高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 予選リーグの2戦目、コアラの森学園の試合は相手の偽装撤退→伏兵奇襲からの反転攻勢、
所謂釣り野伏作戦を見破り、逆に釣り野伏を喰らわせてまたもパーフェクトゲームを達成。
3戦目の相手であり、既にコアラの森を破っている聖グロリアーナ女学院も同日の試合で
三千里農高を下している事からこの勝利によりグループリーグ2位以上が確定し、
大洗・IS学園連合は晴れて決勝トーナメント進出を決めたのであった。


第29話  決勝T進出、そして大伯父登場です!

「そこまで!コアラの森学園、フラッグ車撃破判定!勝者、大洗・IS学園連合!!」

 

「やった!これで2勝目だよ!」

 

「後は聖グロが三千里に勝てば、その瞬間ウチ等のグループは2勝のチームが

2つ並び立つ事になる。それで決勝トーナメント進出は確定だ!」

 

「おめでとうございます!」

 

「うん、皆が練習を頑張ってくれたおかげだよ!

それじゃ、終了の挨拶があるから、全車、反転!」

 

 そして双方の選手が集結し、試合終了の挨拶に臨む。

 

「以上を以て、大洗女子・IS学園連合とコアラの森学園の試合を終了します!一同、礼!」

 

「「「「「有り難う御座いました!」」」」」

 

 一斉に礼をした所で、マスコット兼隊長のコアラが

みほに何やら言いたげな鳴き声を上げる。

 

「ヴルルルルルルルル…ヴー!」

 

「え?何々…えーと、ウチの隊長が連合チームの隊長に一つ、

お尋ねしたい事が有りまして。」

 

「え?そのコアラさん…ですか?私に…ですか?え?」

 

「は、はぁ…『何故釣り野伏を看破出来た?』と申しております。」

 

 早速副長の蕨が通訳するが、大洗・IS連合全員の頭上に?マークが浮かぶ。

 

「え?あの?コアラ…なんですよね?」「そうですね。」

 

「コアラさんって、戦車道…分かったり…する物なんでしょうか?」

 

「我が校の隊長はお飾りでマスコットと思われて居るが、実際はそうではない。

先祖代々学園艦で生まれ育った結果、戦車道の知識を身に付けておられる。」

 

「コアラの言葉が、分かるんですか?うーん、敢えて答えるなら…

偵察役を6人以上用意していたから…かな?そっちは全部の車輌に

1人ずつ乗せませんでした?元々機銃手が居た席に。」

 

「………!」

 

「ほら、AC3特別改装版もプロトAC4も、元々5人乗りだったAC1を改装して

車体機銃手席を弾薬庫に改装して4人乗りになった車輌だから、

車体の弾薬庫を空にしてそこに偵察要員を乗り込ませたんですよね?」

 

「た、確かにその通りだ…。」

 

「で、見通しの悪い場所で私達と戦う事になった事で、少ないチャンスを確実に活かす為、

継戦能力を犠牲にして一網打尽に出来る可能性が少しでも高い釣り野伏を選んだと。」

 

「ヴッフ…」「か、完全に見破られていたのか…。」

 

「あ、あの…高校生家元って所につられて、私が元は西住家の出だって事…忘れてました?

九州じゃ戦国時代に釣り野伏が多用されていた事はよく知られてますから…。」

 

「「「「「………あっ。」」」」」

 

 そりゃ看破もされるわ。コアラの森側は一斉にそんな顔になった。

 

「そうだった…鬼皇流の家元は元は西住家の直系…

九州生まれの女に釣り野伏は鬼門だったかぁ~!」

 

「ヴルル~ン…。」

 

「それじゃ…その…本日はこれで退散させて頂きます。」

 

 かくして、そもそもの前提を忘れていた

コアラと蕨を尻目にみほ達は去って行くのであった。

そして、グループリーグ戦最後の相手聖グロリアーナが三千里を破り、

大洗・IS連合の2位以上が決まり、

決勝トーナメント進出が確定したと言う連絡が届いた時、

既にみほ達は帰りの便の中であった。

 

「皆!今聖グロが三千里に勝ったって連絡が!」

 

「おお、これで2勝同士が2チーム並び立つから、ウチ等は2位以上が決まったな!」

 

「これで決勝トーナメント進出決定、西住ちゃんの采配と

なのはさんの超高精度射撃のお陰だよ!」

 

「そうですね。だからと言って次の聖グロの相手、負けて良い事には成りませんけど。」

 

「…やっぱり、気は抜けないんだね。」

 

「ええ。ここで負けたりしたら、万一決勝トーナメントで再戦する事になった時、

苦手意識が出て、満足に動けなくなる事だって有り得ます。」

 

「その通りなの!全力全開でぶつかれない…これ程無残な事は無いの!」

 

「ですよね~…。」

 

「(ねえ、IS学園の皆って、いっつもあのテンションに付き合わされてる訳?)」ヒソヒソ

 

「(もう…慣れましたよ。)」ヒソヒソ

 

 

 

 数日後…

 

大洗女子学園 機甲科臨時校舎 (旧薄田社社有 戦車道部訓練場 宿泊棟)

 

 その日、なのはは次の対戦相手聖グロリアーナとの作戦会議の為

キンガ、ラウラを連れて大洗機甲科の臨時校舎である

薄田社の訓練場宿泊棟に赴いていたのだが…。

 

「え?私に会いたい人が居る?」

 

「はぁ…、キクチという御老人なのですが、是非お逢いしたいト。」

 

「菊池?さあ、そんな人に覚えは無いんだけどなぁ…。

まあ良いや。逢うの!で、何処に居るの?」

 

「大食堂にお通ししました。」

 

 と言う訳で、「『キクチ』なる老人がなのはに逢いたがっている」

という知らせを受け、早速逢う事に。そして大食堂に着くと…。

 

「はい、今到着したの!で、キクチさんは…。」「きほ!」

 

 突然声を張り上げる老人。どうやら、なのはを「きほ」なる者と勘違いしている様子だ。

 

「え?何?何なの?!」

 

「良く生きておった!20年振りだな!まさか20年経っても

高校生をやっておったとはの!」

 

「い、いや、ちょっと待つの!私は高町なのはなの!きほなんて名前じゃ無いの!!」

 

「…は?」

 

「あ、あの…キクチさん?この方は高町なのはと言う方で、

アナタの仰る『きほ』さんとやらとは別人かト…。」

 

「何?!いやしかし、この顔はどう見ても…

いや、きほはこんなに顔色が良くは無かったし、髪も目も真っ黒であった。声も違う…。」

 

「その通りなの!西住流の家元も私とその『きほ』って人との血縁を疑って、

DNA鑑定を依頼してきたけど、私は西住家とは全くの赤の他人という結果が出てるの!」

 

「そうか…。りほからも疑われておったのか。それは悪い事をしてしまったな。

人伝で『死んだ筈のあの子に瓜二つの者がおる』と聞いて

こうしてやって来たが、他人の空似、人違いであったとはの。」

 

「御老人…失礼ですが、アナタの仰る『きほ』と言う方とはどう言う御関係で?」

 

「きほか…あ奴はワシの娘だ。厳密には養子であるがの。

血縁としては弟の娘、即ち姪だ。14の砌に特別養子として

子の無いワシ等に託されてな、法的に実の娘となったのだ。」

 

「は、はぁ…。」

 

「自己紹介が遅れたな。ワシは菊池左近次(キクチサコンジ)、大洗で木工芸屋をやっておる。

この度大洗で戦車道部後援会が再建されたので、

理事としてその挨拶を兼ねて赴いた次第だ。」

 

「成程…。それじゃ、大洗側の隊長も連れてきた方が良いのかな?」

 

「……是非、そうして貰いたい。話さねばならん事がある。」

 

「分かりました。呼んできますね。」

 

 そして、みほが杏と優花里と共に大食堂に呼ばれる事に。

 

「あ、あの…私に用があると言う方は…。」

 

「おお、お前が西住しほの娘か?こうして会うのは初めてだな。」

 

「はい、確かに私の母は西住しほです。えーと、どちら様でしょう?」

 

「ワシは菊池左近次。大洗町の戦車道部後援会理事であり、

西住しほの父方の伯父…即ちお前の大伯父に当たる者だ。」

 

「私の…大伯父さん?」

 

「左様。あの時TVで鬼皇流とやらの旗揚げを宣言した時から、

一目会って聞きたい事が有ったのでな、こうして会いに来たのだ。」

 

「そうなんだ、で、聞きたい事って何ですか?」

 

「きほを…西住輝鳳を知っておるか?」

 

「は、はい。名前だけなら。私達が立てた鬼皇流はその人の戦い方を基に立てた流派です。」

 

「そうか…やはりそうであったか。よく、あそこまで再現した!

あれだけの伝説を築いたあの子が死んで早20年、もう忘れられるだけの

過去の遺物と成り果てるばかりと思うておったが、よくやってくれた!」

 

「私一人でやった事じゃありませんよ。皆が訓練を頑張ってくれたお陰でもあるし、

何よりあの人の戦いをマニュアルに纏めてくれたなのはさんこそ、

鬼皇流旗揚げの一番の功労者です。今でもなのはさんが最高戦力ですし。」

 

「そ、そうか…しかし、ああも輝鳳にそっくりな者がおったとはな。」

 

「そっくり…? ! 大伯父さん、ひょっとしてその輝鳳って人に会った事があるの?」

 

「西住さん、この人は輝鳳さんの伯父さんで養父さんなんでス。」

 

「えっ…大伯父さんが…西住輝鳳の…伯父さん?

えーと、大伯父さんって私の母の父方の伯父さんでしたよね?」

 

「如何にも。ワシの弟がりほに婿入りして生まれたしほがお前の母親だ。」

 

「え?ちょっと待って下さい!お母さんは一人っ子だって

本人もお祖母ちゃんだった人も言ってました!

大伯父さんが西住輝鳳の伯父さんだったら、

西住輝鳳は…お母さんの姉妹って事になるじゃないですか?!」

 

「うむ…その通りだな。ワシと輝鳳の養子縁組は特別養子縁組と言ってな、

15歳未満の子を対象にする、文字通り特別な養子縁組での。

コレを結んだ場合、元の親との縁が法的に消えて無くなる事になっておる。

よって縁組成立の時点で、りほの娘はしほだけと言う事になったのだ。」

 

「特別…養子…縁組…。」

 

「そうだ。確かに血縁としては輝鳳はしほの2つ下の妹だったが、

この縁組によりこの二人は姉妹から従姉妹になったのだ。」

 

「成る程、そう言う事だったんですね。」

 

「それなら、確かに嘘は言ってないね。血縁は妹だけど法的には妹じゃ無い…か。」

 

「その…それで…西住輝鳳…じゃなくて、輝鳳叔母さんは、どんな方だったんですか?」

 

「一言で言えば、まさしく『鬼』…いや、最早鬼をも超えた『魔王』の様な娘であった。

かつての大洗女子学園で戦車道部隊長を務めておっての…戦車道においては最早、

この世に並ぶ者がおらん空前絶後、人外化生の如き強さを示した無双の大天才であった。」

 

「そ、そんなに凄い人だったんですか?」「うむ。あの子こそ史上最強の戦車道家だ。」

 

「…その話、詳しく教えて貰うの!なぜ西住親子がああも警戒する理由を。」

 

「分かった、皆を集めてくれ。あの子が為した事、そしてあの子がどの様に死んだのか…

ワシの知る所を皆に話しておこう。」

 

 こうして、大食堂に大洗・IS学園連合のチームメンバーが集結し、

みほの大伯父、菊池左近次と名乗る老人がかつての大洗戦車道部隊長、

西住輝鳳について訥々と騙り始めた。




次回、いよいよ鬼皇流の原型となった西住輝鳳の伝説の片鱗が明かされます。
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