あの声の正体こそ、私が言う『あの子』の事なのです。そして…」

 

 しほは一呼吸置くと、覚悟を決めた様にこう続けた。

 

 

 

その名は、西住輝鳳。20年前に死んだ、私の妹です。

 




 まあ探しに来てたのが三悪魔だったら、最低でも抜刀威嚇くらいはするので、
口先だけで済ませた一夏はまだ慈悲深い方であると言えよう。
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