高町なのはのIS学園見聞録外伝 我こそ、戦車道極めし者   作:ピロッチ

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 再建された大洗女子学園の戦車道部後援会の理事を名乗り挨拶に来た老人、菊池左近次。
彼の正体はみほの大伯父であり、鬼皇流の原型となった西住輝鳳の伯父にして養父だった。
彼女の詳細を教えて欲しいと言うなのはの声に応じ、
左近次は大洗・IS連合全員を集めさせ、彼女達の前で輝鳳が養子入りするまでの経緯を語る。
そして、いよいよ輝鳳が大洗に入学してからの足跡が語られるのであった。


第31話  輝鳳伝説、1・2年次編です!

「では、ここからあ奴が大洗に入学して以降の事を語ろう。

あ奴は入学後、直ちに戦車道部の創設の為に行動を開始した。

主に学園艦下層部の不良共や船舶科の連中を中心に声を掛けておったそうだ。

当たり前だが、治安の劣悪なあの場所では喧嘩が絶えなかった。」

 

「下層部…確かに、あそこは治安悪いですからね。」

 

「何で高校にバーがあるのよ…酒も煙草も売ってるし。」

 

「まあ大人も一杯いるから、その人達向けってのは分かるけど。」

 

 風紀委員の3人、園みどり子(ソド子)後藤モヨ子(ゴモ代)金春希美(パゾ美)が口々に下層部への愚痴を零す。

 

「だがさっきも語った通り、あ奴は理由さえあれば実の親が相手でも暴力を躊躇わない女。

大洗の高等部9,000人の誰よりも喧嘩慣れしたあ奴に敵う者はおらず、

1年生でありながらあ奴は不良グループの頂点に立ちおったのだ。」

 

「あ、あの『大洗のヨハネスブルク』と呼ばれた下層部をたった一人で…?!」

 

「そっちの方も化け物じゃない!」「やっぱり西住家って暴力一家だよ…。」

 

「ひ、酷い~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」

 

「そして、あ奴は根城である下層部を徹底的に清めさせ、

学園艦下層部の治安改善に大きく貢献した事を称えられて学園上層部の覚えが目出度くなり、

戦車道部創設は1年次の2学期早々に聞き入れられた様だ。

そして、そんな矢先にある事件が起きた。」

 

「事件?」

 

「学園艦停泊中、東京に留学していたハンガリー人の高校生が大洗を観光中、

地元の半グレとやらとトラブルを起こして誘拐されかけてな。

あ奴は自ら率いる不良グループ総出で殴り込みを敢行し、

生徒に誰一人死傷者を出さず、半グレグループを蹴散らしてその留学生を助け出したのだ。」

 

「は、ハンガリー人を掠う半グレー人…。」「ラウラ、寒いの。(マジトーン」「アウフッ!」

 

「ハンガリー人?」

 

「うむ、何と言ったかな?どことなく日本人の様な名字だったのは覚えておる。

こ、小林だかなんだか…。良く分からん長い名字だったのは確かだが…。」

 

 どうにも思い出せない様子の左近次。しかし、キンガは何か心当たりがある様だ。

 

「あ、あの菊池=サン!その人の名前は、

コヴァーチュハーズィ・エルジェーベトと言いませんカ?」

 

「こう゛ぁーちゅはーずぃ…おお、それだ!たしかそんな感じの名前だった。

しかし、よく分かったの。お前さんひょっとしてハンガリーの…」

 

「はい、私もハンガリー人でキンガと言いまス。そして、その掠われそうになった

コヴァーチュハーズィ・エルジェーベトは…私の母でス。」

 

「何と?!」「マジかよ?!」「何その偶然?!」

 

「私の祖父ジェルジが当時駐日ハンガリー大使でして、

母は祖母共々祖父に着いて行った事は本人から聞いて居まス。

『誘拐されかけた駐日大使令嬢を地元の女子高生が救出した』と言う事で、

当時のハンガリーでは結構話題になった事も母から聞きましタ。」

 

「えええっ!キンガさん大使の孫だったのかよ!」「この人もガチのお嬢様だったなんて…。」

 

「ああ、祖父は今は引退してまス。でも伯父のヤーノシュが今年から

駐日大使として東京に駐在していまス。」

 

「じゃ、じゃあ大使の姪っ子…。」「やっぱりお嬢様じゃない!やだもう!」

 

「流石IS学園の生徒…ホントに雲上人しかいないのね…。」

 

 今まで明かされなかったキンガの出自に

改めてIS学園が世界一のエリート校である事を認識させられる大洗の一同であった。

 

「で、では話を戻そう…。そのハンガリー大使令嬢救出の恩で

ハンガリー政府に顔が利く大使の口利きでハンガリー製AFVが大洗に寄贈されてな。

あ奴が試合で用いたのはこの時送られた車輌だったのだ。

そんな訳で、配下の生徒の中で特に適正の高い者22名を選び、

戦力と人員を揃えたあ奴は2年次から本格的に活動を開始したのだ。」

 

「遂に全国に西住輝鳳の名前が知られ渡る時が来たのですね。」

 

「左様。その年の全国大会1回戦、大洗はよりによって黒森峰とぶつかっての。

しほは既に卒業済みだったので、姉妹兼従姉妹対決とは成らなかったが、

当時の黒森峰も10連覇がかかった大事な年、皆気合い十分だったのだが…。」

 

「何をしたんですか?」

 

「あ奴は自身が乗り込むタシュで黒森峰フラッグ車のⅥ号E型の砲身を叩き折ったのだ。

遥か3㎞彼方からの一発狙撃。そして、当時のルールでは砲身全損は即撃破とされている。

…後は分かるな?10連覇の掛かった大会で黒森峰はたったの一撃で

1回戦敗退の屈辱を味わわされたのだ。」

 

「うわぁ…」「何て事を…。」

 

「3㎞先の戦車の砲身を一発で叩き折るって…まるでどっかの誰かさんみたいな…。」

 

 その声に合わせて、皆が一斉になのはの方を向く。

そんな芸当が出来るのは、確かに彼女位だろう。

 

「確かに私も5km先の戦車を一発で仕留めた事はあるけどさぁ…。」

 

「本当に赤の他人と言う事が信じられんな。

兎に角、あ奴は砲手として余りにも度が過ぎる程強過ぎたのだ。

当然だが、そんなあ奴が率いる他の部員連中も大会出場までの半年の訓練で

唯でさえ磨き上げられていた練度が試合の度に見違える程向上していっての。

決勝戦では5対20で相手のプラウダを全滅させ、当然の様に優勝を手にしたと言う訳だ。」

 

「5対20で当たり前の様に勝つって…もう4倍差は差の内にも入らないのか。」

 

「フラッグ戦なのに相手を殲滅戦同然に全滅…

強豪高が完全に相手に成らないレベルの強さだったんですね。」

 

「そうして大洗が初出場初優勝を手にして程なく、あ奴の名が国外に広まる戦いが起きたのだ。

その年の秋、欧州プロリーグ優勝チームが世界ツアーを敢行し、

その一環で日本にも来訪して来たのだ。

その際、親善試合という事で社会人・大学生・高校生各リーグの優勝チームからなる

日本選抜チームと30対30の殲滅戦ルールで親善試合を行ったのだが…。」

 

「勝ったん…ですよね?」

 

「如何にも。それも社会人・大学生選抜が5輛倒した所で全滅させられ、

残るはあ奴の率いる5輛だけと言う状況から、相手側のセンチュリオンマークⅡ25輛を

味方を1輛もやられずに一方的に叩き潰すと言うとんでもない逆転勝ちをしてのけたのだ。」

 

「そ れ は ひ ど い 。 」

 

「酷過ぎる…。」

 

「って、よーく考えたら大学生・社会人は捨て駒かよ、

輝鳳さん最初っから自分等だけで勝つ気だったのか?!」

 

「ワシもそう思う。相手側は『幽霊の相手なんて聞いて居ない』

『日本に戦車道プロリーグが存在しない理由が分かった』

『センチュリオンMk.13を使うべきだった*1』と皆恐れ戦いておったのは今でも覚えている。

そして、あ奴は冬休みを利用してとんでもない行為に出たのだ。」

 

「また何か滅茶苦茶したんですか?!」「逆遠征だ。」「逆遠征?!って…まさか…。」

 

「そのまさかだ。あ奴は欧米各国の戦車道プロリーグ優勝チームを回って試合を挑む

海外遠征を敢行したのだ。『西住流の海外向けPR』の名目で、

費用は全て日戦連経由で西住家に請求させてな。」

 

「酷ぇ!」「や、ヤバ過ぎる…。」「西住家まるっと大損じゃん!」

 

「それで、生涯無敗って事は…全部倒したんですよね?味方は1輛もやられずに。」

 

「そうだ。『たった5輛のハンガリー製AFVを駆る日本人高校生チームに

欧米の並み居るプロリーグ優勝チームが手も足も出なかった』

この事実に国際戦車道連盟(以下、国戦連)を始め欧米各国の戦車道関係者は大混乱だ。」

 

「でしょうね。」「今生きてたら、絶対相手したくない…。」「もうやだこのモンスター。」

 

「だが、西住家はもっと大混乱だ。

何しろあ奴は西住の名の下に西住流を否定した真逆の戦法で欧米各国を荒らし回ったのだ。

りほとしほはさぞ恨んだであろうな。『邪道』と否定したあ奴の戦法が世界各国を屈伏させ、

『間違った西住流』が世界中に広まってしまったのだから。」

 

「確かに…私がお母さんの立場でもそんな事されたら、ちょっと褒める気には…。」

 

「そうだね。そう考えたら、始めにオリジナルの流派を建ててから動いたのは正解だったよ。」

 

「私もそう思います。そうで無かったら、西住殿は多分一生実家と仲違いしてました。」

 

「まあそんな感じで生家との溝を深めながら世界中に名を知られつつあったあ奴だが、

次の年はもっとハチャメチャをやらかしおってな。

今思えば、それがあ奴の死の遠因となったのやも知れん…。」

 

「あ…そう言えばもう亡くなってたんですよね。一体、何があったんですか?」

 

「うむ。生涯最後の年、あ奴は戦車道史上に唯一無二の伝説と大罪を残したのだ。

ここからは、何をしでかしたのかワシの知る所を話そう。」

 

 左近次はお替わりの緑茶を一杯呷り、話を続けた。

*1
紛う事なきレギュレーション違反。要するにレギュレーションに則っていたら絶対勝てないと匙を投げたのだ。

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