高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者 作:ピロッチ
森林地帯での試合。そんな中、みほは相手チームの妙な編成と挙動から、
遂に作戦の全容を見破ったのであった。
『釣り野伏…?』『って何ですか?』
『聞いた事が有る…九州は薩摩、今の鹿児島が本拠地の戦国大名
島津一族が主に好んで使用した戦法の一つだ!』
『何?!知っているのか雷電…じゃなくて左衛門佐!』
『うむ!釣り野伏とは…』
釣り野伏の単語で相手の真意を悟った様だ。
釣り野伏とは、戦国時代に薩摩の戦国大名島津氏を初めとする
九州の武将が用いた記録が残る戦法である。
全軍を三隊に分け、まず中央の部隊のみが敵に正面から当たり、
ある程度戦ってから偽装退却する「釣り」と、その中央部隊を追撃するべく
前進した敵を左右両側から伏兵に襲撃させる「野伏せ」からなり、
偽装退却していた中央部隊も反転攻勢に転じて三方から包囲殲滅する戦法である。
薩摩では無いとは言え、同じ九州生まれのみほはそういった知識があった事と、
高町マニュアルからコアラの森側の作戦を見破ってしまったのだ。
「今の説明の通り、このまま敵車輌を追撃すれば、
我等はAC4の17ポンド砲による集中砲火を浴びていただろう!」
『隊長!でもさっきの砲撃は10発飛んで来ました!
どう考えても10輛での一斉攻撃の筈です!』
確かにさっきの一斉射撃は10発飛んできたのだ。なら、10輛いないとおかしい。
平原なら距離を置く事も出来るが、森林地帯でそんな芸当はまず無理だ。
「普通に考えればその通り。だが、ACシリーズ、特にAC3なら話は別である!」
『え?!何かあるんですか!』
「あ!そうだ!分かりました!確かにAC3なら、説明可能です!」
『どういう事なの…?』
ここで戦車の知識が豊富な優花里が何かに気付いた。そして、みほが無線で総員に告げる。
「今の一斉攻撃の真相は10輛による物ではない!
『『『『『な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』』』』』
「ここからの説明は鮟鱇1に替わり
「こちら鮟鱇3、皆聞いて下さい!史実の豪国はAC4の開発に際し、
車体が17ポンド砲の反動に耐えられるかどうかの実験を行うべく、
25ポンド砲を2門水平に搭載した実験用の砲塔を用意し、
実際に斉射して17ポンド砲以上の反動を与える実験を行っていたんです!
それが上手くいった事で17ポンド砲に換装したのが、AC4のプロトタイプなんです!」
『マジで?!』『確かに1輛に2門大砲が付いてりゃ、5輛でも10発撃てらぁな!』
『じゃ、じゃあ、私達は危うく騙される所だったのか…!』
「その通り!そして、連中はAC3特別試験版を5輛持ち込み、
『それぞれ別の種類の弾頭を装填し、一斉に撃つ』事で、
25ポンド砲と17ポンド砲による総攻撃だと錯覚させた上で偽装退却を行い、
唯でさえ索敵に難儀する地形という状況で焦っている我が方がここぞとばかりに
追撃を仕掛ける様仕向けて用意した迎撃地点へとおびき出し、
本命による斉射と反転攻勢で一気呵成に殲滅する構えなのであろう!」
『では、我々はどうすれば?』
「既に手は打った!各車、これからする説明の通りに動くべし!」
『『『『『了解!』』』』』
視点・コアラの森学園隊長車・プロトAC4 1号車
「隊長、田須間小隊から報告!『おびき出しに成功した』と。」
「ヴォッ、ヴォッ、ヴォッ…」
「ええ、作戦は順調です。後は予定地点におびき寄せてもう一度AC3で一斉射撃を仕掛け、
怯んだ隙に我が小隊が17ポンド砲を射掛けつつ突撃、
同時にAC3の反転攻勢で止めを刺す。隊長の策が計算通りぴったりハマってます!」
そうなのだ、前日の作戦会議でコアラが立案した作戦の伏せ字を元に戻すと、
以下の通りとなる。
「まず連装砲を搭載した5輛は敵予想地点に近付き、
偵察係を下車させて偵察行動を行いつつ敵を誘い出し、一斉砲撃を行う。
これにより10輛の総攻撃と錯覚させて追撃を誘い、
残り5輛が隠れている待機地点までおびき寄せ、
時間差で一斉射撃を行い頭数を減らしつつ、
特別改修の5輛も反転攻勢に出て包囲殲滅攻撃を行うべし」
その内容はみほが一同に語った推測とほぼ同じである。
とてもコアラが考えたとは思えない人間顔負けの作戦だ。だが、言い換えると…
そして、早速破局の予兆がコアラの森側に齎される事になる。
「え?『8輛しかいない、ISー4が見当たらない』?」
「何?どうした?」
「副長、今田須間小隊から『敵のISー4が見当たらない』と追伸が。」
「ISー4が見当たらない?確かISー4はIS学園の陣借り参戦の筈…さては仲違いか?」
「置いてきぼりを喰らったんじゃないですか?
ほら、大洗の車輌は40㌧未満なのに、向こうは60㌧のデカブツだから…」
「いや、トップスピードはそう変わらない筈。」「じゃあ、スタックしたとか?」
「2輛同時にスタックするか?いや、もう片方が救助に向かったか…」
BLAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAM!!!!
『うわぁーっ!』『何だ?!』
突如鳴り響く轟音。待ち伏せていたプロトAC4の1輛が被弾し、
白旗と煙を上げていた。
『え?敵襲?!』『3号車がやられた!』『敵に感付かれた?』
「馬鹿な…!コアラ隊長の作戦に狂いは無かった筈!何処から看破した?!」
「ヴーーー!!」
「え?はい!通信手、全隊に伝達!
『作戦失敗、敵に看破された、腹案に移行しろ!
これより全車散開し、ゲリラ戦に移行する!』操縦手、急いで出せ!逃げろー!!」
「了解!!」
「あああっ、副長!あのISー4…フラッグが!」
「何?!フラッグ車か?!(そういえば今回のフラッグ車はISー4と言っていたな…)
フラッグ車自ら単騎駆けとは舐められた物だ!隊長、ここは集中攻撃を!」
「ヴッフ、ヴッフ!」
「了解!『総員に告ぐ!方針変更!敵フラッグ車を発見した!
全車は隊長車の元に集結しろ!集中攻撃!』」
単騎で迫る相手フラッグ車、これさえ倒せばこちらの勝ちである事から、
降って涌いた様な勝機とばかりに集結命令を出すコアラだったが…相手が悪かった。
砲塔のハッチを開け、メガホン片手に身を乗り出したのは…
「遠からん者は音にも聞け!近くば寄って目にも見よ!
三千里5km狙撃の張本人、ここに在りィイーッ!!」
「「「「「げっ!」」」」」
出てきたのはなのは本人。コアラの森側は突如現れた
史上類を見ない一撃必殺の立役者本人の登場に震え上がった。
「ヒィィィィィィ!無理無理無理!」「あんなの勝てる訳無いって!」
「馬鹿ー!怯むなー!奴さえ倒せば勝てるんだぞー!鴨乃橋、車体を狙え、撃てー!」
隊長車が競技用APDS弾を発砲。しかし、なのははとんでもない行動に出た。
「ならばこちらは…!」
何と砲塔上の12.7㎜DShK重機関銃を引っ掴み、
飛んできた砲弾を射ち落として見せたのだ。
「ギャーッ!機銃で砲弾を射ち落とした?!」
「何ィィィーッ?!どんな動体視力だ?!」「人間CIWSなんて聞いてないぞ!」
そのまま後退するISー4。勿論コアラの森側も追撃の構えだ。
「ヴルルルルルル!」「追撃だ!回り込め!挟撃して横から撃てば勝てる!」
『了解!』
隊長車と他のプロトAC4が加速して回り込み、挟撃にかかるが、
なのは車はここで前進、急加速。更にもう1発主砲を射掛け、
もう1輛プロトAC4を仕留めて逃走。拙い事に、ここでやられたのは隊長車だった。
「グワーッ!ヤラレター!!」「ヴー…!」
『しまった!!隊長がやられた!!田須間補佐、隊長がやられた!指揮の交替を!』
『え?!と、兎に角残った車輌総出でフラッグ車を追撃だ!』
砲塔を後ろに向け、全力で逃げるISー4。
当然コアラの森側は残ったプロトAC4とAC3特別版の8輛で一斉に追撃に移行する。
事前のチューンで最高速度は1.2倍に増え、
不整地でも
『くっそ、まるで距離が詰められない!』『奴等どんな改装をしたんだ!』
『そういえば、向こうのパトロンって…あの東雲特車だから…』『『『『『あっ!』』』』』
何たってこちらも束のチューンにより1,000馬力を超える大出力を発揮可能。
足は殆ど変わりないのだ。コレではどれだけ走っても追いつくのは容易ではない。
そして彼女達は気付いていなかった。退却する敵を追撃するべく総力で前進するこの状況、
これの意味する所は…そして、悪魔の宣告は下った。
「こちら鉄人1、鮟鱇1、敵誘引に成功…! コアラ狩りの時間なの!」
『了解。族長小隊と鉄人2号、全車、行進間射撃訓練の成果を見せろ。
射ち漏らしは聖王小隊で食い尽くせ。…撃てぇーっ!』
「うわあああああああああああああっ!敵の総攻撃だ!」
何と残る9輛がどこからともなく発砲。忽ち被弾して混乱するコアラの森残存車輌。
「しかも左右後方から…まさか!!」「つ、釣り野伏だーっ!釣り野伏返しだーっ!」
もう分かっただろう。大洗・IS学園連合は単騎のフラッグ車と言う餌で
コアラの森を釣り、残りの9輛が伏兵となる事で釣り野伏をやり返したのだ。
「田須間補佐、どうします!」
「こんな時は…比較的防御力の低いタシュを集中的に攻撃しろ!そこから突破だーっ!」
「だ、ダメです!奴等、行進間射撃で照準が…。」
どうにか逃げ出そうとする残りの車輌も…。
「隙だらけなの!そぉい!」
見えていれば当てられるなのはの前では一瞬の隙が命取り。
無駄なくフラッグ車を一発で仕留め、これにてゲームセット。
「ぎゃあ、やられた!!」
「そこまで!コアラの森学園、フラッグ車撃破判定!勝者、大洗・IS学園連合!!」
「ま、負けたぁ~~~~~~~~~~~!!!」「ううっ、1輛も倒せないなんて…!」
かくして、大洗・IS学園連合はコアラの森学園をまたもパーフェクトゲームで下し、
3戦目の相手である聖グロリアーナも三千里、コアラの森両校を下している事から
この勝利によりグループ2位以上が確定。ここに決勝トーナメント進出を決めたのであった。
原作未登場のAFV紹介 その18
巡航戦車 AC3・特別試作車 コアラの森カスタム
大洗・IS学園連合戦に備え、コアラ隊長の考案で車両数を誤魔化す為、
敢えて17ポンド砲搭載試験用の連装25ポンド砲を搭載した。
※下記の数値は作中世界でのみ通用する数値で、史実と同一とは限りません。
寸法 車体長6.33×車幅2.77×全高2.56㍍
機関 ペリエ・キャディラック製
V型8気筒ガソリンエンジン・コアラの森カスタム×3
合計397馬力→合計480馬力
最高速度 48㎞/時→56㎞/時
重量 30㌧
乗員 4名
武装
主砲:28口径87.6㎜砲「QF25ポンド砲」×2
機銃:7.7㎜機銃「ブレン軽機関銃」×1
装甲(単位:㎜)
防盾 65
砲塔 前面 側面 後面 天板
65/65/65/25
車体 前面 側面 後面 天板 底板
65/45/45/25/25